職場におけるストレスチェック制度の実施が義務化!労働環境改善に活かす方法とは

ストレスチェック制度とは?企業に課される義務と実施方法

労働安全衛生法の改定により、従業員が50人以上の事業場ではストレスチェックの実施が義務付けられています。しかし、ストレスチェックの結果分析から組織改善、効果的な対策を行っているかは事業場次第といってもいいかもしれません。毎年実施するストレスチェックを有効活用し、従業員にとって働きやすい労働環境を作っていきましょう。

目次

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法第66条の10にかかわる事業場における、一連の取り組みのことです。制度導入の準備からストレスチェック(検査)の実施、面接指導や集団分析などの事後措置などを行います。

心理的な負担の程度を把握するストレスチェックの実施は義務化されていますが、従業員数50人未満の事業場については、当分の間は努力義務となっています。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に従業員が記入し、それを集計、分析、評価することで従業員が自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡易的な検査方法です。

ストレスチェックを実施する理由は、従業員が日頃から自分のストレスがどれくらい溜まっているのかを具体的に数値化して自覚してもらうためです。

高ストレスの従業員から申し出があった場合には、おおむね1ヶ月以内には医師の面接指導を受けさせる必要があります。また、管理監督者に対象社員の負荷軽減や配置転換を実施するよう促し、労働環境の改善を試みることもあります。

そういった一連の取り組みにより、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止する仕組みとして考えられたのが、ストレスチェック制度です。

ストレスチェック実施者、実施事務従事者について

ストレスチェック実施にあたっては、実施者と実施事務従事者、面接指導をする医師の選定が必要になります。それぞれの役割や担当する人は以下のとおりです。

  • 実施者…ストレスチェックを実施する人
    医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士、産業医などが担当
  • 実施事務従事者…実施者の補助をする人
    総務課などに所属する人事権のない従業員が担当
  • 面接指導医師…ストレスチェック後の面談を行う人
    実施者の医師や保健師が担当(診断結果の守秘義務が発生)

実施者とは医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士です。事業場担当の産業医がいる場合は、産業医が実施者となることもあります。面接指導をする医師に関しては、実施者の医師、保健師などが担当することが望ましいでしょう。

実施事務従事者とは、補助業務を行う社内の人間(総務など)のことです。実施事務従事者は人事権がない従業員が担当することになり、実施者と合わせて診断結果の守秘義務を課せられています。

健康診断との違い

ストレスチェックを健康診断と同じようなものと考えてしまうかもしれませんが、実際には違います。健康診断の受診は従業員の義務ですが、ストレスチェックを受けるのは従業員の義務ではなく、受けるかどうかは個人の判断に委ねられます。

厚生労働省の統計では78%の受検率となっていて、ストレスチェックを受ける義務はありませんが、半数以上の人がストレスチェックを受けています。

そして、診断の結果報告についても違いがあります。健康診断の結果は事業場に報告されますが、ストレスチェックの診断結果は本人の同意がない限り、事業場側には知る権利はありません。結果を知ることができるのはストレスチェックの実施者、及び実施事務従事者のみです。

ストレスチェックの実施義務

ストレスチェックの実施義務

労働安全衛生法が改正され、従業員が50人以上の事業場では2015年12月から毎年1回、ストレスチェックをすべての従業員に対して実施することが義務付けられています。義務付けられているのは「実施」であり、従業員には受ける義務はありません。

しかし、職場環境のどこにストレスを感じているのかを把握できることから、組織の課題抽出が行いやすくなります。労働環境改善のために、受検率を上げる働きかけをするのが望ましいでしょう。

平成26年改正労働安全衛生法の改正内容

平成26年(2014年)に、労働安全衛生法が改正されました。改正理由は、規制されていない化学物質が原因で胆管がんの労災事案が発生したこと・精神障害の労災認定件数が増えたこと・同一企業における同種の災害が発生したことなどです。

そのうち、2つ目の理由で挙げられた「精神障害の労災認定件数の増加」が、ストレスチェックの実施義務につながっています。

全体では、以下の6点において改正が行われました。労働者の心身を、安全かつ健康的に保つことの重要さがうかがえます。

化学物質管理のあり方の見直し ・特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等について、事業者に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務付け。
ストレスチェック制度の創設 ・労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付け。ただし、従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務とする。

・ ストレスチェックを実施した場合には、事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いたうえで、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないこととする。

受動喫煙防止対策の推進 ・受動喫煙防止のため、事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずることを努力義務とする規定を設ける。
重大な労働災害を繰り返す企業への対応 ・厚生労働大臣が企業単位での改善計画を作成させ、改善を図らせる仕組みを創設。(計画作成指示等に従わない企業に対しては大臣が勧告する。それにも従わない企業については、名称を公表する。)
外国に立地する検査機関等への対応 ・国際的な動向を踏まえ、ボイラーなど特に危険性が高い機械を製造等する際に受けなければならないこととされている検査等を行う機関のうち、外国に立地するものについても登録を受けられることとする。
規制・届出の見直し等 ・建設物又は機械等の新設等を行う場合の事前の計画の届出(法第88条第1項)を廃止。

・特に粉じん濃度が高くなる作業に従事する際に使用が義務付けられている電動ファン付き呼吸用保護具を型式検定・譲渡制限の対象に追加。

引用元:厚生労働省 労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)の概要【pdf】

ストレスチェック制度 7つの義務

ストレスチェック制度には大きく分けて7つの義務があります。以下で1つずつ紹介します。

  • 義務1.事業者はストレスチェック制度に関する基本方針を表明したうえで、衛生委員会などにおけるストレスチェック制度の実施方法や状況、改善などについて調査審議すること。
  • 義務2.事業者は従業員に対して1年以内ごとに1回、定期的にストレスチェックを行うこと。
  • 義務3.事業者はストレスチェックを受けた従業員に対して、実施者から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。また従業員の同意を得ないで、事業者に検査の結果を提供してはならない。
  • 義務4.事業者は高ストレスに該当される従業員が医師による面接指導を受けることを希望する場合、医師による面接指導を行わなければならない。
  • 義務5.事業者は医師の面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を5年間保存しなければならない。
  • 義務6.事業者は面接指導の結果に基づき、従業員の健康を保持するため医師の意見を聴かなければならない。
  • 義務7.事業者は医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、従業員の実情を考慮して労働環境を改善するなどの適切な処置を講じなければならない。

実施することや実施内容の取り扱いについて定められています。この7つを守ってストレスチェックを行いましょう。

2つの努力義務

7つの義務に続き、2つの努力義務があります。

  • 努力義務1.ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
  • 努力義務2.当該集団の従業員の心理的な負担を軽減するための、適切な措置を行うよう努めなければならない。

ストレスチェックは実施して終わりではありません。その結果から、事業者としてどのように組織改善・労働環境の改善ができるかを考えて対処をしなければ、意味がありません。

プライバシーの保護について

労働安全衛生法では、ストレスチェックの結果を実施者や実施事務従事者、ストレスチェックを受けた本人以外には知られないようになっています。会社に知られたくないと考え、正しい回答が得られない可能性があるためです。

しかし、本人の同意がある場合には、事業場側が知ることもできます。ストレスチェックの結果は非常にセンシティブな個人情報です。プライバシーの保護には、十分注意しなければなりません。

ストレスチェックを行わないと罰則があるのか

ストレスチェックを行わないことによる直接の罰則はありませんが、労働基準監督署へ報告する義務があり、報告を怠ると罰則が課せられます。内容によっては罰金や損害賠償請求などのリスクがあることを知っておきましょう。

  • ストレスチェックをしていない・実施したが報告していない
    ストレスチェックは実施義務があるため、未実施や実施後に未報告の場合、最大50万円の罰金となります。
  • 安全配慮義務違反となるリスクがある
    安全配慮義務違反自体には罰則はありませんが、精神障害となってしまった従業員が出た場合、労災認定や損害賠償請求といったリスクが生じます。
  • 守秘義務違反に問われる可能性がある
    ストレスチェックの内容や面談内容などには守秘義務があります。違反した場合は、刑罰対象となります。
  • プライバシーを保護しなくてはいけない
    ストレスチェックの内容を本人の同意なしで事業場や第三者が取得すると、個人情報保護法の観点から刑事罰(懲役刑または罰金刑)に問われるおそれがあります。
  • 不利益な取扱いの防止
    ストレスチェックの結果を受けて、従業員に対して不当な扱いをするのは禁止されています。例えば、仕事を与えない・希望しない部署に配置する、離職を促すなどです。

ストレスチェックの実施状況

ストレスチェックの実施状況

ストレスチェックを推進する厚生労働省は、実施状況を報告書にまとめて公表しています。従業員の労働環境を整える人事や総務の担当者なら、他社の実施状況が気になるところです。厚生労働省の報告書によると次のような結果となりました。

  • ストレスチェック制度の実施義務対象事業場のうち、82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施。
  • ストレスチェック実施事業場の従業員のうち、ストレスチェックを受けた従業員の割合は78.0%。
  • ストレスチェックを受けた従業員のうち、医師による面接指導を受けた従業員の割合は0.6%。
  • ストレスチェックを実施した事業場のうち、78.3%の事業場が集団分析を実施。

事業場全体の8割がストレスチェックを実施済みで、ストレスを与えない組織づくりや、労働環境改善への取り組みの高さが、数字からもうかがえます。

ストレスチェックは産業医が行うケースが多い

ストレスで悩んでいる従業員への対応は、産業医が行うケースが多いようです。産業医とは、従業員の健康管理を行う医師で、50名以上の従業員が在籍する事業場では、産業医を選任する義務が課せられています。

ところが、厚生労働省が発表した「現行の産業医制度の概要等」によると、産業医を選任できている事業場は全体の78.6%(従業員100名未満の場合)で、約20%の事業場に産業医がいないことがわかりました。

産業医の資格をもつ医師不足が主な原因なのですが、では残りの事業場はどこに依頼しているのでしょうか?

外部委託による実施も主流になりつつある

ストレスチェックは、外部委託ができます。委託先は、メンタルヘルス不調で悩む従業員のカウンセリングや離職防止、復職支援などを行う民間のメンタルヘルス事業者などです。企業のストレスチェック実施にも対応しており、専門的なノウハウや最新のストレス状況にも詳しいことから、産業医に代わる新たな依頼先として外部委託が主流になりつつあります。

しかし、サービス展開をしている企業も数多く存在するため、どこに委託すればよいのか、選ぶ基準や選び方がわからず困ってしまうことがあります。費用や実績なども選ぶ基準の1つですが、そもそもストレスチェックを行う目的は従業員のストレス状況を把握して労働環境を改善すること。その目的達成のカギとなるのが「集団分析に対応できるか」どうかです。

ストレスチェック成功のカギは集団分析

ストレスチェックは、従業員がどのようなストレスを抱えているのかをデータ化しただけでは何の役にも立ちません。従業員が所属する集団・組織(部や課など)ごとに集計し、集団・組織のストレスの特徴や傾向も分析する「集団分析」を実施する必要があります。

集団分析の実施で組織改善につなげれば、ストレスそのものとなる要因を低減化すること(労働環境の改善)につなげられます。

そのため、個人のストレスチェックのみならず、集団分析にも対応しどのように組織を改善すればよいかを提案してくれる委託先を探せるかどうかが成功のカギとなります。

従業員のメンタルヘルス不調を客観的に把握するのは難しいことです。従業員自身も不調に気づきにくいため、何の対策も打たずに放置してしまうと、ストレスを溜めすぎて離職者が続出する可能性もあり、組織や企業にとって大きなダメージになります。メンタルヘルス不調は従業員だけの問題とは限りません。、組織や事業場の環境にも原因がある可能性があります。

リロクラブでは、ストレスチェックのみならず、組織改善につなげる「Reloエンゲージメンタルサーベイ」を提供しています。ご興味のある方はぜひご確認ください。

ストレスチェック制度の実施手順

健康診断の実施は企業の義務。福利厚生、健康経営の推進としての健康診断

ストレスチェック制度を実施するには大きく3つの手順があります。導入前の準備、ストレスチェックの実施、面接指導などの事後措置の3つです。

手順1.ストレスチェックを導入する前の準備

まずは、従業員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐためにどういったストレスチェック制度を実施するのかを決めるところから始めます。そこで決まった方針を衛生委員会で話し合い、具体的な内容を決めていきましょう。具体的にする主な事項は、以下のとおりです。

  • 実施者、実施事務従事者を誰にするのか
  • 期間はいつにするのか
  • 質問事項はどういったものにするか
  • どういった評価でストレス度を決めるのか
  • 面接指導を行う医師は誰に依頼するか
  • ストレスチェックの結果はどうやってデータ化し保存、管理するのか

具体的なことが決まったら、あとは実施するだけです。すべての管理を外部委託することもできます。

手順2.ストレスチェックの質問事項と実施

ストレスチェックの質問事項は厚生労働省の資料にある「ストレスチェック制度実施マニュアル」から、国が推奨する57項目の質問票を参考に決めるとよいでしょう。事業場自体が特殊な仕事をしていても、人の心の健康は人間関係や過剰な工数による負荷で消耗していることがあります。そのため、一般的な質問事項で十分診断できると考えられます。

紙での検査実施の場合、質問事項の書かれたチェックシートを従業員に配って記入してもらいます。記入し終わったチェックシートは中が見えない封筒やファイルケースなどに入れて回収し、実施者、実施事務従事者が回収しましょう。ストレスチェックの内容は受検者本人、実施者、実施事務従事者、面接指導医師のみ閲覧できます。プライバシーに関わる内容のため、必ず他従業員などに見えないよう、工夫して回収しましょう。

紙媒体以外にも、ウェブでの受検も可能です。回収したチェックシートをもとに、医師や保健師などの実施者が評価を行い、それに応じて高ストレス者や医師の面接指導が必要な従業員を選定します。

手順3.面接指導

診断結果から高ストレス者と診断を受けた従業員のなかで、面接を受けたいとの申し出があった場合はセッティングします。

そこで行った医師の面接指導の結果をもとに、事業者は組織改善・労働環境の改善を検討・実施。医師から結果報告、意見聴取を受けた際は面接指導後の1ヶ月以内に行う必要があるので注意が必要です。

高ストレス者への対応方法

高ストレス者がいた際に、どのように対応や対処を行えばよいのかをまとめます。また、同様の高ストレス者を出さないように定期的なストレスチェックの実施やセルフケア教育も実施して、職場環境の改善を進めていきましょう。

高ストレス者への医師による面接指導

「手順3.面接指導」でもお話したとおり、高ストレス者の結果が出た従業員から医師との面接の申し出があった場合は、面接を受けさせる必要があります。結果によっては、申し出がなかった場合も面接を促すケースがあるでしょう。

面接指導では、勤務状況や職場環境、人間関係などのヒアリングを行います。その内容をもとに、高ストレス者に対しては健康不安がないかを聞き、ストレスをどのように対処すればよいかを指導します。健康への影響が気になる場合は、病院へ行くように促したり、病院を紹介したりすることもあります。

面接を通して得た情報をもとに、医師から対象従業員の勤務体制や職場環境の改善を求められることがあります。負担軽減策には応じるようにしましょう。また、従業員の健康状態によっては勤務時間の調整や休職といった対応が必要になるケースもあります。

相談窓口の整備

医師との面接は、従業員自身から申し出を受けるか、従業員に面接を促して了承を得る必要があるため、人によっては相談できないままストレスを抱え込んでしまう可能性があります。

そういった従業員をケアせずそのままにしておくのは安全配慮義務上よくありません。また、ストレス状態が悪化すれば、休職や離職、最悪の場合は自死にまで至ってしまうことも考えられます。

そのため、医師との面接とは別に、悩みを相談できる窓口を設置しましょう。相談窓口は社内で設置するパターンと、外部に委託するパターンの2つがあります。社内での設置は、窓口担当者に個人情報の取り扱いや守秘義務などの教育を行い、寄せられた声に対して社内で適切に対応できるようにしておきましょう。

社内のリソースを使うので、業務委託費用などは発生しません。しかし、社風や事業規模によっては、会社に知られたくないという理由で活用されない可能性があります。

アウトソーシングする場合、社内リソースを割かずに済みますが業務委託費用が発生します。費用はかかりますが、自社の人間には話せない悩みを相談しやすいのは大きなメリットです。どちらも善し悪しがありますので、自社に合う窓口を整備しましょう。どちらか片方ではなく、社内・社外の両方を設置しても構いません。

休職と職場復帰支援の体制を整える

高ストレス者への対応の1つが休職です。心身に強い影響が表れている場合、休職してしばらくストレス源となる職場から距離を置き、治療に専念するように面接指導されることがあります。面接後に医療機関を受診した結果、休職となるケースもあるでしょう。

休職支援の体制を整えるために、まずは休職に関する社内規定の内容の見直しから始めましょう。労働基準法では、休職について定められたものはありません。そのため、期間や休職中の給与・有給の取り扱い方、傷病手当などの支給を社内規定で定めます。その内容が高ストレス者への対策として理にかなっているかを確認し、必要なら規定の改定を進めます。

また、休職中にどのようなサポートを行うかも決めておきましょう。人事や総務などから定期的に連絡は取るとは思いますが、カウンセラーと話してもらうことも視野に入れ、症状が改善するように手助けします。

また、復職がしやすいかも重要です。仕事をしていなかった期間があるため、すぐに元のように働けるとは限りません。また、復帰はできるがフルタイムの勤務は難しいと判断されることもあります。従業員1人ひとりの状況に合わせた復帰支援が行えるよう、様々なパターンに対応できる支援策を用意しましょう。

高ストレス者への対応を社内教育

メンタルヘルスに問題を抱えている従業員に対しては、一定の配慮が必要になります。そのため、接し方やメンタルヘルスの知識を全従業員が心得ていることが理想です。そのために行うのが、全社的な社内教育です。自社内で研修を開いたり、外部のセミナーに参加したりする方法があります。

また、一度きりではなく定期的に研修を実施して、知識を身につけておくだけでなく、、実際に休職から復帰した社員へ対応できるようにしておきましょう。ワークショップやロールプレイングを取り入れてみてもよいかもしれません。このような取り組みで全従業員に意識付けできれば、ストレス要因の発見や改善が加速するメリットも生まれるでしょう。

高ストレス者への対応はもちろんですが、高ストレス者を出さないようにすることが大切です。法で義務付けられたストレスチェックをより活かすために、「Reloエンゲージメンタルサーベイ」をご検討ください。

ストレスチェック実施の注意点

ストレスチェックを実施する際に留意しておきたい3つのことについて解説します。単に「決められているから実施すればよい」となってしまわないように注意しましょう。場合によっては、企業経営のリスクにもなりかねません。

安全配慮義務

ストレスチェックの実施は、職場における安全配慮義務のうちの1つです。実施する対象は、従業員数50人以上の事業場。「義務」ですから、実施しないという選択をとってしまうと、義務違反にあたる可能性があります。

ただ、覚えておきたいのは、実施は義務ですが受検は義務ではない点です。受けたくないという従業員に対して強制力はありませんので、対話や社内文化を形成していく中で受検率を上げていきましょう。

そもそも安全配慮義務とは、会社側が従業員に対して健康的かつ安全に働けるようにするための義務です。ストレスチェックの実施は健康面にフォーカスされがちですが、事業内容によっては「安全ではない」ことがストレス要因かもしれません。

そう考えると、健康と安全の両方の課題が抽出できるのがストレスチェックといえるでしょう。

もし、課題が見つかったのに放置した結果、従業員に何らかの不利益(病気やケガ、死亡など)が起こった場合は、労災や損害賠償請求といった金銭的・社会的なリスクが生じます。リスクマネジメントの観点からも、実施と改善は必要です。

プライバシーの保護

ストレスチェックの結果や医師面接の内容などは、個人情報にあたります。そのため、実施者や実施事務従事者、面接指導医師には守秘義務が課せられます。書類やデータの管理徹底はもちろんのこと、対応者の意識も大切です。

特に、実施事務従事者は社内の人間が務めます。従業員と距離が近い存在であるため、日々のコミュニケーション中にうっかり話してしまったということがないようにしましょう。

ストレスチェックの結果や医師面接の内容のなかには、あまり人に言いたくない疾病や既往歴、悩みなどの情報が含まれていることがあります。これらは、個人情報のなかでも要配慮個人情報の扱いになるので、より高い意識を持って情報を取り扱いましょう。

従業員のプライバシー保護の意識を高めるためには、情報セキュリティに関する研修を実施するのがおすすめです。情報の扱い方はもちろん、漏洩や不正取得によって生じるリスクについても知ることができます。

不利益な取扱いの禁止

ストレスチェックの実施に際して、下記の項目は従業員側にゆだねられています。

  • ストレスチェックを受ける・受けない
  • 医師との面談を希望する・しない
  • ストレスチェックの結果を会社に提供する・しない

チェックしたいという従業員に「受けるな」といったり、提供したくないという従業員の結果を勝手に取得したりすることはできません。事業場側が行えるのは、あくまで実施と実施の結果得られたデータから労働環境を改善することです。

また、高ストレス者に対して、解雇や雇止め、正当な理由のない配置転換や役職の変更などを行うのも不利益な取り扱いの禁止に抵触します。高ストレス者はどうしてもパフォーマンスやモチベーションが低下しがちですが、それは労働環境に由来するものです。

そのため、対象の従業員に対してよりストレスを与えるような行為は許されていません。健康的に働けるように、待遇や環境の両方からサポートすることが大切です。

正直に答えてもらえるように最大限配慮する

ストレスチェックは従業員自身の心の状態がわかるものであるため、「正直に答えたくない」と虚偽の回答をする場合があります。しかし、虚偽の回答では企業は効果的な職場改善ができません。

正直に答えてもらうためには、企業側は従業員に対して最大限配慮しなければなりません。ストレスチェック実施時には、「誰のために行われるのか」「実施の目的は何か」「結果は企業に伝わらない」「集団分析で職場環境の改善が期待できる」など、従業員に伝えるようにしましょう。

ストレスチェックの目的や、上司に伝わらないことがわかれば正直に答えてくれる方も増えるはずです。

ストレスチェック制度の費用

ストレスチェック制度の費用

ストレスチェック制度の実施には、費用がかかります。ストレスチェック制度の実施費用は、事業者が請け負うことになります。そのなかでも大きな割合を占めるのが人件費です。どの程度費用がかかるのでしょうか。費用の削減方法も解説します。

具体的な費用の考え方

ストレスチェック制度は、ストレスチェック実施方法や制度についての審議、質問票などの書類の準備、実施、実施後の高ストレス者の医師による面接指導、受検結果の集団分析など数多くの工程で成り立っています。

それぞれにコストがかかり、多くの工程を踏んでいると、医師や保健師などへの人件費の負担が大きくなります。

さらに費用が膨らむ原因の1つに、医師の面接指導を受ける費用があります。診断する医師にもよりますが1時間の面接で3~5万円程度かかるといわれています。

ストレスチェック制度にかかる費用を削減するには

費用を削減するために福利厚生費に含みましょう。ストレスチェックは健康診断と同様、会計処理する際は福利厚生費として損金に計上することが可能です。福利厚生費として計上するためには、すべての従業員が対象かつ社会通念上、常識と考えられる範囲の金額という2つの要件を満たしていなければなりません。

ですので、ストレスチェックの対象となる従業員全員に対して実施してもらえるようにしましょう。自社ですべてを実施するには費用がかかり過ぎる場合は、外部委託することも選択肢の1つです。

ストレスチェックの実施には厚生労働省のマニュアルを参考に

厚生労働省はストレスチェック制度を実施する方向けにマニュアルを発表しています。疑問点や不安な部分を解決するポイントが記載されているため、ぜひ参考にしてみてください。

参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

厚生労働省による「ストレスチェック制度」の要点まとめ

ストレスチェック制度は労働安全衛生法で実施が義務付けられているもので、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査方法のことです。押さえておきたいポイントは以下が挙げられます。

  • 実施者と実施事務従事者、面接指導をする医師を選定する
  • 1年以内ごとに1回実施しなければならない
  • 事業者は従業員の同意なしに結果を閲覧できない
  • 集団分析の結果によって適切な措置を行うよう努めなければならない
  • 高ストレス者から希望があった場合は面接指導を行わなければならない

ストレスチェックを実施する際は、これらの要点を抑え、詳細まで理解したうえで行うようにしましょう。

ストレスチェック代行おすすめサービス

ストレスチェックの実施はもちろん、結果から適切なソリューションを提案してくれるのが外部委託サービスを利用するメリットです。

ストレスチェック実施にかかる外部委託の費用の相場としては、様々な工数を入れて従業員1人あたり数百円ほど。ストレスチェック実施にかかわる外部委託サービスはいくつかありますが、ここでは4社を紹介します。

リロクラブ「Reloエンゲージメンタルサーベイ」

リロクラブ「Reloエンゲージメンタルサーベイ」

福利厚生パッケージサービス「福利厚生倶楽部」を提供しているリロクラブの「Reloエンゲージメンタルサーベイ」国が推奨する57項目を満たすストレスチェックに加えて、エンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査の要素を盛り込んだ設問で、個人だけではなく組織の状態がわかります(集団分析)。

さらには検査結果の分析から組織の課題を特定し、その課題に対する対策レコメンドや改善アクションを提示します。実際に導入いただき、メンタルスコアが改善した事例もございます。

料金
個別に御見積金額を算出します。お気軽にお問い合わせください。

NEC「メンタルヘルス対策支援システム」

NEC「メンタルヘルス対策支援システム」

NECの「メンタルヘルス対策支援システム」は、法改正に合わせてアップデートされ、いつでもストレスチェックが実施できる利便性の良さがあります。同社の職場環境改善活動支援システムと組み合わせることで、ヘルスケアソリューションが行え、会社独自の設問も設定可能です。

料金
・新規利用料:20,000円
・変更利用料:20,000円
・利用人数:100名以下の場合
スタンダード8,400円・プレミアム10,400円・セルフケア8,000円/月額

ケミカル同仁「iStress(アイストレス)」

ケミカル同仁「iStress(アイストレス)」

ケミカル同仁の「iStress(アイストレス)」企業ごとに専任の担当医師がサポートにつき、豊富な経験と知識に基づいてサービスを提供。従業員の氏名・メールアドレスといった個人情報を使用しないので、個人情報が保護され、担当者や従業員も安心してストレスチェックを実施できます。

料金
・基本利用料:10,000円(/事業所)
・ウェブ版価格:200円(/ 人)
・紙版価格:600円(/ 人)

ここむ「COCOMUストレスチェックサービス」

ここむ「COCOMUストレスチェックサービス」

ここむの「COCOMUストレスチェックサービス」ストレスチェックの専門家と職場のメンタルヘルス対策に精通する専門職によるチーム体制で、ストレスチェック制度有効化と職場環境改善を、総合的に支援しています。2011年のストレスチェック支援サービス開始以来、延べ1,500社(団体)以上の実績のあるサービスです。

料金
・基本利用料:20,000円 / 社
・ウェブ版価格:~300円 / 人
・PC/スマホ対応:~450円 / 人
・紙版価格:~600円 / 人

ストレスチェックに関する助成金

人材開発支援助成金とは?従業員のキャリア形成に役立つ制度

ストレスチェック実施に関する助成金制度は、ストレスチェックを実施し、従業員が医師による面接指導を受けた場合に、事業者が費用の助成を受けられるものでした。しかし、令和4年度よりストレスチェック助成金は廃止となっています。令和3年度申し込み分については、順次手続きをすすめているということです。

ストレスチェック助成金に代わる助成金はある?

厚生労働省では、「働き方改革推進支援助成金」を用意しています。ストレスチェック後の労働環境改善において、役立てることができるでしょう。

(1)労働時間短縮・年休促進支援コース 労働時間の短縮や年次有給休暇取得促進に向けた環境を整備する
(2)勤務間インターバル導入コース 勤務間インターバルを導入する
(3)労働時間適正管理推進コース 労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境を整備する
(4)団体推進コース 事業主団体において、傘下企業の生産性向上に向けた取組を行う

引用元:厚生労働省|労働条件等関係助成金のご案内

まとめ

メンタルヘルス対策は予防から!ストレスチェックの効果と実施方法

ストレスチェック制度の概要や必要性、注意点などについてご紹介しました。ストレスチェックの目的は、健康的で安全に働ける職場環境づくりです。従業員1人ひとりのストレスを軽減することで、仕事へのモチベーションがアップし、生産性も向上します。実施にあたっては、やることが多いので負担に感じる部分もあるでしょうが、得られるリターンも確実にあります。

ですが、ストレスチェック実施の義務は年に1回です。日頃から細やかなケアを行う頻度としては、低いと言わざるを得ません。そこで、重要視したいのが従業員の健康増進に役立てる福利厚生の充実です。

気分をリフレッシュする・向上心を満たす・体を動かす機会を作る…など、福利厚生に取り入れられる項目は多岐にわたります。

そこで、自社にとって必要な福利厚生を効率よく導入できる、リロクラブの福利厚生倶楽部のご利用をご検討ください。中小企業導入率No.1※の実績をもとに、最適なプランをご提案いたします。

※(株)労務研究所発行「旬刊福利厚生」 2022.06月下旬号掲載データより

ストレスチェックにおけるお役立ちリンク集

厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル

厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド

厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて

厚生労働省「数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法

厚生労働省「ストレスチェック制度実施規程(例)

厚生労働省「ストレスチェック制度関係 Q&A

労働者健康安全機構「ストレスチェック制度サポートダイヤル

厚生労働省「外部機関に委託する場合のチェックリスト例