働き方改革

カンパニー制と事業部制の違いとは?導入するメリットと運営ポイント

企業の組織形態のひとつにカンパニー制があります。迅速な意思決定が求められる現代、功を奏している企業も増えているようです。多様な事業を展開する企業の内部競争力の向上にも寄与しています。事業部制との違いを確認し、カンパニー制導入のメリットとデメリットを探ります。まだ賛否の渦中にあるカンパニー制ですが、運営していく上でのポイントにも触れていきます。

カンパニー制

2018年05月28日更新

RELO編集部

カンパニー制とは

カンパニー制
カンパニー制とは、企業の組織形態のひとつです。複数の事業を推進している企業において、その個々の事業を独立採算の形式で進めます。その事業ごとをひとつの会社のように位置づけて、各事業展開を行っていくのです。

企業は個々のカンパニーに対し、人材、物資、財政のすべてを委譲します。事業ごとの機能や組織力の底上げができ、企業全体の力を最大化できる経営体制として認識されています。

日本では、ソニーが導入したことを皮切りに、トヨタ自動車やみずほ銀行など多くの大手企業が導入に踏み切っています。トヨタでは、ランドクルーザーやプリウスといった製品軸でのカンパニー制がとられています。

一方で、NECや富士ゼロックスなどは、一度、導入したカンパニー制を廃止した経緯があります。つまり、すべての企業に適しているとは限らないため、自社の方針や事業と照らし合わせた十分な検討が必要だということです。

カンパニー制と事業部制の違い

カンパニー制
事業ごとに進める組織形態の中には、事業部制もあります。利益追求型で、法律上では同一企業内にあるという点では、この2つは共通しています。ここで、カンパニー制と事業部制の違いについて確認していきましょう。

事業部制は独立型ではない、という点がカンパニー制との大きな違いです。重要な意思決定、経営、人事に関する内容については、本社や企業全体の承認や意向が、常に絡んできます。外部(本社や企業全体)の判断を常に仰がなければ進められません。カンパニー制と比較すると、意思決定や判断スピードが劣ることになります。

カンパニー制の場合は、それぞれのカンパニーの裁量の範囲が広がります。たとえば、投資権、採用や配置などの人事の権限も譲渡されるのです。資金調達においても、資本金や借入金が事業ごとに発生し、本社から出される資金も区分されます。法的には社内計上扱いとなりますが、カンパニー制上は別会社扱いということです。

カンパニー制のメリット・デメリット

カンパニー制
では、カンパニー制のメリットとデメリットを見ていきましょう。

利益の増大、組織力の強化などの多くのメリットが見込めるのが、カンパニー制です。一方で、コストの増大や企業内交流の希薄化などのデメリットがあります。これらのデメリットは、現代企業が重要視している点とも重なるため、注意が必要です。カンパニー制には、短絡的に是非を断定できない面があることを認識しておきましょう。

責任の明確化

カンパニー制は、企業内の組織図がとてもシンプルになります。そのため、責任の所在も常に明確に保つことができるのです。

複数の事業の兼任や、ひとつの業務に複数の責任者がいる確率も下がります。たとえばマーケティングの場合でも、企業全体ではなく、製品ごとや事業ごとのくくりで責任が割り当てられます。企画、IT、メカニックなどすべての職種においていえることです。もちろん、各カンパニーのリーダー層においても同じです。

各責任者が、その事業における収益の拡大に必要なことに注力できる点もメリットでしょう。

状況に即した事業展開

カンパニー制においては、ひとつのカンパニーをひとつの組織として見ると、その組織は企業であるときの規模より当然小さくなります。これが組織の動きを身軽にするのです。変化の著しい世の中で、消費者やユーザーの動向やニーズに合わせた事業展開がしやすくなります。

事業展開の迅速化

何をするにも、本社や経営層の判断を仰がなければならないとき、たとえ承認が出たとしても、すでに遅かったとなることがあります。出遅れが、失敗に直結する時代になっています。

カンパニー制では、事業展開のための権限が完全に委譲されているため、意思決定を迅速に行うことができます。停滞や待機の時間を発生させることなく、事業を加速度的に進めていくことができます。

各組織力の向上

カンパニー制は、企業の中にいくつもの会社が存在しているような形態です。それぞれの会社同士が良きライバルとなり、競争意識が生み出されます。また、その事業に関するすべてを任されているという誇りと責任が、各組織の能力を向上させるようです。

経営視点を持つ人材の確保

独立採算となるカンパニー制では、各事業において経営視点が必要となります。経営を疑似体験していく人材が増えることで、個人も組織も能力を高めていくのです。

また、経営視点で自分の仕事を考えていくことは、企業や仕事に対するエンゲージメントの向上にも寄与するものと考えます。

事業重複によるコスト増大

企業内にある事業を独立的に進めていくため、それぞれにひとつの会社のような様々な機能が必要です。業務だけでなく、財務や人事などあらゆる側面に必要な人、モノ、カネが出てきます。

独立させていなければ同時に並行活用することも可能ということを考えると、コストはかさむでしょう。

企業全体の交流の希薄化

各事業が独立して業務を進めるため、事業同士が連携をとることは少なくなります。ひとつの企業でありながらも、技術共有や人事的交流、情報交換による新たな価値の創出や成長機会は得られにくいでしょう。また本社とカンパニーの交流も弱まりやすいことにも注意が必要です。

カンパニー制を運営するポイント

カンパニー制
すでに導入している企業も、それぞれ試行錯誤で進められているようです。カンパニー制の導入は、大きな経営改革となるため、大企業におけるその効果や方策が注目されているところです。カンパニー制をうまく運営していくためのポイントを見ていきましょう。

リーダーの育成

カンパニー制を導入する場合、それぞれの事業を担うリーダーの育成が欠かせません。経営視点を醸成するためにも、基礎知識や手法を教育していく必要があります。さらに、ひとつのカンパニーの裁量範囲が広くなるため、その中の個々の社員にもリーダーシップが求められます

リーダーシップは、この体制の中で経験を積むことで培われる能力であり、それがカンパニー制の目的でもあります。しかし、本社がバックアップやサポートとして、リーダーシップ教育などで支援していくことも必要なのです。

業績や人材管理などの評価基準の設定

カンパニー制は、成果主義観点の強い取り組みです。そのため、業績に対する評価基準は、全社レベルで明確にしておく必要があります。とくに、カンパニー同士の事業が異なる場合でも、皆が納得できる評価の仕組みが必要です。競争力を高める上でも必要なこととなります。

本社が主導して、各カンパニーの目標を集約し、その進捗や達成度を全社で共有することをおすすめします。それにより、評価の公平性を保つことができるはずです。したがって、各カンパニーに明確な目標を掲げさせることも重要なポイントとなるでしょう。

カンパニー間の交流

カンパニー制は、成熟するほど、カンパニー間の交流や連携を必要としなくなります。それぞれのカンパニーで完結できることが増えていくからです。これは、組織力が高まった証ともいえるのかもしれません。

しかし同時に、のちのイノベーションを生み出すような有益な情報交換が行われる機会も減少することになります。企業全体の統制が、より難しくなっていく可能性があるというのもカンパニー制の一面です。これらを認識した上で運営していくことが大切です。

関連するキーワード