成功者に共通するグリットとは?やり抜く力を鍛える方法

成功者に共通するグリットとは?やり抜く力を鍛える方法

「グリット」という言葉が注目されています。グリットとは端的にいえば、やり抜く力のことです。ここでは、人の成功とグリットとの関係性を紐解いていきます。ビジネスや教育における人の育成を考えるときにも、このグリットの存在は、無視できないもののようです。グリットは、いつからでも鍛えることができます。グリットを鍛えるには、どのような行動や考え方が有効なのかを解説します。自らのグリットを鍛えることはもちろんのこと、部下や後輩、チームメンバーのグリットを高める際の参考にしてください。

グリットとは?

グリットとは?
グリット(Grit)の日本語訳は、「勇気」「気骨」「胆力」などです。今注目されているグリットとは、(それらの意味も含んで)何かを成し遂げるために粘り強く、どんなに長い時間がかかっても最後までやり抜く力のことをいいます。

今まで研究者たちは、人が成功するために必要な要素は何かという論議が繰り返してきました。必要なのは才能やIQだという説もあれば、努力だという説もありました。研究者たちは、成功者がもつ能力の共通項を探ることで、成功に必要な要素を発見しようと試みてきました。

そのような中で、心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース氏が、成功に必要な要素はやり抜く力であるという「グリット理論」を提唱しました。このことが、グリットが注目されるきっかけとなったのです。

グリットと成功の関係

グリットと成功の関係
心理学者アンジェラ・リー・ダックワース氏は、成功要因は何かという研究に取り組んだ一人です。彼女は経営コンサルタントから教師に転職します。数多くの生徒を指導し、評価をする段階で彼女はあることに気付きました。

  • 成績上位の生徒が必ずしもIQが高いわけではないこと
  • 成績が下位の生徒が必ずしもIQが低いわけではないこと

この気付きから、できるようになること(成功)にIQ数値は関係がないという仮説を得たのです。

その後、ダックワース氏は心理学者となり、複数の専門的な調査と研究によってその仮説を検証します。研究や調査の対象となったのは、以下のような人たちです。

  • 軍事教育学校の入隊者のうち、厳しい訓練に耐え切る人と中途退学する人
  • 英単語スペル暗記大会(スペリング・ビー)で勝ち残る生徒たち
  • 過酷な環境の中で働く教育現場の先生
  • 一般企業の営業担当者

このような分野の違う人について研究した結果、成果を出す人(成功する人)にある共通点を見出しました。その共通点が、やり抜く力でした。そして成果を出す人(成功する人)=やり抜く力「グリット」が高いという結論に行き着きます。逆に、成功を左右するものは、学歴、家庭環境、外見、IQ、身体能力、天賦の才能などではないということが分かったのです。

グリットが心身にもたらす影響

グリットが心身にもたらす影響
グリットは、心理や身体との関係も深いことが研究で明らかにされています。悲観主義者か楽観主義者か、健康かそうでないかということが、グリットとどのようなつながりをもっているのかをみていきましょう。

楽観主義者のほうがグリットが高い

悲観主義者よりも楽観主義者のほうがグリットは高いという研究結果が出ています。物事を悲観的に捉えやすい人よりも、楽観的に捉える人のほうが、持久力があるのでやり抜けるようです。楽観的に捉える人は、障害があっても「なんとかなるさ」「他にも方法はある」と考えることができ、成し遂げたいことに向かい続けられるのです。

逆に悲観的に捉える人は、その心理プロセスの中で無力感を学んでしまうのだそうです。その無力感が、まだできないことにチャレンジすることや、到達のための行動の継続を難しくします。

グリットが高い人のほうが健康

多くの調査や研究の結果で、グリットが高い人のほうが、より健康であるということもわかっています。グリットが高ければ、達成を経験します。達成を積み重ねることで自己の能力を高めていけます。その実感が自己肯定感を高め、心を健康にします。

プロセスの中でも、達成の瞬間を味わいます。この小さな達成感、幸福を感じる頻度が高いことも心の健康に影響していくようです。心の健康を維持する行動を習慣化することが、結果的に身体の健康維持に寄与すると考えられます。

グリットを鍛える方法

グリットを鍛える方法
グリットは、特定の才能のある人だけに与えられた能力ではありません。誰もが鍛えて伸ばすことのできる能力です。それではどのようにしてグリットを鍛えていくのかを紹介します。

グリットスケールでグリットを測定する

グリットを高めたいとき、まずそもそもどれくらいのグリットをもっているのかを知る必要があります。それを簡易測定できるのが、「グリットスケール」です。

10個の質問について、1から5までの数値で評価し、その平均スコアを出していきます。10問中5つが情熱を測る質問で、残りの5つが粘り強さを測る質問です。質問に答えることで、自分のことをどうみているかに気付くこともできるでしょう。これが、グリットの強弱に関係してくるものかもしれません。

当てはまる箇所の数字にマルをつけていき、合計して10で割った数値=グリットスコア

表_グリット

出典:「やり抜く力 GRIT(グリット)」アンジェラ・ダックワース(著)/神崎 朗子(翻訳)

※情熱を測る質問=奇数の質問(1,3,5,7,9)
※粘り強さを測る質問=偶数の質問(2,4,6,8,10)

日々の目標を立てる

日々の目標を立て、毎日取り組んでいくことでグリットは鍛えられていきます。目標は、行動のきっかけをもたらすものです。日々取り組むことは小さなことでも構いません。

ただ、数日で達成できてしまうものよりも、目標値は、数ヶ月や数年といった長い期間を要するもののほうがグリットを鍛える上では有効のようです。

難しいと思える目標を掲げ、それを細分化して日々の目標に落とし込みます。日々の目標を掲げることで、毎日の目標に対して達成感を味わうこともグリット強化をサポートするでしょう。

良いプロセスをみつける

何かを成し遂げたいとき、それを達成するための方法はひとつではないはずです。

ひとつのやり方に固執すると、もし間違ったやり方だった場合、いつまでたっても目標を達成できないでしょう。自分に合わない方法を続けると、常に苦痛が伴ってしまいます。ただただ継続することだけに視点を向けると、この状況に陥りやすくなります。

続けることは大切ですが、グリットを高めるには達成経験がとても重要です。他の方法を探ったり、今の方法をより良くする視点をもち、方法を切り替えることができる柔軟性も必要です。

さまざまな方法の可能性を探るレベルにない段階であれば、人から教わり学びます。教わったことを実践すると、いろいろな術があることや、やり方は工夫できるということを経験できます。これにより、自分に合う、やりやすい、面白い方法を模索する習慣がついていくでしょう。このスキルは、グリットが必要などんな場面にも応用できると考えます。

楽観視トレーニング

グリットを鍛えるには、物事を楽観的に捉えるマインドをもつことも役立ちます。前述しましたが、グリットの高い人は、楽観主義者に多いです。楽観的に捉えなければ、行動に移せないことばかりになってしまいます。「やってみよう」「やってみなければわからない」と思えるマインドセットは必須です。

うまくいかないときに、楽観視できるか、悲観視するかでその後の行動が変わってきます。楽観視は無理にポジティブに考えることではなく、ニュートラルに保つことです。うまくいかなかったという結果は結果としてニュートラルに受け入れて切り替えることです。無理にポジティブに考えようとすると、心が疲れてしまいます。

やってもうまくいかないこともあるけれど、やってうまくいくこともある。

このような考え方で行動をしていく中で「やってみたらうまくいった」という経験をして、その経験がグリットを支え、同時にグリットを鍛えていきます。はじめから100%成功することも100%失敗することもありません。何かを成し遂げるということは、必ず成功するからやる、失敗の可能性が高いからやらないということではなく、決めたことに対してやり抜けるかどうかではないでしょうか。