人材・組織開発

企業が注目するグローバル人材|社内での育成方法・採用のポイント

ビジネス環境のグローバル化が進み、社内にもグローバル人材が必要になっています。企業が求めるべき本当のグローバル人材とはどのような人材を指すのでしょうか。グローバル人材の本質と勘違い、政府が進める施策、現状の問題点や課題を探ります。またグローバル人材の育成方法、実際に採用や育成を進めている企業を紹介します。

グローバル人材

2018年07月25日更新

RELO編集部

グローバル人材とは?

グローバル人材
グローバル人材とは、どのような人のことを指すのでしょうか。国内外でそれぞれの視点から、さまざまに定義されているようです。まずは、政府の各省や機関が定める定義を紹介します。

政府が定めている定義

文部科学省

「グローバル人材育成推進会議」では、グローバル人材を以下のように定義しています。

世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間

参考文献 産学官によるグローバル人材の育成のための戦略|文部科学省

総務省

総務省は、以下のように定義しています。

日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材

参考文献 グローバル人材育成の推進に関する政策評価|総務省

提唱された背景

これらグローバル人材の必要性が提唱される背景には、いくつかの要因が挙げられます。ひとつは、少子高齢化によって人口が減少していることです。

国際競争が激化している中で、すでに日本は「労働力」を人の数で創出することが難しくなっています。さらに、国民の数が減少することは、国内における市場も縮小することとイコールです。海外市場を視野に入れなければならない状況の中、グローバルな舞台で成果を上げる力が必要なのです。

この状況にあって、日本人一人ひとりの「世界で活躍できる力」の不足が顕在化しているようです。だからこそ、「グローバル人材」という言葉や概念が、国家レベルで生まれていると考えます。

日本でも組織のダイバーシティ化(人材の多様性)が進んでいます。国内における性別、年齢、働き方などの多様化だけでは、もはや十分ではないでしょう。グローバルに視点を広げたダイバーシティによって、世界のステージでその多様性を活かす必要性が高まっています。

グローバル人材の必要性

グローバル人材
日本市場の縮小によって、海外展開を行う日本の企業は増えています。必然的に、共に働く仲間や顧客が外国の人となる確率も高まるでしょう。海外とのやり取りが増える以上、グローバル人材の存在は不可欠となります。

海外展開しようとすること自体は、どの国でも可能かもしれません。しかし、大切なことは、

  • 現地で自社の存在意義を理解してもらい協力者や従業員を集めること
  • 市場に受け入れられる商品やサービスを提供し理想の成果を上げること

これまでの日本国内での成功法則は通用しない、と考えるのが妥当でしょう。なぜなら、海外の国や人は、日本や日本人とは異なっているからです。たとえば、歴史、文化、習慣、宗教、気候、言語は明らかに異なります。それによって、人々の個性や価値観、考え方、趣向、生活スタイルも変わります。つまり、市場のニーズも仕事の進め方も違ってくるということです。

このことを理解した人材が仕事に携わらなければ仕事は進められず、成果を狙うこともできません。海外を視野に入れるビジネスを成功させようとする場合、この視点をもった人材を欠かすことはできないのです。

「グローバル人材」に関する勘違い

グローバル人材
日本は、歴史的にも地理的にも、他の国に比べてグローバル環境に遠かった背景があります。経済的にも技術的にも国内でまかなえることが多かったため、海外との接点が少なかったのです。

いざ、グローバル展開をしようとしてグローバル人材が必要になった企業でも、その観点に疎さが見られるようです。グローバル人材についての認識の勘違いがよく見られます。

たとえば、海外留学などでの海外経験があるだけでグローバル人材と見なされることもあります。確かに、海外の文化や生活に触れていることはアドバンテージになるかもしれません。しかし彼らが関わった部分というのは、グローバル人材の本質から見ると、ごく一部の世界なのです。また、彼らはビジネスに関わっていないということも認識しておく必要があります。

また、TOEICなどの英語力テストのスコアが高ければ、グローバル人材と見なされることもあります。確かにグローバル人材には語学力も必要とされます。しかし、言語はコミュニケーションのツールでしかありません。

注意しておきたいのは、英語力の問題ではないということです。言葉は「人」次第で変わるものです。どんなに語学力が高くても、相手を理解する能力に欠けていれば、仕事は進められません

中小企業におけるグローバル人材の確保

グローバル人材
海外展開を行う(必要となっている)企業は大企業ばかりではありません。中小企業においても、企業の生き残りや事業拡大をかけてグローバル人材を確保することは重要な課題です。少子化による採用難が続く中、外国人留学生や国外からの人材の受け入れも活発化してきています。

グローバル人材といっても、求められる能力やスキルの程度は、業界、企業、職種や役割によって異なります。グローバル人材とくくるよりも先に自社がそのポジションに求める人物像と適正や個性、スキルともに明確にしておくことが大切です。

グローバル人材に求められるスキル

グローバル人材
では、グローバル人材に求められるスキルを見ていきましょう。

コミュニケーション能力

第一に挙げられるのは、コミュニケーション能力でしょう。ここに英語力(もしくは関わる国の現地語の能力)も含まれることになります。しかし、語学力が高いだけではビジネスでの成果を出すことはできません。

日本国内で、日本語をフル活用してビジネスを展開している企業を考えるとわかりやすいと思います。日本語に不自由しないすべての企業が、高い業績を上げているわけではありません。相手の文化、習慣、価値観を理解し、協働し、交渉し、成果につなげるコミュニケーション力が必要なのです。

具体的な仕事レベルでは、電話、メール、交渉、プレゼン、ミーティング、報連相(報告・連絡・相談)などもあてはまります。また、現地のマナーに沿えるということも大切です。伝えるべきことをしっかりと伝えられ、折り合いをつけたり、相手を動かしたりする力が必要です。

異文化への対応力

日本の文化や習慣は、とても特徴的だといわれます。日本人としての自分たちがもつ価値観や習慣を「常識」と思い込む傾向も高めです。しかし海外には、海外なりの「常識」が存在していることを受け入れる力が必要です。もちろん、どちらが「正」でどちらが「誤」という問題ではありません。

自分たちと違うことに対して「否定しない」「避けない」などの能力が前提として必要になってきます。その上で、違いを受け入れて人や組織が前進するための対応をとれる力が必要なのです。

主体性・積極性

現代のビジネスシーンは、世界的に見通しが立てにくいという特徴があります。そのような中で、自ら考える主体性は欠かせません。

自らが考え、いかに早く行動に移せるかが企業の成果を左右する時代です。失敗を恐れず、積極的にトライし、たとえ失敗しても失敗を糧にして成長につなげるくらいのタフさも必要でしょう。失敗と成功を繰り返す中で、深く分析し、新たな課題を見つけ、行動の精度を上げることが求められます。

政府が進めている施策の事例

グローバル人材
グローバル人材の育成に向けて、政府が進めている施策を紹介します。

外国語教育の強化

外国語活動・外国語教育の教材整備、外部試験団体と連携した英語力調査などが行われています。スーパーグローバル大学事業への支援も強化されています。

外国人材活躍推進プログラム

グローバル展開や、外国人の採用を検討する企業向けの外国人活用セミナーや外国人材に特化した就職マッチングイベントなどが開催されています。外国人材を採用する企業に対する助成金も策定されています。

グローバル人材を巡る問題点・批判

グローバル人材
ITの発展により、海外展開の機会や必要性が高まり、グローバル化はどんどん広がっています。そこに、日本におけるグローバル人材の供給が伴っていないことが問題視されています。

グローバル人材を育成する体制も整っていないのが現状です。海外に対する順応性や柔軟性を培っていないのに、語学力や海外経験のみで採用しなければならない状況が続いているようです。

このような視点での採用が続いてしまうと、本来、語学や海外経験のみでグローバルステージでの仕事をこなしていけるわけではないにもかかわらず、求職者に語学力や海外経験ありきの採用と思わせてしまうのではないでしょうか。

企業が確かな「グローバル人材」についての認識をもつ必要がありそうです。

グローバル人材の育成方法

グローバル人材
グローバル人材を育成しようとするとき、どんな内容や方法が有効になるのでしょうか。

グローバルマインドの醸成

グローバルステージでは、あらゆる違いに巡り合います。和を重んじる日本人は、その違いの渦に翻弄され、自分の軸を見失うことが少なくありません。広く知りそれを活用することは大切ですが、まずは、ぶれない軸をもっておくことが前提となります。

グローバルコミュニケーション力の強化

異文化を知り、理解する能力をもってコミュニケーションしていくことが大切です。多様性を受け入れ、共存する方法を知って、磨いていく必要があります。伝えたいことをはっきり伝えるため、また聞くべきことをしっかり汲み取るために伝達や傾聴のグローバルスタンダードな方法を知る必要があるでしょう。

グローバルマネジメント力の構築

異文化組織のマネジメントでは、相手を理解した上でのフィードバックが重要となります。日本に浸透したマネジメントスタイルは、世界的には特殊な性質をもつため、他国では機能しにくい傾向にあります。

押し付けることなく、メンバーの価値観や習慣に合わせてマネジメントする配慮も必要になります。この視点をもっておくだけでも、言動や指導方法は変わってくると思います。

実際にグローバル人材を採用・活躍している企業例

グローバル人材
グローバル人材を育成し、活躍につなげている企業を紹介します。

花王

花王は、グローバル研修体系として花王クリエイティビティ・キャンプを導入しています。世界で行われている研修体系を分析して、経営戦略に沿う独自の育成プログラムを構築しています。ダイバーシティ、コンフリクト、ファシリテーションなどの研修の成果も上がっているようです。

武田薬品工業

武田薬品工業は、M&Aによって組織の多様化を図り、グローバル人材の育成につなげています。2007年度より、世界的に評価の高いビジネススクールであるINSEADとの連携のもと、海外の従業員も含めたグローバルリーダー育成プログラムを実施しています。

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