現在の日本企業における男性の育児休業の取得率は、諸外国と比較してとても低いです。
日本では、もともと育児は女性がするもの、という考えが染み付いていることもあり、なかなか男性の育児休暇の取得率は上がっていません。男性としても「育休は取りたい。でも仕事もおろそかにできない」という思いから、なかなか取得できていないのが現状です。
そこで今回は、男性の育児休業取得率について、世界との差、取得率が低い原因から普及させる方法まで、幅広く紹介します。

男性従業員の育児休業の取得率

企業に勤める男性従業員には、育児休業を取得する権利があります(育児・介護休業法)。しかし、実際にはあまり取得できていないのが現状です。

厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、育児休業を取得している割合は、女性が82.2%なのに対して男性は6.16%と、ほとんど取得できていません。

取得率は、2016年10月1日から2017年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性が対象で、2018年10月1日までに育児休業を開始した割合です。

つまり、妻が出産してから約1〜2年の間に育児休業を取得している男性は、日本でわずか6%ほどという結果になっています。このデータを見ただけでも、いかに男性従業員が育児休業を取れていないかが分かります。

しかしながら、男性の育児休業取得率は少しずつですが上昇しています。そして企業によっては、男性の育児休業の取得率が大幅に改善しているところもあります。

昔ながらのイメージを払拭するために、日本では男性の育児休業を促進する活動も少しずつですが推し進められています。

近年の育児休業取得率

上記では、2018年度においての男性の育児休業取得率は低いということでしたが、実は前年比でみるとかなり伸びています(前年比1.02ポイント上昇)。

平成30年度雇用均等基本調査(速報版)にある「育児休業取得率の推移(男性)」を見ると、

  • 2017年度:5.14%
  • 2016年度:3.16%
  • 2015年度:2.65%

と徐々に上がってきてはいるものの、低い数値です。

近年では、「イクメン」という言葉が生まれたり、女性の社会進出などで男性の育児休業の取得に前向きな考えが拡大しています。

またフリーランスなどの個人事業主は、この結果に含まれていません。そのため、実際に育児休業を取得している男性は、この結果よりも多いことが推測できます。

今後はさらなる普及を目指して、国や企業が新たな施策や方針で、男性の育児休業取得にさらなる追い風となることが期待されています。

日本と海外の差

ここで日本と海外で、どれくらい育児休業の普及に差があるか見ていきましょう。

10年以上前のデータなので少し古いですが、厚生労働省の「諸外国における育児休業制度等の取得率」によると、世界各国の育児休業制度等の男性の取得率は、

  • 日本:1.6%(2007年データ)
  • ノルウェー:89%
  • スウェーデン:78%
  • オランダ:18%
  • ドイツ:18.5%
  • イギリス:12%

といずれも日本よりかなり高い取得率です。

もちろん国によって制度の内容や期間、対象者の条件などは異なるため厳密な比較はできませんが、日本と海外ではここまでの差があります。

近年になって女性の社会進出が浸透しつつある日本と、女性の社会進出が当たり前である海外では、10年以上も前から男性の育児休業取得率に大きなギャップがあります。

世界で最も育児休業の取得率が高い国は?

世界で最も育児休業の取得率が高いと言われている国は、ノルウェーです。男性の89%が育児休業を取得しています。女性は94%が育児休業を取得しています。

ノルウェーの育児休業には、パパ・クオータ制という制度が導入されています。これは、子どもが生まれた夫婦が育児休業を取得する際に、父親も何週間か育児休業を取得する必要がある制度です。

制度が導入された1993年には、最大54週間のうち4週間は父親が育児休業を取得しなければなりませんでした。時代を追うごとに、4週・10週・12週・14週間と父親が育児休業を取得する条件が増えています。この制度は政権交代などにより議論され、毎年改訂されています。

ノルウェーでは平等と個人主義の考えが強く、納税義務に関しても夫婦で別々です。女性の社会進出も当然のように進んでおり、大企業の取締役や閣僚などの高い地位で活躍している女性も多く見られます。

これらのことから、育児休業の取得に関しても、男女格差なく推進されているのではないでしょうか。

男性が感じる、育休が取りづらい原因

日本では、男性が育休を取りたいと思っていても、なかなか取りづらいのが現状です。その原因について、いくつか説明していきます。

職場に迷惑をかける

職場で自分が抜けると他のメンバーに迷惑がかかるため、育休が取りづらいことがあります。抱えている仕事が大きく、責任感のある仕事であればあるほど言い出しにくいでしょう。

しかも、周りの従業員が同じ状況で育休を取得していない場合、「自分だけ休みをもらってもいいのか」という気持ちになります。他人に気を使うことが多い日本人には特にありがちな思考です。

仕事に復帰できるか不安

たとえ育休を取得できたとしても、休み明けに現場に復帰できるのか不安になる人も多いです。

自分が抜けている間は、別のメンバーが業務を担当していたり、新しく人員補充をする可能性があります。そのため自分が仕事復帰したときに、職場に居場所があるのかと心配になるようです。

また「現在している業務に復帰できるか」という不安もありますが、「今後の昇進に響くのではないか(マイナスに働くのではないか)」という懸念もあります。

本来、育休を取得したからといって、企業からの評価が変わるものではありません。しかし、無理やり育休を取ることでチームワークを乱すようなことがあると、評価に関係することがあります。

この場合は、育休というより企業と本人との間の関係性悪化が原因でしょう。できるだけ企業側と話し合って、双方納得した上で育休を取ることがベストです。

収入が減少する

育休を取得すると、収入が減少することに不安を感じて、なかなか踏み出せないケースもあります。子どもが生まれることで、今後はさらに家計の出費が増えるわけですから、収入は極力減らしたくない気持ちは理解できます。

子どもが生まれる前から、貯金をしていたり生活費を見直したりと事前にしっかりとした計画を立てていれば、育休による収入面の不安も減ります。

また、育児休業中には育児休業給付金を受給することができます。次の章では、育児休業の期間と育児休業給付金について、説明していきます。

育児休業の期間と育児休業給付金

育児休業は、基本的に1歳未満の子どもを育てるための制度です。つまり、子どもが1歳になるまでの期間内に育児休業は取得できます。また、さまざまな特例があり、最長で2歳になるまで育児休業が取得できる場合もあります。

育児休業の期間

原則としては、子どもが1歳になるまでです。女性の場合、出産してから8週間は産休で休むことになるので、それ以降から子どもが1歳になるまで育児休業を取得することができます。

男性の場合も同様に、子どもが1歳になるまで育児休業を取得することが可能です。女性との違いは、子どもが生まれた日から育児休業を取得できます。

育児休業を取得して、なおかつ子どもが保育所に入所できないなどの理由があれば、1歳6ヶ月まで、育児休業を延長することができます。さらに、子どもが1歳6ヶ月に到達する時点でも、同様の理由で最長で2歳になるまで育児休業を延長することができます。いずれの場合も、延長するには事業主に申し出が必要になります。

また、「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。この制度は、両親がともに育児休業を取得する場合、通常子どもが1歳になるまでの期間を、1歳2ヶ月まで延長することが可能です。

育児休業給付金

育児休業中に給料が支払われないなどの条件を満たす場合には、
「休業開始時賃金×支給日数の67%」
の育児休業給付金が支給されます。

また、育児休業の開始から6ヶ月経過後からは、
「休業開始時賃金×支給日数の50%」
の育児休業給付金が支給されます。

詳しい計算式は割愛しますが、要するに「直近6ヶ月の給料の平均」の67%(または50%)が毎月支給されるということです。
※ただし、上限額が決められています

例えば、1ヶ月の給料が平均20万円の場合、
20万円の67% = 13.4万円
が育児休業給付金でもらえる1ヶ月あたりの金額です。

6ヶ月経過後は、
20万円×50% = 10万円
になります。

ちなみにこの場合の給料とは、社会保険料などが差し引かれていない額面上の金額です。育児休業中は、社会保険料の支払いが免除されます。

また、育児休業給付金は非課税ですので、翌年の社会保険料が減少するなどのメリットもあります。

男性に育休を取得してもらうメリット

男性に育休を取得してもらうことで、企業のイメージアップにつながります。冒頭の調査データにもあったように、育休を取得している男性の割合は少ないです。

そんな中、「男性も育休が取れる企業」は世間的にも好感がもてますし、社内で働いている従業員にも、帰属意識が芽生えます。特に、これから子どもをもちたい男性従業員にとって、育休を取得できることが分かれば今後の不安を軽減させることが可能です。

子どもが生まれるという大変な時期に、企業側が育休などでサポートしてくれることで恩を感じる従業員も出てくるかもしれません。それにより、従業員のモチベーションアップなどにもつながります。

そして、働いている男性従業員だけでなく、その家族からの間接的なイメージアップにもなるでしょう。

厚生労働省が定める助成金制度

育児休業の取得率アップのため、厚生労働省は企業に対してさまざまな助成金制度を用意しています。知らない企業も多いようですので、育児休業を促進するために上手く活用しましょう。

両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

男性労働者が連続した育児休業を

  • 中小企業なら5日以上
  • 中小企業以外は14日以上

取得した際に受け取ることができる助成金です。

また、子どもの出生後8週間以内に育児休業を開始する必要があります。

1人目の支給額は、

  • 中小企業が「57万円」
  • 中小企業以外が「28.5万円」

です。

2人目以降は、休業取得日数に応じて支給額が変わります。

中小企業の場合

  • 育児休業5日以上14日未満だと「14.25万円」
  • 育児休業14日以上1ヶ月未満だと「23.75万円」
  • 育児休業1ヶ月以上だと「33.25万円」

中小企業以外の場合

  • 育児休業14日以上1ヶ月未満だと「14.25万円」
  • 育児休業1ヶ月以上2ヶ月未満だと「23.75万円」
  • 育児休業2ヶ月以上だと「33.25万円」

この助成金は、1事業主に対して1年度10人までです。さらに、男性従業員を対象とした、「育児休業制度の利用を促進するための資料等の周知・研修等」の実施が必要になります。

両立支援等助成金(育児休業等支援コース) ※中小企業のみが対象

両立支援等助成金は、さまざまなプランがあり、育児休業取得時から職場復帰後や、その間の代替要員についても支給される制度があります。

育児休業の取得時、職場復帰時

中小企業が「育休復帰支援プラン」を作成し、そのプランに沿って労働者に育児休業を取得、職場復帰させた場合に助成金を受け取ることができます。

支給額は、育児休業取得時や職場復帰時ともに「28.5万円」です。実施する対象者には、3ヶ月以上の育児休業を取得させる必要があります。

1事業主に対して無期労働者1人、有期労働者1人の合計2人まで受け取ることが可能です。

代替要員の確保時

中小企業が、育児休業取得者の代替要員を確保し、取得者を現職等に復帰させた場合に助成金を受け取ることができます。

支給額は、労働者1人あたり「47.5万円」です。また、有期契約労働者の場合「9.5万円」が加算されます。

この助成金は、1事業主に対して1年度10人までです。

これらの助成金について詳しい内容を知りたい方は、以下の厚生労働省のホームページをご確認ください。

男性の育休取得で懸念される問題点

男性従業員が育休を取得することで、懸念される問題点がいくつかあります。

まず労働力の減少です。特に、重要な業務を任されている男性従業員が抜ける場合は、フォローに回る他のメンバーへの負荷になります。新たに代替要員を確保したとしても重要な業務ゆえに、円滑に業務を遂行できるまで多大な時間がかかるでしょう。

そのため、育休を取得した男性従業員が復帰するまでは、今までよりもコストがかかり業務においてのトラブルやミスも増えることが予想されます。

また、従業員同士の価値観の違いから職場の空気が悪くなることも挙げられます。例えば、男性の育休について理解がない上司や、業務のフォローについたメンバーの不満増加などです。

これらの不満は、育休を取得した男性従業員の職場復帰後にも継続される恐れがあります。

男性が育休を取得しやすくするためには?

日本において、まだまだ男性の育休取得は普及されているとは言い難い状況です。そのため、男性が育休を取得しやすくするためには、企業側からアプローチをかける必要があります。

まずは男性の育休取得について社内で周知する機会を設けましょう。育休という名前自体は知っている従業員が多くても、その実態について理解している従業員は少ないです。

育休を取得しようと思っていても、給料の減少や職場の人間関係などを気にして、なかなか取得に踏み切れない男性もいるでしょう。

そういった男性従業員のために、育休の取得から職場に復帰する流れについて説明する場を設けます。また育休時の給料、または給付金や復帰後の待遇など、特に不安に思っている部分の説明も重要です。

定期的に説明する場を設けることで、企業が育休に対して前向きであることや従業員の理解度アップにつながります。

もちろん、社内での体制を整えておく必要もあります。
具体的には、

  • 業務の引き継ぎ
  • 補充要員や労働力の確保
  • 育休取得者の職場復帰後のフォローアップ
  • 育休制度の担当者への教育

などです。

男性の育休取得を推進するためには、企業側の前向きな検討も重要になります。

復帰した男性従業員への対応

育休から復帰した男性従業員への対応は、非常に繊細な問題です。なぜなら、復帰前と復帰後では、社内の環境の変化や本人のブランクにより状況が変わっているからです。

特に気をつけなければならないのは、復帰した男性従業員と企業側の意識のずれになります。

例えば、復帰した男性従業員が以前と同じような業務を求めているにも関わらず、企業側がブランクを考慮してあまり仕事を与えないといった意識のずれです。復帰した本人からすると、少し仕事をして勘を取り戻せれば、いつでも以前のように働けると思うことがあります。

しかし、企業側からすると以前のように働けるか不安な部分もあり、以前とは状況が違えば仕事を振りにくい場合もあるでしょう。

逆に、復帰後も育児などで残業が難しい男性従業員に対して、企業側は時間外労働も含めて以前のように働いて欲しいと思っているケースも見受けられます。ですが、育休明けの従業員には無理なく育児と仕事を両立するための権利があるため、無理をいって時間外労働をさせないように注意しましょう。

また、企業側が男性従業員に配慮をして、良かれと考えて勤務地を本人に確認することなく変えてしまうケースもあるようです。育児のことを加味して、自宅から近い勤務地に配属するといったケースです。

育児のこともあり、自宅から近い勤務地に異動することは、復帰する男性従業員にとっては嬉しい場合もあります。ですが、人間関係などの都合もあり、必ずしも喜ぶとは限りません。異動を検討している場合には、本人に必ず事前に確認をとりましょう。

男性の育休取得を推奨する企業の事例

最後に、男性の育休取得を推奨している企業の事例を紹介します。これから育休制度に力を入れようと思っている企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

大同生命保険

大同生命保険では、2014年度の男性の育休取得率はなんと100%にも上っています。この取得率の背景には、子どもが生まれた男性従業員に対して人事総務部から本人と上司に個別連絡を行う、上司からも育休の取得について声がけをするなどの活動があります。

社内報にも、在宅勤務で働いている従業員の実例を紹介したりと、社をあげて育休の取得を促進しています。

また、それに伴い社内制度を見直し、所定外労働の削減や仕事のスリム化を実施。これらの試みにより、育休取得率が100%になり、かつ従業員一人あたりの月平均残業時間も55%減少するなどの効果が得られています。

社会福祉法人桔梗会

介護業界でありながら、こちらの企業では2010年度以降の男性の育休取得率は100%を誇ります。介護といえばハードな職場環境というイメージを払拭し、優秀な人材の採用や定着を実現するために、従業員の子育て支援に力を入れているようです。

特に注目したいところが、育休からの円滑な職場復帰に向けた支援体制です。育休を取得している従業員には、定期的に職場を訪れてもらい、現場の様子がどう変わっているかの情報交換を行います。

また、業務分担の見直しの相談や、育休取得者本人からの業務軽減などの要望を聞き、スムーズな職場復帰に配慮しています。これにより、男性の育休取得率100%につながり、業界のイメージアップに貢献しています。

その他にも桔梗会では、有給休暇の取得促進や時間外労働の削減など、よりより労働環境の改善に勤めています。