
マネジメントとは何か?社内でマネジメントができる人を育てるには
マネジメントとは、組織内の人材やリソースを効果的かつ効率的に活用して、望む成果や目標を達成するための活動を指します。
管理業務はもちろん、リーダーシップと密接に関わることも多く、組織が社会的役割を果たし、チームのメンバーがやりがいを感じられる環境を作る意味合いも含みます。
組織の成功には効果的なマネジメントが不可欠です。
しかし、マネジメントの本質を理解し、実践できる人材を育成することは容易ではありません。
この記事ではマネジメントの基本的な考え方や役割について解説します。
組織がマネジメントを行う社員を育てるためにできることをまとめました。
目次[非表示]
- 1.マネジメントの基本概念
- 1.1.マネジメントとは
- 1.2.ドラッカーが提唱するマネジメント
- 1.3.リーダーシップとの違い
- 2.マネジメントの役割
- 2.1.目標の設定
- 2.2.生産性や業務効率の向上
- 2.3.メンバーの成長支援
- 2.4.自分が所属する組織の文化形成
- 3.マネジメントの種類
- 3.1.トップマネジメント
- 3.2.ミドルマネジメント
- 3.3.ローアーマネジメント
- 4.マネジメントを担う人が行う具体的な業務の例
- 4.1.チーム単位の目標設定と進捗管理
- 4.2.1on1ミーティングやフィードバックの実施
- 4.3.業務の割り振りと優先順位づけ
- 4.4.メンバー間・部署間の調整
- 4.5.人材評価と育成計画の立案
- 5.現代のビジネスで求められるマネジメントとは何か
- 5.1.異なる価値観を受け入れるマネジメント
- 5.2.心理的安全性を確保するマネジメント
- 5.3.多様な働き方に対応するマネジメント
- 5.4.メンバーの強みを活かすマネジメント
- 6.マネジメントを任された人が陥りがちな課題
- 6.1.メンバーとの関係構築がうまくいかない
- 6.2.自分の仕事で手一杯になってしまう
- 6.3.指示がうまく伝わらない
- 6.4.つい自分で抱え込みすぎてしまう
- 6.5.メンバーの評価が難しい
- 7.社内でマネジメントスキルを持つ社員を育てるためにできること
- 7.1.明確なキャリアパスの設計
- 7.2.社内研修の実施
- 7.3.評価制度の見直し
- 8.社内で活躍するマネジメント人材を増やすために組織ができること
マネジメントの基本概念
まずは、そもそもマネジメントとは何か、ドラッカーの考え方との関係やリーダーシップとの違いについて整理します。
マネジメントとは
マネジメントとは、計画の策定から実行、評価までを統括し、組織が成果を出すための大枠を整える行為です。
具体的には、人材の配置、資金の管理、優先順位の検討など、多岐にわたります。
目標設定や成果の管理だけでなく、人が持つ能力やモチベーションを最大限に引き出すことが求められます。
活躍の場と役割を適切に定義することで、チームの総合力を高めるのがマネジメントの重要な役割です。
ドラッカーが提唱するマネジメント
「マネジメント」と聞いて経営学の第一人者であるピーター・F・ドラッカーの名前を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
ドラッカーは、マネジメントを「組織の目的を達成するための手段」と定義し、組織の目的は人々がより効果的に協働できるようにすることだと説きました。
また、ドラッカーはマネジメントの5つの基本機能として「計画」「組織」「人材配置」「指導」「統制」を挙げたことでも知られています。
こうした考え方は、現代のマネジメントの基礎となっています。
リーダーシップとの違い
マネジメントとリーダーシップはしばしば混同されますが、両者には明確な違いがあります。
リーダーシップはビジョンや方向性を示してメンバーを導く力のことを指します。
一方、マネジメントはプロセスやリソースを管理し、成果へとつながる仕組みを作るという側面が強いです。
両者は相反するものではなく、むしろ相互補完的な関係にあります。
組織を一つにまとめて何かを実現するためには、リーダーシップとマネジメントの両方が重要と言えます。
マネジメントの役割
ここでは、マネジメントの主要な役割について詳しく解説します。
組織の中でどのような役割を果たしているのか、一つずつ見ていきましょう。
目標の設定
組織やチームの方向性を明確にし、メンバーの行動を統一するためには適切な目標設定が不可欠です。
具体的な目標数値や期限を設けることで、メンバーは達成イメージを持ちやすくなります。
目標設定で大切なのは、目標を決めた理由や背景を共有することです。
各メンバーがゴールへの意義を理解し、目標達成に向けて意欲的に取り組む空気が生まれやすくなります。
また、状況が変化した際に目標の修正を行うなど、柔軟に方向を調整するのもマネジメントの役割です。
生産性や業務効率の向上
マネジメントの重要な役割の一つに、生産性や業務効率の向上があります。
ムダを削減し、限られた時間とコストを有効活用することを目指します。
生産性の向上を進めるには、タスク管理やプロセス分析を定期的に行い、ボトルネックを特定して改善策を実施します。
これにより、チーム全体の効率と質が向上します。
一方で、過度なコスト削減や短期志向ばかり進めると、チームのモチベーションや仕事の質が下がるおそれもあります。
したがって、適切なバランスを見極めて指示を出すことも、マネジメントの腕の見せどころと言えるでしょう。
メンバーの成長支援
メンバーのスキルアップやキャリア形成を支援することもマネジメントの役割です。
マネジメントが目指す組織の成果創出には、メンバー個々の成長が欠かせません。
成長支援は、単なるスキル向上だけでなく、メンバーのキャリア開発や自己実現にも寄与します。
自分が所属する組織の文化形成
組織の文化は、日常のコミュニケーションや働き方の積み重ねによって形成されます。
例えば「失敗を責めない」「チャレンジを推奨する」といった風土を作ることで、メンバーは安心して意見を出し合いやすくなり、結果的にイノベーションを生み出す土壌が育まれます。
こうした文化形成では、管理職自身が模範を示すことも大切です。
日々の勤務態度やコミュニケーションで示すことで、メンバーとの信頼関係を深め、組織全体にポジティブな影響を与えやすくなります。
マネジメントの種類
マネジメントには、組織の階層や役割に応じてさまざまな種類があります。
ここでは、主要なマネジメントの種類とその特徴について解説します。
トップマネジメント
トップマネジメントは企業や組織の最上位で経営方針やビジョンを策定し、全体を統率する役割を担います。
外部環境の変化を踏まえ、先を見通した戦略を描くことが求められます。
トップマネジメントが行う決定は組織全体の方向を左右するため、多面的な情報収集と客観的な意思決定プロセスが必要です。
また、後述するミドルやローアー層に戦略をわかりやすく伝え、責任や権限を委譲することで、現場がスムーズに動ける体制を整えることも使命となります。
ミドルマネジメント
トップマネジメントから示された方針を現場に落とし込みつつ、各チームが協力し合える仕組みを築くのがミドルマネジメントの役割です。
具体的な業務目標やプロジェクト計画を策定し、ときには複数の部署をまたぐ調整を行います。
経営視点と現場視点の両方が必要で、組織内で発生する課題をいち早く察知して適切に対処する力が求められます。
ミドルマネジメントがうまく機能すると、トップダウンの指示とボトムアップの意見交換が活性化し、チーム全体の士気向上や成果創出に良い影響を与えます。
ローアーマネジメント
現場レベルで直接チームや作業の管理を手がけるのがローアーマネジメントです。
日々の業務進捗を把握し、メンバーへのタスク割り振り、業務の優先順位づけを行います。
メンバーと近い距離で仕事するため、コミュニケーション能力が特に重視されます。
困りごとや悩みを早期に解決し、モチベーションを維持するための言動も重要です。
マネジメントを担う人が行う具体的な業務の例
マネジメントの役割を果たすために、マネージャーは日々さまざまな業務を行っています。
ここでは、マネジメントを担う人が行う具体的な業務例を紹介します。
チーム単位の目標設定と進捗管理
企業全体のビジョンや部門の方針をもとに、チーム独自の目標を設定します。
目標は定量的な評価ができるものから、定性的な評価が必要なものまでさまざまです。
目標を設定した後は、チームが目標達成に近づけているか進捗管理を行います。
進捗具合に応じて軌道修正や追加の指示を行いながら、チームの成果を最大化することがマネジメントの仕事の一つです。
1on1ミーティングやフィードバックの実施
マネージャーは、メンバーの一人ひとりと定期的にコミュニケーションをとり、業務の進捗や困りごとを確認します。
これが1on1ミーティングです。
フィードバックは仕事の振り返りのことを指し、良かった点と次回への改善点を整理してメンバーに伝えます。
フィードバックは改善点の見直しに目が行きがちですが、特に、メンバーの強みや弱みを把握して適時にフィードバックを行うと、モチベーションアップや能力開発につながります。
また、話しやすい雰囲気を作り、相手の意見をしっかりと聞くことで、チーム内の人間関係を円滑にし、風通しの良い組織文化を作れます。
業務の割り振りと優先順位づけ
案件やタスクの緊急度や重要度を見極め、業務を適切にメンバーへ割り振る作業はマネジメントの要と言えます。
各メンバーのスキルやキャパシティを考慮しながら、過負荷を防ぎつつ生産性を高めるために、日々のタスク調整を行う必要があります。
優先度をはっきり示すことで、メンバーは迷わず行動に移せるようになります。
メンバー間・部署間の調整
組織が大きくなるほど、複数のチームや部署が連携して成果を出す仕組みが求められます。
場合によってはお互いの利害や主張がぶつかることも珍しくありません。
マネージャーは、各部署の状況や要望を的確に把握し、調整の場を設けたり、情報共有の方法を整備したりする必要があります。
調整をうまく進めるには、高いコミュニケーション能力が不可欠です。
人材評価と育成計画の立案
メンバーそれぞれの働きや貢献度を客観的に評価してフィードバックを行うのもマネージャーの仕事です。
特に、数値では表現が難しいメンバーの努力やコミュニケーションなどを評価し、良い点を伝えることは、今後のモチベーションにも影響します。
また、本人が気づいていない良を伝えて励ますことは、メンバーの今後の可能性を伸ばしていくうえでも大切と言えます。
メンバーの育成プランを策定し、必要に応じた研修やジョブローテーションなどを進めて組織全体のレベルアップを図ることも、マネージャーの仕事です。
現代のビジネスで求められるマネジメントとは何か
現代は働き方や価値観が多様化しつつあります。
こうした変化に対応するため、マネジメントの手法も変化が求められるようになりました。
では具体的に、どのようなマネジメントが求められているのでしょうか。
異なる価値観を受け入れるマネジメント
個々のバックグラウンドや働く目的が異なるメンバーが同じチームで協力する場面は、ビジネスの場では珍しくありません。
価値観の違いを排除するのではなく、お互いを尊重し合える組織作りは、今のマネジメントでは重要と言えるでしょう。
多様な意見やアプローチを肯定し、チームに新しいアイデアやイノベーションをもたらす機会を失わないことが大切です。
心理的安全性を確保するマネジメント
心理的安全性とは、会社や組織の中で自分の意見や気持ちを誰に対しても安心して表現できる状態のことです。
心理的安全性が高い組織では失敗を脅威と捉えるのではなく、新たな学びのチャンスとして解釈できるようになります。
また、心理的安全性が確保されたチームでは、メンバーが率直かつ建設的なフィードバックをし合えるため、高いパフォーマンスを持続しやすくなります。
心理的安全性を高めるにはメンバーの挑戦を後押しできる雰囲気の醸成が大切です。
したがってマネージャーが組織のメンバーに働きかけていく必要があります。
多様な働き方に対応するマネジメント
リモートワークやフレックス勤務など、柔軟な働き方を選ぶ人が増えています。
そのため、これまでの全員が同じ場所・同じ時間に集まるモデルとは異なるマネジメントが必要になります。
具体的には、オンライン会議や共有ツールを活用したコミュニケーション手段の確保や、成果や進捗を可視化する取り組みの実施が欠かせません。
メンバーの強みを活かすマネジメント
一人ひとりの得意分野や個性を理解し、それを活かせるポジションや業務をアサインすることが、組織の生産性向上につながります。
特に近年は、個人のキャリア志向も多様化しており、自らの強みを追求したいと考えるメンバーも多くなっています。
そうした意欲を認め、支援し、強みを伸ばす機会を提供するのもマネジメントの役割です。
メンバーの強みを伸ばすと同時に、チーム全体で補完し合う体制ができれば、組織としての底力が高まり、柔軟に目標を達成できるでしょう。
マネジメントを任された人が陥りがちな課題
初めてマネジメントを行うとき、専門スキルや経験値だけでは解決できない悩みが出てくることがあります。
また、経験が豊富だったとしてもビジネス環境の変化によって従来の方法が通用しなくなることもあるかもしれません。
ここからは、マネジメントを任される立場の人が陥りがちな課題について解説します。
メンバーとの関係構築がうまくいかない
マネージャーポジションへの昇進を機に、これまで対等だった同僚との距離感が変化し、ぎこちなくなってしまうケースがあります。
特に、指示を出す立場になることでフラットな関係を築きにくくなることがあるでしょう。
この課題を解決するには、相手を尊重する姿勢を持ちつつも、リーダーとしての役割を過度に強調しすぎないバランスが大切です。
信頼関係を保ち、相手を理解しようと努めることで、スムーズなコミュニケーションとチームワークが生まれやすくなります。
自分の仕事で手一杯になってしまう
プレイングマネージャーという言葉があるように、これまでの専門業務に加えてチームの管理や調整業務を行うマネージャーもいます。
プレイングマネージャーは時間管理やタスクの優先順位づけが難しくなり、キャパシティオーバーに陥ってしまいがちです。
この状況を解決するには、業務の一部をメンバーに任せる勇気も必要です。
マネジメントの目的は「仕組みづくり」であり、一人で抱え込むと本来の役割が果たせなくなります。
指示がうまく伝わらない
こちらは的確な指示をしたつもりでも、メンバーは意図を正しく汲み取れず、ミスや作業遅延が発生してしまう事態も珍しくありません。
認識の齟齬を防ぐためには指示を具体的に言語化し、いつまでに誰が何を行うかを明確にすることが大切です。
相手が理解したかどうかのフィードバックをもらう習慣を作るのも有効でしょう。
チーム全体で共通のコミュニケーションルールやツールを用意すると、情報の行き違いを減らせます。
つい自分で抱え込みすぎてしまう
一方で細かすぎるマイクロマネジメントに陥ってしまうと、メンバーが自主的に学ぶ機会を奪い、成長の芽をつぶす可能性があります。
また、一人で細部までコントロールしようとすると、管理職自身の負担が増大し、ストレスフルな環境を生み出しかねません。
メンバーに一定の権限と責任を与え、サポート役に徹することもマネジメントの使命です。
メンバーの評価が難しい
マネージャーは、チームの成果だけでなく、メンバー個々の成長過程や貢献度合いを見極める必要があります。
しかし、プレーヤー時代にメンバーの評価をする機会がほぼなかったマネージャーにとっては、苦戦する業務の一つです。
評価基準が曖昧だと、公平性を保ちづらくなります。
客観的な数値指標だけにこだわらず、チームへの影響やコミットメントの質など、定性的な部分を含めて総合的に見ることが求められます。
評価を通じて、適切なフィードバックを行い、次の成長ステップにつながる仕組みが整えば、個人のモチベーションと組織全体の成長が両立します。
社内でマネジメントスキルを持つ社員を育てるためにできること
近年は人材不足が続き、マネージャーを採用するのではなく自社で育てたいと考える企業も多いです。
マネジメントスキルを備えた人材を社内で育成するには、キャリアパスや研修制度など総合的な取り組みが必要になります。
では、具体的にどのようなことができるでしょうか。
明確なキャリアパスの設計
マネージャーになるためのステップや求められるスキルが曖昧だと、マネージャー候補者はどういったモチベーションで何を学べば良いのかわかりません。
キャリアパスを見える化し、目標に向かって着実に進めるようにすることが大切です。
キャリアパスが見えると、挑戦したい人が積極的に手を上げ、組織内で自律的にマネジメント人材が育つ風土につながります。
社内研修の実施
マネジメントの基礎やリーダーシップ理論、コミュニケーションスキルなど、体系立てて学べる研修を定期的に開催するのも有効です。
研修は外部講師の活用や、他部署との共同研修など、多様な視点を取り入れることで、より実践的な学習が期待できます。
研修後のフォロー体制も整備し、学んだことを現場で実行しやすい環境を整備することで、スキルが定着しやすくなるでしょう。
評価制度の見直し
社内でマネジメントを重視するためには、評価制度に「管理業務」や「チーム育成」の貢献度がしっかり反映されることが必要です。
成果数値だけを評価していると、人材育成や組織づくりに力を入れる動機が弱まり、マネジメントの優先度が下がるおそれがあります。
マネジメント力を発揮したプロセスや、チームが成長した要因など、数値以外の指標を総合的に捉えることで、公平かつ納得感のある評価につながられます。
社内で活躍するマネジメント人材を増やすために組織ができること
今回はマネジメントについて網羅的に解説しました。
社員が一つになって働き、成果を創出するためには、マネージャーの存在が不可欠です。
また、現代のビジネス環境では、多様性の尊重や心理的安全性の確保など、新たなマネジメントスキルも求められています。
とはいえ、こうしたスキルを最初から完璧に備えている人材はいません。
だからこそ、組織が育成の場を設けて経験を積ませ、マネジメントに挑戦できる機会を提供することが重要と言えます。
組織全体で人を育てる意識を持って人材開発に取り組むことが、持続可能な成長と強いチームづくりにつながるでしょう。