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労使協定方式とは?派遣先均等・均衡方式との違いをわかりやすく解説!


労使協定方式とは、派遣元企業と派遣社員の間で締結する労使協定のことで、同一労働同一賃金を図る方式のことです。待遇決定方式を考える方の中には、労使協定方式のほかに派遣先均等・均衡方式について知りたい方もいるのではないでしょうか。本記事では、労使協定方式・派遣先均等・均衡方式の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

労使協定方式とは派遣元企業と派遣社員の間で締結する労使協定のことで、正社員と派遣社員の不合理な待遇差を解消を目指す同一労働同一賃金を図る方式のことです。多くの企業で労使協定方式を採用していますが、待遇決定方式として派遣先均等・均衡方式を選択することも可能です。本記事では、労使協定方式・派遣先均等・均衡方式の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説します。方式を選択するときの対応方法も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次[非表示]

  1. 1.労使協定方式とは
  2. 2.労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の違い
  3. 3.労使協定方式のメリット・デメリット
    1. 3.1.派遣元企業のメリット・デメリット
    2. 3.2.派遣先企業のメリット・デメリット
    3. 3.3.派遣社員のメリット・デメリット
  4. 4.派遣先均等・均衡方式のメリット・デメリット
    1. 4.1.派遣元企業のメリット・デメリット
    2. 4.2.派遣先企業のメリット・デメリット
    3. 4.3.派遣社員のメリット・デメリット
  5. 5.方式を選択するポイント
  6. 6.労使協定方式の一般賃金の算出方法
    1. 6.1.基本給や賞与など
    2. 6.2.通勤費
    3. 6.3.退職金
  7. 7.派遣先均等・均衡方式の賃金
  8. 8.労使協定方式の採用で対応すべきこと
    1. 8.1.派遣元企業が対応すべきこと
    2. 8.2.派遣先企業が対応すべきこと
  9. 9.派遣先均等・均衡方式の採用で対応すべきこと
    1. 9.1.1.比較対象従業員の選出
    2. 9.2.2.福利厚生などの待遇改善
    3. 9.3.3.平等な教育制度の提供
    4. 9.4.4.派遣元企業への情報提供
  10. 10.契約締結から雇い入れまでのプロセス
    1. 10.1.1.労働者派遣契約を締結する
    2. 10.2.2.派遣社員に待遇情報などを説明する
    3. 10.3.派遣時に説明・明示しなければならないこと
  11. 11.方式採用後の注意点
    1. 11.1.最低賃金を下回っていないか確認する
    2. 11.2.派遣先企業は方式を選択できないことを理解する
    3. 11.3.雇い入れ時には派遣社員に適切な説明をおこなう
    4. 11.4.待遇内容変更時には必ず情報提供をおこなう
  12. 12.「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」を理解して自社に合った方式を選択しよう


労使協定方式とは


労使協定方式とは、派遣元企業と派遣社員の間で締結する労使協定のことで、同一労働同一賃金を図る方式を指します。

そもそも同一労働同一賃金とは同じ労働内容であれば同じ賃金を支払うことで、正社員と派遣社員の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

労使協定方式は同一労働同一賃金を図る方式を採用しているため、派遣社員の派遣先が変わっても派遣社員の賃金や待遇が変わることはなく、不合理な待遇差の解消によって派遣社員の長期的なキャリア形成が難しい課題を解決できます。

労使協定方式を図る場合には、厚生労働省が毎年定めている「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」以上の賃金にしなければなりません。

厚生労働省により派遣元企業は派遣社員の待遇を定めなければならない規則があるため、労使協定方式を採用しない場合は派遣先均等・均衡方式を採用します。

参考:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」


労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の違い



派遣先均等・均衡方式とは、派遣先企業の従業員と派遣社員の待遇を同等なものにする方式のことです。待遇を同等にすることで、派遣先の従業員と派遣社員の不合理な待遇差が生じないため、同一労働同一賃金が適用されていることになります。

では、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式は、具体的に何が異なるのか見ていきましょう。


派遣元企業は2つの方式について理解したうえで、どちらかの方式を採用することが義務付けられています。

参考:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)『第2部派遣労働者の 待遇決定に向けた 取組の全体像』」


労使協定方式のメリット・デメリット


本章では、労使協定方式のメリット・デメリットを派遣元企業・派遣先企業・派遣社員に分けて解説します。

派遣元企業のメリット・デメリット

派遣元企業のメリットは、「給与水準を決められること」「人材採用に有利になること」の2つです。

派遣先均等・均衡方式では、派遣先企業が高い賃金を支払っていると派遣社員にも同等の賃金を支払う必要があります。一方、労使協定方式は派遣先企業に合わせることがなく、地域や職種の平均賃金を目安に支払うため、企業の負担が軽減できます。

派遣社員にとっても一定の水準以上の賃金をどの派遣先でも得られることがメリットです。生活が安定するメリットは人材採用に有利になることにつながるでしょう。

しかし、定期的に労使協定の内容を見直さなければならないことはデメリットだと言えます。具体的には、厚生労働省が毎年定めている「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」をチェックすることなどがあげられます。

また、場合によっては、派遣社員との合意に手間や時間がかかる場合もあるでしょう。

派遣先企業のメリット・デメリット

派遣先企業のメリットは、「煩雑な手続きを簡略化できること」です。

労使協定方式では、派遣先企業は派遣元企業に対して教育訓練や福利厚生施設に関する情報を提供します。派遣先均等・均衡方式と比較して提供する情報が少ないため、煩雑な手続きを簡略化できます。

デメリットは、自社が求めるスキルや経験、人物像に合った派遣社員が得られない可能性があることです。自社で活躍している人物を派遣してもらうには、事前に派遣元企業との情報共有をしっかりとおこなわなければなりません。

派遣元企業との話し合いに時間や手間がかかったり、求める人物が派遣されない恐れがあったりすることはデメリットだと言えるでしょう。

派遣社員のメリット・デメリット

派遣社員のメリットは、「一定の賃金が得られること」「柔軟な働き方をしながら安定的な生活やキャリアを築けること」の2つです。

労使協定方式では派遣先企業の賃金の水準に影響されることなく、派遣元企業が定めた賃金を得られます。派遣先が変わっても賃金が下がらないため、経済的に安定することがメリットです。また、派遣社員として柔軟な働き方をしながら安定した賃金でキャリアを築けることもメリットだと言えるでしょう。

デメリットは、派遣元企業が決めた待遇が変わらない可能性があることです。待遇が固定されると派遣社員にとって不利な状況に陥ることも考えられます。また、派遣先の従業員と待遇の差ができ、派遣社員のモチベーションや生産性が低下する恐れもあります。

派遣先均等・均衡方式のメリット・デメリット


本章では、派遣先均等・均衡方式のメリット・デメリットを派遣元企業・派遣先企業・派遣社員に分けて解説します。

派遣元企業のメリット・デメリット

派遣元企業のメリットは、「人材が集まり派遣しやすくなること」です。

派遣先均等・均衡方式では、派遣先から提供された賃金や福利厚生、職務内容など十分な情報を派遣社員に説明します。派遣先がどのような企業でどの程度の待遇なのかが明確にわかるため、派遣社員は待遇について理解しやすく、企業に派遣しやすいメリットがあります。

また、待遇に不満が出にくく、派遣社員の定着率が高くなることもメリットでしょう。

一方、デメリットは多くの情報を受けなければならず、派遣先企業との契約に時間や手間がかかることです。また、同じ業務内容でも派遣先によって賃金が異なるため、派遣社員に納得してもらえるような説明が難しいこともデメリットとしてあげられます。

派遣先企業のメリット・デメリット

派遣先企業のメリットは、「優秀な人材が集まりやすいこと」です。

賃金などの待遇が良い企業は派遣社員にとって魅力的です。派遣先企業を志望する人材が多くなり、優秀な人材を確保しやすいでしょう。

一方、煩雑な業務が必要になることはデメリットです。労使協定方式と比較して、派遣元企業に多くの情報を提供しなければならないため、情報提供の手間や時間がかかり担当者の負担が大きくなります。

また、派遣社員への賞与や退職金がないなどの待遇に不満が生まれると、仕事を辞退したり早期退職したりする恐れがあります。

派遣社員のメリット・デメリット

派遣社員のメリットは、「待遇の良い企業で仕事ができること」「不合理な待遇差が生まれないこと」の2つです。

労使協定方式は待遇が定まっていますが、派遣先均等・均衡方式では企業ごとに待遇が異なります。良い待遇の企業で働けることは求職者にとって非常に魅力的です。また、不合理な待遇差が生まれないため、仕事へのモチベーションが下がることなく取り組むことができ、生産性を向上できる可能性が高いです。

しかし、同等の仕事をする派遣先企業の従業員と同じようなスキルや経験、責任が求められるため、柔軟な働き方ができなかったりプレッシャーに感じたりすることがあります。想像していた働き方でないと早期退職の可能性もあるため、派遣元企業や派遣先企業にとってもデメリットがあると言えるでしょう。

方式を選択するポイント


労使協定方式・派遣先均等・均衡方式は、それぞれ比較対象の従業員や待遇が異なります。そのため、各方式の特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、どちらが自社に合っているのかを選択する必要があります。

また、労働者と企業の間で結ばれる労使協定を締結しているか否かも、方式を選択するポイントのひとつです。労使協定を結んでいない場合は、労使協定方式を採用できません。

また、労使協定を締結していても、労使協定に定められる賃金水準でなかったり、公正な評価がおこなわれていなかったりする場合には労使協定方式を採用できず、派遣先均等・均衡方式を採用する必要があります。

労使協定方式を採用したい場合には、労使協定を締結したり、労使協定に定められた条件にクリアしたりするなどの対応をおこないましょう。

参考:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)『第2部派遣労働者の 待遇決定に向けた 取組の全体像』」

労使協定方式の一般賃金の算出方法

本章では、「基本給や賞与など」「通勤費」「退職金」から構成される一般賃金の算出方法を解説します。

基本給や賞与など

基本給や賞与などは、「基準値×能力・経験調整指数×地域指数」の計算式で算出します。それぞれの指標について解説します。

  • 基準値:「賃金構造基本統計調査」または「職業安定業務統計」から算出したもの
  • 能力・経験調整指数:「賃金構造基本統計調査」の特別集計から計算した勤続年数別の所定内給与に賞与を加えて算出したもの
  • 地域指数:都道府県別に定められた「都道府県別の指数」または「ハローワーク管轄地域別の指数」のいずれかで算出したもの

基準値の算出で使用する資料は派遣社員の職種に近いものを選択し、地域指数で使用する資料は労使間の協議で定めたものを選択します。

また、能力・経験調整指数における勤続年数は従来の考え方ではありません。勤続年数5年で基本業務を取り組んでいても5年を勤続年数とするのではなく、一般労働者と比較して業務の難易度が相当なのかを労使間で競技したうえで勤続年数を決定する必要があります。

通勤費

通勤費は、実費支給であれば一般労働者の通勤手当と同等以上として扱えます。

ただし、上限がある場合、労働時間1時間あたり令和6年度は72円、令和7年度は73円と同等以上にしなければなりません。通勤手当の最低金額は毎年変わるため、定期的な見直しが必要です。

参考:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について『労使協定方式 ~同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額~』」

退職金

退職金は、「退職金前払い制度」「企業独自の退職金制度」「中小企業退職金共済制度などへの加入による支払い」を利用できます。

退職金前払い制度とは、基本給・賞与等の6%以上相当の金額を毎月の給与に上乗せして前払いする制度のことです。企業独自の退職金制度とは、派遣元企業で決められている退職金制度を派遣社員に採用する制度を指します。

2つの方法以外に、中小企業退職金共済制度などへの加入によって退職金を支給することも可能です。一般基本給・賞与などに乗じたものを中小企業退職金共済から退職金として支払われます。

派遣先均等・均衡方式の賃金


派遣先均等・均衡方式の賃金は、同等の業務をおこなう派遣先従業員の賃金水準をもとに、不合理な格差が生まれないように設定します。

派遣先均等・均衡方式は同一労働同一賃金に対応する方式であるため、差別化しないように注意しましょう。

労使協定方式の採用で対応すべきこと

労使協定方式を採用するときは、派遣元企業・派遣先企業でそれぞれ実施しなければならないことがあります。それぞれ見ていきましょう。

派遣元企業が対応すべきこと

派遣元企業が対応すべきことは以下の3つです。

  1. 派遣社員の賃金の確認
  2. 労使協定案の作成
  3. 労使協定の締結と周知

順に解説します。

1.派遣社員の賃金の確認

はじめに、基本給に加え、賞与、通勤手当、退職金の支給有無など、派遣社員の賃金の確認をします。

市場の平均や法で定められた最低賃金などをもとに、派遣元企業独自の賃金水準を設定しましょう。賃金水準設定時のポイントは、派遣社員のスキルや経験、従事する業務内容をチェックすることです。また、派遣社員を代表する方と協議をしたうえ、公正かつ透明性のある方法で賃金を決めることも必要です。

2.労使協定案の作成

次に労使協定案を作成します。

そもそも労使協定案とは、派遣元企業と派遣社員の間で取り交わされた、労働条件などが書面で記載された労使協定の草案のことです。労使協定案作成のポイントは、派遣先企業に提供された情報を反映させること、記載事項を網羅することの2つです。

労使協定案では、派遣社員の公正な賃金の支払い、不合理な格差のない待遇の確保が求められます。厚生労働省が作成したひな形を活用し、迅速かつ間違いのないものを作成しましょう。

3.労使協定の締結と周知

最後に労使協定の締結と周知をおこないます。

従業員の過半数を組織する組合がない場合には派遣社員から代表者を選び、労使間での協議・合意のうえ、法令に定められた内容の労使協定を締結します。

締結後は、労使協定の対象である派遣社員の範囲、賃金の定め方、有効期間など詳しい情報を書面などで周知しましょう。

派遣社員が待遇についてしっかりと理解することは、派遣元企業への信頼感が高まったり、安心感を持って働けたりすることにつながります。

派遣先企業が対応すべきこと

派遣先企業が対応すべきことは以下の4つです。

  1. 派遣料金に関する対応
  2. 福利厚生などの待遇改善
  3. 平等な教育制度の提供
  4. 派遣元企業への情報提供

順に解説します。

1.派遣料金に関する対応

派遣料金に関する対応を進めます。

労働者派遣法により、派遣先企業は同一労働同一賃金に基づく待遇を確保するために派遣料金への配慮が義務付けられています。そのため、派遣元企業から派遣料金についての改善要請があった場合には、誠実に対応しなければなりません。

正しく対応しなければ行政指導の対象になる場合があるため、注意が必要です。

また、一般賃金について法律が改訂された場合には、一般賃金の同等額以上の賃金を支給できているかを見直すことも必要になります。

自社で働く派遣社員が公正な待遇を受けられるよう配慮することが大切です。

2.福利厚生などの待遇改善

次に福利厚生などの待遇の改善をおこないます。

労使協定方式では、派遣先企業の従業員と同等に福利厚生施設を使用できるようにしなければなりません。提供が義務付けられている施設として、ロッカールームや休憩室、食堂などの施設があげられます。

診療所や保育所、レジャー施設などの提供をおこなう企業であれば、それらの施設に関して配慮する義務があることを覚えておきましょう。

3.平等な教育制度の提供

福利厚生に加え、平等な教育制度の提供も必要です。

派遣先企業の従業員と同等に、業務遂行に必要な知識やスキルを身につけられる場を設けましょう。

また、派遣元企業から教育機会の実施が求められた場合に学びの場を提供することも必要です。ただし、派遣元企業が実施できる教育内容は派遣先企業の実施すべきものの対象外です。

4.派遣元企業への情報提供

教育訓練や福利厚生施設に関する情報を派遣元企業に提供することも必要です。

派遣元が採用している方式に合わせて提供するようにしましょう。

また、情報提供をおこなった書面は、その写しを派遣終了日から3年間保存することも必要です。

派遣先均等・均衡方式の採用で対応すべきこと


派遣先均等・均衡方式を採用するときは、派遣先企業で実施しなければならないことがあります。

  1. 比較対象従業員の選出
  2. 福利厚生などの待遇改善
  3. 平等な教育制度の提供
  4. 派遣元企業への情報提供

なお、派遣元企業は、提供された情報を派遣社員に説明するなどの対応が必要です。

1.比較対象従業員の選出

はじめに、派遣社員の待遇を定めるために、比較対象従業員を選出します。

比較対象従業員は、以下6つの優先順位で選出します。

  1. 職務内容及び配置の変更範囲が同じ通常の労働者(正社員)
  2. 職務内容が同じ通常の労働者
  3. 職務内容または責任の程度が同じ通常の労働者
  4. 職務内容及び配置の変更範囲が同じ通常の労働者
  5. 1~4に相当するパート・有期雇用労働者
  6. 派遣社員と同じ仕事に従事させるために正社員を雇い入れたと仮定した場合の労働者

比較対象従業員については派遣元企業に情報提供する必要があります。

参考:厚生労働省「派遣先の皆さまへ」

2.福利厚生などの待遇改善

次に、福利厚生などの待遇改善をおこないます。

労使協定方式と同じく、休憩室やロッカールーム、食堂などの提供が義務付けられています。また、診療所や保育所、レジャー施設など企業独自の福利厚生を設けている場合も、利用できるよう配慮を義務付けられています。

3.平等な教育制度の提供

平等な教育制度を提供するための対応も進めましょう。

労使協定方式と同じく、業務遂行に必要な知識やスキルを身につけられる機会を提供したり、派遣元企業が求める教育訓練を実施したりする必要があります。

4.派遣元企業への情報提供

書面の交付やファクシミリ・電子メールなどで派遣元企業へ情報提供します。

具体的な内容として、以下があげられます。

  • 雇用形態
  • 職務内容及び配置の変更範囲
  • 比較対象者の選定理由
  • 待遇内容
  • 待遇の性質や目的
  • 待遇決定に当たる考慮事項

情報提供をおこなった書面は、その写しを派遣終了日から3年間保存しましょう。

契約締結から雇い入れまでのプロセス



労使協定方式または派遣先均等・均衡方式に基づいて待遇を決定した後の流れは以下の通りです。

  1. 労働者派遣契約を締結する
  2. 派遣社員に待遇情報などを説明する
  3. 関係者に情報提供をおこなう

順に解説します。

1.労働者派遣契約を締結する

はじめに、労働者派遣契約を締結します。

労働者派遣契約に記載すべき事項は以下の通りです。

  • 派遣社員が従事する業務の内容、責任の程度
  • 派遣先企業の名称、所在地、部署、電話番号、組織単位
  • 指揮命令者の部署、役職、氏名
  • 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
  • 派遣就業の開始、終了の時刻、休憩時間
  • 安全及び衛生について
  • 苦情の処理について
  • 派遣社員の雇用の安定を図るために必要な措置
  • 派遣元・派遣先責任者の役職、氏名、連絡方法
  • 時間外労働及び休日労働について
  • 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与について
  • 派遣先が労働者派遣後に派遣労働者を雇用する場合に紛争を防止するために講じる措置
  • 派遣社員を無期雇用派遣労働者または60歳以上の者に限定するか否か
  • 派遣社員を協定対象派遣労働者に限るか否か
  • 派遣社員の人数
  • 派遣元の労働者派遣事業許可番号

紹介予定派遣の場合は、職業紹介で従事すべき業務内容及び労働条件なども記載する必要があります。

参考:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)『第2部派遣労働者の 待遇決定に向けた 取組の全体像』」

2.派遣社員に待遇情報などを説明する

次に派遣社員に待遇情報などを説明します。

雇い入れ時に説明・明示しなければならないこと

労働契約締結前に説明しなければならないことは以下の通りです。

  • 雇用された場合の賃金の見込み額などの待遇に関すること
  • 派遣元企業の事業運営に関すること
  • 労働者派遣制度の概要

労働契約締結時(雇い入れ時)に書面で明示しなければならないことは以下の通りです。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 協定対象労働者であるか否か(対象である場合、協定の有効期間の終期)
  • 苦情の処理について

労働契約締結時(雇い入れ時)に説明しなければならないことは以下の通りです。

  • 派遣先均等・均衡方式により講ずることとしている措置の内容
  • 労使協定方式により講ずることとしている措置の内容
  • 職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験などに応じた賃金の決定方法

派遣時に説明・明示しなければならないこと

派遣先が決定した後に書面で説明・明示すべきことは以下の通りです。

  • 賃金などについて
  • 休暇にについて
  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 協定対象派遣労働者であるか否か

また、不合理な格差を解消するための措置について、再度説明する必要もあります。

労使協定方式を採用した場合は、労使協定を決めるに当たり考慮した事項を説明します。

派遣先均等・均衡方式を採用した場合は、比較対象労働者とどのような待遇の違いがあるのか、その理由は何かも説明しましょう。

参考:厚生労働省「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)『第2部派遣労働者の 待遇決定に向けた 取組の全体像』」

3.関係者に情報提供をおこなう

必要なプロセスとして、関係者に情報提供をおこなうことがあげられます。

労使協定方式を採用した場合は、原則ネット上で労使協定を締結していること、対象となる派遣社員、有効期間の終期について情報提供します。

派遣先均等・均衡方式を採用した場合は、原則ネット上で労使協定を締結していないことを伝えましょう。

方式採用後の注意点


労使協定方式または派遣先均等・均衡方式採用後の注意点は以下の通りです。

  • 最低賃金を下回っていないか確認する
  • 派遣先企業は方式を選択できないことを理解する
  • 雇入れ時には派遣社員に適切な説明をおこなう
  • 待遇内容変更時には必ず情報提供をおこなう

順に解説します。

最低賃金を下回っていないか確認する

1つ目の注意点は、最低賃金を下回っていないか確認することです。

最低賃金は毎月10月に改定されます。改定されたら、労使協定で定めた賃金が最低賃金より低くないかを必ず確認しましょう。

万が一最低賃金を下回っている場合、最低賃金額との差額を支払わなければ労働基準法に定められた罰則を受ける可能性があります。

参考:厚生労働省「最低賃金制度とは」

派遣先企業は方式を選択できないことを理解する

次に、派遣先企業は方式を選択できないことを理解しておきましょう。

方式の選択は派遣元企業しかおこなえません。人材派遣を利用する場合は、派遣元企業がどちらの方式を採用しているか、ホームページで確認しておきましょう。

雇い入れ時には派遣社員に適切な説明をおこなう

雇入れ時には派遣社員に適切な説明をおこなうことも必要です。

賃金や休暇などの労働条件、不合理な格差をなくすための措置内容など、必要な情報を適切に説明しましょう。

雇い入れ後に派遣社員が不満を覚えたり、仕事の辞退を防いだりするためにも、必ず説明します。

待遇内容変更時には必ず情報提供をおこなう

待遇内容が変更された場合は、派遣元企業に必ず情報提供をおこないましょう。

ただし、労働者派遣契約の終了日より1週間以内の変更の場合、労働者派遣契約で定めた範囲を超えない場合、派遣先均等・均衡方式に違反していない場合は情報提供する必要はありません。

「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」を理解して自社に合った方式を選択しよう


厚生労働省によると、待遇決定方式において88.2%の企業が労使協定方式を選択し、7.8%が派遣先均等・均衡方式を採用していることがわかっています。

9割近い派遣元企業が労使協定方式を採用しているのは、派遣先企業の負担軽減や派遣社員の安定性を求めているからです。

とはいえ、労使協定方式、派遣先均等・均衡方式はそれぞれメリット・デメリットがあるため、自社に合った方式が定められるわけではありません。

各方式の特徴を理解して、自社に合った方式を選択しましょう。

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RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムズ編集部
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