
【採用担当者必読】トライアル雇用のメリット・デメリット|利用できる助成金と申請方法
企業の採用活動において、入念な面接や試験を通じて採用したにも関わらず、望ましい結果につながらないケースは少なくありません。
採用のミスマッチの防止は、企業や採用担当者の大きな課題です。
そこで、ミスマッチを極力なくして人材を採用したい中小企業の経営者や採用担当者であれば、トライアル雇用の制度を利用してみてはいかがでしょうか。
求職者の適性や能力の見極めに役立つトライアル雇用の制度を利用すれば、ミスマッチの少ない人材採用につなげやすくなります。
今回は、トライアル雇用の概要やメリット・デメリット、具体的な助成金申請方法にいたるまで、詳しく解説をします。採用活動に携わる中小企業の経営者や採用担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次[非表示]
- 1.トライアル雇用とは
- 1.1.トライアル雇用の意味
- 1.2.トライアル雇用の目的
- 1.3.試用期間との違い
- 2.トライアル雇用のメリット・デメリット
- 2.1.事業主側のメリット・デメリット
- 2.2.求職者側のメリット・デメリット
- 3.トライアル雇用助成金とは
- 3.1.トライアル雇用助成金
- 3.2.トライアル雇用助成金のコース
- 3.3.支給される助成額の計算
- 4.トライアル雇用助成金の手続きと流れ
- 4.1.手順1.ハローワークに求人を出す
- 4.2.手順2.求職者に対して面接を行い採用する
- 4.3.手順3.紹介を受けたハローワークに必要書類を提出する
- 4.4.手順4.助成金が支給される
- 5.トライアル雇用に関するQ&A
トライアル雇用とは
まずは基本情報として、トライアル雇用の意味や目的、試用期間との違いなどを紹介します。
トライアル雇用の意味
トライアルには、「試み、試行」という意味があります。トライアル雇用は、事業主が求職者を一定期間試しに雇用することにより、その適性や能力を見極めたうえで常用雇用(期間の定めのない雇用)に移行するきっかけをつくる制度です。わかりやすくいえば、トライアル雇用とは人材のお試し雇用です。
トライアル雇用の目的
トライアル雇用は、就業経験の不足や長期ブランクなどを理由に、就職が難しくなった人の就業救済措置として制定された制度です。原則3ヶ月のトライアルにより、事業主と求職者の双方でミスマッチが起きないよう、適正を見極める、常用雇用のきっかけにしてもらう目的があります。 ちなみに、このトライアル雇用の制度を利用すると、助成金を受けることができます。雇用した人数に応じて、事業主が助成金を受けとります。
試用期間との違い
トライアル雇用は、その特徴から本採用前の試用期間と混同されることも少なくありません。トライアル雇用と試用期間の違いは以下の通りです。最も大きな違いは、事業主側に採用の義務があるかどうかという点です。
トライアル雇用と試用期間の違い | ||
トライアル雇用 |
試用期間 |
|
事業主企業側の採用義務 |
ない |
ある |
任期満了後の解雇手続き |
簡易 |
複雑 |
厚生労働省・ハローワーク |
関わる |
関わらない |
例えば、トライアル雇用には原則3ヶ月という期限が設定されます。期間満了後、事業主に本採用の義務はありません。採用にいたらなければ、労働者は必然的に解雇扱いになります。 試用期間と比較すると解雇までのプロセスが簡易です。
労働者と事業主の契約に、助成金支給などを含め、厚生労働省やハローワークが介入する点も特徴です。 一方、本採用前の試用期間はトライアル雇用とは反対に、採用を前提で労働者を雇用するという違いがあります。
本採用でなくても雇用契約は事業主と労働者間ですでに結ばれていて、事業主都合で自由に解雇とするわけにはいきません。正当な理由が必要になりますし、解雇が認められる場合でも、正規雇用契約をしている労働者と同じ通達や手当などのルールに則った処理が必要です。
トライアル雇用のメリット・デメリット
トライアル雇用の制度利用には、メリットとデメリットがあります。事業主側と求職者側それぞれの視点で確認します。
事業主側のメリット・デメリット
トライアル雇用における事業主側のメリット・デメリット | |
メリット |
デメリット |
ミスマッチの少ない採用活動を行える |
助成金受給のための提出書類の処理に手間がかかる |
助成金を人材採用や人材育成に活用できる |
助成金受給のためのスケジュール管理が必要 |
任期満了後の契約解除が容易 |
人材の教育が長期化しやすい |
事業主側メリット
トライアル雇用は求職者の適性や能力を見極めたうえで、常用雇用を行うことができます。本採用後のミスマッチが減ることは、事業主側にとっては労力的にもコスト的にも大きなメリットです。
トライアル雇用後の常用雇用は義務ではないため、期間が満了すれば事業主意向の契約解除も比較的容易な制度です。要件を満たせば助成金も支給されるため、採用コストを押さえつつ、人材採用や人材育成を充実できます。
事業主側デメリット
トライアル雇用助成金を受給するためには、申請からトライアル雇用開始、さらに終了後にいたるまで、各種書類処理が発生します。
それぞれの段階で、必ず対応しなければならない書類があるので、スケジュール調整や確認・管理が必要です。 また、トライアル雇用求人には未経験人材の応募も多く、教育や育成が長期になる可能性があります。その教育体制を整えて対応していくことになります。
求職者側のメリット・デメリット
トライアル雇用における求職者側のメリット・デメリット | |
メリット |
デメリット |
スキルに関わらず応募がしやすい |
不採用だと「3ヶ月で解雇」という職歴が残る |
職場の雰囲気や業務内容を体験できる |
複数の企業案件に応募できない |
求職者側メリット
3ヶ月という期間を区切って雇用される分、トライアル雇用は通常よりも採用になるハードルが低く、スキルに関わらず応募がしやすい利点があります。
また、求職者は、働いてみなければわからない職場の雰囲気や詳しい業務内容を、実際に体感することができます。これによって、少なくとも常用雇用された後に「こんなはずではなかった」という状況に陥ることを防げます。
求職者と事業主が良好な雇用関係を築くうえで、トライアル雇用は役立ちます。トライアル雇用から常用雇用への移行は約8割という高い傾向がみられることも双方が良好な関係を築いている証左です。
求職者側デメリット
トライアル雇用から常用雇用への移行は約束されたものではありません。不採用となれば3ヶ月で解雇という職歴が残ります。この点は、その後の就職活動を考えるとマイナスの評価につながりやすいので、デメリットです。
また、通常の職探しと違って複数の求人案件に応募することはできないため、応募時の吟味が重要になりますし、選択も慎重に行う必要があります。
トライアル雇用助成金とは
ここでトライアル雇用助成金について詳しく紹介します。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用制度を利用すると、対象者1人あたり月額最大4万円の助成金が支給されます。この助成金があることによって、事業主側はコストを抑えて人材を採用しやすくなり、常用雇用への移行のきっかけを増やすことが可能です。 なおトライアル雇用助成金は、雇用する対象者によってコースが分かれているため、コース別の違いをしっかり把握しておきましょう。
トライアル雇用助成金のコース
トライアル雇用制度には、2つのコース「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」が設けられています。コース別の受給条件や、助成金と支給額に関わるルールは以下の通りです。
一般トライアルコース
一般トライアルコース | |
支給額 |
雇用1人あたり月額最大4万円 ※対象者が35歳以下の場合は、月額最大5万円
|
支給期間 |
最長3ヶ月間 |
支給対象者 (いずれかに該当する方)
|
|
事業主の主な受給条件 (すべてに該当する事業主)
|
|
一般トライアルコースは、安定的な就職が困難な人が対象となります。 対象者1人あたり月額最大4万円、最長3ヶ月間支給されます。対象者が35歳以下の場合は、月額最大5万円、最長3ヶ月間です。支給額は、就業予定日数に対する実働日数の割合で算出されます。 事業主がこのコースを利用する際は、複数の受給条件を満たす必要があるため、詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
障害者トライアルコース
障害者トライアルコース | |
支給額 |
雇用1人あたり月額最大4万円 ※対象者が35歳以下の場合は、月額最大5万円精神障害者を初めて雇用する場合は、月額最大8万円 ※週20時間以下のトライアル雇用は、月額最大2万円
|
支給期間 |
最長3ヶ月間 ※精神障害者のトライアル雇用の場合、6ヶ月間まで延長可能 ※精神障害者や発達障害者で週20時間以下のトライアル雇用の場合、最長12ヶ月間 |
支給対象者 (いずれかに該当する方)
|
|
事業主の主な受給条件 (すべてに該当する事業主)
|
|
障害者トライアルコースは、「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定められた障害者が対象となります。 対象者1人あたり月額最大4万円、最長3ヶ月間受給できます。精神障害者を初めて雇用する場合は、月額最大8万円、助成金受給最長期間は最長6ヶ月間です。週20時間以下のトライアル雇用は、月額最大4万円、受給最長期間は最長12ヶ月間となっています。 一般トライアルコースと同じく、支給額は就業予定日数に対する実働日数の割合で算出される仕組みです。
参考:障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース|厚生労働省
なお、トライアル雇用助成金をはじめとした助成内容は、社会情勢や景気などの影響に伴い内容が更新されるケースも少なくありません。そのため、今現在の正確な情報を把握するには、制度を運営管理する省庁のホームページを確認することをおすすめします。
支給される助成額の計算
トライアル雇用は助成金を受けることができる制度です。ただ、トライアル雇用の雇用人数が多くなると「結局いくら助成金が支給されるのかわからない」というケースも少なくありません。
- 時間をかけて金額を計算するのは大変
- 助成金の額を把握したうえで制度を利用したい
- トライアル雇用以外にどのような制度を利用できるか知りたい
上記のようなお悩みを抱えている企業であれば、助成金診断サービスをご利用してみてはいかがでしょうか。 Relo 助成金診断サービス - 公的支援制度・活用診断チェック
「Relo助成金診断サービス」は、必要事項を入力すれば最短1分で受給金額がわかります。面倒な計算をせずに、トライアル雇用の金額を算出可能です。
加えて、企業ごとに受給可能性の高い助成金の総額を算出できるので、トライアル雇用以外にどのような制度を利用できるかを自動診断できます。 「Relo助成金診断サービス」を使いたい方であれば、上記サービスページをご確認ください。従業員の人数や企業の取り組みなどを入力するだけで、簡単にご利用いただけます。
トライアル雇用助成金の手続きと流れ
「トライアル雇用助成金の申請をしたい」とお考えの採用担当の方に向けて、助成金を受給するまでの手続きの流れを説明します。以下4つの手順を踏むことで、トライアル雇用助成金を活用することができます。
- ハローワークに求人を出す
- 求職者に対して面接を行い採用する
- 紹介を受けたハローワークに必要書類を提出する
- 助成金が支給される
手順1.ハローワークに求人を出す
ハローワークに求人を出す際に、トライアル雇用求人だということを伝えます。その求人で一般募集も同時に行いたい場合は、トライアル雇用併用求人です。
手順2.求職者に対して面接を行い採用する
ハローワークや職業紹介業者からの紹介を受け、書類ではなく必ず面接を行ったうえでトライアル雇用として採用します。対象者の雇用保険加入の手続きが必要です。
手順3.紹介を受けたハローワークに必要書類を提出する
トライアル雇用対象者を採用したら、直ちに「トライアル雇用実施計画書」を作成します。この計画書は、事業主と対象者で話し合い、内容に合意しておくことが大切です。トライアル雇用期間の開始から2週間以内に、紹介を受けた(管轄)ハローワークに提出します。 トライアル雇用期間が終了、または、期間中に常用雇用に移行した場合は、その翌日から2ヶ月以内に「トライアル雇用助成金支給申請書」の提出が必要です。
手順4.助成金が支給される
トライアル雇用助成金は、トライアル雇用期間が終了した後に支給されます。要件や上記の手順や必要項目が満たされているかが審査されたうえで、3ヶ月分など該当支給額が一括で振り込まれます。
参考:トライアル雇用助成金の申請様式ダウンロード|厚生労働省
トライアル雇用に関するQ&A
Q.トライアル雇用期間中に対象労働者が退職した場合の支給額は?
A.トライアル雇用期間中に対象労働者が退職した場合は、離職日までに実際に働いた日数で支給額が算出されます。
Q.トライアル雇用助成金と併給できる助成金はある?
A.トライアル雇用助成金は特定求職者雇用開発助成金やキャリアアップ助成金と併給することができます。 特定求職者雇用開発助成金は、トライアル雇用助成金と重複して受給できるわけではなく、トライアル雇用の期間満了後に利用できる助成金です。
常用雇用に移行された場合、「特定求職者雇用開発助成金」の第2期の受給が適用されます。 フルタイム勤務の労働者の場合、第2期分の支給額は、中小企業で1人あたり30万円、中小企業以外では25万円となります。
一方のキャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正規雇用労働者として雇用(正社員化)した際に支給されるものです。トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金は同じようにみえても、支給対象事項がそれぞれで異なります。 トライアル雇用助成金は試用的な雇用に対する支給に対し、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者を正規(正社員)として雇用し、キャリアアップさせたことに対して支給されます。