みなさんは、雇用保険についてどこまでご存知でしょうか?雇用保険は、健康保険や厚生年金と違い社会保障制度の中でも加入条件や保険の適用の仕方も様々で、多様なものがあります。この雇用保険の条件や納付金、給付金の計算方法などについて事業者は、細かな条件など知っておかなければいざという時に困ります。この記事では雇用保険の条件や知っておきたい計算方法などについて紹介します。

雇用保険とは

雇用保険 計算
雇用保険とは失業時に受け取れる失業保険の給付、企業に勤めている時に受けられる育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付などの被保険者の生活を守るためにある保険です。雇用保険は主に国の厚生労働省が管理しています。それに伴って手続きや給付は各地の管轄のハローワークがおこなっていることになります。

ですので、基本的に雇用保険の手続きは事業所の地域を管轄しているハローワークに行って手続きを行ってください。
また雇用保険には様々な種類があるので、従業員から申請があったらその条件にあった雇用保険の手続きを速やかに行うことが重要です。

雇用保険の種類

雇用保険の種類は主に以下のものがあります。

  • 基本手当
    失業手当や失業保険と言われている保険
  • 育児休業給付
    出産後の育児休業中に受け取れる保険
  • 介護休業給付
    介護を必要としている人が家族にいて介護休業を取得した時に受け取れる保険
  • 教育訓練給付
    従業員が資格や教育の訓練を受けられるための保険
  • 高年齢雇用継続基本給付
    65歳以上の高齢者が労働し続けられるように援助をしてくれる保険

失業保険といわれているものは正式には雇用保険の基本手当といいます。主に使われることが多いのがこの基本手当です。基本手当も辞める前に働いていた年数や辞め方によって受け取れる基本手当が変わってきます。

自己都合で企業を退職した場合、1年以上の労働期間で3ヶ月分の失業基本手当が受け取れ、10年以上で4ヶ月分、20年以上で5ヶ月分と決まっています。

社会保険・健康保険・厚生年金との違い

健康保険や厚生年金などの社会保険と、雇用保険は同じ社会保障制度ですが、社会保険と比べて条件も細かく様々なものがあります。健康保険は病院や通院時に適用されるもの、厚生年金は現在65歳以上の人が受け取れる年金制度などとわかりやすいです。

しかし雇用保険には育児や介護、労働者の職業訓練など多様な条件・制度があり、人数が多い企業などでは管理も大変です。まず雇用保険と社会保険には労働者の適用範囲の違いがあります。健康保険や厚生年金などの社会保険は病院の料金が3割負担ですむ、満65歳以上から受け取れるなど基本的に全労働者に関係のあるものがほとんどです。

雇用保険は、一定の条件を満たした人しか受け取ることができません。それには理由があり、育児で時間やお金に余裕がなくなる人に適用される育児休業給付、介護で時間やお金に余裕がなくなる介護休業給付などがあります。

つまり社会保険は全労働者に平等に適用され、雇用保険は困った人などが通常の生活を維持できるよう、他の一般的な労働者と生活基準を平等に保つように補助してくれる保険ということになります。

雇用保険の適用範囲

雇用保険の適用範囲
雇用保険に入るにも適用範囲があります。労働環境によって雇用保険に入る条件を満たしていないと雇用保険に加入することができません。

会社に在籍している正社員、一般社員

満65歳未満の人が加入できます。

派遣社員やパート・アルバイト

2種類の加入条件があり、「一週間の労働時間が20時間を超えること」「31日以上会社で働く見込みのある労働者であること」となります。

日雇い労働者

日雇い労働者は一定の期間同じ企業で仕事をすることが少ないので自分で雇用保険の申請を出す必要があります。31日以上働く見込みがあれば上記の派遣社員やパート・アルバイトと同じ条件なので雇用保険に加入できますが、31日未満であれば日雇い労働者として雇用保険に加入できます。

雇用保険に加入する条件は、雇用保険の適用になっている事業所で働いていることです。その条件を満たしていればあとは管轄のハローワークに行き手続きをすれば日雇労働被保険者手帳がもらえます。また日雇い労働者が失業時に受け取れるものは基本給付とは違い、日雇労働求職者給付金になります。

短期的な仕事をする労働者

季節的要因や仕事柄1年通して雇用されない場合を対象にした加入条件です。農業や冬にしか行わないスキー場などが当てはまります。

雇用保険の加入条件としては「4ヶ月以上雇用される」「1週間の労働時間が30時間を超えること」です。こちらも受け取れる給付金は条件を満たしていれば、特例一時金が受け取れます。

65歳以上も雇用保険の被保険者に

65歳以上の人も雇用保険の被保険者に継続してなることが可能です。さらに以前では65歳になるまでに雇用保険に加入していないと65歳を過ぎてから加入することはできませんでした。

しかし平成29年1月1日から雇用保険の適用条件が拡大され65歳以上からでも雇用保険に加入することができるようになりました。なので65歳以上から求職し企業に採用された場合でも雇用保険に加入することができます。

65歳以上の求人を出しているところはあまり多くないですが、この事実上の年齢制度の撤廃によって65歳以上の人でも新たに仕事を始めることへの意味が広がっていることは確かな事実です。65歳以上の人は高年齢被保険者として雇用保険に加入することになります。

高年齢被保険者としての加入条件は「1週間の労働時間が20時間を超えること」「31日以上、雇用される見込みがあること」が条件になってきます。

事業者は、対象となった人が企業に在籍してから翌月の10日までに管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。

雇用保険の対象となる賃金項目

雇用保険の対象となる賃金項目
雇用保険には対象となる賃金と対象にならない賃金があります。
まず基本的な前提として保険料の対象となる賃金はその他の社会保険料や税金などを控除する前の金額であり、企業が労働者に支払うすべてのものが対象になります。

賃金の対象になるもの
基本賃金賞与通勤手当定期券・回数券
超過勤務手当深夜手当扶養手当子供手当
家族手当技能手当特殊作業手当教育手当
調整手当地域手当奨励手当物価手当
生活補給金休業手当宿直・日直手当雇用保険料
社会保険料昇給差額前払い退職金その他

賃金の対象にならないもの
役員報酬結婚祝金死亡弔慰金災害見舞金
年功慰労金継続褒賞金退職金出張旅費・宿泊費
工具手当寝具手当休業補償費傷病手当金
解雇予告手当持家奨励金会社が全額負担する生命保険の掛け金
財産形成貯蓄等のため事業主が負担する奨励金等
住宅の貸与を受ける利益(福利厚生施設として認められるもの)

などが対象になるもの、対象にならないものです。

雇用保険の計算方法

雇用保険 計算
雇用保険料を計算するに当たって次の計算式があります。

給与額(賞与額)×雇用保険料率

雇用保険料率は雇用保険料を計算する際に必要になってくる計算率です。また雇用保険料率は事業によって変わり、毎年失業保険の受給者や積立金の残高に合わせて料率が見直されています。

一般事業の雇用保険料率
労働者負担事業主負担合計負担率
平成29・30年度3/10006/10009/1000
平成28年度4/10007/100011/1000

農林水産・清酒製造事業の雇用保険料率
労働者負担事業主負担合計負担率
平成29・30年度4/10007/100011/1000
平成28年度5/10008/100013/1000

建設事業の雇用保険料率
労働者負担事業主負担合計負担率
平成29・30年度4/10008/100012/1000
平成28年度5/10009/100014/1000

このように、事業の種類や年度によって変わってきます。平成29年度から雇用保険料率は変わりましたが平成30年度は変わっていないことから毎年変更されるということではないことがわかります。

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
平成29年度の雇用保険料率
平成30年度の雇用保険料率

つまり先ほどの計算式に当てはめると一般の事業で給与額が20万円の人は

  • 労動者の支払う額
    20万円×0.003(3/1000)=600円
  • 事業主の支払う額
    20万円×0.006(6/1000)=1,200円

合計負担額1,800円になります。

雇用保険料を計算する際の注意点

雇用保険 計算
雇用保険料を計算する際、注意しておきたいことの1つに、新しく雇用した労働者や労働時間を変更した労働者が加入対象になり、雇用保険料の徴収はいつからするのかがあげられます。

これは企業の給与形態にもよりますが基本的に給料の締め日が末日の場合、次の月に支払いを行うことになります(企業により15日や20日と様々)。その雇用保険の加入条件に当てはまる月の給料から徴収することが正しい徴収方法です。

また雇用保険料を労働者の給料から源泉徴収する場合、1円未満の端数が出ることがあります。端数が出た場合は原則として、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げとなります。労使協定などで端数は全て切り捨てなどの特約がある場合はそちらに従いましょう。

毎月の額は大したことがなくても1年1年積み重なると重くなってくるので、間違えないように注意しながら労働者の雇用保険料を管理することが大切になってきます。特に賃金の対象になるものや、ならないものはかなりややこしいです。労働者ごとにデータを管理できるようなシステムを作るとスムーズな管理が行えることでしょう。