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賞与支払届の基礎知識|経営者や経理担当者が押さえておくべき手続きの詳細

賞与支払届とは、賞与(ボーナス)を支給する企業が年金事務所などに提出しなければならない書類です。この賞与支払届は、従業員にとって、後々の年金受給額にも関わる大切な書類です。

企業の人事・総務部門の担当者は賞与支払届の提出を忘れたり、記入ミスがあったりすると従業員に迷惑をかけることになります。

今回は、賞与支払届とは何か、対象となる賞与についてなどの基礎的な知識から、賞与支払届の手続きの仕方、注意すべきポイントについて紹介します。

この記事を読めば、賞与支払届を速やかに正確に提出する方法が分かります。人事・総務のご担当の方は、ぜひご一読ください。


目次[非表示]

  1. 1.賞与支払届の基礎知識
    1. 1.1.対象となる賞与
    2. 1.2.標準賞与額の意味
    3. 1.3.賞与にかかる保険料
  2. 2.賞与の意義
    1. 2.1.決算賞与について
  3. 3.賞与支払届の手続きと提出方法
    1. 3.1.Flow1.賞与届出書類が届く
    2. 3.2.Flow2.標準賞与額・保険料を算出する
    3. 3.3.Flow3.賞与支払届を作成する
    4. 3.4.Flow4.賞与支払届を提出する
  4. 4.賞与支払届の手続きで注意すべき5つのポイント
    1. 4.1.注意点1.賞与不支給でも提出が必要
    2. 4.2.注意点2.標準賞与額に上限がある
    3. 4.3.注意点3.70歳以上の従業員への対応
    4. 4.4.注意点4.育児休業中の従業員への対応
    5. 4.5.注意点5.提出を忘れた場合の対応について
  5. 5.賞与支払届の提出を行わなかった場合

賞与支払届の基礎知識

賞与支払届の基礎知識 賞与支払届とは、企業が賞与を従業員に支給した際に、管轄の年金事務所または事務センターに提出する書類です。

社会保険料を算出し、保険料を納付するために必要で、「被保険者賞与支払届」とも呼ばれています。賞与を支給してから5日以内に提出しなければならず、将来、従業員が受け取る年金額の計算の基礎にもなるため、担当する人事や総務の方は、忘れずに適切な対応をしなければなりません。

対象となる賞与

賞与支払届の対象は、「年3回以下の支給のもの」とされています。年4回以上になると、標準報酬月額の対象(給与扱い)となり、賞与ではなくなるため、賞与支払届の提出は必要ありません。年3回以下の場合、保険料を計算する際には、「標準賞与額」から計算します。

標準賞与額の意味

標準賞与額とは、税引き前の賞与の総支給額から、1,000円未満を切り捨てた額のことです。例えば、賞与の支給総額が9,999円の場合、標準賞与額は9,000円で、9,000円から健康保険・厚生年金の計算をして社会保険料を決めます。

賞与にかかる保険料

賞与にかかる保険料は次の計算式によって算出されます。

賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 健康保険・厚生年金の保険料率

標準賞与額から、健康保険と厚生年金の保険料率をかけた金額が、賞与にかかる保険料となります。保険料は事業主と労働者とで折半して負担します。また、健康保険と厚生年金の保険料率は毎年改正されるので注意が必要です。賞与を支給する際には、毎年新しい保険料率をチェックしておきます。

賞与の意義

賞与の意義 そもそも賞与とは、一般的にはボーナスと呼ばれるもので、企業が従業員に対して支給する特別な給料のことです。支給する時期は企業によって異なりますが、6月・12月など、夏と冬に支給されることがほとんどです。

また、賞与は賃金(毎月の給料)と違い法律上、企業に支給義務がないため、企業が不要と考えているなら、支給しなくても問題はありません。

しかし、賞与を支給するのであれば、労働契約を結ぶ際、あらかじめ賞与の有無を書面に明記する必要があります。これは労働基準法第15条で求められているため、賞与を支給するのであれば必ず明記します。

決算賞与について

賞与は夏と冬に支給されることが多いですが、決算月に業績が好調の際に支給する決算賞与もあります。ですので、夏と冬と決算月の3回ボーナスを支給する企業もあります。


賞与支払届の手続きと提出方法

賞与支払届の手続きと提出方法 賞与支払届を提出するまでには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、提出までの大きな4つの流れについて紹介します。

Flow1.賞与届出書類が届く

賞与届出書類は、日本年金機構または健康保険組合から、賞与支払予定の前月に郵送で送られてきます。

被保険者の氏名、生年月日が印字された状態で届きますので、書類の中身を確認します。印字されていない場合は、手書きで記入する必要があります。

また、企業で導入している給与システムにも、賞与支払届が作成できるタイプもあります。ただし、健康保険組合に加入している場合、組合指定の書類フォーマットが決まっているため、給与システムで作成するものが受理されるかどうか、組合へ事前に確認を取る必要があります。 また、賞与届出書類は、電子媒体での申請や提出も可能です。電子媒体の申請・提出については、この後紹介します。

変更点:2021年4月から、賞与支払届の提出の際に添付していた総括表が廃止(添付不要)になりました。

Flow2.標準賞与額・保険料を算出する

標準賞与額と保険料を算出します。標準賞与額は、実際に支払った賞与額から、1,000円未満を切り捨てた金額ですが、これに健康保険・厚生年金の保険料をかけた金額が保険料となります。

Flow3.賞与支払届を作成する

賞与支払届を作成します。支払届の用紙には、企業情報と各従業員の情報を記入する欄に分かれており、各従業員の情報は、被保険者整理番号の順に記入します。用紙に記載されている各項目の記入ポイントを紹介します。

Point.賞与支払届の記入ポイント

  • 事業所整理番号…事業所に付与された数字とカタカナを記入します。
  • 事業主の押印…提出する被保険者賞与支払届が2枚以上の場合、2枚目以降の押印は省略できます。
  • 賞与支払年月日…賞与を支払った年月日を記入します。提出する枚数が2枚以上でもそれぞれ記入する必要があります。
  • 被保険者整理番号…被保険者整理番号を記入します。
  • 生年月日…被保険者の生年月日を記入します。元号の番号、生年月日の順で記入します。
  • 賞与支払年月日…賞与を支払った年月日を記入します。
  • 賞与支払額…賞与を通貨で支払った場合は「通貨」の欄に金額を記入。「現物」の場合には0と記入します。
  • 賞与額…賞与支払額の「通貨」と「現物」の合計額から、1,000円未満を切り捨てた額を記入。
  • 基礎年金番号…70歳以上被用者のみ、基礎年金番号または個人番号(マイナンバー)を記入します。

より詳しい記入方法については、以下の日本年金機構のサイトを確認してください。

参考:賞与を支給したとき、賞与支払予定月に賞与が不支給のとき|日本年金機構


記入ミスがあった場合の対応

記入ミスなどにより訂正する場合は、以下の方法で訂正します。

  1. 該当部分を二重線で消し、上に正しい金額などを記入します。
  2. 該当部分が多い場合は、その行を二重線で消し、別の行に正しく記入し直します。
  3. 提出後に修正が必要な場合、上記の訂正方法を参考に、再提出します。

全ての資料を記入したら、管轄の年金事務所または事務センターに賞与の支給日から5日以内に提出します。


Flow4.賞与支払届を提出する

賞与支払届の提出先

賞与支払届の提出先は、どの健康保険に加入しているかによって変わります。書類の提出先には、全国健康保険協会と、全国健康保険協会以外とがあります。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)加入の場合
  • 協会けんぽの場合、提出先は日本年金機構です。したがって健康保険分も厚生年金分も、管轄の年金事務所または事務センターに提出すれば問題ありません。
  • 全国健康保険協会以外の場合
  • 企業によっては、その企業グループ専用の健康保険があります。そのような場合には、各健康保険組合と日本年金機構の2ヶ所に提出する必要があります。提出期限が短いですので、遅れないように提出します。


提出後、「保険料決定通知書」が年金事務所、または事務センターから郵送されます。賞与に対する保険料は、同月の標準報酬月額の保険料と合わせて、翌月末日までに納付します。

電子媒体で提出する場合

CDやDVDなどの電子媒体で提出する方法があります。提出方法は、以下の年金機構のホームページを参考にしてください。

参考:電子媒体申請|日本年金機構

電子申請を行う場合

24時間どこでも申請できる電子申請という方法もあります。こちらも日本年金機構のホームページで提出方法を参照してください。

参考:電子申請(e-Gov)|日本年金機構

退職者の場合の提出方法

賞与支払届に記載する対象は、賞与の支給当日までに在籍していた被保険者です。退職した後に賞与が支給されている場合、賞与支払届に記載する必要はありません。もしすでに記載されているのであれば、行ごと二重線で消します。

また、賞与支払当月に退職する場合は、社会保険の資格喪失日が翌月の1日となるため、健康保険料や年金保険料を徴収します。それ以外の場合では、保険料は徴収しないことになります。

賞与支払届の手続きで注意すべき5つのポイント

与支払届の手続きで注意すべき5つのポイント 賞与支払届を提出するには、次の5つの注意点があります。間違えて何度も修正することにならないように気をつけてください。

注意点1.賞与不支給でも提出が必要

賞与の支払予定月に支払がないときは、賞与不支給報告書の提出が必要です。2021年4月から賞与不支給報告書が新設されたことで、不支給の場合は賞与支払届の提出が不要になりました。

参考:【事業主の皆さまへ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について|日本年金機構

注意点2.標準賞与額に上限がある

標準賞与額には上限があります。健康保険は年度の累計額が573万円で、厚生年金は1ヶ月あたり150万円です。健康保険の場合、累計額が573万円を超えたときは、健康保険標準賞与額累計申出書を提出します。

また、厚生年金は1ヶ月で2回以上支給される際も、合算上限額が150万円となるので注意しましょう。つまり150万円を超えて賞与が支払われる場合、厚生年金の保険料は150万円の標準賞与額に保険料率をかけて算出します。

注意点3.70歳以上の従業員への対応

70歳以上の従業員に賞与を支払った場合、賞与支払届の備考欄にある「70歳以上被用者」に○をつけます。さらに、基礎年金番号またはマイナンバーを記入します。また、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険に加入している場合は、賞与支払届の被保険者氏名欄の余白に「高齢任意」と記入します。

注意点4.育児休業中の従業員への対応

育児や産前産後の休業中は、保険料が免除されます。しかし、休業中に支払われる賞与も標準賞与額(保険料を決める基準となる金額)として、年度内の累計額に含まれます。したがって、保険料はかかりませんが、賞与支払届の提出が必要になります。

注意点5.提出を忘れた場合の対応について

賞与支払届の提出を忘れていると、支払日の2ヶ月後に年金事務所から賞与支払届督促状が送られてきます。もちろん忘れないに越したことはないですが、もし忘れてしまって督促状がきたら、すぐに保険料を納付します。また、提出する予定の年金事務所や健康保険組合にも連絡をしてください。 場合によっては、遅れた理由を報告書として提出しなければなりません。延滞料を支払うことにもなりかねないので、賞与支払届は忘れないように提出します。

賞与支払届の提出を行わなかった場合

賞与支払届の提出を行わなかった場合 賞与支払届は、賞与を支給してから5日以内に提出しなければなりません。提出がなかった場合、年金事務所から督促状が届けられますので、ただちに賞与支払届を提出して保険料を納付します。 保険料の納付状況は、個人宛に送られる「ねんきん定期便」で確認できます。

この時、賞与支払届の提出もれによる保険料の未納が発覚するケースもありますので、提出もれがないよう十分な注意が必要です。

もしも、提出もれがあった場合、「事業主からの自主的な申出にかかる申出者リスト(賞与支払届提出もれ用)」を作成し、当時の賃金台帳などのコピーを添付の上、管轄内の年金事務所などに速やかに相談します。

賞与の支払から2年以上経ってしまうと、国の保険料の徴収権が消滅してしまいます。

この後に相談しても、将来もらえる年金額に反映されず、受給額も減ってしまうため従業員に迷惑がかかります。したがって、賞与を支給する際には、5日以内のスケジュールに賞与支払届の提出の予定を入れておき、提出もれがないようしっかり管理してください。

また、事前に年金事務所へ賞与支払月を連絡しておけば、賞与支払月の前月に書類が送られてきます。賞与支給前に、慌てて書類送付を依頼しないよう、あらかじめ連絡しておき余裕をもって提出します。


RELO総務人事タイムズ編集部
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