
モンスター社員6タイプ診断と対策ロードマップ:チーム崩壊を防ぐ方法
あなたのチームに厄介な社員がいて、現場が混乱していませんか?
本記事では、モンスター社員と呼ばれる問題社員の特徴から、具体的な対処方法まで解説します。
組織を崩壊させかねないモンスター社員への対応を誤ると、職場の雰囲気や生産性が大幅に低下する恐れがあります。
福利厚生の代行サービス最大手リロクラブが多数の企業様との付き合いの中から本件をまとめていきます。
「社員の問題、実は“職場環境”が原因かもしれません」モンスター社員やチームの不和を未然に防ぐには、制度やルールだけでなく、“エンゲージメント”の視点が欠かせません。
以下の資料では、社員の自発的な貢献意欲を引き出すための「8つの実践ステップ」と具体的な成功事例を紹介します。
👉 職場環境を整え、問題社員を生まない組織へ
目次[非表示]
- 1.モンスター社員とは
- 2.いますぐ使える!モンスター社員対処フローチャート
- 3.モンスター社員が生まれる背景と原因とは
- 4.モンスター社員を抱えるリスク
- 4.1.職場の雰囲気を壊すリスク
- 4.2.有能な社員の流出と他社員との信頼関係の悪化
- 4.3.生産性低下と管理工数の爆増
- 4.4.金銭的リスク― 放置は“三重払い”の損失に
- 4.5.訴訟リスク― 信用とブランドを同時に失う危険性
- 4.6.コンプライアンス違反・情報漏えい
- 5.モンスター社員の特徴と見極めポイント
- 5.1.認知のゆがみ(自己正当化バイアス)
- 5.2.規範軽視・自己ルール化
- 5.3.自共感欠如と関係軽視
- 5.4.責任転嫁・外部化志向
- 5.5.情報独占・透明性拒否
- 5.6.感情コントロール不全
- 6.モンスター社員の6タイプ例
- 6.1.タイプ①:パワハラ型
- 6.2.タイプ②:家族介入型
- 6.3.タイプ③:自信過剰型
- 6.4.タイプ④:被害妄想型
- 6.5.タイプ⑤:不安定型
- 6.6.タイプ⑥:反抗型
- 7.モンスター社員への効果的な対処方法とは?
- 7.1.対応①:事実確認ヒアリング
- 7.2.対応②:記録徹底!面談術
- 7.3.対応③:継続的指導+業務改善計画(PIP)
- 7.4.対応④:専門家連携:産業医・社労士・弁護士の活用
- 7.5.対応⑤:配置転換・職務変更で環境を調整
- 7.6.対応⑥:チームケアと周囲サポートの実践
- 7.7.対応⑦:懲戒処分〜退職勧奨・解雇手続き
- 8.モンスター社員問題を未然に防ぐために企業ができることとまとめ
モンスター社員とは
モンスター社員とは、就業規則や社会的常識を著しく逸脱し、次のような行動で周囲と業務に深刻な支障を及ぼす社員を指します。
- 業務命令の拒否
- 暴言・ハラスメント
- 情報独占・漏えい
- 常習的な遅刻・欠勤 など
外向きは強硬、あるいは“被害者ポジション”を取って訴訟やSNS拡散を示唆するケースも少なくありません。
ハーバード・ビジネス・スクールの研究(2015年)によると、有害な従業員を1人を抱えるコストとトップ1%の優秀な従業員の利益と2倍以上差があるとで示されています。
この為、モンスター社員の放置は組織リスクを飛躍的に高めます。
参考:ハーバード・ビジネス・スクールの研究(2015年)Toxic Workers
いますぐ使える!モンスター社員対処フローチャート
モンスター社員の問題が起きたら、まず STEP 1 へ着手してください。
-
STEP 1〈事実把握 & 口頭注意 15 分〉
行動を目視確認し、周囲に即ヒアリング。
口頭で「規程違反だ」と伝え、改善有無を 24 時間以内に判定します。 -
STEP 2〈記録 & 書面指導 30 分〉
改善がない場合、日時・発言をログに残し、書面で是正指示と期限を提示。
ここまでは管理職だけで完結可能です。 -
STEP 3〈PIP & 専門家連携〉
なお改善ゼロなら、PIP(業務改善計画)を設定すると同時に、産業医・社労士・弁護士へ即相談。
法的リスクを測定し、配置転換または懲戒・退職勧奨の可否を判断します。
フローチャートを常備し、YES/NO を追うだけで最適手順がわかる――。
迷ったら次の矢印に従ってください。
モンスター社員が生まれる背景と原因とは
本章では、モンスター社員が生まれる代表的な4つの構造要因──
①採用・配置ミスマッチ、②職場環境とマネジメント不備、③希薄な人間関係、④競争・成果至上主義──を順に解説します。
背景を正しく捉えることで、対処だけでなく 予防策 を設計できます。
採用・配置のミスマッチが火種になる
採用の段階で、カルチャーや価値観のすり合わせを怠ると、組織に潜在的な火種を抱えることになります。
入社後、本人は「この会社には自分の居場所がない」と感じ、周囲も「どうしても馴染めない人がいる」と見えないストレスを受け続ける状況に陥ります。
たとえば、成長や挑戦を重視するベンチャー気質の職場に、安定志向で指示待ち型の人材を配置してしまうと、受け身な姿勢が“やる気がない”と誤解され、孤立が深まることがあります。
こうしたミスマッチがOJTや配置転換で解消されない場合、本人のフラストレーションはやがて周囲への不満や攻撃として現れ、“モンスター化”の兆しにつながります。
職場環境・マネジメント不備による増幅
不公平な評価制度や場当たり的な指導は、社員の心に“不信リザーバー(=不信感の貯水池)”を静かに満たしていきます。
このリザーバーが限界に達すると、「指示に従わない」「陰で不満をばらまく」「同僚と衝突する」といった問題行動が、突如として噴き出すことも珍しくありません。
たとえば、「毎月方針が変わる上司」「成果ではなく“好き嫌い”で決まる評価制度」などが続くと、不信はやがて、職場への攻撃や離職というかたちで表面化します。
こうしたリスクを抑えるには、就業規則の徹底と、管理職への指導・マネジメント研修を通じて、「ルールが公正に機能する職場」を再構築することが急務です。
希薄な人間関係がモンスター社員を生むワケ
リモートワークの普及や業務効率の優先により、雑談やちょっとした声かけの機会が減り、職場の人間関係は年々希薄になっています。
リクルートマネジメントソリューションズの調査でも、「5年前より人間関係が希薄になった」と感じる社員は全体の約45%にのぼり、特に若手や中途入社者の孤立が深刻化しています。
このように「誰にも相談できない」状態が長く続くと、孤独感や被害意識が膨らみ、やがてフラストレーションが問題行動として噴き出すことがあります。
たとえば、「自分だけ評価されていない」と思い込んだ社員が、上司に対し極端な主張を繰り返したり、社内チャットで攻撃的な言動に出たりするケースは、現場でも実際に起きています。
こうしたリスクを防ぐには、1on1ミーティングやメンター制度の導入によって、日常的に「話しかける・話しかけられる」関係を仕組みとして築くことが不可欠です。
参考情報:リクルートマネジメントソリューションズ「職場でのサポートに影響を及ぼすのは何か」
競争社会が引き起こす心理的防衛とモンスター化
過度な成果主義の浸透や終身雇用制度の形骸化により、社員は「評価されなければ明日はない」という極端なプレッシャーを抱えるようになります。
成果が数字でしか評価されず、定量的な結果だけが称賛される環境では、「自分には価値がある」と実感する機会が著しく減ってしまいます。
このような不安が続くと、人は無意識に心理的な防衛反応を起こし、自尊心を守ろうとします。
たとえば──
周囲を見下すような態度で「俺がいないと回らない」と振る舞い始めたり、自身の評価には触れず、上司や同僚に対して“逆パワハラ”を主張したりといった行動が現れます。
“成果を出さない=存在価値がない”という過剰な構造は、こうした問題行動を生む温床となり、やがて組織全体の健全性をむしばむ原因になります。
モンスター社員を抱えるリスク
モンスター社員の存在は、チームの生産性・離職率・訴訟リスクを同時に引き上げる爆弾です。
Gallup の最新報告では、やる気を失った従業員が世界で 8.8 兆ドル(世界 GDP の 9%) に相当する損失を生み出すと試算されています。
ここでは企業が直面する 6 つの具体的リスクを確認しましょう。
参考情報:GALLUP社「従業員エンゲージメント戦略:世界の8.8兆ドルの問題を解決する 」
職場の雰囲気を壊すリスク
職場の空気は、たった1人のモンスター社員によって一気に崩壊することがあります。
本人の言動はもちろん、それによって周囲に生じる二次的な悪影響が、チームの連携や心理的安全性を深刻に損ないます。
具体的には、次のような事態が連鎖的に発生します:
- 理不尽な要求やこだわりによって業務進行が妨げられ、残業が常態化
- 感情の爆発や逆ギレにより、ミーティングが萎縮と沈黙の場に変質
- 欠勤・遅刻の常習化により、エース社員が穴埋めに奔走し疲弊
- 威圧的な言動や陰口が社内チャットやSNSにまで広がり、対立構造が固定化
こうした環境に置かれたチームでは、やがて「本来業務に集中できない」と感じる社員が増えます。
有能な社員の流出と他社員との信頼関係の悪化
モンスター社員を放置した職場では、「何をしても注意されない人がいる」「不公平だ」といった不信感がまじめな社員の間に広がります。
トラブルが絶えず、「自分の力を発揮できない」「改善の見込みがない」と感じれば、市場価値の高い人材ほど迷わず次のステージへ移っていきます。
実際、毒性のあるリーダーがいる部署では、離職意向が平均で47%も高くなるという研究結果もあります。
この状況を放置すれば、組織は「辞めていくのは優秀層、残るのはトラブルメーカーとその擁護派」という“逆選別”の構図に陥り、健全な組織構造を維持できなくなります。
モンスター社員の存在は、単なる個人の問題にとどまらず、組織全体の信頼関係をじわじわと壊していく火種なのです。
参考情報:MDPI「有害なリーダーシップと離職意図 」
生産性低下と管理工数の爆増
モンスター社員の存在は、組織全体の生産性と管理工数に深刻な影響を及ぼします。
彼らの問題行動により、周囲の社員のパフォーマンスが低下し、管理職は対応に多くの時間を割かざるを得なくなります。
実際に、Robert Half社の調査では、管理職が問題社員の指導や対応に週平均10時間以上を費やしていることが明らかになっています。
これは、業務時間の約26%に相当し、本来の業務が後回しになる原因となっています。
面談、苦情処理、トラブルの仲裁など、問題社員への対応に必要な管理工数は雪だるま式に増加し、組織の生産性と士気を同時に蝕んでいきます。
参考情報:LADDERS「管理職は時間の26%を悪い従業員の指導に費やしている 」
金銭的リスク― 放置は“三重払い”の損失に
まず見過ごせないのが、「給与の対価として何も生産していない」状態が続くことです。
こうした社員に支払われる基本給や福利厚生費は、企業にとって“働かない資産への投資”になりかねません。
さらに深刻なのは、その影響で優秀な社員が辞めてしまうケースです。
退職した人材にかけてきた採用・育成コストは“回収不能な sunk cost(埋没コスト)”となり、さらに新たな採用・オンボーディングに追加投資が必要になります。
一般に、社員1人の採用・育成には年収の1〜1.5倍のコストがかかるとされます。
つまり、モンスター社員を放置することで、企業は次の“三重払い”の金銭的損失を負うリスクにさらされるのです。
- 当人への給与(直接コスト)
- 業務停滞・雰囲気悪化による生産性の低下(間接コスト)
- 優秀人材の流出と再採用・育成にかかる費用(波及コスト)
訴訟リスク― 信用とブランドを同時に失う危険性
モンスター社員は、自身への注意や処分を「不当」と感じた場合、企業を相手取って訴訟に踏み切るリスクをはらんでいます。
社名がネット上で拡散されれば、企業ブランドの毀損、採用難、株主対応の悪化など、無形資産に対する目に見えない損失が積み上がっていきます。
さらに、訴訟の平均審理期間は1〜2年とされ、その間、社内には緊張が漂い続け、社外からは「炎上リスクのある会社」と見なされることで、採用や営業活動にも長期的な影響が及びます。
対応を誤れば、「損害賠償」+「社会的信用の低下」という二重の損失に直面しかねません。
モンスター社員の対応が難しい最大の理由は、こうした訴訟リスクが常に背後にあることにあります。
コンプライアンス違反・情報漏えい
モンスター社員の中には、規範意識が著しく低く、企業の機密情報や顧客データの扱いに無頓着な者もいます。
たとえば、管理権限を持つ社員が社内システムから顧客情報を私的に持ち出し、それが外部に漏洩した場合、企業は数千万円規模の損害賠償や行政指導を受ける可能性があります。
違反が公表された瞬間、企業への信頼は一気に失われ、株価が急落する例も少なくありません。
情報管理の“穴”は、多くの場合、「人」のゆるみから生まれます。
たった1人のモンスター社員が、組織全体の信用と利益を吹き飛ばす引き金となり得るのです。
モンスター社員の特徴と見極めポイント
モンスター社員の対応を誤らないためには、まずはその特徴を冷静に把握することが欠かせません。
一見すると普通に見える言動の裏に、組織に悪影響を及ぼす“兆候”が潜んでいることもあります。
ここでは、現場でよく見られる6つの特徴と、それぞれの見極めポイントについて整理していきます。
認知のゆがみ(自己正当化バイアス)
モンスター社員の中には、自分が問題行動を取っているという自覚がまったくない人も少なくありません。
むしろ「自分こそが正しい」「間違っているのは周囲だ」と本気で信じており、その背景には強い被害者意識や恨みが隠れていることもあります。
このような認知のゆがみは、たとえ客観的な証拠や指摘を受けても、「聞いていない」「前例がない」「なぜ自分だけが」と論点をすり替え、素直に受け入れようとしない言動に表れます。
たとえば、会議中に事実誤認を指摘された際、「自分は知らなかった」「誰も説明してくれなかった」と即座に反論し、自分が不当に扱われているかのような態度を取る──こうした姿勢は典型的です。
口調は穏やかでも、内心には強い不満や敵意を抱いており、対話だけでの解決は難しい傾向にあります。
規範軽視・自己ルール化
モンスター社員の中には、組織のルールや合意形成のプロセスを軽視し、「自分のやり方のほうが正しい」といった考えで動く人がいます。
就業規則や稟議フローを「形だけのもの」と見なし、自分の都合や感情を優先して行動する姿勢が目立ちます。
たとえば、経費精算の期限を過ぎた後に「これも対象に入れてほしい」と強引に追加提出したり、正式な稟議を経ずにSlackなどで「いいよね?」と口頭決裁を迫るような行動が典型です。
本人は「柔軟に対応している」つもりでも、周囲からは「ルールを無視した独断行動」と受け取られ、組織の秩序を乱す原因になります。
自共感欠如と関係軽視
場の空気を読む、周囲に気を配るといった行動がほとんど見られず、物事を常に自分中心の視点で判断し、行動する傾向があります。
自分の発言や行動が他人に迷惑や不快感を与えていることに無自覚であることが多く、結果として人間関係のトラブルやチーム内の摩擦を引き起こします。
特に、他者からの指摘やアドバイスを素直に受け入れられず、改善の兆しが見えにくいため、組織としても対応に苦慮しやすいのが現実です。
たとえば、会議中に他者の発言を遮って侮蔑的な言葉を投げかけたり、社内チャットで嘲笑のスタンプを送るといった行動が見られます。
また、「それって常識でしょ?」「なんでそんなことも知らないの?」といった、相手の人格を否定する発言を繰り返すのも特徴です。
責任転嫁・外部化志向
モンスター社員の中には、自分のミスやトラブルの原因を常に他人や環境のせいにする、「責任転嫁型」の傾向を強く持つ人がいます。
本人は自分に非があるとは考えず、「仕様書が不完全だった」「営業が現実的でない数字を設定している」などと、問題の本質を外部に押し付けて正当化しようとします。
このような外部化志向の強い社員は、自らの行動や判断を省みる姿勢に欠けるため、改善や成長の機会を自ら手放してしまうのが特徴です。
上司やチームがどれだけフィードバックを与えても、本人の中では「自分に責任はない」と処理されるため、行動が変わらず、同じトラブルが繰り返されるリスクも高くなります。
情報独占・透明性拒否
モンスター社員の中には、自分の立場や影響力を守る手段として、業務に関わる重要な情報を意図的に囲い込む特徴があります。
情報共有のルールや仕組みが曖昧な職場では、このような独善的なふるまいが目立ちやすくなり、チーム全体のパフォーマンス低下につながります。
たとえば、重要な資料や業務進捗を個人のPCやローカルフォルダにだけ保存し、共有ドライブへのアップロードを拒否するケース。
その結果、「代理対応ができない」「情報が引き出せない」といったトラブルが発生し、業務の継続性に深刻な支障をきたすこともあります。
感情コントロール不全
モンスター社員の中には、日常的に感情の起伏が激しく、衝動的な言動で周囲を困惑させる特徴があります。
些細なきっかけで怒鳴り声を上げたり、感情的に泣き崩れるといった極端な反応を示すこともあり、周囲の社員にとっては「次に何が起きるかわからない」という心理的な緊張を強いる存在になります。
たとえば、深夜に感情的なSlack投稿を連投したり、@allメンションで公開の場で誰かを叱責するような行動が典型です。
チャット上での感嘆符や絵文字の多用、極端な口調も、感情過多のサインとして現れることがあります。
モンスター社員の6タイプ例
モンスター社員と一口に言っても、その言動や組織に及ぼす影響はさまざまです。
むしろ“わかりやすく困った人”ばかりではなく、表面上は優秀だったり、感情ではなく「正論」で周囲を抑え込むタイプもいます。
ここでは、現場で遭遇しやすい6つのタイプに分類し、それぞれの特性とリスクを紹介します。
チームを守るうえで、早期に“兆候”を見抜く視点として、ぜひ参考にしてください。
タイプ①:パワハラ型
チームをけん引する立場にあるはずの社員が、職位や専門性を武器に、部下や後輩を過剰に押さえつけてしまう──それが、いわゆる「パワハラ型モンスター社員」です。
こうしたタイプは、自身の立場に自覚的である一方、それを“指導”という名目で正当化し、実質的には威圧や支配によって相手を動かそうとします。
厄介なのは、本人が成果を上げていたり、技術的に頼りにされている場合が多く、周囲や上司も強く注意しづらい点です。
会議の場での強引な論破など、本人にとっては「当然の指導」であっても、受け手には深い萎縮や無力感を与えます。
このような行動が繰り返されることで、若手社員が育たない、報告や相談が上がってこないといった“負の連鎖”が組織に広がっていきます。
タイプ②:家族介入型
企業と雇用契約を結ぶのは本来“本人”であるにもかかわらず、職場での出来事や評価に対して、親や配偶者が前面に出て介入してくる──それが「家族介入型モンスター社員」です。
このタイプは、業務上のトラブルや処遇への不満を自ら会社と対話して解決しようとせず、家庭内の関係者が代理で会社に連絡を取るという、通常では考えにくい対応を取ります。
典型的なケースとしては、人事部門や現場責任者に対して親が直接電話をかけてきたり、退職交渉の場に家族の同席を求めてくるなどが挙げられます。
一見すると“親が過干渉なだけ”にも見えますが、問題の本質は、当人が職業上の課題を他者に委ね、自ら向き合おうとしない依存的な姿勢にあります。
このような依存性は、本人にフィードバックを行っても、数日後に“家族からのクレーム”という形で跳ね返ってくるなど、企業が想定していない二次対応コストが発生することにあります。
タイプ③:自信過剰型
一見すると堂々として頼りがいのある人物に見えながら、実は過剰な自信を振りかざし、周囲との協調を欠く──それが「自信過剰型モンスター社員」です。
このタイプは、自分の能力や考えに強い自負を持ち、自分の意見ややり方が通らないと不機嫌になり、「自分だけが正しい」という態度を崩しません。
他者の意見を尊重する姿勢に乏しく、レビューでの指摘を即座に否定したり、自分の関与が限定的だった成果でも「自分が主導した」と誇張して主張する傾向が見られます。
こうした姿勢は、当初は“自信がある人”として評価されることもありますが、次第にチームの議論を停滞させ、本音の共有が難しい空気を生み出します。
タイプ④:被害妄想型
ちょっとした注意や善意の声がけにも、「自分を責めているのでは」「裏があるのでは」と過剰に反応してしまう──それが「被害妄想型モンスター社員」です。
このタイプは、他者の言動を素直に受け止めることができず、あらゆる出来事を自分への否定や攻撃と解釈しがちです。
たとえば、上司からのフィードバックに対して即座にスマホで録音を始め、後日「これはパワハラではないか」と社内相談窓口に通報する。
あるいは、SNSに実名は出さずとも「職場で人権侵害を受けた」とほのめかす投稿をする──こうした“防衛行動”が過剰で攻撃的になりやすいのが特徴です。
自分を守るために周囲を疑い、萎縮し、ときには卑屈な態度をとったり、突然攻撃的に反発するなど、関係構築が極めて困難になります。
「意図せず地雷を踏んでしまいそう」と感じさせる空気は、チームの安心感を蝕み、最終的には報連相の減少や業務停滞につながるおそれがあります。
タイプ⑤:不安定型
言動や感情の振れ幅が極端に大きく、その日の気分や相手によって態度が変わる──そんな“予測不能さ”が職場を疲弊させるのが「不安定型モンスター社員」です。
このタイプは情緒が不安定で、感情のコントロールが難しく、業務上の些細な刺激にも過剰に反応する傾向があります。
たとえば、朝礼中に突然涙を流して号泣したかと思えば、午後には無断で欠勤する。あるいは、軽い注意に対して怒声を上げ、机を叩く──といった行動が見られます。
また、人によって態度が大きく変わるのも特徴です。
「気に入られている時は問題ないが、機嫌を損ねた瞬間に敵視される」といった、不安定で読めない関係性が周囲に緊張を強います。
このような状態が続くと、チーム全体の雰囲気は重苦しくなり、心理的安全性が大きく損なわれます。
タイプ⑥:反抗型
組織としての意思決定や、上司からの明確な指示に対して、なぜかことごとく反発する──それが「反抗型モンスター社員」です。
このタイプは、業務命令やルールに対して素直に従おうとせず、常に“自分のやり方”で押し通そうとする姿勢が目立ちます。
たとえば、同僚の善意あるアドバイスにも「自分は違う」「そのやり方はおかしい」と聞く耳を持たず、全社共通のルールすら「自分には当てはまらない」と独自解釈で押し通そうとします。
このタイプは、協調行動を「強制」と捉えて拒否するため、チーム運営にとって深刻な障害となります。
放置すれば、チームの秩序はじわじわと崩れ、他メンバーの離反や疲弊を招くリスクが高まります。
モンスター社員への効果的な対処方法とは?
間違った対応は、企業の信用・人材・組織力を一瞬で奪います。
では、どうすればモンスター社員と“組織を壊さずに向き合う”ことができるのか?
ここからは、現場ですぐに活かせる7つの対処方法を、初動から最終判断まで順を追って解説します。
対応①:事実確認ヒアリング
モンスター社員への対応を進める際、最初に着手すべきは「憶測ではなく、事実に基づいた状況整理」です。
まず、関係する上司・同僚・人事などのキーパーソンをリストアップし、トラブルの経緯を時系列で整理します。
ヒアリング結果は簡易的でもよいので、必ず議事録として記録し、その日のうちに共有することで、対応のスピードと透明性を確保します。
得られた情報をもとに、「何が起きたのか」「誰がどう受け止めているのか」といった論点を整理し、初期対応メモとしてまとめます。
記録を残す、多角的に聞く、早期に共有する──この3点を徹底することが、正確な初動対応のカギとなります。
対応②:記録徹底!面談術
問題行動への対応は、感情ではなく「記録」と「対話」を軸に進めることが重要です。
口頭での注意や説得だけに頼ると、後になって「そんな話は聞いていない」「納得していなかった」といった食い違いが生じ、対応が平行線に陥るリスクがあります。
このような事態を防ぐには、面談時には必ず書面での記録を残し、本人の確認サインを得ることが望ましい対応です。
記録には、少なくとも以下の4点を明記しておくと、トラブルの再発時にも有効に機能します。
- 事象が発生した日時
- 具体的な行動・発言内容
- 該当する就業規則や社内ルール
- 注意・指導の内容と、本人がその場で述べた所見
この情報をもとに面談を行えば、個人の主観ではなく事実に基づいた冷静な対話が可能になり、感情のぶつかり合いを避けつつ、次の対応ステップへの判断材料としても役立ちます。
対応③:継続的指導+業務改善計画(PIP)
早期の段階で軌道修正を図るには、単なる注意喚起ではなく、改善に向けた「具体的な指針」と「継続的な働きかけ」が不可欠です。
そこで有効なのが、行動と業務の両面から支援・評価を行う「業務改善計画(PIP)」の導入です。
PIPは、本人の合意のもとで実施される“改善支援のラストチャンス”であり、その内容は明確かつ実行可能であることが前提となります。
一般的には、厚労省が提示するモデル就業規則が求める “段階的指導” を担保するため、PIP(業務改善計画)を 30〜90 日 のスパンで設計し、以下の4項目で目標を整理します。
- 達成すべき業務KPI(数値目標)
- 改善すべき行動指標(例:報連相の頻度、態度の変化など)
- 必要な支援策(面談、OJT、業務再設計など)
- 評価のスケジュール(中間・最終面談のタイミング)
実施にあたっては、定期的にフィードバックの場を設け、「何ができていて、何ができていないか」を明確にしながら進めます。
なお、PIPは単なる成長支援ではなく、「未達成の場合、懲戒も含む対応に進む可能性がある最終改善機会」であることを、あらかじめ本人に明示しておく必要があります。
対応④:専門家連携:産業医・社労士・弁護士の活用
モンスター社員の行動や状態の背景には、性格や業務適性にとどまらず、メンタルヘルスの不調や法的リスクを伴うケースも少なくありません。
こうした複雑な状況には、現場や人事部門だけで対応を抱え込まず、産業医・社労士・弁護士など外部の専門家と早期に連携することが不可欠です。
たとえば、情緒不安定、極端な落ち込み、体調不良の長期化など、メンタル面の兆候が見られる場合は、即時に産業医へ紹介するのが原則です。
また、解雇や懲戒処分といった重大な判断を検討する段階では、弁護士の同席による面談や記録の作成が重要な防御策となります。
一見すると、専門家の関与は“最終手段”のように思われがちですが、早く巻き込むほど事態が穏便に収まることも少なくありません。
対応⑤:配置転換・職務変更で環境を調整
問題行動の背景に、職務内容や人間関係のミスマッチが影響している場合は、配置転換や職務変更によって環境そのものを見直すことが、有効な選択肢となることがあります。
ただし、「異動させれば解決する」といった過度な期待は禁物です。
新たな環境でも同様の問題行動が再発する可能性は十分にあり、異動はあくまで改善の見込みを見極める“検証フェーズ”と捉えることが重要です。
実施にあたっては、異動後30日間を目安に、簡易的なPIP(ミニ版)を併用し、業務・行動両面の改善状況を観察・評価します。
この期間中に、上司や周囲からのフィードバック、KPIの達成状況、態度の変化などを客観的に記録し、「この異動が効果的だったかどうか」を判断する材料とします。
もし改善が見られない場合には、安易に再転換を繰り返すのではなく、次のステップ(本格的なPIPの再実施や懲戒の検討)に移行する判断も視野に入れるべきです。
対応⑥:チームケアと周囲サポートの実践
モンスター社員への対応に注力するあまり、他の社員のケアが後回しになる――それは最も避けるべき悪循環です。
問題行動の矛先が向けられていたり、現場の雰囲気が乱されていたりする中で、周囲の社員は静かにストレスを蓄積し、疲弊していくリスクがあります。
こうした状態を防ぎ、対応を組織全体で乗り越えるためには、当事者“以外”へのケアと対話を、同時並行で進めることが欠かせません。
まずは、週次の1on1ミーティングや月次のパルスサーベイを活用し、影響を受けているメンバーの声を定期的に拾い上げる仕組みを整えましょう。
さらに、産業医・EAP(従業員支援プログラム)・人事相談窓口といった社内外の相談リソースを、Slackやイントラネットの固定メニューとして常設することで、「いつでも話せる場所がある」という安心感を提供できます。
このように、ケアの機会を“見える化”し、常にアクセス可能にしておくことは、心理的安全性を維持するうえで非常に効果的です。
対応⑦:懲戒処分〜退職勧奨・解雇手続き
業務改善計画や配置転換など、あらゆる支援策を講じても問題行動が続き、組織に深刻な悪影響を及ぼす場合には、懲戒処分・退職勧奨・解雇といった厳正な対応を検討せざるを得ません。
ただし、この段階で最も重要なのは、感情的・突発的な判断を避け、就業規則に基づいた正当な手続きを丁寧に踏むことです。
妥当性を担保するためには、人事委員会・産業医・顧問弁護士などによる合議体制を整え、議事録を証拠として残すことが不可欠です。
たとえ「もう限界だ」と感じる状況でも、企業側の対応がルールに沿っていなければ、労働審判や訴訟リスクが一気に高まります。
だからこそ、最終局面においても、焦らず、逸らさず、手続きを尽くす姿勢が、企業と現場の信頼を守る最後の砦となるのです。
モンスター社員問題を未然に防ぐために企業ができることとまとめ
モンスター社員の問題は、発生後に対処するだけでなく、“そもそも生まれにくい職場”を設計する視点が欠かせません。
ここでは、採用・育成・発見・対応の4ステップに沿って、企業が今すぐ取り組める実践策を整理します。
-
採用段階でのミスマッチを防ぐ
- 適性検査・性格診断を活用し、職務・組織との相性を定量的に評価
- 面接では「過去の葛藤経験」「チームでの立ち回り」など、人間性に踏み込んだ質問を行う
-
入社後のオンボーディングと育成支援
- 初期1〜3ヶ月は、週次1on1やメンター制度によるフォロー体制を整備
- 適性を踏まえた業務アサインの見直しで、“ズレた自己評価”を修正する機会を設ける
- 管理職には、メンタル対応や問題行動の早期察知に関する研修を年1回以上実施
-
問題の兆候を早期に拾う仕組みづくり
- 月次パルスサーベイやストレスチェックの設計を見直し、「周囲から見た違和感」も拾える項目を追加
- 面談記録やSlackログから、行動の変化や発言パターンを定期的にチェック
-
システム化された対応フローで組織を守る
- 問題発見時は、事実確認 → 初期面談 → 業務改善計画(PIP) → 専門家連携 → 懲戒判断という一貫した対応フローを徹底
- フローチャートやPIPテンプレートを社内に共有し、迷わず対応できる状態を整備
- 管理職・人事部門には、事例共有や模擬研修を通じた継続的なスキルアップを実施
「事前の備え」こそが、組織の健全性を守る最大の防御策です。
現場任せにせず、構造と文化の両面から“モンスター化”を未然に防ぐ体制づくりが求められます。
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