モンスター社員の存在に頭を悩ます企業が増えています。そのモンスター行為は、年々範囲を広げ、悪質化/複雑化しています。対応を誤れば、訴訟問題に発展するリスクもあるため、その対処もさらに難しくなっているようです。そこで今回は、モンスター社員の原因や特徴を踏まえ、適切な対処法を解説します。

モンスター社員とは?

モンスター社員とは?
モンスター社員とは、仕事に対する姿勢や行動、職場や職場で関わる人への言動や態度が極端に常識外れな社員のことです。あり得ない主張や批判を繰り返し、周りの人に迷惑をかけ、業務のスムーズな進行を妨げます。

考えもつかないような言いがかりや難癖をつけたり、自分の都合だけを考えた主張や行動をとったりします。高圧的なイメージがあるかもしれませんが、弱者のような振る舞いで非常識な主張をすることもあるようです。

現在では、どのようなモンスター行為があるのかを簡単にまとめることができないほどに企業を悩ます範囲が広がっており、あらゆる場面で人や業務に影響を及ぼしています。企業の対応によっては、モンスター社員が訴訟を起こすケースもあるようです。

モンスター社員が生まれる原因

困った社員は、いつの時代も、どの職場にもいたのではないでしょうか。しかし、「モンスター」という言葉であらためて強調された背景には、社会環境や職場環境、人との関わり方の変化の中でモンスター化してしまう現象が目立ってきたことがあります。モンスター社員を生み出す原因として考えられる3つの事柄を掘り下げていきます。

職場環境が原因の場合もある

企業にとってモンスター社員は、取り除きたい存在です。しかし、その企業の職場環境がモンスター社員を生み出している原因である可能性もあります。このことは、特定のモンスター社員への対処を考える以前に、企業に必要な視点です。

モンスター社員の放置がモンスター社員を生み出すこともあります。また、能力を無視した人事配置や人事評価の在り方に、社員が過剰な不満や苦痛を募らせてしまうケースも少なくありません。そのような職場環境の悪さが、モンスター社員を生み出す原因になっていることもあります。

人との関わりの希薄化

社会的変化を見ると、昔に比べて人との関わりが希薄化しています。デジタル技術の進化でコミュニケーションのスタイルも様変わりしています。

懸念されることは、周りの人の存在を意識したり、思いやったりすることの欠落です。主張することは悪いことではありませんが、基本的な伝達力、建設的な話し合いをする能力が低くなったことや、その能力を培う機会が不足しているのではないでしょうか。

モンスター行為も人のひとつの表現方法と捉えてみると、そこに歪みが見られるわけですから、コミュニケーション不足はモンスター社員の誕生に大きく影響していると考えます。

競争社会が生み出す心理的な防衛機制

競争社会が生み出す心理的な防衛機制
成果が求められ、昇進昇格と周りの人との競争が激しい時代を経てきた日本。競争環境は、企業という組織に留まらず、学校教育、コミュニティなどでも見られます。

共存や協働することよりも、生き残るために自分が一歩抜きん出ようとする風潮もあります。将来の見通しが立てにくいことや保証や安定性の見込めない社会の状況に、余裕を失う人が増えていることも事実です。

そのような環境に身を置いたり、目の当たりにしたりして育ってきた人が、過度な防衛からモンスター社員になってしまうこともあります。

モンスター社員の種類

モンスター社員には、さまざまな種類(タイプ)があります。主な6つのタイプについて、見ていきましょう。

パワハラ型

パワハラ型
職場でおかれている自分の立場や地位を利用し、部下などを攻撃するタイプです。パワーハラスメントに対する関心も社会的に高まっていますが、なくなりません。企業にとっては、職場の雰囲気を悪くし、部下や新人社員の退職などを招くパワハラ型モンスター社員です。

個人としてみると優秀で好成績を上げている社員でも、自己中心的なパワハラをしているケースは少なくないようです。

家族介入型

業務や職場に対して、従業員の家族が介入するタイプです。企業に対して、主張や文句を突きつけてくるのは親や家族です。この場合、親や家族がモンスターという可能性もあります。

しかし、問題は本人です。何ごとに対しても、判断や問題解決を親まかせ(依存)にする社員が問題なのです。就職は、大人の本人と企業との契約のはずです。業務上の問題は自分で、もしくは会社との折り合いをつけながら解決を図るものと考えるべきでしょう。

自信過剰型

自分だけが正しいと強く主張を押し通そうとするタイプです。

自分の意見が通らないと、感情的になったり、周囲に同情を求める行動も見られます。周りに配慮することができない上に、自己の能力に過剰な自信をもっている人が多いです。横柄でわがまま、頑固で融通が効かないといった印象があります。

被害妄想型

被害妄想型
人を信じることができず、何ごとも歪曲した捉え方をしてしまうタイプです。善意にも裏があると危惧して自らストレス溜めたり、些細なことに被害者意識をもったりします。このタイプは、自分を責める傾向も強いことが特徴で、心的な余裕がありません。

これらのことが卑屈さや攻撃性として露見し、業務に支障が出ることも多いです。周りにとってもどのように対処すればいいのかと気を揉ませる傾向があります。

不安定型

情緒が極端に不安定なタイプです。人によって態度や言動が異なることが特徴です。そのことが周囲のコミュニケーションを険悪化させます。

常に不安要素を抱えているため、その不安を解消するために自分勝手な自己防衛を図ります。感情的にも露骨な落ち込みが続いたり、すぐにキレたりと浮き沈みが激しいこともあります。

反抗型

何を言われても、何に対しても反抗で対応してしまうタイプです。

指示や指導に対して、不可解なほどに素直に応じようとしません。上司だけでなく、同僚の忠告にも耳を傾けなかったり、皆でやろうと決めたルールに従わなかったりすることが多いです。このため孤立しやすいという特徴もあります。

その反抗的な主張や行動を正当化しようとするため、職場にとって厄介な存在です。

モンスター社員を抱えるリスク

モンスター社員を抱えるリスク
企業がモンスター社員を抱えることは、リスクです。甚大な損害につながる可能性があることも否めません。具体的にどのようなリスクがあるかを確認していきましょう。

職場環境へのリスク

モンスター社員は、職場の雰囲気を負のスパイラルに巻き込みます。モンスター社員も社員ですから、周りと関わりながら仕事を進めます。

例えば、モンスター社員からの理不尽な要求、欠勤するモンスター社員のカバー、職場で感情をむき出しにして職場の雰囲気を悪化させるモンスター社員に一喜一憂するなど、影響を直に受ける社員が出てきます。

健全で優秀な社員までが、ネガティブな状況に陥ったり、複雑な心境になってしまいます。モンスター社員と関わる中で、不快や苦痛が募って退職する人も少なくありません。

この状況がそのまま職場の雰囲気を作り出します。職場の雰囲気は、業務の進行や質を左右する重要なものです。本来の仕事に打ち込めない雰囲気に辟易して転職を考える人も出てくるでしょう。

企業にとっては組織強化どころか、組織構成の基盤さえ安定しない状況が続いてしまいます。

金銭的リスク

金銭的リスクについては、まず、モンスター社員への給与を考えてみましょう。モンスター社員は、何かと理由を探し出して、経費請求や給与アップを要求します。怠慢や欠勤があっても、その原因を企業や職場の人に押し付けて責任逃れするケースも多いです。このような社員に基本給を支払うことは、企業にとっては損失でしょう。

モンスター社員の存在は、職場の業務を全体的に停滞させがちです。本人の給与どころか、多大な損失につながっている可能性もあるのです。

先にも挙げていますが、社員の退職理由がモンスター社員の存在ということもあります。退職者にかけてきたこれまでの投資は無駄になり、あらたな人員確保や教育にかかるコストを発生させるでしょう。このような金銭的な悪影響も、決して無視できるものではありません。

訴訟リスク

モンスター社員は、企業の対応が自分の思うようにならないと、訴訟を起こす可能性もあります。専門機関や弁護士などを介して、企業に損害賠償を求めるのです。もちろん、その訴訟に負けると損害賠償の支払いが発生します。

この段階での企業にとっての最大の損失は、社会的信用を失ってしまうことです。その損害賠償の支払い以上に、大きな損失に発展すると考えられます。金銭面に留まらず、経営自体が危ぶまれる状況に陥る可能性も否めません。

モンスター社員対応を難しくしているのは、この訴訟リスクの存在が大きいと考えます。

モンスター社員の特徴

モンスター社員の特徴
モンスター社員には、いろいろなタイプがあることを見てきましたが、ここでモンスター社員に見られる共通の特徴について説明します。

自覚がない

モンスター社員本人は、自分がモンスター的な行動や言動をしているという自覚はありません。周りを困らせ、おとしめようという悪意がないことも多いです。恨みや妬みからモンスター行為に及んでいることもありますが、やはり本人は、自分は間違ったことはしていないと思っています。

上から目線の自己主張

モンスター社員は、自分を正当化し、守ろうとする行為や言動が目立ちます。軽蔑や立場の弱化、低評価などに対しては、過剰な反応を示します。言い訳などの盾だけでなく、攻撃的な防御に出ることも少なくありません。

優越感で安心しておくために自分の能力を見せつけたいという自己顕示欲や、認められ、求められる存在であることを確認するための承認欲求も強いです。これらのことも主張の強さにつながっていると思われます。

自己中心的

モンスター社員は、周りの状況を考慮したり、場の空気を読んだりしません。それらがどうであろうとお構いなしの自己中心的な性格の傾向があります。

自分自身を中心として物事を考えているため、自分が周囲に不快な思いをさせたり、迷惑をかけていることにも気づけません。他者の意見やアドバイスを受け入れるハードルも高くなるでしょう。このため、回復や改善の可能性が低いことが考えられます。

モンスター社員の弱点とは?

モンスター社員には、弱点があるといわれます。先天的性格からのモンスター社員にも、ストレスや苦痛の蓄積から後天的にモンスター社員になってしまった人にも、あてはまる弱点です。

自信がない

モンスター社員が自分を正当化するのも、権利や権力を振りかざすのも、自分を守るためです。自分に自信がないため、理不尽な要求や主張を盾にして自分を守ろうとしているのです。

自分を過信していても、自分の能力や実力と現実とのギャップを埋めるものが必要になります。だからこそ、自分に対する軽蔑や低評価など、ネガティブな周囲の反応に過剰反応してしまうのです。自信がないことを認めたくない、という心理が働いていることもあるでしょう。

被害妄想や不信感を抱いてしまうのも、不安=自信のなさのあらわれではないでしょうか。

余裕がない

能力以上のポジションに振り回されたり、自分の許容範囲を超えた仕事量を抱えると、誰もが心に余裕をなくします。余裕を確保して仕事に取り組めていれば、攻撃的で高圧的な態度は避けられることかもしれません。余裕のないときの視野は極度に狭まります。モンスター社員には余裕がないと考えることもできるでしょう。

モンスター社員への対処方法

モンスター社員への対処方法
モンスター社員には適切な対処が必要となります。まずは、モンスター社員の可能性のある人材の採用を避けることが先決です。その上で、就業規則、評価制度を整備することも重要対策となります。モンスター社員に適切に接する術を企業が理解することが大切です。

採用面接でモンスター社員を見抜く方法

モンスター社員を雇用することを避けるための面接時のポイントを紹介します。

短期間の転職の繰り返しで、明確な理由が語られないような場合は要注意です。アピールする実績に対して自分の貢献度だけを強調する人は、独断的に仕事を進める可能性があります。面接官や担当者の対応に一喜一憂する人、態度がその都度変わるような人は、多様な問題を抱えているかもしれません。

この他、選考プロセスの中で、メール返信や書類提出がスムーズでないとか、適性や性格の検査の結果も参考にできると思われます。

就業規則・評価制度の改定

就業規則や評価制度を見直されることをおすすめします。

従業員に業務上で求めていることを、就業規則に記載しておくことが大切です。その上で、必ず従業員に目を通してもらうところまで徹底してください。その都度、従業員の疑問や不満を汲み取って解決を図ることも重要でしょう。矛盾や抜け漏れは、モンスター社員の行為を助長してしまいます

もちろん、訴訟に持ち込まれた際も圧倒的に不利になります。

適切な評価制度は、従業員のモチベーションを維持するとともに、公平に評価されていることの納得感や安心感を生みます。近年は、評価をオープンにしている企業も増えています。誰に対しても説明、証明できることが対策となるでしょう。

普段の接し方のポイント

モンスター社員がどのような主張や要求をしてくるかはさまざまです。直接対峙する担当者は、接し方のポイントを心得ておく必要があります。

常に企業側として視点を高く保ち、毅然とした態度で向き合うことが重要です。無闇な同情や、逆に軽くあしらったり、強い言葉で諭したりせず、淡々と冷静に対処しましょう。

モンスター社員が感情的になっていたり、明らかに馬鹿げていると思われる場合は、日をあらためることを提案するのも一策です。繰り返される場合には、就業規則に則って、説明や注意勧告を行います。

重要なことは、事態の見極めです。モンスター社員かそうでないかという視点では誤った判断をしがちです。本人の主張が正当なケースの場合にもバイアスが邪魔をします。「モンスター社員の主張」と決めつけることのないように気を付けましょう。

新入社員がモンスターだった場合の対処法

新入社員がモンスターだった場合の対処法
せっかく入社してもらった新入社員がモンスター社員だった場合は、どのような対処が適切なのでしょうか。次のようなステップで慎重に進められることをおすすめします。

入念なヒアリングと事実確認

まずは、本人と関係者に事実確認が必要です。この段階では、その後の人間関係にも配慮する必要があるでしょう。

問題行動に対してはすぐに指導

良くない行動に対して、指導や注意を躊躇しても何も解決しないばかりか、エスカレートする可能性もあります。入社間もないのに辞めさせられない意識が働いても、断固として指導や注意をしましょう。

定期的な状況確認

指導や注意をしたあとのモニタリングをします。重要な育成プロセスであり、本人や周囲の相互理解やコミュニケーションを促します。相談ができるという安心感を引き出す効果もあります。

改善が見られない場合は罰則

指導や注意のあとも改善が見られない場合は、就業規則に沿った罰則の適用を検討します。検討する旨は、きちんと本人に伝えましょう。たとえば、始末書の提出、減給や出勤停止などが挙げられます。

改善のない場合は退職を促す

長期にわたり改善が見られない場合は、本人に退職を促します。モンスター社員にとっても決して居心地は良くないはずですし、企業にとってもプラスはありません。双方にとって、マイナスの引き出し合いになる前に、他でプラスの可能性を見出すことを提案します。

モンスター社員を辞めさせることはできるのか

モンスター社員の存在が明らかになれば、すぐにでも辞めてほしいと望まれるかもしれません。しかし、日本の労働関連の法令では、企業がいきなり一方的に解雇することは法律で禁じられています。

何度も該当事項(解雇通告ではなく)の注意を重ねていれば、法の制限をクリアします。改善も見られず、退職の提案にも応じないとなれば、企業と本人の不一致は明らかです。上記で説明したような、就業規則に則った指導や勧告が行われているのであれば、解雇も可能です。