子の看護休暇が、2021年1月から改定・施行されています。子の看護休暇の取得は、未就業児の子どもを抱える従業員の権利です。申請があれば、速やかに対応できるよう、担当者は制度内容をきちんと把握しておく必要があります。ここでは、子の看護休暇の概要、条件や対象者、新しく改定された内容、助成金に関することまで詳しく説明します。
目次
「子の看護休暇」とは

子の看護休暇は、子どもの病気やケガなど看護が必要なときに利用できる休暇です。育児・介護休業法に定められた休暇規定のひとつで、対象児童をもつ従業員は休暇を取得する権利があります。企業は、就業規則などに内容を記載する必要があります。
法規定にある子の看護休暇は、最低限の条件です。上回る条件であれば、企業が独自に制定することもできます。いずれにしても詳細まで就業規則などに記載することが大切です。
他の休暇・欠勤との違い

子の看護休暇は欠勤扱いになるのか、また、他の休暇との違いを見ていきましょう。
「子の看護休暇」は欠勤扱いになる?
子の看護休暇を欠勤扱いにするかどうかは、企業の裁量に任された範囲です。欠勤(無給)とする場合でも、子の看護休暇は法律で定められた休暇ですので、「通常の欠勤」と「子の看護休暇での欠勤」は別扱いにしなければなりません。
欠勤扱いにすると、評価や査定に影響する可能性もでてきます。育児・介護休業法では、子の看護休暇の取得によって従業員に不利益が発生することを禁じています。査定項目と区別する規則も制定しておかなければなりません。
有給にするか無給にするかも企業判断の範疇ですが、内容については就業規則などに明確に記載し、雇用契約時点で労使双方が同意しておく必要があります。
介護休暇との違い
介護休暇と子の看護休暇は、日数条件など制度内容が似ています。この2つの大きな違いは、対象者の違いです。介護休暇は、要介護状態にある家族の介護を行う従業員が対象となります。
要介護とは、国の要介護認定を受けていない場合もあてはまります。病気や骨折などで、2週間以上に渡って介護が必要な場合は利用できます。
【介護休暇の家族範囲】
配偶者、子ども、実父母、配偶者の父母のほか、扶養中の同居の祖父母、兄弟姉妹や孫までが含まれます。
利用する際の条件

子の看護休暇は、子どもをもつすべての従業員が対象とはされていません。育児・介護休業法で定められている利用条件を確認しましょう。
利用可能な労働者の雇用形態
子の看護休暇は、正社員に限らず、ほぼすべての雇用形態の従業員が利用できます。契約社員やパートタイムやアルバイトもあてはまります。
対象外(利用不可)として認められるのは、以下の場合です。
- 日雇い従業員
- 1週間あたりの所定労働日数が2日以下の従業員(労使協定により)
- 雇用期間が6ヶ月に満たない従業員(労使協定により)
上記が育児・介護休業法で定められた最低限の適応条件となります。これらを満たした上で、対象範囲を広げることは可能です。
利用できるシーン
子の看護休暇が、どのようなシーンで利用できるのかを確認しましょう。「子どもの健康面に関する理由」での休暇と考えることができそうです。
- 子どもの体調不良、病気、ケガ
- 子どもの通院
- 乳幼児健診
- 子どもの予防接種
申請・取得の流れ
従業員の取得申請は、電話などの口頭でも認められるものとされています。子どもの病気やケガはあらかじめ予測できるものではありませんし、当日に申請手続きの余裕がないことも多いでしょう。証明書類の提出を求めることもできますが、後日の提出でも可能とするのが適切です。
ただ、企業の規則として証明書類の提出を義務付けていて、もし提出がなかった場合でも、子の看護休暇の権利が消滅することはありません。
何歳までの子どもに使える?
子の看護休暇は「小学校就学の始期に達するまで」の子どもの病気やケガの際に利用できます。年齢でいうと6歳です。小学校に上がる年齢ですが、6歳の誕生日の含まれる年度の3月末日までとなっています。
上記は、あくまで育児・介護休業法に定められた最低条件です。6歳以降も子の看護休暇の取得を認める企業も増えています。
「子の看護休暇」で取得できる日数
では、子の看護休暇の年間日数の定め方を説明します。
子どもが複数になる場合は、これらが変動します。時季変更権、給与関連についても触れていますのでご確認ください。
取得可能な日数/年
取得可能な日数は、子ども1人につき年間(一年度)に5日間です。4~3月が通例ですが、企業の会計年度などに合わせて1~12月などに変更することも可能です。この場合も、就業規則などへの記載は必須です。
該当年齢の子どもが2人以上いる場合は、10日間となります。3人の場合でも10日間が限度で、人数に比例するわけではないので注意してください。
時季変更権の有無
時季変更権とは、企業の繁閑期(季節や時期)に応じて休暇取得の可否を調整できる企業側の権利のことです。子の看護休暇については、企業は時季変更権をもちません。ですので、企業側は子の看護休暇の申し出を拒むことはできません。子どもの看護の必要性は1年中発生する可能性があり、労働者本人がコントロールできるものではないからです。
給与の有無
子の看護休暇の制度は、休暇取得の権利の発生を定めたものです。賃金については育児・介護休業法で定められていません。したがって、子の看護休暇の取得に対し、賃金を支払うかどうかは企業の判断に委ねられています。有給でも無給でも良いということになります。
無給とされる場合は、子どもの病気やケガのときに、年次有給休暇を優先して取得申請されるケースが多いでしょう。賃金としてではなく、別途、子の看護休暇に対して一定額を支給しているところもあるようです。有給かそうでないかは、企業の福利厚生の充実度を示す要素のひとつといえるでしょう。
育児・介護休業法施⾏規則等の改正で時間単位で取得可能に
2021年年1月1日からは、⼦の看護休暇が時間単位で取得できるようになっています。
改正の背景
改正前は、子の看護休暇は半日単位の取得しかできませんでした。しかし、実際の利用の現状をみると、つきっきりの看病が必要な場合を除いては、予防接種や軽度の症状に対する診察など、数時間で終えられるようなものもありました。
半日単位では子の看護休暇を柔軟に取得ができないということで、時間単位で取得できるようになりました。
改正内容
改正内容についてみていきます。改正内容は非常にシンプルで、以下の2点です。
- ⼦の看護休暇が時間単位で取得できるようになった
- すべての労働者が取得できるようになった
これまで、子の看護休暇の取得は半日単位でした。それが、より柔軟な時間単位(1時間の整数倍の時間)に変更になっています。また、1⽇の所定労働時間が4時間以下の労働者は、子の看護休暇を取得できませんでした。その制限条件がなくなりました。
参考:⼦の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!|厚生労働省(PDF資料)
子の看護休暇に関わる国の助成金

子の看護休暇を導入・運用し、一定の条件を満たす企業は、国からの助成金を受けられる場合があります。とくに、育児をしながら働く女性従業員のいる企業は、確認されることをおすすめします。
助成金受給対象の条件に該当しているのであれば、管轄機関に申請をしましょう。これにより、有給とする場合でも、企業負担を軽減できます。
助成金の種類
子の看護休暇に関する助成金は、両立支援等助成金の「育児休業等支援コース」にある「職場復帰後支援」に該当します。したがって、育児休業から復帰した従業員の子の看護休暇制度利用に対する助成となります。
助成金対象となる企業の条件
助成金対象となる主な要件は以下のようになっています。
- 中小企業である
- 法定範囲を上回る子の看護休暇制度(A)を導入している
- 法定範囲を上回る保育サービス費用補助制度(B)を導入している
- 子の看護休暇制度を導入し、育児休暇から復帰後の利用実績* があること
*利用実績は具体的に子の看護休暇制度(A)であれば10時間以上(有給)の取得、または保育サービス費用補助制度(B)であれば3万円以上の補助実績
助成金額
制度導入に対して、28.5万円<36万円>の支給。
子の看護休暇制度(A)利用に対して、1,000円<1,200円>×時間が支給。
保育サービス費用補助制度(B)利用に対して、実費の2/3が支給。
上限
一企業あたり、3年以内5名(育児休業から復帰した従業員)までです。
子の看護休暇制度(A)利用に対して一企業あたり、200時間<240時間>* の上限があります。また、保育サービス費用補助制度(B)利用に対しては一企業あたり、20万円<24万円>* の上限があります。
* <>内は、生産性向上が認められた場合
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