職務分掌とは?組織を円滑に動かす職務分掌規程の作成のポイント
職務分掌規程ができていないことで、本来部署単位で行うべき仕事と担当者ベースで行う仕事が混在してしまい、組織内で業務推進に支障が出ることが多いようです。
実際に職務分掌ができていないという企業は多く、従業員は日々「この仕事はどの部署でやるべきなのだろう」という疑問が出て、ストレスを抱えやすくなります。
今回は、職務分掌をしっかり行い、職務分掌を明文化する上での大切なポイントを解説します。
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職務分掌とは?
職務分掌とは、組織において各部署や各役職、担当者の行うべき仕事を配分して、仕事の責任の所在と範囲を明確化することを指します。
特に大企業を中心として職務分掌の規程が存在していますが、仕事内容そのものの変化の激しい昨今では、規定にない仕事も発生するなどのイレギュラーケースに遭遇する場面も増えてきています。
職務権限、業務分掌、セグリゲーションとの違い
職務分掌と、職務権限、業務分掌、セグリゲーションとはそれぞれ違いがあります。
まず、職務権限とは職務に対する権限です。 例えば、職務分掌において人事部署の従業員は従業員の採用内定権限、従業員の評価、従業員の昇進に関する手続きを独占的に行うことができるとします。
しかし、これを役職者でもない一般の人事部員に権限として与えてしまうと、権限を越えて仕事を行ってしまう可能性があります。
そこで、人事部署の課長職は採用内定の決裁権をもつことができる、人事部長は従業員の昇格に関して最終決定を行う権限をもつ、というように役職に対して権限を与えることで「人事部員であれば従業員のことを好き放題にしてもよい」という状態から、管理職の権限がなければ重要な仕事はしてはならない、というように制限をかけることができます。
次に職務分掌と業務分掌の違いとしては、業務分掌はあくまでも全体の中で決められたうちの一部について責任の所在を確定させるというものです。職務分掌の中の一部をさらに細かくした一定範囲の責任職務を業務分掌といいます。
セグリゲーションは職務分掌同様、業務の責任を明確化するという性質をもっていますが、従業員のミスや不正を防ぐ手段として用いられる分掌化です。
特に経理部署を筆頭とした管理部門ではセグリゲーションを行うことで未然にミスや不正行為を防ぐことができます。
職務分掌の必要性
職務分掌は、仕事の責任の所在をハッキリさせることができるため、企業の運営をスムーズにするためには必要不可欠な存在であるといえます。
職務分掌がしっかりとしていれば、仕事の責任の範囲が明確化されるため、「この仕事はどの部署でやるべきなのか」という無用なストレスを従業員が感じることが少なくなります。
また、責任の範囲が明確化されることで仕事に対する責任感が生まれるため、「この仕事は自分の仕事ではない」といったような言い逃れができなくなります。
不正などの財務リスクの軽減にもつながる
職務分掌をしっかりと行うことで、不正などの財務リスクの軽減にもつながります。
従業員が企業の資金を横領したということがニュースで報道されることもありますが、組織内で職務分掌をしっかりと行い、不正を行ってもすぐにわかる体制を構築できていれば、ニュースになってしまうまでに不正行為を防げた可能性もあります。
職務分掌のメリット・デメリット
職務分掌のメリットとしては、仕事の責任の範囲をハッキリとさせることが可能なため、従業員が責任感をもって仕事を進められる点があげられます。
またそれだけではなく、不正を防ぎ、組織の健全な運営(内部統制)を助ける存在となることもあり得ます。 デメリットとしては職務分掌を明確にしてしまうことで「この仕事は私の仕事ではない」と仕事を他人に押し付ける従業員が出てしまうことです。職務分掌をしっかりしたつもりでも、現場ではさまざまなイレギュラーな仕事が発生します。
職務分掌で明確にされていない仕事を従業員が率先してやらなくなっていく可能性があります。 また人との間だけでなく、各部門間で仕事の押し付け合いをする可能性もあります。
職務分掌規程にない新しい仕事が発生した場合、自分の部門に責任が降りかかることを嫌って、できるだけ他の部門に仕事を押し付けようとする管理職が一定数出現する可能性が高いためです。
職務分掌規定による明文化
職務分掌規程による職務分掌の明文化は、必ず行うようにしましょう。
明文化されていなければ仕事の責任の所在が明確にならず、各部署の従業員が実務を進める際に全く機能しない可能性があります。
実務で行き詰まったり、どこに仕事を振ればよいのかが分からない場合に、すぐに明文化された職務分掌規程を見られるようにしておくことが大切です。
職務分掌規程(職務分掌表)作成のポイント
職務分掌規程(職務分掌表)の作成のポイントとしては、まずは経営者に了解をとることです。
そして、職務分掌規程を作成するにあたっては、全従業員に対してこれから職務分掌規程を作成するということに関して理解と協力を得るようにしてください。
経営者から「絶対にこれはしておいて欲しい」というような内容をヒアリングしたら、管理職から部門ごとに仕事内容を提出してもらいます。
経営者と管理職から提出された仕事内容をベースにして部門や部署ごとに大まかな仕事の種類を書き出していきます。最後に、一般従業員の元へと足を運ぶか、意見を集約する形で期日を定めて現在自分が行っている仕事を教えてもらいます。
全ての仕事の種類を把握できたら、あとは仕事を割り振っていきます。明らかに本来営業部門がやるべき仕事を管理部門が行っているというような場合は、この機会に本来あるべきところへ仕事を戻すようにしましょう。
例えば、企業のホームページの運営などを行っている部署が総務だとします。ホームページに対して新規取引先様から連絡があった場合は、営業部署に対するお客様なので総務が取り次ぐのではなく、営業が直接問い合わせ内容を確認し返信できるようにする、というようにしてみてください。 仕事の範囲を明確化することで各部署が感じている「今やっている仕事は、本当は私の仕事ではないのでは」といったストレスをなくす効果が期待できます。
職務分掌規程を作成することで、ストレスなく従業員が仕事をできるような環境の構築を目指し、組織のあるべき姿をはっきりさせるようにしてみてください。