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若手や優秀な人材を定着させる社内のリテンション施策とは?企業事例も紹介

人材不足が深刻になってきている近年、従業員のリテンション(確保、定着)に注力する企業が増えています。企業の採用活動において若手や優秀な人材の確保が難しくなり、リテンション施策の必要性が高まってきています。

今回は、まず雇用環境の現状と若手や優秀な人材の離職理由を確認します。そして、リテンション施策のメリット、有効策の事例、施策実施のポイントを説明します。

目次[非表示]

  1. 1.リテンションとは
  2. 2.人材の流動化が進む日本
  3. 3.若手や優秀な人材が離職する理由
    1. 3.1.仕事の過剰負担による離職
    2. 3.2.自分の意見が軽視されることが原因の離職
    3. 3.3.仕事に集中できないことが原因の離職
  4. 4.積極的にリテンション施策を行うメリット
    1. 4.1.人的コストの効率向上
    2. 4.2.組織力、スキルの維持と強化
    3. 4.3.従業員のモチベーションの維持
    4. 4.4.技術、ノウハウ、コネクション流出防止
  5. 5.報酬以外にも、ライフスタイルやキャリア形成を重視した取り組みが必要
  6. 6.若手や優秀な人材を引き留めるリテンション施策
    1. 6.1.コミュニケーションの促進
    2. 6.2.ワーク・ライフ・バランスの向上支援
    3. 6.3.スキル向上支援
    4. 6.4.社内キャリアパスの策定
    5. 6.5.自律の促進と尊重
  7. 7.企業のリテンション施策の事例
    1. 7.1.選択型人事制度
    2. 7.2.育自分休暇制度
    3. 7.3.部活動や部内イベントの支援
  8. 8.若手や優秀な人材の離職リスクを防ぐには?

リテンションとは

リテンションとは リテンション(retention)は、保有、保持、維持などと翻訳されます。人事分野では、優秀な人材の確保や定着を意味し、そのための施策を指す場合もあります。

マーケティング分野でも、顧客との関係性を維持するための施策や活動をあらわす言葉として使われる場面も多いです。本記事では、人事分野のリテンション(=優秀な人材の確保や定着)に限定します。


人材の流動化が進む日本

人材の流動化が進む日本 近年、日本では人材の流動化が激しくなっています。厚生労働省の発表によると、大卒で入社3年以内に離職をした人の割合(早期離職率)は30%を超えています。


■参考記事;日本企業の離職率の平均は?離職率を高める労働環境の特徴と離職理由


働く条件が多様化し、労働者の選択肢が増えました。人材不足の中、多くの企業に外からの労働者を受け入れる姿勢があるため、転職しやすい環境があります。

労働者にとっては転職がしやすい一方で、企業にとっては以前より従業員が定着しにくい状況になっています。 人材不足の職場では、優秀な人材に仕事のしわ寄せがいきやすくなります。企業にとって人材不足は、仕事のしわ寄せが原因で優秀な人材から辞めていくという、負のスパイラルが起きる根源になっています。

このような現状の中でリテンションがままならない企業は、常に損失とコストがかさみます。具体的には、以下のような損失やコストの発生です。

  • 優秀な人材の流出による損失
  • 離職した人材にかけた教育や育成コストと時間の損失
  • 人材の離職により残された従業員が追加で負担する作業コストの発生
  • 新たに人材を確保するための採用活動コストの発生
  • 新たな従業員に対する教育や育成コストの発生
  • 離職や入社ごとに発生する人事側コストの発生

従業員の中には、自分の人生や今の生活環境にフィットした仕事や職場で働きたいという意識の高まりもあります。従業員にとって働きやすい環境の整備と提供について、これまで以上に考えなければならない時代です。


若手や優秀な人材が離職する理由

若手や優秀な人材が離職する理由 若手や優秀な人材の離職には、さまざまな理由があります。企業の将来を担っていってほしいと期待する若手や優秀な人材は、どのような理由で離職を決意しているのでしょうか。


仕事の過剰負担による離職

優秀な人材ほど、仕事のスピードも早く、高い質で仕事を仕上げることができます。必然的に重要な仕事を任されたり、多くの仕事が回ってきます。従業員の業務量の偏りは、常にあると考えておくことが賢明です。

無理が生じていても、気付かずに一層頑張ってしまう従業員もいます。一層頑張ったことである時、周囲との業務量の偏りを察知して、不満をもつ可能性もあります。優秀な人材の傾向です。 人事や上司がその配慮を怠ると、仕事がきつい、自分だけきつい、という意識が生まれます。心身の健康を崩して離職となるケースも少なくありません。


自分の意見が軽視されることが原因の離職

自分が職場や事業に対して何を意見しても尊重されず軽視されていると感じる従業員は、その職場で働くモチベーションを保てません。 仕事のフローに慣れ、全体を把握できるようになると、意欲のある優秀な人材ほど、自分の考えを巡らせているものです。

まだ若手だから、まだ経験が浅いからと聞く耳をもってもらえなければ、いくら考えて意見をしても意味がないと感じるようになるでしょう。自分の貢献度が低い=必要とされていないと解釈する可能性もあります。 ベテラン従業員が充実していて、その層の影響力が強い企業などでは、比較的この傾向がみられるようです。


仕事に集中できないことが原因の離職

日々の業務の中で、本来の自分の役割を果たせていない、仕事に集中できないということで離職を考える従業員もいます。「それは、その従業員の問題なのでは?」と片付けてしまうことは危険です。 業務や役割の分担は、

  • 従業員の希望や強みが考慮されて与えられる。
  • 本来の業務以外のことは、従業員が納得した上で引き受ける。

このように進められるべきではないでしょうか。いずれの場合も、遂行責任は伴います。 しかし、本人希望や個人の強みを無視し、他の業務に追われる毎日となれば、従業員は不満を感じます。本来の仕事に集中できないことに不安も感じるでしょう。その上、従業員が納得できるはずもないサービス残業が常態化していれば、離職は決定的です。

もうひとつ、仕事に専念できない要因として、職場環境があります。職場内で浮かび上がった噂でもちきりの周囲、パワハラやいじめの存在、これらが業務に支障をきたすことは、決して少なくありません。仕事とは直接関係のないストレスに辟易する従業員もいるのです。


積極的にリテンション施策を行うメリット

積極的にリテンション施策を行うメリット 積極的にリテンション施策を実施すると、以下のメリットが期待できます。

人的コストの効率向上

若手や優秀な人材が長期的に働いてくれることは、企業の人的コストの効率を向上させます。代わりとなる人を探し、教育するコストがかかりません。他に従業員が入っても社内フローは安定的で、教育の質も上がります。


組織力、スキルの維持と強化

優秀な人材は、能力やスキルをさらに磨き、組織の生産性や業績を向上させます。自社で蓄積するノウハウの質も上がると考えます。それゆえに、組織のベースアップが可能となります。


従業員のモチベーションの維持

若手や優秀な人材へのリテンション施策で、本人のモチベーションを維持できます。また、優秀な人材の存在は、周りのメンバーの手本や目標となります。感化され、モチベーションを上げる従業員も出てきます。


技術、ノウハウ、コネクション流出防止

優秀な人材は、技術やノウハウを自分の中に取り込んでいます。たとえ故意や違反でなくても、取得した技術やノウハウを転職先で活かしていくことは十分考えられます。またその人の能力や人柄で案件を獲得していた場合は、取引先や顧客、さらには周辺の従業員を損失するリスクもあります。優秀な人材が定着してくれれば、これらのリスクは防げます。


報酬以外にも、ライフスタイルやキャリア形成を重視した取り組みが必要

報酬以外にも、ライフスタイルやキャリア形成を重視した取り組みが必要 従業員を引き止めるものとして浮かびやすいものが「報酬」ではないでしょうか。しかし、近年は「報酬」だけで従業員を留めることは難しくなっています。給与水準の高い大企業や有名企業でも、リテンションに迫られています。逆に同業他社と比較して給与の低い企業であっても、定着率が高い企業があるのも事実です。

若手や優秀な人材が求めているものは、決して「報酬」だけではありません。人生において、仕事を最優先とする人は少なくなっています。とくに若手層で、この傾向は顕著です。 内閣府の調査によると、16~29歳の男女1万人の63.7%が「仕事よりも家庭・プライベートを優先する」と回答しています。

従業員のライフスタイルを尊重した取り組みは、欠かせないものとなっています。

参照:特集 就労等に関する若者の意識|内閣府


また安定志向が強い傾向にあるため、将来のキャリア形成がしやすいように人事体制を整えることも有効です。


若手や優秀な人材を引き留めるリテンション施策

優秀な人材を引き留めるリテンション施策 若手や優秀な人材により長く働き続けてもらうためには、どのような施策が有効なのでしょうか。エン・ジャパンが公表している、リテンションに取り組んだ企業を対象としたアンケート調査結果をもとに有効策を紹介します。

参考:人材のリテンションについて|エン・ジャパン


コミュニケーションの促進

コミュニケーションの促進施策は、企業のあらゆるシーンに適用できます。飲み会などのイベント、サークル活動を推進している企業も多いです。 また、1 on 1ミーティングやシスター/ブラザー制度などでコミュニケーションを促進している例もあります。

フォロー体制は、新人への配慮ともとれる施策ですが、優秀な人材であれば、フォローする側として関わることができます。コミュニケーションだけでなく、個々のスキル強化やモチベーション向上も期待できるでしょう。

また最近では、社内コミュニケーションの活性化の一環で、感謝の気持ちを贈り合うポイントプログラムを導入している企業もあります。


■参考記事;離職防止の対策を職場環境、労働条件、人間関係の観点から考える


ワーク・ライフ・バランスの向上支援

優秀な人材といっても、そのライフスタイルはさまざまです。自社従業員の属性や特質を理解し、フィットする制度を導入することが大切です。

月や年単位の長期休暇で新たな視野やスキルを身につけたい従業員、日常的にこまめな休暇を利用したい従業員など、意向を理解した制度構築が不可欠でしょう。

また、従業員のワーク・ライフ・バランスの意識改革も必要と考えます。セルフマネジメント力を高めることは、従業員にとっても企業にとっても長い目でみてメリットは大きいでしょう。


■参考記事;ワーク・ライフ・バランス推進のメリットや必要性を解説


スキル向上支援

社内外を問わず、研修やセミナー、ワークショップなどを開催することも有効です。若手や優秀な人材は向上心や好奇心が強く、スキルを練磨できることに喜びを感じます。新たなスキルを提案することで、もっているスキルとの相乗効果を実感できるのではないでしょうか。人材育成の一環にもなると考えます。


社内キャリアパスの策定

優秀な人材は、将来を見据えて、目標をもって仕事に取り組む姿勢をもちます。常に、能力の向上を図ろうとしているのです。 スキルを磨いて、その職を極めたいと考えるスペシャリスト志向の従業員もいれば、マネージャー職で、職場の人材を統率することを目指す従業員もいます。

社内にそのステップが構築されていれば、目指すところが明確になります。もちろん、他社でそれを目指す可能性もありますが、キャリアパスの存在は企業のリテンション力を高めます。


自律の促進と尊重

若手や優秀な人材をプロジェクトに抜擢し、権限委譲を行うことで、やりがいを最大限に引き出している例もあります。 若手のアイデアや意見を積極的に取り入れつつ、要所でサポートの手を差し延べる体制を整えることで、自律的人材、リーダー層の育成にもつながります。

意見が通る、通らないに関わらず、まずは受け止めてもらえる環境が、若手や優秀な人材の帰属意欲を駆り立てるのだと考えます。


企業のリテンション施策の事例

企業のリテンション施策の事例 IT業界のサイボウズのリテンション成功例を紹介します。 同社は、先進的な人事制度をいち早く取り入れる企業として有名ですが、2005年には離職率が28%ありました。

働く環境を見直すことでピーク時の離職率28%を4%にまで下げ、従業員のリテンションに成功しています。サイボウズの具体的なリテンション施策例は、以下です。


選択型人事制度

在宅勤務制度の導入や副業の許可、それに2013年からは9種類の働き方のスタイルが設けられ、従業員は時間や場所を柔軟に選べるようになりました。2018年からは、新・働き方宣言制度として、さらにその柔軟性が高められています。


育自分休暇制度

子供のためではなく、自分を育成するための休暇です。35歳以下の退職者が対象で、休暇理由としては、転職や留学などが認められます。サイボウズを退職後、6年間は自由に戻ってこられる制度です。企業を離れてしまうことはリテンションにならないと考えるのは早計です。企業と従業員の将来を本気で考えた、深いリテンション力をもつ制度です。


部活動や部内イベントの支援

業務時間外に行う部活(サークル)、イベントなどに対し、年間補助として支援金を支給しています。人数、部署内、複数部署構成などに応じて支給額が設定されています。

参考:ワークスタイル|サイボウズ株式会社


若手や優秀な人材の離職リスクを防ぐには?

若手や優秀な人材の離職リスクを防ぐには? 若手や優秀な人材の離職リスクを回避するためには、企業人事はどのようなことを意識しておくべきでしょうか。以下にリテンションのポイントをまとめます。

  • 一部の従業員に負担が偏らないようにする
  • 個人のライフスタイルを尊重する
  • キャリアパスの提供
  • 能力やスキルの向上支援
  • 職場環境と風土の整備

これらを実現するためには、状況の把握が欠かせません。マネージャー層や従業員へのインタビューやアンケートなどから現場の実情を、客観的に分析することが大切です。

また、従業員理解を深める必要もあります。人事がこまめに従業員との接点を創り出すことも有効ですが、全従業員となると難しいです。また、時間や頻度が限られてくるでしょう。

従業員の意向を尊重し、見守り、フォローするという企業姿勢を維持するためにも、マネージャー層の協力とスキルが必要になってきます。


RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムス編集部です。 本メディアは、「福利厚生倶楽部」の株式会社リロクラブが運営しています。 「福利厚生倶楽部」の契約社数は19,200社、会員数710万人という規模で、業界シェアNo.1を誇ります。 従業員満足を追求する人事や総務、経営者の皆様にとって少しでも有益になる情報を発信していきます。

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