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リフレッシュ休暇を制度倒れにしない!形だけで終わらせないための導入・運用術

人事担当者の多くが「リフレッシュ休暇を導入しても、結局は使われずに制度倒れになっている...」という悩みを抱えています。

せっかく整備した制度が活用されなければ、従業員の疲労回復はおろか、不満さえ出かねません。

実際に「制度を作るだけでは不十分だ」と痛感された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、リフレッシュ休暇が形だけの制度にならないように、制度設計のポイントと運用施策を中心に解説いたします。

筆者は、年間100社以上の企業に訪問し、人事課題の解決策を提案してきました。

多角的な視点で制度運用の成否を診断できる立場から、実践的なノウハウをお届けします。

■参考記事;福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!

目次[非表示]

  1. 1.リフレッシュ休暇とは?
  2. 2.リフレッシュ休暇の導入実態とトレンド
  3. 3.通常の有給休暇との違い
  4. 4.リフレッシュ休暇の制度設計のポイント
    1. 4.1.付与条件の明確化
    2. 4.2.年間の取得可能日数・有効期限
    3. 4.3.取得方法のルール化
  5. 5.リフレッシュ休暇のメリット・デメリット
    1. 5.1.企業視点のメリット(離職抑制・ブランディング)
    2. 5.2.従業員視点のメリット(心身回復など)
    3. 5.3.共通のデメリット/リスクとその対策
  6. 6.企業のリフレッシュ休暇活用事例
    1. 6.1.奨励ではなく取得を義務化
    2. 6.2.取得促進のために支援金支給
  7. 7.リフレッシュ休暇の報告書は義務化すべき?
  8. 8.リフレッシュ休暇の導入・運用方法のポイント
    1. 8.1.就業規則に記載して徹底周知
    2. 8.2.管理職が率先して取得する
    3. 8.3.きちんとリフレッシュ休暇をとるために社内体制を整備

リフレッシュ休暇とは?

リフレッシュ

厚生労働省では、リフレッシュ休暇を次のように定義しています。

「職業生涯の節目に勤労者の心身の疲労回復などを目的として付与される休暇」 

法的な位置づけとして、「法定外休暇」となり、労働基準法で義務付けられた年次有給休暇とは異なり、企業が独自に設計できる特別休暇となります。

規定・日数・賃金支給の有無についてはすべて労使協議で決定出来ますが、就業規則への明文化が必須となります。

日本の導入率としては、令和6年就労条件総合調査によると、リフレッシュ休暇制度がある企業は14.7% と依然少数派になっています。

代表的な設計例としては、長期勤続の際のプレゼントとしての休暇、社外研修・ボランティアに合わせての休暇などがあります。

(引用:働き方・休み方改善ポータルサイト|厚生労働省令和6年就労条件総合調査 | 厚生労働省

参考:特別休暇については次の記事も併せてご覧ください「特別休暇は福利厚生の一種!企業側のメリットと社内運用時の注意点を解説

リフレッシュ休暇の導入実態とトレンド

トレンド

最新の導入率は、上記で述べた通り、14.7%となっていて、前年(12.9%)に比べると1.8ptとわずかながら上昇しています。

そして、この導入している企業の規模別割合をみると以下の通りになっていて、大企業が突出していることがわかります。

  • 従業員1,000人以上:47.3%
  • 100~999人:18.9%
  • 99人以下:10.6%

これらの背景には、「人員余裕」「休暇取得の代替要員確保」「制度設計ノウハウ」の差があると考えられます。

ここから推察が含まれますが、トレンドについて、「人的資本経営の開示」「Z世代の採用争奪」「メンタルヘルス予防」が挙げられます。

  1. 人的資本については、エンゲージメントやeNPSの有価証券報告書の開示に伴い、その施策として、リフレッシュ休暇が活況。
  2. Z世代が注目する企業での研修や成長環境の構築に、リフレッシュ休暇+研修を組み合わせて、活用。
  3. 増加するメンタルブレイク予防として、リフレッシュ休暇を活用。

このあたりが、現在のトレンドに紐づくリフレッシュ休暇の状況になろうかと考えられます。

通常の有給休暇との違い

年次有給休暇は、労働基準法39条に基づき、雇い入れから6か月間で8割以上出勤した労働者に10日以上を付与することが使用者の義務となります。

2019年4月改正により、付与日数が10日以上の労働者には年5日の取得が企業に義務化されました。

※詳細についてはこちらの記事をご覧ください「有給休暇の付与日数・取得ルールの基本と、制度改善に向けた実務対応策

一方で、リフレッシュ休暇は、上述しています通り、法的な義務はありません

そのうえで、付与要件・日数・賃金(有給/無給)は就業規則で自由に定められます。

これらをまとめた次の早見表も併せてご覧ください。

早見表

リフレッシュ休暇の制度設計のポイント

ポイント

リフレッシュ休暇を企業に根付かせるためには、設計段階で、「付与条件の明確化⇒取得日数の決定⇒取得方法のルール化」が不可欠となります。

以下では、3つの視点から担当者が決めるべき項目のベストプラクティスを提示します。

付与条件の明確化

まずは、リフレッシュ休暇の要件については、自社の環境目指したい目的向けて整理いたします。

これは、有給休暇の様に、法で制度が設定されておらず、自社独自の内容を設定する必要がある為です。

決めるべき代表的な項目について、以下の図で纏めています。

要件

参考にしながら、要件を整理してください。

要件については、就業規則に明文化した上で、人事・上司・本人の三者が確認できる環境にしておきましょう。

年間の取得可能日数・有効期限

付与される日数や有効期限についても、企業の狙いや目的に合わせて設定する事が重要です。

あくまでも、従業員のニーズに合った制度設計を心がけないと「結局制度が使われない」となってしまうためです。

代表的な目的や日数などについても、以下の表でまとめていますので、ご参考ください。

付与

有効期限を設定する事で、先送りを防ぐことができるので、推奨されます。

取得方法のルール化

リフレッシュ休暇の取得方法についても、自社にあった取得方法の明確化が適切な運用のポイントとなります。

なぜなら、 人員の状況によって取得難易度が異なり、最適解が異なる為です。

たとえば、季節に応じた繁忙期の有無によって、取る時期の制限が出てきます。

そのため、以下のような工夫などを取得方法をルール化することが重要です。

  • 業務ガントチャートで空白期間を可視化して、チームでタスク分散を行う
  • 休暇前に「引継ぎチェックリスト」の提出を必須とする
  • 取得ワークフローを明確化させる(申請⇒承認⇒引継ぎ)

こうすることで、代替要員が確保できない部署でも、効果的にリフレッシュ休暇の設定が可能になってきます。

リフレッシュ休暇のメリット・デメリット

メリデメ

リフレッシュ休暇は、企業・従業員の双方にとって多くのメリットが期待できる一方で、導入・運用に当たっては、一定のリスクや課題が伴います。

制度を形骸化させることなく、組織に定着させるには、メリットだけでなくデメリットも正しく把握し、対策を講じることが重要です。

以下では、「企業視点」「従業員視点」「共通リスク」の3つの観点から、リフレッシュ休暇の効果と課題について解説します。

企業視点のメリット(離職抑制・ブランディング)

企業にとってリフレッシュ休暇の導入は、従業員の離職抑制や働きがいの向上につながる可能性がある施策の一つです。

この背景としては、長期的な勤務を続ける中で、定期的に心身をリセットできる環境が整っていれば、従業員のモチベーション維持エンゲージメント向上の効果が期待できます。

また、リフレッシュ休暇は単なる福利厚生の一環にとどまらず、企業ブランディングの一部としての機能も持ちます。

これらは、人的資本開示が求められる今の時代に於いて、特別休暇制度を定量的に開示する企業が増加しています。

たとえば、

  • ある企業では、「誕生日や趣味のための特別休暇:年間1日」と制度概要を明記。
  • 別の企業では、「治療目的の特別休暇:3年間で最大18日」と休暇の目的と日数をセットで開示

こうした制度設計の透明性を高めることで、求職者へ企業の信頼性を高め、ブランディングへとつながっていきます。

従業員視点のメリット(心身回復など)

従業員にとっては、リフレッシュ休暇は単なる”ご褒美休暇”ではありません。

理由としては、普段なかなか確保しづらいまとまった時間を使って、心身の疲労回復リフレッシュ、人生を見つめなおす機会になるためです。

たとえば、旅行や家族との時間、自己研鑽に充てるなど、普段の休暇では行いづらいことができるようになります。

このように、従業員にとっても、心身を整えて、新たな視点で業務戻ることで、好循環が生まれる可能性がメリットとなります。

共通のデメリット/リスクとその対策

業務引継ぎの煩雑さや一時的な人員不足といった運用上の課題がデメリットやリスクとして挙げられます。

この背景としては、少人数体制のチームや、専門性が高く属人化しやすい職種では、業務遅延サービス品質低下に直結する恐れがあります。

たとえば、デザイナーやエンジニアなどの専門性が高い組織で、一人が専属企業を担当していると、他の従業員で替えが効かなくなってしまい、休暇とともに、業務が滞ってしまいます。

こうした問題を解決する為には、ジョブローテーションやマニュアル化、引継ぎチェックリストの作成などが挙げられます。

計画的に、こうした準備をしておかないと、結局制度が使われない「制度倒れ」を起こす要因にもなります。

結論として、運用に注力を注がなければ、リフレッシュ休暇という制度が、業務遅延・サービス品質の低下といったデメリットに繋がります。

企業のリフレッシュ休暇活用事例

例

具体的な活用事例を参考にすることで、自社に合った運用方法を見出すことができます。

奨励ではなく取得を義務化

リフレッシュ休暇を導入しても、有給休暇と同じくなかなか取得されない問題を抱える企業も少なくありません。

理由の一つとしては、周りの従業員に対する遠慮や、休暇明けの仕事に対する不安が先立って取得をためらう従業員がいる為です。

そこで、ある企業では、リフレッシュ休暇を義務化することで、誰もが当たり前に取得できる風土をつくりました

例えば、「よく遊び、よく遊べ」を社是にしているルピナ中部工業(長野)は、最大10日連続休みの取得を義務としています(ガンバレ休暇)。

義務となれば、全員取得するしかなく、そのことで取得を前提とした働き方が浸透します。

引き継ぎや休暇準備も計画的に行われるようになり、お互いさまという従業員同士の協力意識も高まります。

取得促進のために支援金支給

長期休暇があっても、先立つものがなければ(お金がなければ)、充実とは程遠い過ごし方になりかねません。

遊ぶにも学ぶにも費用がかかる為、それがネックとなって、「自分のやりたいこと」ができない従業員もいるはずです。

そこで、リフレッシュ休暇を取得する従業員に対して、5万円、10万円とまとまった額の支援金を出す企業が増えています。

たとえば、株式会社資生堂では、リフレッシュ休暇の勤続20年・30年では、補助金が支給される仕組みを入れています。

こちらの成功事例として、リフレッシュ休暇を利用して、通信性大学に通い国家資格を取得した事例も報告されています。

(参考:厚生労働省「事業例」)

このように、リフレッシュ休暇に支援金を出すことで、利用を促進し、さらに、その休暇を資格取得に充て、業務に還元する、成功事例を生むことができます。

リフレッシュ休暇の報告書は義務化すべき?

ここで、リフレッシュ休暇の報告書の是非について考えてみます。

多くの企業が勤続年数などに応じてリフレッシュ休暇の取得権利を与えています。この場合は、どのような過ごし方であっても認められることがほとんどでしょう。

しかし、リフレッシュ休暇の取得理由に一定の条件や支給金待遇がある場合は、報告書の提出を求めることがあるかもしれません。

提出を求められた従業員には多少負担がかかりますが、リフレッシュ休暇の報告書にはメリットもあります。個人情報の問題をクリアしていることを前提に、報告書の提出を義務化するか否かを検討してみてください。

  • 他のメンバーに休暇取得者の報告書を周知できれば、休暇の過ごし方の参考になる
  • 報告書の周知によって休暇のメリットを皆が認識し、休暇を取得しやすい風土ができやすい(とくに上司・管理職の報告は有効)
  • 従業員の関心ごとやスキルについて人事や上司が把握できる

報告書は、リフレッシュ休暇の浸透につながる要素をもっています。

そして、従業員にとっても単なる休暇の報告書ではなく、ある意味アピールになる要素も含んでいます。

しかし、休暇はあくまでプライベートと割り切りたい人も多いはずです。

報告書を完全義務化とすることは、精神的負担を招き、リフレッシュ休暇取得の阻害要因になる可能性もあります。リフレッシュ休暇の取得を阻害することになるのであれば、報告書の提出は義務化させないほうがよいでしょう。

リフレッシュ休暇の導入・運用方法のポイント

では、リフレッシュ休暇の導入、運用していく際のポイントを解説します。

ただ、リフレッシュ休暇の制度をつくるだけでは、うまく機能させることができません。

せっかくの導入ですから、意義深く、費用対効果の高い制度に育てましょう。

就業規則に記載して徹底周知

リフレッシュ休暇の内容は、企業によって異なります。

勤続年数、取得日数、給与や支援金の有無など、詳細を必ず就業規則に盛り込んでおきましょう。 これは、従業員全員にリフレッシュ休暇の存在を認識してもらうために必要なことです。新たに社内報などで通知したり、研修や施策に合わせて伝える機会をもったりすると、さらに認識が高まるでしょう。

また、就業規則に掲げる項目は、ある程度柔軟性をもたせておくとよいです。例えば、申請時期を変更するときのルールや、その年度内に取得ができなかったときの措置内容も必要となるでしょう。

管理職が率先して取得する

デメリットでも挙げたように、従業員は周りに迷惑をかけるという意識をもちがちです。

怠けているような罪悪感を覚える従業員もいます。そのような風土があると一向にリフレッシュ休暇の取得率は上がらず、取得メリットは得られません。

風土を払拭する影響力をもつのが管理職です。管理職が自分のスケジュール調整、スムーズな引き継ぎ、セルフマネジメントによって、どんなに忙しくても存分に休暇を満喫する姿を見せていくことは、大きな意味があると考えます。

きちんとリフレッシュ休暇をとるために社内体制を整備

誰もがリフレッシュ休暇を取得することを前提に社内の体制を整えておくことが、運用における最重要項目といえるでしょう。主なポイントは2つです。

早期申請で計画的取得を促す

リフレッシュ休暇は長期になることもあるので、前準備がしっかりできるよう年度始めなどに一斉に申請してもらうことが理想的です。

上司の業務の割り振り時にも考慮することができます。また、本人の業務進行も休暇計画に合わせてスケジュールが組めるようになります。

リフレッシュ休暇を海外や遠方への旅行にあてる場合、早期に手配したほうが費用を割安に抑えられますし、じっくりと準備をすることもできるでしょう。申請予定は厳守とせず変更可能としておけば、取得予定者のプレッシャーも低減できるはずです。

引き継ぎとフォロー体制の構築

あらかじめペアやグループを決めておき、誰かが休暇に入ったときに引き継ぐ人を決めておきます。

特定の人に決めない場合でも、それぞれの業務を誰もが簡単に把握できるようフローや手順を図や表にまとめてもらうといいでしょう。

休暇取得のためのこのプロセスは、普段の業務フローの見直し、改善の効果もあるようです。それにより、毎年、毎回の引き継ぎの負担、フォローする負担の両方が軽減されていきます。


桐山 秋行
桐山 秋行
2004年に新卒でリロクラブに入社、本社での営業を経て、東北営業所の立ち上げに責任者として従事。その後、広島の子会社に取締役として出向し、経営再建に着手。現在は本社に戻り営業・マーケティングを管掌。 年間100社以上に訪問し、課題解決に向けた提案活動を実施。 保有資格: MBA・ファイナンシャルプランナー・ITパスポート・ 福利厚生管理士・健康経営アドバイザー・個人情報保護士

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