福利厚生で節税できる?取り入れたい13の具体例と注意点

福利厚生は従業員やその家族の生活を豊かにし、仕事へのモチベーションやエンゲージメントをアップするために欠かせないものです。

福利厚生はお金がかかってしまうというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実は福利厚生は節税効果を生み出せるのです。

本記事では、「なぜ福利厚生で節税できるのか」を解説し、節税のために役立つ福利厚生の種類や導入時の注意点を紹介します。福利厚生を通して少しでも節税し経営をより良くしたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

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福利厚生費とは

福利厚生費とは従業員の生活を豊かにさせたり、職場環境を整備させたりすることを目的に使用する費用のことです。仕事に対するモチベーションアップを目的に支給されます。

福利厚生費には、法定福利費と法定外福利費が存在します。本章では、法定福利費と法定外福利費の意味や平均福利厚生費、福利厚生費の要件、具体例を解説します。

法定福利費と法定外福利費

福利厚生費には、法定福利費と法定外福利費の2つがあります。まず法定福利費とは、加入が義務付けられた健康保険や厚生年金、また労働基準法で定められた休業補償などに必要な費用のことを言います。

法定外福利費は、法律で義務付けられていない福利厚生にかかる費用のことです。会社独自で導入を決めた福利厚生は法定外福利費に含まれます。

福利厚生費の平均は108,517円

一般社団法人日本経済団体連合会によると、従業員1人1か月当たりの法定福利厚生費は平均108,517円とのことです。健康保険や介護保険をはじめ、厚生年金保険が主な費用であり、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金、その他福利厚生も含まれています。前年度の総額より減額しています。

一方で、法定外福利費は平均24,125円です。内訳は持家援助などの住宅関連、医療施設運営などの医療・健康関連、給食や育児などのライフサポート関連、慶弔関係、レクリエーション関係の費用があります。法定外福利費も前年度の総額より減額しています。

参考:一般社団法人日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度

福利厚生費に認められる要件

福利厚生費として認められると、経費として扱えます。福利厚生費が大きくなればなるほど利益が減少し、利益にかかる法人税が低価格になります。結果として、福利厚生費には節税効果があると言えます。

福利厚生費に認められる要件は以下の通りです。

  • 福利厚生規定を整備すること
  • 従業員すべてを福利厚生の対象とすること
  • 支出金額が妥当な範囲であること
  • 現物支給でないこと

例えば、一部従業員しか使えない割引は福利厚生費として認められないことになります。

福利厚生費の具体例

福利厚生費の具体例をチェックして、自社で導入したい福利厚生に当てはまるか確認していきましょう。

1.医療関係費用

健康診断や人間ドック、インフルエンザの予防接種、常備薬などに必要な費用は福利厚生費です。注意したいのは、全従業員対象にしなければいけないことです。一部の従業員だけを健康診断受診の対象者にする場合は、福利厚生費となりません。

また、診断内容も常識範囲内でなければ福利厚生費とならないので注意してください。加えて、健康診断受診料を従業員に支給し、従業員が診療機関に支払った場合にも、福利厚生費として認められません。

2.慶弔関係費用

結婚祝いや出産祝い、香典、慶弔見舞金など、お祝いや葬儀に際して支給する慶弔関係費用は福利厚生費として認められています。お祝い・見舞いの品や飾りの花なども慶弔関係費用に含まれます。

しかし、社外の方に贈る場合は接待交際費となり、福利厚生費に含まれませんので注意してください。

3.消耗品関係費用

社内で使用するお菓子やコーヒー代、洗剤・消臭剤代、制服代などの消耗品関係費用も福利厚生費となります。取引先に持っていくお菓子代などは消耗品関係費用に含まれません。

4.厚生関係費用

社宅費用や資格取得費用、残業時の食事代などの厚生関係も福利厚生費に含まれます。社宅の場合、従業員が支払う家賃が50%以上であることが必要です。50%以下であれば給与として課税されるため、福利厚生費とはなりません。

5.レクリエーション関係費用

社員旅行や新年会・忘年会、サークル活動費用、運動会費用などのレクリエーション関係費用も福利厚生費として認められます。

しかし、条件として社員旅行など従業員が参加する旅行では、4泊5日以内かつ従業員全体の50%が参加している必要があります。この条件に達していない場合は福利厚生費として扱えません。一方で、条件を満たしていても未参加の従業員に金銭を支給した場合は課税の対象となり、福利厚生費として認められないため注意しましょう。

また、役員のみが参加するレクリエーション・接待のためのレクリエーションは交際費として扱う必要があります。

6.通勤関係費用

電車やバスを利用して通勤する方へ支給する通勤手当は、福利厚生費として認められています。

しかし、通勤に適した時間・運賃・距離を考慮しなければなりません。経済的かつ合理的でなければ、福利厚生費として認められない可能性があります。また、限度額は15万円となるため覚えておきましょう。

福利厚生費が節税できる仕組み

福利厚生費は「役員や従業員のために導入する福利厚生を目的に、全従業員平等に支出する費用」のことであり、税法上では原則として損金算入が認められています。節税できるのは「法人税」で、福利厚生費を算入させた場合の法人税の計算方法は以下の通りです。

売り上げ-費用(損金算入額)=利益

利益×法人税率=法人税

上記の計算方法は、収入から経費を引いた利益に税をかけています。このため、収入に税をかけるよりも節税することができます。つまり、福利厚生費は損金算入ができるため、税が必要な利益が下がり、節税できるということになります。

節税のために取り入れたい福利厚生の種類

節税効果のある福利厚生費を使うためには、福利厚生を導入しなければなりません。法定福利は必ず導入する必要がありますが、法定外福利は企業が自由に決められます。

本章では節税に役立つ福利厚生をご紹介します。

社宅制度

社宅制度とは、企業が借りた賃貸物件を従業員に貸し出すことです。一般社団法人日本経済団体連合会の調査によると、住宅関連の福利厚生費は全体の費用の半分を占めているため、節税するために有効的な福利厚生でしょう。節税効果を高めたい方は導入すべき福利厚生だと言えます。

社宅制度を福利厚生に導入する際は、家賃相当額の50%を従業員から徴収します。残りの50%を損金算入することにより、節税効果が生まれます。

家賃相当額の意味は以下の通りです。

  • 建物の固定資産税の課税標準額(1年あたり)×0.2%
  • 敷地の固定資産税の課税標準額(1年あたり)×0.22%
  • (建物の総床面積÷3.3㎡)×12円

一般社団法人日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度

出張制度

営業活動などで遠方に出張する場合、出張制度を取り入れましょう。作成した出張旅費規定に基づいて出張手当を決めて支給すると、全額損金算入できます。

限度額は決められていませんが、常識範囲内の金額で設定することが大切です。また、出張旅費規定がなければ損金算入できないため、注意してください。

食事手当

食事手当は、残業時の食事費用を会社負担で支払うことを言います。注意したいのは、勤務時間外の食事であることです。勤務時間中の食事手当は全額損金算入が認められません。また、残業後に居酒屋で食事をした場合など、常識範囲内の金額でなければ損金算入が認められない可能性が高いです。

勤務時間中の食事手当や社員食堂を活用する場合は、従業員が食事代の50%を支払い、企業が支払う食事代から従業員の食事代を引いた価格が税抜き3,500円以下である必要があります。ただし、食事手当の現金支給は行ってはいけません。

社員割引

所属する企業の商品・サービスを割り引いて従業員に販売することは福利厚生費として扱えます。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 仕入れ価格以上の割引かつ通常販売価格の約70%未満にならない
  • 従業員全員が一律割引率であるか、従業員の地位や勤続年数に適した合理的な格差で定める
  • 割引商品・サービス数は、一般消費者が通常消費する量である

制服の支給

業務で必要な制服を支給・貸与してかかった費用は、福利厚生費として認められます。以下の条件を満たしている必要があるため、チェックしておきましょう。

  • 仕事中のみ着用し、私的利用できない
  • 従業員全員または業務を行う従業員を対象とする
  • 制服の着用で企業の従業員だと明確に理解できる
  • 実物で支給・貸与される

 

法人保険の加入

法人保険の保険料は福利厚生費として認められています。ただし、保険料全額を福利厚生費とする場合は、最高解約返礼率が50%までの場合に限られます。50%を超える場合は一定期間、一部の保険料を資産として計上する必要があります。

人間ドック費用の負担

全従業員を対象として健康診断や人間ドックを行った場合の費用は、福利厚生費となり節税効果があります。

ただし、役員や一部従業員のみ対象の人間ドックは福利厚生費となりません。一定の年齢以上の従業員に受診させるのであれば福利厚生費と認められていますが、いずれにしても注意が必要です。

保養所・別荘の購入や借り上げ

保養所・別荘を購入や借り上げをした場合も、福利厚生費として計上できます。注意したいのは、役員だけ使用できる保養所や別荘は福利厚生費とならないことです。以下の条件を満たさなければなりません。

  • 全従業員が利用できる
  • 利用状況が判断できる書類を提出する
  • 利用する従業員の経済的な利益が高額でない

社員旅行・研修旅行の実施

社員旅行や、業務上必要な研修は福利厚生費として扱えます。以下の条件を満たす必要があるため、確認しておきましょう。

  • 4泊5日以内の旅行である
  • 少額である
  • 欠席した従業員に現金を支給しない
  • 社員旅行・研修旅行参加者が全従業員の50%以上である
  • 私的な旅行ではない

私的な旅行ではないことを裏付けるために、研修資料や日程表などを準備しておきましょう。

スポーツクラブの法人契約

法人契約かつ全従業員が活用できるスポーツクラブ費用は福利厚生費として利用できます。一部従業員のみ使える場合は福利厚生費として認められません。

部活動の取り入れ

部活動やレクリエーションを取り入れ、かかった費用は福利厚生費として認められます。福利厚生費として認められる条件は以下の通りです。

  • 費用は本来の目的に利用される
  • 全従業員が活用でき、参加自由である
  • 支給金額は常識範囲内である

勤続表彰制度

「勤続○○年」などを表彰する勤続表彰制度も、福利厚生費に含まれ節税できます。全従業員に参加を義務付けず、50万円以下の報奨金を一括で支給することが条件です。

慶弔費用の支給

結婚祝いや出産祝い、香典、見舞いなどの費用を支給した場合も、福利厚生費として計上できます。常識範囲内の金額であることが必要です。

育児・介護のサービス費

育児・介護サービス費も福利厚生費として扱え、節税効果があります。法律上、条件や支払額の上限は定められていません。しかし、全従業員を対象とするようにしましょう。

福利厚生費に含まれない福利厚生

福利厚生の中には、福利厚生費として認められず、節税効果のないものもあります。1つずつ紹介します。

交際費や消耗品費用

福利厚生費とよく混合するのが、交際費と消耗品費用です。交際費は社外向けに支払われる費用であり、福利厚生は社内向けの制度であるため、福利厚生費に含まれません。また、消耗品はファイルや筆記用具など業務に直接関わらないものです。

消耗品は10万円未満(1年あたり)であることも理由として、福利厚生費に含むことはできないのです。

つまり、

  • 制度の利用者が従業員またはその家族である
  • 業務に関わっている

という条件が必要と言えます。

現金や商品券

創業祝いや永続勤続者へのお祝い、結婚祝いなどの祝い事で現金や商品券を支給する場合、以下の条件を満たしていないと福利厚生費として認められません。

  • 5年以上の期間が空いて贈与している
  • 記念品としてふさわしいものである
  • 従業員が記念品を選択できない
  • これらの条件を満たした記念品と同時に支給する

また、見舞金や旅行券などを現物で支給する場合や、業務に必要なものの購入費用の現金を支給する場合、飲食代を現金支給する場合は福利厚生費となりません。

貸付金の利息

台風や地震などの災害、病気やケガが要因で臨時的に生活資金が必要な場合、無利息・低利息で貸付金を支給できます。しかし、利息の差額分は給与として扱わなければなりません。

高額な人間ドック

基本的に人間ドックにかかる受診費用は、福利厚生費として認められています。しかし、オプションをつけたり、検査項目が一般的でないものを取り入れると、福利厚生費として扱えません。

家賃補助

企業が購入・借り上げた社宅を従業員に貸し付ける社宅制度は福利厚生費として認められます。しかし、家賃補助制度で家賃の50%以上が企業負担の場合、福利厚生費として扱えません。

要件を満たさない社員旅行

  • 4泊5日以上の旅行である
  • 高額である
  • 欠席した従業員に現金を支給している
  • 社員旅行・研修旅行参加者が全従業員の50%以下である
  • 私的な旅行である

以上の条件がそろっている社員旅行や研修旅行は、福利厚生費に計上できません。

福利厚生で節税効果を出すときの注意点

福利厚生で節税効果を出すためには、2つのポイントに注意する必要があります。1つずつ解説します。

  • 一般的な節税と性質が異なることを理解する
  • 給与所得にならないように注意する

一般的な節税と性質が異なることを理解する

従業員やその家族のための福利厚生にかかる費用は、福利厚生費となり節税効果があります。しかし、一般的な節税と性質が異なっていることを理解しておく必要があります。

企業が節税対策をする場合、

  • 翌月分の社会保険料を未払い費用として計上する
  • 自家用車を社用車にし、ガソリン代や保険料、高速代を経費にする
  • 従業員の自宅を社宅にして家賃を経費にする
  • 役員報酬を増額し、損金計上する

などさまざまな方法で節税できます。企業が普段支払っているお金で節税できるのが、一般的な節税です。

しかし、福利厚生費の中には企業が損をしてしまう費用も含まれています。なぜなら、福利厚生は従業員の生活を豊かにできる一方、お金が出て行ってしまうデメリットがあるからです。

費用を支給するだけで無駄遣いになってしまうような福利厚生を導入する際は、「支出をして従業員のためになるか」「支給することで従業員の満足度が高まり離職率が低下するか」などを検討するようにしましょう。

給与所得にならないように注意する

福利厚生で節税効果を出す際には、給与所得にならないように注意する必要があります。もし税務調査時に現物支給をしたと判断されると、給与所得として扱われます。

給与は課税されるため、福利厚生として支給したとしても、税金がかかります。そのため、「節税のために取り入れたい福利厚生」の章で紹介した節税効果を生み出す条件を確認して、給与所得にならないように福利厚生を導入することが大切です。

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福利厚生費を活用して節税を行い、会社全体の成長に繋げよう

今回は、従業員の満足度を上げる福利厚生で節税できる方法を解説しました。上手に福利厚生を導入し、節税効果を生み出せば、経営面にも大きなメリットが生まれます。

現在導入している福利厚生や、導入予定の制度が節税できるか、注意すべき点はどこなのかをチェックし、経営を上手に回していきましょう。

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福利厚生についてもっと詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

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