
福利厚生費とは?課税・非課税の基準と、節税に役立つ理由も紹介!
福利厚生費は、企業が従業員へ金銭以外の形で与える報酬の中で、税務会計上経費として認められるものです。
福利厚生費の中には、所得税が非課税になるものもあり、経費として計上できます。
ただし福利厚生費が課税対象になる場合は、経費として計上できず節税効果を得られません。
節税につながる福利厚生の種類と、福利厚生費が課税・非課税になる条件を確認して、節税効果が高い施策を導入しましょう。
この記事では、福利厚生費が課税・非課税になる事例と、節税効果が高い施策を紹介します。
福利厚生のカフェテリアプランが課税対象になるかもあわせて解説しますので、最後まで読んで節税につながる施策を導入しましょう。
▼そもそも福利厚生のメリット、導入方法などを詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。
福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
目次[非表示]
- 1.福利厚生費とは
- 1.1.法定福利厚生
- 1.2.法定外福利厚生
- 1.3.福利厚生費の平均額は108,517円
- 1.4.福利厚生費の対象となる要件
- 1.5.福利厚生費が非課税対象になる条件
- 2.福利厚生費で非課税対象になるケース
- 2.1.非課税ケース1.社内イベント費用
- 2.2.非課税ケース2.慶弔費や育児・介護補助費用
- 2.3.非課税ケース3.飲食費
- 2.4.非課税ケース4.資格取得支援費
- 2.5.非課税ケース5.消耗品関係費用
- 2.6.非課税ケース6.育児・介護費用
- 2.7.非課税ケース7.レクリエーション費用
- 3.福利厚生費で課税対象になるケース
- 3.1.課税ケース1.過剰な通勤手当
- 3.2.課税ケース2.従業員に費用を支給した健康診断
- 3.3.課税ケース3.企業負担分が50%を超える住宅や寮の家賃
- 3.4.課税ケース4.一部の従業員のみの研修旅行や社員旅行
- 3.5.課税ケース5.企業負担分が50%以上の食事支給・手当・補助
- 3.6.課税ケース6.高額すぎる飲食費
- 3.7.課税ケース7.現金や換金性が高い物品の支給
- 4.福利厚生のカフェテリアプランは課税対象?見極めポイント
- 5.福利厚生費ではないと判断された場合にかけられる課税率
- 6.福利厚生が節税に役立つ理由
- 7.節税につながる福利厚生の種類
- 7.1.社宅制度
- 7.2.法人保険
- 7.3.出張制度
- 7.4.食事手当
- 7.5.社員割引
- 7.6.制服支給
- 7.7.健康診断・人間ドック
- 7.8.保養所・別荘の購入や借り上げ
- 7.9.社員旅行・研修旅行の実施
- 7.10.育児・介護サービス費
- 7.11.勤続表彰制度
- 7.12.慶弔費用の支給
- 7.13.レクリエーションや部活動費
- 8.まとめ
福利厚生費とは
そもそも福利厚生費とは、従業員の生活を豊かにしたり労働環境を整備したりと、給与以外の形で支給する報酬の費用です。
福利厚生費は、大きくわけて法定福利厚生と法定外福利厚生の2種類があります。条件を満たせば福利厚生費が非課税になるため、非課税対象になる条件を把握しておくことが大切です。
福利厚生の見直しや導入を検討している企業は、福利厚生費について下記のポイントを押さえておきましょう。
- 法定福利厚生と法定外福利厚生の違い
- 福利厚生費の平均額は108,517円
- 福利厚生費の対象となる要件
- 福利厚生費が非課税対象になる条件
各ポイントを解説するので、福利厚生費について理解を深めましょう。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、法律で従業員への提供が定められている福利厚生のことです。具体的には、社会保険や休業補償など企業が運営するために必要な次のような費用を指します。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 労災保険
- 雇用保険
社会保険や労災保険・雇用保険などの法定福利厚生にかかる費用の一部を企業が負担しています。
企業が負担する料金分を、福利厚生費として経費計上することが可能です。
法定外福利厚生
法定外福利厚生費とは、法定福利厚生の他に企業が独自に設けている福利厚生です。具体的には、従業員の生活を豊かにし働きやすい労働環境を整備する次のような施策が、法定外福利厚生に該当します。
- 住宅関係(住宅手当・社宅など)
- 医療・健康関連(健康診断・人間ドック・予防接種など)
- 飲食関係(食事手当・社員食堂など)
- ライフサポート(宿泊・旅行・出産・介護関連など)
- 慶弔関係(慶弔休暇・慶弔見舞金など)
- 共済会(従業員のために設立する非営利組織が提供するサービス)
福利厚生が充実している企業は、従業員にとって魅力を感じやすく、定着率を向上させられます。
法定外福利厚生を充実させて、従業員が働きたくなる組織づくりを行いましょう。
▼他にも法定外福利厚生について、知りたい場合は次の記事もご参考にしてください
▼賃上げに代わる福利厚生に関して、効果を次に纏めています。
福利厚生費の平均額は108,517円
福利厚生費は、企業によって異なりますが、基準となる平均額を把握しておくことが大切です。
一般社団法人「日本経済団体連合会」が公表した「第64回 福利厚生費調査結果報告」によると、2019年度の従業員1人1ヵ月あたりの福利厚生費は、平均で108,517円でした。
項目 |
金額 |
---|---|
現金給与総額 |
547,336円 |
福利厚生費 |
108,517円 |
法定福利費 |
84,392円 |
法定外福利費 |
24,125円 |
通勤手当・通勤費 |
8,669円 |
退職金 |
47,354円 |
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度」
福利厚生費の内訳として、法定福利費の厚生年金保険が46,832円と4割以上を占めており、法定外福利費は全体の約2割程度です。
福利厚生を見直す際には、福利厚生費がどの程度かかるかを計算して、予算内で実施できる施策を考案しましょう。
福利厚生費の対象となる要件
福利厚生費として認められる金額が多くなると、経費として計上できるため、節税効果を発揮できます。
しかしすべての福利厚生にかかる費用が、経費計上できるわけではないため、福利厚生費の対象となる要件を理解しておく必要があります。
福利厚生費の対象となる要件は、次のとおりです。
- 福利厚生規定を整備している
- 妥当な金額支給である
- すべての従業員を対象にしている
- 現金支給ではない
上記の要件を満たした場合のみ、福利厚生費として経費計上できます。つまり福利厚生として高額すぎる金額や、一部の従業員を対象にした施策では、福利厚生費として認められません。
福利厚生費が非課税対象になる条件
福利厚生費は原則として非課税ですが、以下の条件を満たさない場合は課税対象として扱われます。
- 福利厚生の目的に沿う内容である
- すべての従業員を対象とした福利厚生にかかった費用である
- 福利厚生として常識的な範囲内の内容、金額である
- 税務規定の範囲内の支出である
上記の条件を満たした福利厚生費は、非課税対象として扱われます。福利厚生は、あくまで従業員やその家族の生活や健康をサポートしたり、より働きやすい労働環境を整備したりすることが目的です。
そのため上記の条件に当てはまらない高額すぎる福利厚生費や、経営層など一部の従業員のみが利用できる福利厚生の費用は課税対象です。
福利厚生の内容を決める際には、福利厚生費が非課税対象の条件を満たしているか確認しておきましょう。
福利厚生費で非課税対象になるケース
すべての従業員が利用対象で、妥当な金額・内容の福利厚生であれば、福利厚生費の非課税対象として扱われます。
福利厚生費が非課税として認められる具体的な事例は、次のとおりです。
- 社内イベント費用
- 慶弔費や育児・介護補助費用
- 飲食費
- 資格取得支援費
- 消耗品関係費用
- 育児・介護費用
- レクリエーション費用
非課税対象になる福利厚生費の事例を確認して、福利厚生を見直す際の参考にしてください。
非課税ケース1.社内イベント費用
忘年会や新年会、歓送迎会などの社内イベント費用は非課税の対象です。しかし、このような社内イベントを非課税対象にするには、以下の条件を満たす必要があります。
- 全従業員が対象で、相当数の従業員が参加している
- 全支社・部署に開催権利がある
そのため、役員のみが対象の新年会や、特定の部署のみおこなうイベントは非課税対象にはなりません。 また、創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式、表彰式などの社内イベントで従業員に贈る記念品も非課税対象です。 ただし、以下の条件を満たさなければなりません。
【永年勤続記念品】
- 記念品が勤続期間と照らし合わせて妥当の金額である
- おおむね10年以上の勤続年数かつ2回以上表彰される従業員はおおむね5年以上の間隔がある
【創業記念品】
- 1万円以下の記念品である
- 創業後おおむね5年以上の期間ごと支給している
非課税ケース2.慶弔費や育児・介護補助費用
慶弔費や育児・介護補助費用も、福利厚生費の非課税対象となる項目です。
結婚祝いや出産祝い・香典・見舞金などの慶弔費は、すべての従業員を対象にしており、福利厚生費の非課税条件に当てはまります。
他にも従業員やその家族に要介護者がいる場合、介護施設の利用費用や介護用具の購入費用を一部補助する福利厚生費も非課税対象です。
同じように育児に関する用具や施設の費用を一部補助する福利厚生もあり、妥当な金額・内容であれば非課税対象として扱われます。
しかし福利厚生を利用するには一定の基準を設けていることと、補助・支給する金額が妥当であることが非課税対象になる条件です。
非課税ケース3.飲食費
飲食費も非課税の対象となるものがあります。 例えば、創立記念日や国民の祝日、新社屋の落成式で提供した飲食費用があります。
従業員に一律に提供されるものであれば、非課税の対象です。
また、残業や宿直などをした従業員に提供する飲食費用も非課税となります。通常の勤務時間以外に業務に取り組んだ場合にのみ非課税の対象になるため、注意してください。
非課税ケース4.資格取得支援費
従業員が仕事をする上で、必要な知識やスキルを身につける資格取得を支援する費用は非課税対象です。
資格取得支援費は、従業員の待遇改善やスキルアップにつながる福利厚生費になるため、非課税対象として扱われます。
具体的には、免許や資格を取得するために受講する研修や講習会の参加費、教材の購入費などが含まれます。
非課税ケース5.消耗品関係費用
福利厚生費の中で、消耗品関係費用も非課税対象です。
具体的にはオフィス内で使用するお菓子やコーヒー代、洗剤・消臭剤代・制服代などは、仕事に関係がある消耗品として福利厚生費に含まれます。
そのため、取引先に持っていく手土産代は、直接的に仕事に関係がある経費として扱われず福利厚生費に含まれません。
非課税ケース6.育児・介護費用
福利厚生として従業員へ還元する育児・介護費用は、非課税対象になる福利厚生費です。
従業員やその家族にかかる育児・介護費用の一部を、福利厚生として補助できるため、福利厚生費として扱います。
ただし福利厚生費の非課税対象となる条件である「すべての従業員を対象にしている」ことと「常識的な範囲内の内容・金額である」を満たしている必要があります。
そのため一部の従業員が利用できない福利厚生や、子どもの衣服や食事の購入費までサポートする過剰な福利厚生では、福利厚生費として認められません。
非課税ケース7.レクリエーション費用
福利厚生費の中で、レクリエーション費用も非課税対象です。
レクリエーション費用とは、サークル活動費や社員旅行費・運動会費用が含まれます。ただしレクリエーション費用を福利厚生費として扱うためには、社員旅行の場合4泊5日以内で全従業員のうちの過半数が参加していなければなりません。
参加率が低い社員旅行や長期滞在すぎる旅行の場合は、福利厚生として認められません。
役員のみが参加するレクリエーションや、接待として行う旅行は交際費として計上する必要があります。
福利厚生費で課税対象になるケース
福利厚生費は、原則として非課税になるものが多いです。しかし非課税対象の条件を満たしていない福利厚生は、福利厚生費として認められず課税されてしまいます。
福利厚生費が課税対象になる事例は、次のとおりです。
- 過剰な通勤手当
- 従業員に費用を支給した健康診断
- 企業負担分が50%を超える住宅や寮の家賃
- 一部の従業員のみの研修旅行や社員旅行
- 企業負担分が50%以上の食事支給・手当・補助
- 高額すぎる飲食費
- 現金や換金性が高い物品の支給
福利厚生費が課税対象にならないように、上記の事例を確認しておきましょう。
課税ケース1.過剰な通勤手当
従業員に支給する通勤手当については、一定額までは福利厚生費としての計上が可能です(非課税対象)。
しかし、通勤手当を過度に支給していると通勤手当が課税対象になります。
具体的には、電車通勤で1ヶ月あたりの通勤手当が15万円を超えてしまう場合は課税されます。
また、オフィスから2キロ以内の通勤距離で自動車や自転車で通勤している従業員に対して交通費を支給すると全額課税されます。 このことから、就業規則などで自宅から勤務先までの通勤距離が2キロ以下の場合には交通費を支給しないと定めている企業も多いです。
▼通勤手当について、詳しく知りたい場合は次の記事もご参照ください。
課税ケース2.従業員に費用を支給した健康診断
従業員に健康診断の費用を支給して、従業員の手から病院に健康診断の費用を払う場合には課税対象になります。
金額に関しても、常識の範囲内とされています。あまりにも高額な健康診断費用になると福利厚生費として認められません。 一方、企業が直接病院に対して健康診断費用を支払う場合は、非課税対象です。
■健康診断に関する詳細は下記記事をご覧ください。
課税ケース3.企業負担分が50%を超える住宅や寮の家賃
社宅や寮を従業員に貸与する場合にも注意が必要です。賃貸料相当額を企業がどれだけ負担するかで明確に課税と非課税にわかれます。
社宅や寮の家賃を一定の計算式で計算して、その50%以上を従業員から徴収する場合には企業負担額を非課税対象にできます。
企業負担が50%以上の場合は、企業負担額については給与とみなされ、課税対象になります。
▼住宅手当に関する詳細は次の記事をご参考ください
課税ケース4.一部の従業員のみの研修旅行や社員旅行
従業員の研修旅行や社員旅行を企画している場合にも注意が必要です。福利厚生費として計上するためには、以下の要件を満たさなければなりません。
- すべての従業員を対象としており、従業員の50%以上が参加していること
- 4泊5日以内の旅行であること
- 行かない(行けない)従業員に対して現金支給がないこと
の3つ要件を満たすことが非課税対象になる条件です。
この3つ要件を満たしていない研修旅行や社員旅行の費用は、課税対象になります。
全従業員を対象にした研修旅行や社員旅行という行為が非課税の対象になっているのであって、一部の人しか参加できない旅行や旅行代金を現金で支給する場合は、賞与などとして扱われる可能性があります。
課税ケース5.企業負担分が50%以上の食事支給・手当・補助
従業員に対して食事を現物支給する食事支給は、以下の要件を満たせば福利厚生費として計上できます(非課税対象)。
満たさない場合は、課税対象になります。
- 従業員が食事代金の半額以上を負担していること
- 企業側負担が、一人あたり月額3,500円(税抜)以下であること
- 残業や深夜勤務従業員に対する食事の現物支給
上記は社員食堂、仕出し弁当などで食事が現物で提供される場合です。
食事手当として現金が支給される場合は、給与扱い=課税対象となります。
現金支給の食事手当とは別で、食事に限定をしたチケットを従業員に配布をする食事補助があります。このチケットによる食事補助も、上記の要件(従業員負担50%以上、1人あたり月額税抜き3,500円上限)を満たせば、非課税対象になります。
課税ケース6.高額すぎる飲食費
社内で飲み会や食事会を行う場合、全従業員に参加の権利があり、かつ全従業員の50%以上が参加した場合は、福利厚生費として認められます(非課税対象)。
しかし、これらのイベントにおいて1人に対し5万円など、あまりに高額な支出が計上されている場合は、福利厚生費ではなく交際費として処理(課税対象)しなければいけないケースも存在します。
この金額については、社会通念上妥当かどうかが判断基準となります。
一般的な支出であれば問題ありませんが、不安な場合は顧問税理士などと相談しておきましょう。 また、役職や職種などで参加が限定されている場合や社外の人を大勢呼ぶような会の費用については、課税対象になります。福利厚生費ではなく交際費として計上しなければなりません。
課税ケース7.現金や換金性が高い物品の支給
そのほかにも、旅行券などの金券類の支給やスーツの現物支給などを行うと、給与扱いの支出となり課税対象になります。 制服の貸与や支給については原則非課税対象となりますが、一般的なスーツのように、制服としての機能が弱く、特定の企業の従業員であることが判別しにくいようなものを現物支給してしまうと、課税対象として扱われます。
もちろん、それらの購入にかかる費用を現金で支給した場合についても、課税対象です。
▼福利厚生に関わるお役立ち資料のご紹介
福利厚生のカフェテリアプランは課税対象?見極めポイント
福利厚生制度の一種として、カフェテリアプランを導入している企業も多いです。カフェテリアプランとは、従業員に一定のポイントを支給して、溜まったポイントを消費すれば用意された福利厚生メニューを選択・利用できる福利厚生制度です。
▼カフェテリアプランの詳細を知りたい方は次の記事もご参考にしてください
ポイントの範囲内で自分好みのサービスを利用できるため、従業員が求める福利厚生を提供できます。
カフェテリアプランはメニューごとに課税対象か非課税対象か変わるため、制度を確立する前に見極めることが大切です。
福利厚生費の非課税対象となる要件を満たせば、カフェテリアプランでも非課税対象として扱われます。
カフェテリアプランの導入を検討している企業は、次のポイントを確認して課税・非課税の基準を把握しておきましょう。
- 利用可否・付与できるポイントが役職や年齢によって変わる
- 換金性のあるメニューは課税対象になる
- カフェテリアプランで非課税になる条件
それぞれのポイントを確認して、できるだけ非課税となるメニューを用意しましょう。
利用可否・付与できるポイントが役職や年齢によって変わる
利用可否・付与できるポイントが役職や年齢によって変わる場合は、福利厚生費として計上できません。
福利厚生はあくまで「すべての従業員が平等に利用できる制度」である必要があり、役職や年齢によって付与できるポイントや利用可否が変動するカフェテリアプランは、非課税対象外です。
カフェテリアプランを非課税対象にしたい場合は、年齢や役職・部署にかかわらず、すべての従業員に公平なポイント付与ができるよう制度を見直しましょう。
換金性のあるメニューは課税対象になる
カフェテリアプランの中でも、換金性のあるメニューは課税対象になるため注意してください。
福利厚生費として認められるには、現金や金券類など換金性のあるものを支給してはなりません。
そのため、商品券や乗車券・割引券・入場券など換金性のある金券類を支給するメニューは、課税対象として扱われます。
カフェテリアプランで非課税になる条件
上記の内容をまとめると、カフェテリアプランで非課税になる条件は次のとおりです。
- すべての従業員が平等に利用できる
- 現金や金券類などを支給しない
この2点を満たしていれば、カフェテリアプランのメニューを非課税対象として扱えます。
カフェテリアプランであっても、福利厚生費の非課税要件を守る必要があるため、課税対象にならないよう注意しましょう。
参照:カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合|国税庁
▼課税非課税で迷う場合は、お気軽にリロクラブにお問合せ下さい。
▼資料も合わせてご確認ください。
福利厚生費ではないと判断された場合にかけられる課税率
福利厚生費は非課税のため課税率は0%ですが、もしも福利厚生費として妥当でないと判断された場合には、給与を支給したという扱いになるため、所得税を課税されることになります。
福利厚生費が給与扱いに変わると、源泉所得税漏れがあったと判断されます。この源泉所得税の納付漏れは、納付すべき税額に対して10%の不納付加算税を支払う義務が生じます。
具体的には、従業員10名に対して10万円の福利厚生費を計上しており、この全額が福利厚生費として不適当と判断された場合には、10人×10万円×5%(所得税)=5万円が課税されます。
さらにこの税額5万円に10%の不納付加算税が加算されて、計55,000円を納付する義務が発生します。 これらの追徴について、後日従業員から徴収すればよいとも考えられます。
しかし、退職してしまっている従業員がいる場合には徴収することが難しくなっているため、企業が全て支払いを行うケースが多いです。
また仮に徴収できたとしても、企業が用意した福利厚生を利用して聞いていない支出があとから発生することはおかしいと従業員から苦情が出る可能性も高いです。
企業としては大した額ではないかもしれませんが、個人にとっては非常に大きな額である可能性もあります。こうしたことから、実際のところは、企業でこれらの追徴額を全額支払う傾向にあります。
福利厚生が節税に役立つ理由
福利厚生は節税に役立つ制度ですが、「なぜ節税につながるのか」理由を知らない方もいるでしょう。
福利厚生費を経費として計上すると「損益」となり、収入から差し引かれて企業全体の利益が減少します。
法人税は利益に応じて支払う税額が決まるため、福利厚生費で損益を増やせば利益が減少し、節税につながるのです。
さらに企業だけでなく福利厚生の恩恵を受ける従業員にとっても、節税効果が期待できます。
例えば住宅手当を給与として支給された場合、所得が増えるため社会保険料や所得税が増えてしまいます。
しかし福利厚生として家賃分を給与から差し引かれた場合は、非課税対象となるため社会保険料や所得税に影響しません。
福利厚生は、企業と従業員双方にとって節税効果が期待できる制度です。
節税につながる福利厚生の種類
福利厚生費で節税するためには、従業員に還元して支出を生み出す福利厚生を導入する必要があります。
法定福利厚生の他に、次の法定外福利厚生を導入すれば節税につなげられます。
- 社宅制度
- 法人保険
- 出張制度
- 食事手当
- 社員割引
- 制服支給
- 健康診断・人間ドック
- 保養所・別荘の購入や借り上げ
- 社員旅行・研修旅行の実施
- 育児・介護サービス費
- 勤続表彰制度
- 慶弔費用の支給
- レクリエーションや部活動費
それぞれの制度の特徴を確認して、自社で導入する法定外福利厚生を選定しましょう。
社宅制度
社宅制度は、企業が契約した賃貸物件を従業員に貸し出す福利厚生です。
住宅手当を現金で支給した場合は給与として扱われますが、社宅利用料の給与から差し引くことで、従業員に格安で住まいを提供できます。
社宅制度を非課税対象にする場合は、家賃相当額の50%以上を従業員が支払う必要があるため、企業によっては「家賃相当額の50%」を社宅利用料として定めているケースもあります。
なお家賃相当額を求める計算式は、次のとおりです。
- 建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
- 敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
- (建物の総床面積÷3.3㎡)×12円
参考:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
また2020年12月に日本経済団体連合会が公表した「第64回 福利厚生費調査結果報告」によると、住宅関連の法定外福利厚生費は次のとおりでした。
項目 |
従業員一人あたりの月額支給金額 |
---|---|
法定外福利費 |
24,125円 |
住宅関連費 |
11,639円 |
住宅 |
11,169円 |
持ち家補助 |
470円 |
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度」
住宅関連の制度が占める割合は、法定外福利内の48.2%にあたります。
法人保険
法人保険は、保険料を福利厚生費として計上できるため、節税効果が高い施策です。解約返戻金がある法人保険の場合は、解約時に返戻金が支払われるため、より節税効果が高まります。
ただし法人保険の保険料を福利厚生費に計上できるのは、最高解約返礼率が50%までの場合のみです。
解約返戻率が50%を超える場合は、一部の保険料を資産に計上しなければなりません。
出張制度
出張制度を設けていると、従業員が出張に行く度に出張手当を福利厚生費として支給できます。
ただし出張旅費規定を定めていないと、出張手当を福利厚生費として計上できないため、注意が必要です。
あらかじめ出張旅費規定を定めておけば、常識の範囲内の金額を出張手当として支給し、福利厚生費で計上できます。
福利厚生費として出張手当を計上できれば、従業員が遠方へ出張するたびに、損金算入ができるため高い節税効果を見込めます。
食事手当
食事手当は、残業中や深夜勤務中の従業員に食事を会社負担で提供することです。勤務時間外の食事に関する手当であれば、福利厚生費として計上できるため節税につながります。
ただし食事手当として現金を支給したり高額すぎる食事を提供した場合は、福利厚生費として認められないため注意しましょう。
勤務時間中に食事手当を支給したい場合は、従業員が食事代の50%以上を支払い、企業が負担する月々の食事手当が3,500円(税抜)未満である必要があります。
社員割引
社員割引は、自社の商品やサービスを割り引いて従業員に提供する福利厚生です。ただし高額すぎる割引や、一部の従業員のみを対象とした割引は、福利厚生費として認められません。
社員割引を福利厚生費として計上し、節税するためには次の条件を満たしておく必要があります。
- 仕入価格以上の割引を行わない
- 通常販売価格の70%未満の割引をしない
- すべての従業員に一律の割引率を設けるか、地位や勤続年数に応じた合理的な割引率を採用している
- 一般消費者が通常消費する量のみを、社員割引として提供する
また一般消費者が消費する以上の、膨大な量の商品・サービスを社員割引で従業員に提供した場合は、福利厚生費として認められないため注意しましょう。
制服支給
制服支給は、業務に必要な福利厚生になるため、福利厚生費として計上できます。制服の支給・貸与にかかった費用を福利厚生費として計上するため、従業員数が多い会社であれば、高い節税効果が期待できます。
なお制服支給が福利厚生費として認められる条件は、次のとおりです。
- 仕事中のみ着用し、私的利用しないできない
- 制服を着用する対象の業務を行うすべての従業員を対象としている
- 制服を着用することで自社の従業員だと認識できる
- 実物で支給・貸与される
制服の購入費用を現金で支給したり、業務外でも着用できるスーツや私服にもなる制服支給は、福利厚生費として認められません。
健康診断・人間ドック
従業員が受ける健康診断や人間ドックの費用を、企業負担で支払う場合は福利厚生費として計上できます。
すべての従業員を対象としていなくても、一定の年齢以上を対象とした健康診断・人間ドックの受診支援であれば、福利厚生費として計上できます。しかし役職や一部の従業員のみを対象とした健康診断・人間ドックの支援制度は、福利厚生の条件に当てはまらず課税対象です。
健康診断・人間ドックの支援を福利厚生として提供する場合は、支給対象年齢や条件を規定で設定しておきましょう。
保養所・別荘の購入や借り上げ
保養所・別荘の購入や借り上げは、従業員の生活を豊かにする目的となるため、福利厚生費として計上できます。
保養所や別荘の購入・借り上げにかかる費用は高額なので、節税効果が高いです。
また保養所・別荘の購入や借り上げ費用を福利厚生費に含めるためには、次の条件を満たしておく必要があります。
- すべての従業員が利用できる
- 利用状況が把握できる書類を提出する
- 利用する従業員の経済的な利益が高額すぎない
保養所や別荘は、従業員だけでなくその家族も利用できるため、夏季休暇や年末休暇の家族旅行として利用できます。
そのため従業員にとってメリットが大きく、企業にとって高額な節税効果が期待できる法定福利厚生です。
社員旅行・研修旅行の実施
社員旅行や研修旅行を実施する費用も、福利厚生費に含めれば高い節税効果を期待できます。
高額すぎず以下の条件を満たした社員旅行・研修旅行であれば、福利厚生費として計上できます。
- 4泊5日以内の旅行である
- 高額すぎない旅行である
- 不参加の従業員に現金を支給しない
- 全従業員の50%以上が社員旅行・研修旅行に参加する
- 私的な旅行ではない
私的な旅行ではなく、あくまで社員旅行や研修旅行であることを証明するために、研修資料やスケジュール表などを用意しておきましょう。
育児・介護サービス費
育児・介護サービス費を福利厚生費として計上すれば、節税効果が期待できます。
法律上は特に上限を定められていませんが、過剰すぎるサービス費用を補助していた場合は、福利厚生費として認められない可能性があるため注意しましょう。
またすべての従業員を対象としている必要があるため、育児・介護に関する福利厚生を導入する際には、利用条件を明確に定めておきましょう。
勤続表彰制度
勤続表彰制度は、勤続年数が長い従業員を表彰し報奨金を支給する福利厚生です。報奨金を支払う福利厚生ですが、すべての従業員に参加を義務付けずに50万円以下の報酬を一括で支払う場合は、福利厚生費として計上できます。
50万円以下の支出を福利厚生費として計上できるため、高い節税効果が期待できます。
慶弔費用の支給
慶弔費用の支給は、常識範囲内の金額を支給する場合は、福利厚生費として計上可能です。
具体的に結婚祝いや出産祝い・香典・見舞いなどが当てはまり、すべての従業員を対象とした制度の場合、非課税で金銭を支給できます。
一度に数万円単位の慶弔費用を支給するため、節税効果が高い法定外福利厚生費です。
レクリエーションや部活動費
レクリエーションや部活動費を、福利厚生費として計上すれば節税につながります。
ただしレクリエーションや部活動費を福利厚生費として認めるには、次の条件を満たしておく必要があります。
- レクリエーションや部活動などの目的で費用を利用する
- すべての従業員が自由に参加できる活動である
- 常識範囲内の金額を支給する
なお部活動の合宿などの名目で旅行に出かけた場合は、一部の従業員を対象にした旅行になるため、福利厚生費として計上できません。
まとめ
福利厚生費は福利厚生の内容によって、課税・非課税が変わる。福利厚生費は大きく2種類に分けられる。
- 法定福利費(原則非課税)
- 法定外福利費(内容によって課税・非課税が変わる)
法定外福利費(福利厚生費)の非課税要件は4つ。
- 前提として、福利厚生の目的に沿う内容であること
- 従業員全員を対象としている平等な福利厚生にかかった費用であること
- 福利厚生として常識の範囲内の内容、及び妥当な金額であること
- 税務規定の範囲内の支出である場合(規定のある法定外福利厚生の場合)
法定外福利費(福利厚生費)で課税対象になるケース。
- 通勤手当の過度な支給
- 従業員に費用を渡して健康診断を受けてもらう
- 社宅や寮の家賃(50%以上の企業負担)
- 従業員の研修旅行や社員旅行の費用負担(要件を満たさない場合)
- 従業員への食事支給・手当・補助(要件を満たさない場合)
- 社会通念上妥当と認められない額の飲食
- その他現金・現物支給で従業員に還元した場合
カフェテリアプランが課税対象になるケース。
- 付与されるポイントが役職等で違う場合
- 換金性のあるものと交換、ポイントを換金した場合
福利厚生費ではないと判断された場合には、納付すべき税額に対して10%の不納付加算税を支払わなければならない。
福利厚生費として計上できれば、企業にとっては損金の扱い(非課税対象)となります。また従業員にとっては、福利厚生としてサービスを受けても給与扱いにならないため、所得税の負担増はありません。
したがって、企業にとっても従業員にとっても節税になります。
福利厚生の充実で従業員やその家族の生活の安定と向上、労働環境の改善を図ることには費用がかかります。費用がかかるからといって福利厚生の充実を検討しないのではなく、非課税となる要件を満たすことで、負担を軽減(節税)しながら福利厚生を充実することは可能です。
従業員やその家族のことを第一に考えた上で、自社でできる範囲の法定外福利厚生を、負担を軽減できるのであれば軽減しながら充実させていくことが理想です。