少子高齢化が加速するなか、賦課方式の公的年金は制度の限界が懸念されています。また、企業年金のあり方も見直されています。そこで注目が高まっているのが、従業員の資産形成に役立つ企業型確定拠出年金(企業型DC)です。今回は、企業型確定拠出年金の制度概要とメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
企業型確定拠出年金(企業型DC)とは

現在、老後の暮らしは公的年金だけでは不十分だという認識が国民に定着しつつあります。
そのような認識から、老後の資金を自助努力で増やすための選択肢としての確定拠出年金(401K)が注目されています。確定拠出年金には個人型と企業型の2種類があり、今回解説するのは企業型確定拠出年金についてです。
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を積み立て(拠出して)加入者である従業員が自ら資金を運用して受け取る年金制度です。税制上の優遇メリットなどもあることから、年々加入者、導入企業が増加しています。
2010年3月末時点の加入者数は340.4万人でしたが、10年後の2020年3月末時点では約2倍の723.1万人にのぼっています。

出典:統計資料|企業年金連合会
まずは企業型確定拠出年金の基本的な仕組みを確認しましょう。
企業で働く従業員が加入できる企業年金の一種

企業型確定拠出年金は、公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)に加えて任意で導入ができる企業年金の一種です。
年金制度はその構成から「3階建て」と呼ばれています。1階部分に基礎年金(国民年金)、2階部分に厚生年金があり、企業型確定拠出年金はその上の3階部分にあたります。
企業型確定拠出年金の加入対象は、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員です。
ちなみに企業で働く従業員が加入できる企業年金には、ほかに厚生年金基金や確定給付企業年金があります。
掛金:基本的に企業が掛金を拠出する
企業型確定拠出年金の掛金は、企業が拠出する事業主掛金となっています。掛金の限度額は月額55,000円で、ほかの企業年金を併用する場合は27,500円です。
従業員が掛金を上乗せできるマッチング拠出
企業型確定拠出年金の掛金は原則事業主掛金ですが、マッチング拠出を採用すれば加入者である従業員も一部掛金を追加拠出できるようになります。
マッチング拠出は規約に定めることで導入でき、加入者は任意で利用可能です。
なお、加入者による掛金の追加拠出には制限があります。
- 事業主掛金の金額を超えないこと
- 事業主掛金との合算で法的上限額を超えないこと
以上の要件を満たさなければなりません。
運用:運用は従業員自身が行う
企業型確定拠出年金の運用は、加入者である従業員自身が行います。そのため、どの運用商品をどのように組み合わせるかなど、運用の指図も自分で判断する必要があります。
運用により資産が予定より減ったり増えたりしますが、その資産の運用はすべて加入者(従業員)の自己責任です。
資産運用に絶対的な正解はありませんが、適切な商品選択や運用には知識を要するため、従業員の投資教育が必要になってきます。
給付:運用した資産は60歳以降に受け取れる
企業型確定拠出年金で積み立て運用した資産は、60歳以降に年金や一時金として受け取ることができます。原則、60歳になるまでは途中で現金化できないので注意が必要です。
例外的に60歳未満で受け取れるケース
加入者本人が障害基礎年金の対象となる程度の障害の状態となった場合や、亡くなった場合は、例外的に60歳未満でもお金を受け取ることが可能です。
また、一定の要件を満たせば脱退一時金としての受け取りが認められていますが、適用ケースは限られています。
おすすめの企業型確定拠出年金
リロクラブ「総合型401k倶楽部」
新たに企業型の年金制度を導入しようとすると、掛金の事業主拠出(負担)が気になるところです。その点を解決してくれる企業型確定拠出年金が、リロクラブの「総合型401k倶楽部」です。
リロクラブの「総合型401k倶楽部」は、給与の一部を掛金とする選択制を基本とした確定拠出年金の制度設計です。ですので、新たな事業主拠出を追加負担することなく確定拠出年金制度を導入できます。
企業側は現行の給与の一部を掛金とすることにより比較的簡易に確定拠出年金制度が導入でき、原資不足の懸念なく退職金制度を確立できます。
企業型確定拠出年金の導入メリット

企業型確定拠出年金の導入は、加入者(従業員)にとって3つのメリットがあります。なかでも最大のメリットは、税制優遇です。
メリット1.3つの税制優遇措置
企業型確定拠出年金の最大のメリットは、税制面での優遇措置が充実している点です。加入者(従業員)にとって嬉しい税制優遇措置は、大きく分けて3つあります。
税制優遇1.運用益は課税されない
企業型確定拠出年金の運用によって得られた運用益は全額非課税となります。一般的な金融商品の運用益には税金が約20%かかるので、給与から別途株式などで個人運用を行うよりも利益が大きくなりやすいです。
本来であれば約20%の税金がかけられるところ、全額免除されることは大きなメリットです。
税制優遇2.税負担を軽減できる
税制優遇措置の2つ目は、企業が拠出した掛金は給与扱いとならず、全額損金算入できるというものです。
給与とみなされると所得税や住民税がかかり、社会保険料の対象にもなります。ですが、企業型確定拠出年金の事業主掛金は給与とは別扱いになるので、従業員の税負担を軽減できます。
同様に、マッチング拠出における加入者掛金も非課税です。
税制優遇3.年金受け取り時に控除対象となる
税制優遇措置の3つ目は、企業型確定拠出年金の給付金(年金や一時金)が、受け取る際に所得控除の対象となる点です。
一時金として受け取る場合は退職所得控除の扱いになり、年金として受け取る場合は雑所得扱いとして公的年金等控除が受けられます。
メリット2.口座管理手数料の個人負担がない
同じ確定拠出年金でも個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合、積み立て口座の加入や運用にかかる手数料は全額加入者負担です。
企業型確定拠出年金では、これらの口座管理手数料は企業側が負担します。企業型確定拠出年金には、加入者である従業員が口座管理手数料を負担しなくてよいというメリットがあります。
メリット3.離転職時に積立金を持ち運ぶことができる
企業型確定拠出年金の加入者(従業員)が中途退職や転職した場合、加入者は以前の企業で積み立てた資金を持ち運ぶことができます。
これをポータビリティと呼びます。転職先に企業型確定拠出年金がない場合や退職をして公務員や自営業になった場合は、個人型確定拠出年金への移換も可能です。
企業型確定拠出年金のデメリットとリスク、求められる対応

企業型確定拠出年金のメリットだけではなく、デメリットやリスク、そして導入企業側に求められる対応も把握しておきましょう。
デメリット.60歳まで現金化できない
企業型確定拠出年金は60歳まで受け取ることができません。例外はあるものの、原則60歳になるまで現金化できないため、途中解約をして引き出したい事情が生じた場合は不便さを感じるかもしれません。
リスク.元本割れのリスクがある
運用商品の中には元本確保型ではない高リスクタイプのものがあります。そのため、運用商品の選択方法しだいでは元本割れのリスクがあります。
企業型確定拠出年金の運用指図は自己責任において加入者本人が行うので、注意が必要です。
対応.従業員の投資教育が求められる
企業型確定拠出年金は加入者(従業員)が自分の判断で運用を行います。
ハイリスクハイリターン型の運用商品ばかりを選択する極端な運用方法も可能ですが、運用環境によっては元本割れや多額の損失を被る可能性が高まります。
運用指図は加入者である従業員の自己責任ですが、従業員の資産形成支援のために企業型確定拠出年金の導入を決めた企業は、従業員の運用能力を向上させるようサポートすることが求められます。
導入にあたっては、投資の基本ノウハウや運用知識を学べる従業員向けの投資教育を継続実施していくことが望まれます。
企業型確定拠出年金の導入を検討する際には導入して終わりではなく、従業員向けの継続的な投資教育を視野に入れておきましょう。
企業型確定拠出年金と他の企業年金との違い

企業型確定拠出年金のほかにも、年金として積み立てられるものがいくつかあります。それらの違いを確認しておきましょう。
厚生年金基金との違い
運用体制の問題などから近年では縮小の傾向にある企業加入型の年金として、厚生年金基金があります。
企業型確定拠出年金同様、加入者(従業員)の給与の一部を掛金として徴収して、企業がそこに上乗せした原資を企業が主体となって設立した厚生年金基金を通して運用機関に信託して運用する企業年金です。
企業型確定拠出年金との違いは、運用商品を従業員が自分で選べないという点です。
この厚生年金基金ですが、景気悪化に伴って各企業の運用益が低迷傾向になり、国庫からの支援金負担などの増加もあったことから、2014年4月以降の厚生年金基金の新設は認められていません。
こうした背景もあって加入者は減少してきています。
確定給付企業年金との違い
確定給付企業年金は、従来の厚生年金基金の問題解決のために制定された企業年金です。
企業型確定拠出年金との違いは、受給者に将来の受け取り額を確約している点です。
確定給付企業年金は将来の受け取り額を確約しているため、運用がうまくいかなかった場合は企業の責任となり、追加で補填を行う必要があります。
ちなみに、確定給付企業年金には規約型と基金型がありますが、規約型は掛金を外部(信託会社や生命保険会社など)に拠出し、年金資金を管理・運用していきます。毎年、給付金の確保ができるかどうかが確認されることになっています。
基金型では、企業が別法人として設立された年金基金に加入して、その基金に運用を任せられます。
個人型(iDeCo)との違い
企業型確定拠出年金と同じ確定拠出年金(401K)でも、個人型確定拠出年金(iDeCo)は私的な年金です。ですので、企業に勤めていない人でも加入できます。この点が、企業型確定拠出年金との大きな違いです。
60歳未満で国民年金を納付している人が加入でき、掛金は全額加入者自身が拠出するため、企業として加入に関与することはありません。
運用は加入者自身が行うことや、原則60歳以降に積み立てた運用資産を受け取る点などは、企業型確定拠出年金と同じです。
まとめ

公的年金の制度不安や企業年金が見直される中、注目されている企業型の確定拠出年金。企業型確定拠出年金(企業型DC)の制度概要は、以下。
- 任意で導入ができる企業年金の一種
- 加入対象は、企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員
- 掛金は、企業が拠出する事業主掛金
- 運用は、加入者である従業員自身が行う
- 運用資産は、60歳以降に受け取れる
企業型確定拠出年金のメリットは大きく3つ。
-
- 3つの税制優遇措置
税制優遇1.運用益は全額非課税
税制優遇2.掛金は全額損金算入となり、従業員の税負担を軽減
税制優遇3.年金受け取り時に控除対象となる
- 口座管理手数料の個人負担がない
- 離転職時に積立金を持ち運ぶことができる
企業型確定拠出年金のデメリットとリスク、求められる対応は、以下。
-
- デメリット.60歳まで現金化できない
- リスク.元本割れのリスクがある
- 求められる対応.従業員の投資教育が求められる
従業員のための福利厚生(資産形成の支援)として導入を検討したい企業型確定拠出年金。ただし、企業型確定拠出年金の導入にあたってはメリットばかりではありません。
コストや事務手続きの負担が不安で企業型確定拠出年金の導入を見送っているのであれば、リロクラブの「総合型401k倶楽部」が解決に役立つかもしれません。
給与の一部を掛金とする選択制の確定拠出年金であれば、現行の給与の一部を掛金とすることにより比較的簡易に制度が導入でき、原資不足の懸念なく企業年金制度(退職金制度)を確立できます。
企業年金を新たに検討している方、企業年金を見直したい方は「総合型401k倶楽部」を参考にしてみてはいかがでしょうか。