年次有給休暇の付与日数とおさえておきたいポイント。年5日の確実な取得

年次有給休暇の付与日数の計算方法と時季変更権の正しい使い方

労働基準法の改正により、年10日間以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、年5日の有給休暇を確実に取得させることが使用者に義務付けられました。今回は有給休暇に関する基本的なルールの中でもおさえておきたいポイントである、有給休暇の付与要件と日数の違い、時季変更権について解説します。

働き方改革とは?政府の施策と企業が取り組むべき課題を基礎から解説

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは

有給休暇の正式名称は、年次有給休暇です。この年次有給休暇の付与日数は、以下のように法律で定められています。

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。

引用元:リーフレットシリーズ労基法39条(PDF資料)|厚生労働省

また、労働基準法の改正により、2019年4月から年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対して、年5日の年次有給休暇の確実な取得が使用者に義務付けられました(労働基準法 第39条 第7項)。

年次有給休暇の平均取得率

労働者1人あたりの平均年次有給休暇取得率の推移(企業規模別)

出典:厚生労働省 就労条件総合調査:結果の概要

年次有給休暇は労働者に認められた権利であり、また使用者は労働者に年次有給休暇を付与しなければなりません。

年次有給休暇を取得する上で、使用者の承認は必要ありません。また、労働者がどのような目的で休暇を使用するとしても、制限はありません。

2019年の法改正により、労働者1人平均の年次有給休暇取得率は上がってきています。

それでも100%取得には程遠く、企業規模別でみると1,000人以上の企業で取得率63.1%、30~90人の企業では取得率51.1%でした(2020年調査結果)。

この取得率は、取得日数計÷付与日数計×100(%)ですので、付与された年次有給休暇のうち5~6割を消化しているともいえますし、4~5割を使い切れていないともいえます。

年次有給休暇が付与される要件

年次有給休暇が付与される要件
年次有給休暇が付与されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 働きはじめた日から6ヶ月以上継続して働いている
  • その期間中の8割以上出勤している

対象となる労働者には、管理監督者や有期雇用労働者も含みます。

上記2点の要件を満たしているかの判別が難しいケースもあります。例えば育児・介護休業の場合の年次有給休暇の付与です。

育児・介護休業の場合

育児や介護といった理由で休業した場合、その期間は出勤したものとみなされます。この期間の休業は年次有給休暇ではなく、育児・介護休業法に基づいた休業として扱われます。

8割以上の出勤実績がなかったとしても、育児・介護休業期間は出勤したものとみなしますので、年次有給休暇の付与に必要な勤続期間に含めることができます。

このようなケースは、実例がないと総務・人事担当者であっても気付きにくいです。

育児・介護休業法とは?今さら聞けない制度の概要と求められる対応

年次有給休暇の付与日数の違い

年次有給休暇の付与日数の違い
年次有給休暇が付与される要件を満たすと、雇入れの日から6ヶ月が経過した時に年次有給休暇が付与されます。

その後は1年が経過するごとに、所定の有給休暇の日数が増えていきます。しかし、この年次有給休暇の付与日数は労働者の週所定労働時間と日数によって変わります。

通常の労働者とパートタイム労働者の2つの立場から、年次有給休暇の付与日数の違いを確認していきます。

通常の労働者

通常の労働者の場合、年次有給休暇の付与要件のとおり「働きはじめた日から6ヶ月以上継続して働いていて」かつ「その期間中の8割以上出勤した」段階で、10日間の年次有給休暇が与えられます。

そして働いた年数が増えれば増えるほど、それに比例して年次有給休暇の日数も増えていきます。

年次有給休暇の付与日数(通常の労働者)

継続勤務年数が1年と6ヶ月で、かつその間8割以上出勤していれば、11日間の年次有給休暇が与えられます。そして次年、継続勤務年数が2年と6ヶ月ではさらに1日増えて12日間となります。

その年以降、年次有給休暇は毎年2日ずつ増えていきます。そして継続勤務年数が6年と6ヶ月かつ要件を満たした場合は、一律20日間の付与となります。

所定労働日数が少ない労働者(パートタイムなど)

パートタイム労働者などの所定労働日数が少ない労働者であっても、年次有給休暇は付与されます。

所定労働日数が少ない労働者の場合、年次有給休暇の付与日数は所定労働日数に応じて変わります。大きく5段階に分けて有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の付与日数(パートタイム労働者の場合)

週所定労働日数が5日(1年間の所定労働日数216日)

週所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者であっても、週所定労働日数が5日の場合、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で通常の労働者と同じ年次有給休暇が付与されます(10日間)。

その年以降の付与日数も、通常の労働者と同じです。

週所定労働日数が4日(1年間の所定労働日数169日~216日)

週所定労働時間が30時間未満で週所定労働日数が4日の場合、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で7日間の有給休暇が付与されます。それ以降は1年経過するごとに、8日・9日・10日・12日・13日、6年と6ヶ月経過すると、15日間付与されます。

年次有給休暇が10日以上になるパートタイム労働者には、年5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

週所定労働日数が3日(1年間の所定労働日数が121日~168日)

週所定労働時間が30時間未満で週所定労働日数が3日の場合、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で5日間の有給休暇が付与されます。それ以降は1年経過するごとに、6日・6日・8日・9日・10日、6年と6ヶ月経過すると、11日間付与されます。

年次有給休暇が10日以上になるパートタイム労働者には、年5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

週所定労働日数が2日(1年間の所定労働日数が73日~120日)

週所定労働時間が30時間未満で週所定労働日数が2日の場合、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で3日間の有給休暇が付与されます。それ以降は1年経過するごとに、4日・4日・5日・6日・6日が毎年付与され、6年と6ヶ月経過すると、7日間付与されます。

週所定労働日数が1日(1年間の所定労働日数が48日~72日)

週所定労働時間が30時間未満で週所定労働日数が1日の場合、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で1日の有給休暇が付与されます。それ以降は1年経過するごとに、2日・2日・2日・3日・3日、6年と6ヶ月経過すると、3日間付与されます。

このように、パートタイム労働者の場合は通常の労働者と違って年次有給休暇が週所定の労働日数に応じて比例付与される仕組みとなっています。

年次有給休暇の次年度への繰越

実際には、付与されてから1年間のうちに使い切れない年次有給休暇もあります。残った年次有給休暇の日数は、次の1年間まで繰り越すことができます。

つまり、有効期限は2年間です。この有効期限を超えると、時効消滅します。

年次有給休暇の時季変更権

年次有給休暇の時季変更権

時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合に使用者が労働者の有給休暇日を変更できる権利です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、例えば有給休暇を使用する労働者が担当する業務が代替のきかないものであって、どうしても希望する日に休まれてしまっては事業が滞ってしまう場合や、他の労働者が一斉に休暇をとるため本来の業務に人員が割けないという場合です。

あくまでこれは一例であり、時季変更権の行使は様々な事情を鑑みて総合的に判断されるものです。

時季変更権の適切な使い方

前提として、使用者は労働者の年次有給休暇使用について簡単に時季変更権を行使することはできません。

忙しいからという理由だけで年次有給休暇の取得申請を却下することはできず、勤務体制などを検討した結果としてどうしても休みを認められないときに限り「事業が運営できなくなってしまうのでその日の有給休暇は認められない(働いてほしい)」と労働者に指示することができます。

可能な限り労働者の希望を優先

使用者側に年次有給休暇を付与するかどうかの最終的な決定権がある、と誤認している使用者も少なくないかもしれません。

しかし、基本的に使用者には労働者が指定した時季に年次有給休暇がとれるように、勤務の予定を変更するなどの最大限の配慮が求められています。

やむを得ない理由で時季変更権を行使した際には、別日での年次有給休暇取得を提案するなど、労働者側への配慮が求められます。

年次有給休暇の計画的付与

1年ごとに付与される年次有給休暇のうち、数日間については事前に計画させ予定を申告させる方法もあります(年次有給休暇の計画的付与)。

年次有給休暇はいつ取得してもいいですが、日々の忙しい仕事の中で取得タイミングを見出せない労働者は多いです。

特に現行法制では、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に年5日間の休暇を取得させることが使用者に義務付けられています。事前に休暇取得日を割り振り、計画を提出してもらうことで、法律を順守することも可能になるでしょう。

なお、法律では「使用者側が時季を指定して」とありますが、もちろん年次有給休暇の取得については労働者側の希望を最大限優先することとなります。

この計画的付与のメリットは、事前に休暇日を計画することでその休みに合わせて仕事が進められることです。また休暇を取得する労働者側も、休暇の予定に対して十分な時間がかけられます。

労働基準法 第39条に違反した場合の罰則

労働基準法 第39条に違反した場合の罰則
最後に、罰則について触れておきます。年次有給休暇の定義や要件について記載がある労働基準法 第39条に違反した場合、罰則が科されることがあります。

年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合

労働基準法 第39条 第7項 年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合は、30万円以下の罰金刑が科されます。

違反対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。

所定の年次有給休暇を与えなかった場合

労働基準法 第39条(第7項を除く)労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます。

こちらも、違反対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。

まとめ

働き過ぎを防ぎながら、ワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方を実現するため、労働時間法制が見直された。年次有給休暇に関する法律(労働基準法)も改正。

  • 年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対して、年5日の年次有給休暇の確実な取得が使用者に義務付けられる

年次有給休暇が付与されるためには、2つの要件を満たす必要がある。

  • 働きはじめた日から6ヶ月以上継続して働いている
  • その期間中の8割以上出勤している

年次有給休暇の付与日数は労働者の週所定労働時間と日数によって変わる。

  • 通常の労働者は、働いた年数に比例して年次有給休暇の日数も増える

継続勤務期間6ヶ月で10日、最大20日付与(6年6ヶ月の勤務)

  • 所定労働日数が少ないパートタイム労働者は、所定労働日数に応じて変わる
  • 年次有給休暇の有効期間は2年

事業の正常な運営を妨げる場合に限って、使用者は労働者の有給休暇日を変更できる(時季変更権)。

労働基準法 第39条に違反した場合の罰則は、違反内容によって変わる。

  • 年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合。30万円以下の罰金刑
  • 所定の年次有給休暇を与えなかった場合。6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

年次有給休暇は労働者の権利です。しかし、この権利が使えない・使わない労働環境が存在するため、年次有給休暇の取得率が低調でした。そのような背景から、確実に年次有給休暇を取得できるように労働基準法が改正されました。

とはいえ、権利を主張するばかりで職責を果たさないのも違います。労働者が職責を果たさずに権利だけを主張していては、事業に悪影響を及ぼします。

労働者は職責を果たした上で、権利である年次有給休暇を請求・取得する。使用者は、事業に悪影響が出ないかぎりは労働者の希望を優先して、年次有給休暇を取得しやすい環境整備をする。

このような労使関係がなければ、年次有給休暇が取得しづらい環境は変わりません。最も大事なことは、法律が変わったから変えるのではなく、労使ともに年次有給休暇に対する意識を変えることです。

休みやすい環境づくりに取り組みましょう。

離職防止ならリロクラブにご相談ください
人材定着に効果的な福利厚生、あります
人材定着でお悩みなら
福利厚生のリロクラブまで