企業内保育所の導入のメリットと企業側の負担は?厚生労働省が定める要件

企業内保育所の導入のメリットと企業側の負担は?厚生労働省が定める要件

企業内保育所の導入が活発化しているようです。少し前のデータですが、厚生労働省が発表している「許可外保育施設の現況取りまとめ」によりますと、事業所内保育施設数は2016年3月時点で4,561ヶ所から2017年3月時点には4,766ヶ所まで拡大しています(前年比+205ヶ所)。国が「企業主導型保育事業」への助成金制度を制定したことで、企業にとっての企業内保育所の設置のハードルも低くなっています。

需要と導入、その有効性も高まっている企業内保育所について詳しく解説します。企業内保育所の導入は、従業員への働きやすさの提供や人材確保にも貢献する施策のひとつです。検討の際にお役立てください。

企業内保育所とは?

企業内保育所とは、自社で働く従業員が就業中に子どもを預けられるように、企業が社内や近隣に設ける託児施設のことです。

近年の少子化や人材不足の対策として、育児と仕事の両立に対する国や企業の支援も活発化しています。子育てをしながらでも働ける環境を提供するために、企業内保育所を設置する企業が増えています。

企業内保育所が広まった背景

企業内保育所の設置が増えている背景としては、いくつかの要素が考えられます。

背景その1. 育児中人材の確保の必要性

日本では少子化問題は深刻化しています。とくに労働力人口が減っていることは、企業の人材確保にも大きな影響を与えています。

出産後、子育てをする年齢層は、ビジネス経験が豊富な人も多く、企業にとっては有力な戦力でもあります。しかし、子どもがいなかったときと同じような働き方の条件であれば、この層を労働力として取り込むことはできません。子育てをしながらでも働き続けることができる、あらゆる両立支援を施す必要があります。そこで、育児と仕事の両立支援の一環として取り入れられているのが、企業内保育所なのです。

背景その2. 託児所不足問題

子どもがいても働き続けたいと思う女性はいます。しかし、就業中は誰かに(どこかに)子どもを預ける必要が出てきます。

少子化が進んだ2000年前後、地域の託児所や保育所の経営自体が困窮し、施設の閉鎖が相次ぎました。その結果、託児所や保育所の不足が発生し、待機児童の数が増えました。2010年には待機児童数が2万6千人を超え、その後多少減少したものの2017年には再び2万6千人を超え26,081人になっています。子どもを預ける施設が見つけられないことで、育児休業後に働きたくても働けない女性が出てしまう要因となっていきます。

問題の深刻さを受けとめ、国も待機児童の解消に向けた取り組みをはじめました。未だ完全には解消されてはいませんが、企業の人材不足問題との同時解消に向けた取り組みは続けられています。企業内保育所の設置は、待機児童問題の解決策のひとつなのです。

背景その3. 女性が活躍する職場での導入の増加

とくに医療施設などでの企業内保育所(院内保育所)の設置が増えているようです。高齢化社会にあって、医療施設の人材不足は深刻化しています。医療施設における看護師や介護士の女性比率はとても高いです。勤務先に保育施設があることは、子育て中の女性従業員の助けになっています。とくに女性の多い職場での企業内保育所導入率は高くなっています。

国は企業主導型保育事業を支援する施策を講じて、企業や病院が事業所内に保育施設を設置するハードルを下げています。このこともあり、現在も徐々に企業内保育所の数が増えています。

企業内保育所の種類

企業内保育所には、主に3つの種類に分かれます。「認可保育所」「認可外保育所」「企業主導型保育所」です。

認可保育所

許可保育所とは、児童福祉法に基づいて国が定めた基準を満たし、自治体に認可された保育施設です。基準項目としては、施設の広さ、保育士の数、調理・防災・衛生管理や設備などが含まれます。自治体ごとにさらに認定基準が設けられていることもあります。開設するには、もっともハードルの高い保育所ですが、国(自治体)からの助成金が出ます。

認可外保育所

許可外保育所とは、自治体からの認可を受けていない保育施設のことです。上記の国が定める基準項目を満たしていない場合でも運営を行うことは可能で、自由度が高いことがメリットです。ただし、国(自治体)からの助成金は出ません。

企業主導型保育所

自治体とのやり取りが必要な認可・認可外保育所とは異なり、企業主導型保育所は内閣府主導で行われている許可外保育所です。申請などは、内閣府あてに行います。

企業主導型保育所は、労働者の育児と仕事の両立支援が目的のため、上記、認可保育所として満たすべき基準よりも、自由度は高いです。例えば、運営時間の調整や複数の企業での共同運営などのケースも可能となっています。許可外保育所ですが、保育施設の整備費及び運営費について助成金が出ます。

企業内保育所を導入するメリット

では、企業が企業内保育所を導入するメリットを見ていきましょう。

メリット1. 育児を理由とした離職が減る

勤務時間中に子どもをみる人がいない、預けられる保育施設がない従業員は、育児を理由に離職をするしかありません。企業内保育所があれば離職のリスクは減り、従業員が育児休業中に子どもを預けられる施設をあらためて探す必要もなくなります。

職場復帰も比較的早期に検討できる可能性もあります。周りの従業員にとっても、助かることではないでしょうか。これらのことから企業内保育所の導入は、育児を理由とする離職が減らせるというメリットがあります。

メリット2. 育児中の従業員への両立支援となる

従業員にとって、事業所内や勤務先の近くに子どもを預かってくれる施設があれば、安心して子どもをもち、育児と仕事の両立も図りやすくなるはずです。

出勤のために家を出る時間と向かう場所が一緒であれば、送り迎えの時間が省けるため、時間を効率的に使えるはずです。子どもが近くにいれば病気などの変調があるときでも駆けつけやすいため、安心して仕事に取り組めるでしょう。従業員満足度も向上し、働くモチベーションや生産性にも良い影響を与えるのではないでしょうか。

メリット3. 企業の社会的評価の向上

企業内保育所がうまく機能すれば、企業の社会的評価も良くなります。

  • 離職率は下がり、従業員の勤続年数が伸び、優秀な人材が育ちやすい環境
  • 育児と仕事の両立がしやすい職場環境
  • 女性が活躍できる環境
このような環境ができた結果として強い組織が作られ、生産性の高い企業として成長する可能性があります。そうなれば、株主、取引先、周辺地域などさまざまなステークホルダーからの評価が高まります。従業員や未来の従業員(求職者)の反応も良くなることも大きなメリットと考えます。

企業主導型保育所の保育料はどれぐらい?

ここから先は企業内保育所の中でも、現在増加している「企業主導型保育所」を中心に見ていきます。

企業主導型保育所での保育料は、どれくらいが相場となっているのでしょうか。

保育施設の規模、保育士の人数、子どもの年齢などによって差はあります。平均すると、月額3万円前後となるようです。この保育料の額は、認可保育所と比較してもそれほど差がありません。

企業主導型保育所は内閣府から助成金が支給されるため、低い保育料の設定が可能となっているようです。保育料を福利厚生の一環として企業が負担することで、低い保育料を設定することも可能です。

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企業主導型保育所が抱える問題点・課題

企業主導型保育所は、事業形態に合わせて保育時間や利用条件を比較的自由に設定することができます。その一方で、従業員が勤務日でないとき、または企業の休日には利用できないという不便さがデメリットとなっているところもあるようです。従業員の勤務スタイルによっては、一緒に通勤することを負担に感じている人もいます。

また、保育士の質、保育内容についても、認可保育所と比較すると劣ることを懸念する保護者も少なくないようです。保育人数などとの兼ね合いもあり、通常の保育所にある恒例行事などもほとんど行われていないのが現状のようです。施設面でも外で遊べるスペースが無かったり、狭かったりすることもあります。

企業主導型保育所が活発化する中で企業は、従業員に子育てをしながら働き続けてもらうために設置する保育施設から一歩進んで、保育の中身も充実させ、従業員が子どもにこの施設で過ごしてほしいと思える施設づくりが必要となっているのかもかもしれません。

企業主導型保育所の要件

助成金が受けられる企業主導型保育所設置の要件を確認します。認可保育所の基準ほどハードルは高くないのですが、満たすべき要件は定められているのでご注意ください。

設置に必要な要件

沿うべき法定基準

  • 地方自治体が定める認可外保育施設の設置基準を満たしていること
  • 子ども・子育て拠出金を負担し、滞納のない事業主であること
  • 避難経路や消防設備など消防法や条例の基準を満たしていること
  • 調理・給食設備について食品衛生法の基準を満たしていること
  • 設置場所が、地域の市街化調整区域に当たらないこと
  • 現状の保育施設の変更が必要な場合、その変更が可能なこと
  • 地域枠を設定している場合、地域ニーズを満たすべく自治体に相談していること

保育従事者の配置・資格について

  • 0歳児…3人につき1人
  • 1~2歳児 …6人につき1人
  • 3歳児…20人につき1人
  • 4~5歳児 …30人につき1人
上記の必要人数合計に、プラス1名の配置が必要です。そのうち半数以上は保育士の資格者でなければなりません。保育士でない場合は、自治体などが実施している支援員研修を受講・終了する必要があります。

設備について

設置しなければならない設備は以下の項目です。
※満2歳以上の幼児を入所させる場合(利用定員20名以上)

  • 保育室(遊戯室、乳児室など)
  • 子供用便所
  • 調理室(調理設備)
  • 屋外遊戯場
  • 非常口
施設内に外の遊び場が確保できない場合は、近隣の公園、お寺の境内などが必要です。

また、一人あたりに必要な面積の規定は以下のようになっています。

  • 乳児室…1.65㎡ ※定員が20名以下の場合は3.3㎡
  • ほふく室…3.3㎡
  • 保育室・遊戯室…1.98㎡
  • 屋外遊戯場…3.3㎡

企業主導型保育所を設置するまでの流れ

最後に企業主導型保育所を設置するまでの流れを説明します。

設置方法の検討

設置方法としては、いくつかの種類が考えられます。

【単独設置型】

・自社が単独で設立し、単独(自社従業員専用)で利用する

【共同設置・共同利用型】

・自社が単独で設立、または他の企業と共同で設立し、他の企業と共同で利用していく

【保育事業者設置型】

・保育事業者が設置した施設を1つまたは複数の企業が共同で利用していく

ここに、地域枠(社外からも迎えるか)を含めるかどうかも検討します。

運営方法の検討

運営方法としては、自社直営にする場合と、保育事業者への委託の大きく分けて2つがあります。

利用者ニーズの把握

預かる子どもの人数、年齢、開所時間や曜日などのニーズを測るための調査をします。

自治体への相談

建築基準法、消防法、食品衛生法、各自治体の条例などの確認・相談を行います。新しく設置するような場合、建物の用途変更手続きが必要になることがあります。

設置場所の検討

設置場所の候補としては、自社施設の一部、従業員の交通の便に配慮した場所、または従業員の居住地域などが考えられます。

設備や広さ、伴う保育所定員の検討

必須の設備や一人あたりの必要面積の規定に沿って、保育所環境と定員を検討します。

以上です。

企業主導型保育所が増えている一方、保育計画などに不備があり指導を受けた企業主導型保育所が76%ありました。児童育成協会が2017年度に800ヶ所の立ち入り調査をした結果、76%にあたる606ヶ所で指導監査基準を満たしていないとして指導を受けています。

導入メリットがある一方で、このような問題点も出てきています。保育施設は、ただ設置すればいいというものではありません。その後の運用が大事です。他社事例やメリット、設置イメージや参考データをまとめた内閣府のパンフレットを紹介します。
自社の課題や従業員のニーズを加味した上で、企業主導型保育所も含めた企業内保育所の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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