
健康経営のための7つの助成金・補助金とは?活用のコツも解説
現在、企業にとってさまざまなメリットがもたらされる健康経営が広がりを見せています。
しかし、健康経営を推進したいと思っていても、コスト面がネックになり踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、行政が行っている7つの助成金や補助金を、図解を用いて徹底解説します。リソースをできるだけ抑えながら健康経営を取り入れましょう。
目次[非表示]
- 1.健康経営とは
- 2.健康経営導入には助成金や補助金を活用するのがおすすめ
- 3.健康経営に役立つ助成金や補助金一覧【7選】
- 3.1.業務改善助成金
- 3.2.人材確保等支援助成金
- 3.3.働き方改革推進支援助成金
- 3.4.両立支援等助成金
- 3.5.受動喫煙防止対策助成金
- 3.6.エイジフレンドリー補助金
- 3.7.65歳超雇用推進助成金
- 4.健康経営促進に助成金・補助金活用のコツ
- 4.1.助成金や補助金のメリット
- 4.2.助成金や補助金のデメリット
- 4.3.助成金・補助金をうまく導入するコツ
- 5.補助金を上手に活用して健康経営を推進しよう
健康経営とは
健康経営とは、企業が従業員の健康を戦略的に管理し、業務パフォーマンスを上げることで将来的な利益向上を狙うことです。 健康経営のメリットは下記のとおりです。
- 個人のスキルを発揮できる
- 業務パフォーマンスの向上につながる
- 企業の認知度や評価が高まる
- 離職率の低下や人材の長期確保ができる
- 生産性が高まり収益増加が見込める
- 健康保険の利用が減りコスト削減が見込める
このようにさまざまなメリットがあり、多くの企業で取り組みを実施しています。
健康経営導入には助成金や補助金を活用するのがおすすめ
健康経営に取り組むには、初期費用や導入コストなどある程度費用がかかります。費用を捻出することが難しい企業では、導入をしたくても動けない状況に陥っているのではないでしょうか。 そこで、助成金の活用はおすすめです。健康経営を直接支援する助成金はありませんが、健康経営の取り組みに関連した助成金ならば活用することができます。
例えば働き方改革やメンタルヘルスケア、ライフステージに応じた福利厚生を実施したい場合などといった、健康経営を推進するための助成金が用意されているため、次章で詳しくチェックしていきましょう。
健康経営に役立つ助成金や補助金一覧【7選】
健康経営を行うために活用できる助成金・補助金の一覧を図解を用いて紹介します。 自社に当てはまる・使えそうな助成金を活用しましょう。
業務改善助成金
「業務改善助成金」は中小企業や小規模事業者を対象に、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るための制度です。 企業の事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内なことと、事業場規模100人以下であることが受給できるポイントです。
人材確保等支援助成金
次に紹介する人材確保等支援助成金には、以下3つの種類があります。
- テレワークコース
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
- キャリアアップ助成金
順番に解説します。
テレワークコース
テレワークを新規で導入するか、もしくは終日サテライトオフィスやコワーキングスペースなどで就業するテレワークを支援する助成金です。対象は、中小企業事業主がメインです。 助成金はテレワーク導入にかかる経費のうち30%が支払われます。
その後、目標達成の助成として離職率が一定水準を下回った場合であっても20%、また生産量要件を達成すれば35%が支払われます。 ただし、どちらの助成も1企業あたり100万円までと設定されています。またはテレワーク対象労働者1人あたり20万円のうち、低い方の金額が採用されます。
外国人労働者就労環境整備助成コース
外国人特有の言語の壁を取り払うことや、一時帰国のための休暇制度などに配慮した就労環境の整備を行う事業者が対象です。 外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、必要な経費を助成します。厚生労働省が定める賃金要件を満たすことで、助成金がアップします。
参照:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省
キャリアアップ助成金
パートタイマーや派遣社員などの非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために、正社員化への取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
正社員雇用への切り替え、正社員と同等に仕事内容や賃金への引き上げ、賞与・退職金の整備などがサポートされます。申請には厚生労働省をはじめ、労務局やハローワークとの連携が必要です。
働き方改革推進支援助成金
働き方改革の推進は健康経営の根幹であると言っても過言ではありません。このため、3パターンにおける助成金が用意されています。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
上記の図をもとに、それぞれ詳しく解説します。
労働時間短縮・年休促進支援コース
健康のための労働時間短縮や、特別休暇等の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主への助成金です。生産性を向上させ労働時間を縮減する取り組みや、年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む企業を支援します。 助成額は最大490万円で、36協定目の遵守など目標ごとに上限額があります。
参照:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル導入コースでは、勤務終了後から次の勤務までに一定の休息時間を設ける中小企業事業主をサポートする制度です。過重労働防止に役立つ取り組みです。 9時間以上11時間未満か、11時間以上の2つのインターバル期間によって助成金が変動します。
加えて、新たにインターバルを導入する新規事業者か、既存のインターバル制度をブラッシュアップする事業者かでも助成金が変わります。
参照:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省
労働時間適正管理推進コース
労務・労働時間の適正管理に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するための制度です。常時稼働している労働者の数が30人を越えるか越えないかで、助成金額が変動します。また、労働時間の整備と共に賃金の是正を行うと、さらに助成金がアップします。
こちらは、厚生労働省の公式YouTubeでも紹介されています。 https://youtu.be/k6TXE-3Oalk
参照:働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)|厚生労働省
両立支援等助成金
両立支援等助成金には2種類あります。
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
上記の図をもとにしながら、それぞれ詳しく解説します。
出生時両立支援コース
働き続けながら子育てを行う労働者の雇用を守るための施策。特に、男性労働者が育児休業を取得しやすい職場づくりに取り組むことを目的とした制度で、「育児休業」「個別支援加算」「育児目的休暇」の3種類があります。男性労働者の育児休業取得率を3年以内に30%上昇すると増額、また2年連続で70%以上の取得率があれば続けて受け取ることができます。
介護離職防止支援コース
仕事と介護の両立を推進。職場環境の整備を支援する制度です。 介護のためのフレックスタイム制度や介護サービス費用補助制度である「介護両立支援制度」を制定したり、介護休業の取得後に従業員が職場復帰したりすることで申請が受理されます。
参照:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)Q&A|厚生労働省
受動喫煙防止対策助成金
受動喫煙防止対策助成金は、喫煙室の設置費用や整備にかかる経費を支援する制度です。申請は令和6年1月31日までで、上限は100万円までです。禁煙室の設置などに関わる経費が補助されるため、従業員の禁煙を推進したい企業に向いています。
エイジフレンドリー補助金
⾼齢者を含む労働者が安⼼して安全に働くことができるよう取り組む、中小企業事業者が対象です。高年齢労働者の労働災害防止対策やコラボヘルス等、労働者の健康保持増進に対する取り組みに対して補助されます。 対象となる経費の1/2(上限100万円)が支給可能で、助成対象は60歳以上の高年齢労働者を常時1人以上雇用する企業です。
65歳超雇用推進助成金
高年齢者の雇用管理制度の導入等に要した経費が助成されます。初回に限り、支給金額上限の50万円が支給され、2回目以降の申請は50万円を上限に支給します。
就業規則等で高年齢雇用確保措置を行っていることと、雇用管理整備計画の終了日翌日から6カ月以上継続して雇用され、支給申請日の前日までに1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者がいることが必要です。 人数や年齢、定年の廃止などで助成金は変動します。
健康経営促進に助成金・補助金活用のコツ
さまざまな助成金や補助金があることが分かりました。しかし、活用のコツが分からなければ、どうすれば良いのか戸惑ってしまうでしょう。 本章では、活用のコツや、補助金のメリット・デメリットを解説します。 そもそも「補助金」と「助成金」には違いがあります。
- 補助金:経済産業省や地方管轄
- 助成金:厚生労働省
これを踏まえたうえで、メリット・デメリットを理解しましょう。
助成金や補助金のメリット
管轄は違えど、助成金と補助金のメリットは同一です。
- 返済義務なし
- 雑収入として処理できる
- 社会的信用の向上
返済の義務がなく、連続して数年単位で同じ助成金・補助金を受け取ることができます。 また、雑収入として非課税取引で処理できることもメリットです。ただし、きちんと個別に確認することが大切です。
経済産業省や地方の役場、厚生労働省への確認を怠らないようにしましょう。また、大きなメリットとして、助成金や補助金を受け取って健康経営を導入すれば、社会的な信用向上につながることが挙げられます。 健康経営を導入するときには社内外へ発表することで、より企業の認知度や優良度をアピールできるでしょう。
助成金や補助金のデメリット
一方のデメリットも、管轄が別でも同じです。
- 簡単には廃止できない
- 受給までに時間がかかる
- 要件や期限が厳しい
- 事務処理が難しい・手間がかかる
まずは、一度健康経営を導入すると決めたならば、簡単に廃止することはできません。 また、受給には一定の条件が存在するため、申請後すぐには受給できません。長くて数カ月かかり、さらには数年間の健康経営の実績の積み上げも必要です。
助成金・補助金をうまく導入するコツ
メリットとデメリットを理解したところで、実際に導入する際のコツを解説します。
要件の確認を必ずしておく
1つ目は要件の確認をすることです。要件とは、助成金の申請を行う際に、必須の条件のことです。いくら健康経営を導入したいからといっても、不必要な企業もあります。 そのためにも助成金の用件、支給されるために必要な取り組みなどを確認しておきましょう。「自社で必要だと思われるもの・導入できるもの・活用できるもの」に絞って、健康経営の導入を始めてみましょう。
申請のスケジュール管理をする
健康経営に関わる助成金の申請日や申請方法は施策によってさまざまです。申請期間が短いものもあるため注意が必要です。 自社の取り組みに合致した助成金受給のためにも、前もってスケジューリングを行い、周到に用意しておくと良いでしょう。 また、不明点があれば、各官公庁へ問い合わせなどしておくと安心です。
情報を幅広く集める
上記の2点を踏まえても、日々の情報収集は欠かせません。常日頃から健康経営に活用できる助成金・補助金の情報を集めることが大切です。 助成金の情報はインターネットや地域のコミュニティーなど、さまざまなところで手に入ります。アンテナを広く張っておきましょう。
補助金を上手に活用して健康経営を推進しよう
健康経営を導入するにあたっての支援にはさまざまな助成金・補助金の制度があるため、自社に合った制度を見極めて活用しましょう。自社に合った制度が分からない場合は行政に相談したり、また福利厚生に詳しい企業に相談したりするのもおすすめです。
ただし、健康経営はすぐに効果が現れるような施策ではなく、長期的な運用がカギとなります。徐々に社内に浸透していく戦略であるため、計画的に進めなくてはなりません。 日ごろから健康経営の情報を収集して、戦略的に最短距離で成功を収めましょう。