健康経営において禁煙推進は必要なのか?導入の流れやポイントを解説

近年、健康意識の高まりに影響され、健康経営に力を入れている企業が増えています。企業が率先して健康への関心を高めることによって、事業の拡大が見込めるといったメリットを得られます。

健康経営の中でも、特に注目を集めているのが禁煙対策です。タバコの価格が高騰したり、政府がさまざまな施設で喫煙を禁じる禁煙対策に乗り出したりと禁煙を推奨する動きが加速化していることもあり、企業としても禁煙対策に力を入れたいと考える担当者も多いでしょう。

しかし、どのような禁煙対策を進めればいいかわからない企業も少なくありません。そこで本記事では、健康経営における禁煙対策の必要性について解説します。企業が進んで禁煙対策を導入すると健康経営が促進されるだけではなく、従業員の健康維持・増進につながるため、メリットが多く得られます。

導入までの具体的な流れやポイント、成功事例なども紹介しているため、併せて参考にしてみてください。

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健康経営における禁煙対策の必要性

企業の禁煙対策が重要視される理由の一つに、健康増進法の改正が関係しています。健康増進法とは、国民の健康や病気の予防を目的として制定された法律のことです。この法律が2018年7月に改正された際、望まない受動喫煙を防止する取り組みはマナーからルールへと変更されました。これにより、禁煙対策に興味や関心を高めている企業が増えています。

さらに、従業員の喫煙が問題になっている企業が多いのも現状です。例えば、喫煙者のマナーが悪かったり、非喫煙者が副流煙を吸い込んでしまったりするケースもあります。そのため、従業員の健康を守るためにも、企業が積極的に禁煙対策を取り入れることは必要とされています。

参照:厚生労働省|なくそう!望まない受動喫煙。マナーからルールへ

健康経営に禁煙対策を取り入れるメリット

健康経営に禁煙対策を取り入れるメリットは、主に以下のとおりです。

  • 従業員の健康維持や増進が期待できる
  • 業務の効率化につながる
  • 生産性がアップする

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

従業員の健康維持や増進が期待できる

健康経営に禁煙対策を取り入れると、従業員の健康維持や増進が期待できます。喫煙は従業員の健康を蝕む元凶となり、さまざまな病気のリスクが増大します。

例えば、がんや脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった病気との関係性も挙げられています。そのため、禁煙することで、これらの病気を予防できると考えられているのです。

業務の効率化につながる

禁煙対策を推奨していくと、業務の効率化につながります。現代の日本では分煙を取り入れている企業が多く、喫煙するためには専用スペースに行く必要があります。喫煙している間は業務から離れることとなるため、その分作業効率は落ちるでしょう。

特に、頻繁に喫煙する人は業務からの離席時間も長くなり、周囲に迷惑をかけることもあります。しかし、禁煙対策を取り入れると業務から離れる時間をなくせるため、円滑に仕事を進められます。喫煙者だけが離席時間が長くなるという不公正さもなくせるでしょう。

生産性がアップする

健康経営において禁煙対策を推奨していくと、生産性がアップします。喫煙は人の健康を害するだけではなく、精神面にも影響を与えます。例えば、ニコチン中毒に陥るほどタバコに依存していた場合、時間が経過するにつれてイライラしたり、怒りっぽくなったりする人もいるでしょう。すると集中力も切れてしまい、生産性は落ちる一方です。

そこで禁煙対策を取り入れると、タバコによる中毒性から解放されます。すぐに禁断症状がなくなるわけではありませんが、結果的に生産性を高めることにつながります。

健康経営において禁煙対策を導入する際の流れ

健康経営において禁煙対策を導入する際は、以下のような流れで実行していきましょう。

  • 職場の喫煙状況をチェックする
  • 自社の課題を把握する
  • 従業員に対して禁煙対策の認知を拡大する

それぞれのステップについて詳しく解説します。

職場の喫煙状況をチェックする

まず、職場の喫煙状況をチェックしましょう。例えば、以下のような施策が有効です。

  • 社内全体の喫煙率を計算する
  • 喫煙に関するアンケートを実施する
  • 非喫煙者に対して、喫煙に関する不満を調査する

ここでのポイントは、喫煙者だけの意見を取り入れるのではなく、非喫煙者の意見もヒアリングすることです。両者の意見を聞くことで不公平さを生まない対策を講じられます。

自社の課題を把握する

職場の喫煙状況を把握したら、自社が抱える課題を明確にしていきましょう。状況に合わせた対策を考えると、効率よく禁煙対策を導入できます。

例えば、喫煙場所に不満を感じているようであれば、設置場所も考慮しなければいけません。設備投資が必要となるものの、従業員に寄り添った対策を練ることで喫煙の有無に関わらず働きやすい環境を整えられます。

従業員に対して禁煙対策の認知を拡大する

自社にとって必要な対策が明確になったら、従業員に対して禁煙対策の認知を拡大していきましょう。禁煙対策は施策を考えるだけではなく、従業員の興味や関心を高めて、必要性を理解してもらうことが重要です。

「なぜ禁煙対策が必要なのか」「禁煙対策を取り入れることで、どのようなメリットがあるのか」などを従業員に深く理解してもらい、納得してもらいましょう。そのためには、社内で禁煙に関するセミナーを開いたり、社内報を活用して情報を発信したりすることも効果的です。

健康経営における禁煙対策の具体例

健康経営における禁煙対策の具体例は、以下のとおりです。

  • 基準をクリアした喫煙所を設ける
  • 喫煙エリアの立ち入りに年齢制限を設ける

それぞれの具体例を詳しく解説します。

基準をクリアした喫煙所を設ける

現在、健康増進法の改正により、原則屋内での喫煙は禁止されています。屋内に喫煙室を設置する場合は、以下のような条件をクリアする必要があります。

喫煙所の種類 条件 設置できる事業所
喫煙専用室 ・喫煙可能

・飲食不可

・施設の一部に設置可能

一般的な事業者が設置可能
加熱式タバコ専用喫煙室 ・加熱式タバコに限定

・飲食など可能

・施設の一部に設置可能

一般的な事業者が設置可能(経過措置)
喫煙目的室 ・喫煙が可能

・飲食(主食を除く)など可能

・施設の全部、または一部に設置可能

喫煙目的施設に設置可能
喫煙可能室 ・喫煙が可能

・飲食など可能

・施設の全部、または一部に設置可能

既存特定飲食提供施設に設置可能(経過処置)

喫煙室を設置する場合は、どのタイプの喫煙室なのかを明確にしておく必要があります。

参照:厚生労働省|なくそう!望まない受動喫煙

喫煙エリアの立ち入りに年齢制限を設ける

喫煙エリアには、たとえ喫煙を目的としていなかったとしても20歳未満は立ち入ることができません。従業員をはじめとする企業の関係者であっても例外ではないため注意しましょう。万が一、20歳未満が喫煙室に入った場合は、行政からの指導や勧告、および罰則を受ける可能性があります。

喫煙エリアを設ける場合は、20歳未満が間違って立ち入らないように対策しておくことが必要です。例えば、ポスターや注意書きを記載するのは手近な方法です。誰が見てもわかるように明記しておくことで、20歳未満の立ち入りを防げます。

健康経営で禁煙対策を取り入れる際のポイント

健康経営で禁煙対策を取り入れる際のポイントは以下のとおりです。

  • 喫煙者へのサポート体制を整えておく
  • 従業員の理解を得る

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

喫煙者へのサポート体制を整えておく

禁煙対策を取り入れる際は、サポート体制を整えておきましょう。喫煙は体に悪いとわかっていても、なかなかやめられない人も多いはずです。そこで、企業が一丸となって禁煙しやすい環境を整えることで結果が出やすくなるでしょう。

例えば、禁煙したい人を集めてコミュニティを作ったり、禁煙に役立つグッズの購入費用を負担したりするのも効果的です。喫煙者が自分事として禁煙のことを考えて行動できる仕組みを構築していくといいでしょう。

従業員の理解を得る

禁煙対策を成功させるためには、従業員の理解を得ることが大切です。たとえ企業として健康経営に力を入れて禁煙対策を考案したとしても、従業員が理解を示し協力しなければ成果は残せません。社内が混乱しないように配慮しながら、段階的に禁煙対策を導入していき、少しずつ理解を得るようにしましょう。

就業規則に禁煙に関する内容を記載するのも一つの方法です。従業員が受け入れやすい仕組みを導入してみてください。

健康経営を意識して禁煙対策に取り組んだ企業の事例

健康経営を意識して禁煙対策に取り組んだ企業の事例を紹介します。

  • アクサ生命保険株式会社
  • テルモ株式会社
  • 中外製薬株式会社
  • 味の素株式会社
  • 株式会社ワコール・ホールディングス
  • オムロン株式会社

それぞれの事例を参考にしながら、自社にとって有効な施策を考案してみてください。

アクサ生命保険株式会社

アクサ生命保険株式会社は、健康経営優良法人に選出されている企業であり、禁煙にも力を入れています。取り組んでいる禁煙対策は、以下のとおりです。

  • オンラインを活用した禁煙プログラムを実施している
  • 禁煙にかかる費用を補助している

同社では、喫煙者が禁煙に取り組みやすい環境を用意しているのが特徴です。所定の条件を満たせば補助も活用できるため、従業員の負担を減らしながら禁煙できます。

参照:アクサ生命保険組合|禁煙サポートについて

テルモ株式会社

テルモ株式会社では、5月31日の世界禁煙デーに合わせて社内啓発活動を行っており、喫煙による健康リスクへの関心を高めています。取り組んでいる禁煙対策は以下のとおりです。

  • 禁煙外来の費用補助
  • 産業医による社内禁煙外来
  • 禁煙セミナーの実施
  • 喫煙所の閉鎖
  • 敷地内における全面禁煙

これらの施策を実施した結果、同社では5年間で喫煙率を9ポイント減少させることに成功しました。2018年度からは禁煙外来のみならず、禁煙パッチやガムの購入も費用補助の対象とし、さらに禁煙対策に力を入れています。

参照:テルモ株式会社

中外製薬株式会社

中外製薬株式会社では、2019年9月25日付けで「中外製薬グループ禁煙宣言」を発表しています。従業員1人ひとりの健康に注力しており、高い意識を持って健康経営に取り組んでいます。中外製薬株式会社が行っている取り組み方針は以下のとおりです。

  • 目標に応じて段階的に禁煙対策を実施
  • 喫煙者の採用を見送る
  • 喫煙に関するヘルスリテラシーの向上
  • 禁煙サポートによる脱喫煙を促進

望まない受動喫煙を防止すべく、健康な社会作りに貢献しています。

参照:中外製薬株式会社

味の素株式会社

味の素株式会社では卒煙プロジェクトを開始しています。導入されている卒煙プロジェクトは以下のとおりです。

  • オンライン診察で受けられる禁煙プログラムの実施
  • 禁煙外来の受診を促進
  • 禁煙補助剤(ニコチンパッチやガム)の費用補助

同社ではオンライン診療を導入していることから、忙しくて病院へ行けない人も禁煙に挑戦しやすい環境が用意されています。禁煙プログラム終了後も禁煙し続けられていれば、給付金として5,000円がもらえるのも魅力です。従業員のやる気を引き出しながら、禁煙対策を行っています。

参照:味の素健康保険組合|禁煙支援

株式会社ワコール・ホールディングス

株式会社ワコール・ホールディングスは、健康経営銘柄に5年連続選定された実績を持っている企業です。従業員の健康維持や増進に力を入れており、企業のみならず健康保険組合や労働組合の協力を得ながら日々取り組みを推進しています。取り組んでいる禁煙対策は以下のとおりです。

  • 禁煙タイムの拡大
  • 禁煙支援プログラムの実施

2020年4月より就業時間内の禁煙を実践した結果、全社における喫煙率を3.6ポイント低下させることに成功しました。

参照:株式会社ワコール・ホールディングス

オムロン株式会社

オムロン株式会社では、2020年4月より就業時間内の全社禁煙化をスタートさせており、従業員同士が協力し合いながら禁煙支援施策を実施しています。

中でも特徴的なサポートは「卒煙マラソン」です。3人1組のチームを作って禁煙に取り組みます。禁煙達成までの期間を3ヶ月に設定し、ゴールに向けてチームで協力し合うのが特徴です。禁煙は1人だと挫折しそうになる人も多いですが、チーム体制で取り組むことで達成できる可能性が大幅に上がります。

参照:オムロン健康白書2019年度

健康経営の導入にお困りの企業にはリロクラブがおすすめ

健康経営を推進していきたい場合は、リロクラブの活用がおすすめです。リロクラブでは多角的な健康支援サービスを提供しており、企業の健康経営に役立てられます。リロクラブで提供している健康支援サービスは、以下のとおりです。

  • Relo健康サポートアプリ
  • 健康診断代行サービス
  • Reloエンゲージメンタルサーベイ
  • メンタルヘルスケアサービス

福利厚生のシステムをアウトソーシングしたり、また従業員間でスマートフォンアプリを活用したりすることによって、スムーズに健康経営を取り入れられます。従業員に余分な業務負荷をかけることなく、健康管理を進められるでしょう。

健康経営を通して禁煙対策に力を入れよう!

健康経営において、従業員の禁煙対策は必要不可欠です。喫煙は従業員の体を蝕むだけではなく生産性を低下させるため、効率の良い業務を進められません。そのため、企業が一丸となって健康経営に取り組んでいき、すべての従業員の健康を守っていけるような仕組みを導入することが大切です。

とはいえ「どのような施策が有効かわからない」「何から取り組めばいいかわからない」と考える担当者も多いでしょう。今回紹介した具体的なステップや成功事例を参考に、自社の課題を解決してみてください。従業員に認知してもらいながら取り組んでいけば、禁煙対策も進めていけます。