中小企業における人事評価制度の重要性とは?導入手順や注意点を解説
中小企業は従業員数が少ないことから、人事評価制度がなくても適切な人事評価ができると考えている方も多いかもしれません。しかし、明確な評価基準などがなければ従業員からの不満が生まれやすくなり、公平性の証明も難しいです。特に中小企業は従業員1人ひとりの力が売上にも直結しやすく、適切な人事評価は不可欠といえるでしょう。
そこで本記事では、中小企業における人事評価制度の重要性を解説します。導入方法や手順、注意点なども解説しているので、併せて参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.中小企業における人事評価制度の実態
- 2.中小企業で人事評価制度を重視する理由
- 2.1.公平性のある評価ができる
- 2.2.各従業員のパフォーマンス力の向上が見込める
- 2.3.離職率の低下を防ぎやすい
- 2.4.従業員とのコミュニケーション活性化が期待できる
- 3.人事評価制度を導入するメリット
- 3.1.人材不足の解消につながる
- 3.2.誰が評価しても同じ結果が出やすい
- 3.3.効率よく人事評価できる
- 3.4.人材育成の強化につながる
- 4.中小企業が人事評価制度を導入する目安
- 5.中小企業における人事評価制度の導入方法
- 5.1.自社内で設計する
- 5.2.専門のコンサルティング会社へ依頼する
- 5.3.専用ツールを活用する
- 6.中小企業における人事評価制度の導入手順
- 6.1.1.目的を明確にする
- 6.2.2.評価基準を明確にする
- 6.3.3.評価手法を決める
- 6.4.4.実際に運用する
- 6.5.5.定期的に見直し・改善する
- 7.中小企業に人事評価制度を導入する際の注意点
- 7.1.全従業員から理解を得る
- 7.2.高い評価を得ることを目的にしない
- 7.3.運用しやすい制度を導入する
- 7.4.誰でも理解しやすい制度内容にする
- 7.5.評価者の教育を行う
- 8.働きやすい環境の構築には「リロクラブ」の活用を!
- 9.まとめ:中小企業こそ人事評価制度を導入しよう
中小企業における人事評価制度の実態
2022年3月に株式会社帝国データバンクが発表した資料によると、中小企業の人事評価制度の導入率はあまり高くありません。特に従業員数が5~20人の企業では、65%の企業で人事評価制度が導入されていないことがわかっています。
参考:令和 3 年度中小企業実態調査委託費 中小企業の経営力及び組織に 関する調査研究 報告書
上記の表を見るとわかるように、従業員数が増えるにつれて導入率が上がっている傾向にあります。とはいえ、人事評価制度は従業員数が少ないと不要というものではありません。中小企業であっても、従業員を公平に評価するためには欠かせない制度であり、人事評価制度の導入を検討するのがおすすめです。
さらに、同調査では「人事評価制度を導入しても運用が難しい」と考える中小企業が一定数いることもわかっています。
参考:令和 3 年度中小企業実態調査委託費 中小企業の経営力及び組織に 関する調査研究 報告書
つまり、人事評価制度を導入し、その後も活用できるような仕組みを構築することが中小企業の課題といえます。
中小企業で人事評価制度を重視する理由
中小企業で人事評価制度を重視すべき理由は、主に以下のとおりです。
- 公平性のある評価ができる
- 各従業員のパフォーマンス力の向上が見込める
- 離職率の低下を防ぎやすい
- 従業員とのコミュニケーション活性化が期待できる
それぞれについて解説します。
公平性のある評価ができる
中小企業が人事評価制度を導入すると、公平性のある評価ができます。人事評価制度を設けると評価基準や方法、そのプロセスなどが可視化され、誰が評価しても同じ結果になるからです。また、公平性のある評価ができると従業員からの信頼も得やすくなり、企業への貢献度も期待できるでしょう。
各従業員のパフォーマンス力の向上が見込める
人事評価制度を設けると、各従業員のパフォーマンス力の向上が見込めます。
そもそも中小企業は大企業よりも従業員数が少ないことから、1人あたりの業績が企業全体の売上に直結しやすいです。つまり、従業員それぞれが持つ力を最大限発揮できるような環境を作ると、企業としての成長にもつながるでしょう。
また、人事評価制度によって従業員を公平に評価すれば得意・不得意分野も明確になり、適材適所での勤務も可能になります。さらに、人事評価制度で出た結果をうまく活用すると、従業員のキャリアアップにも活かせるかもしれません。従業員にとっても現状を把握するきっかけとなり、目標が明確になるでしょう。その結果、各従業員のパフォーマンス力の向上が期待でき、今まで以上の成果を得やすくなります。
離職率の低下を防ぎやすい
中小企業が人事評価制度を導入すると、離職率の低下を防ぎやすくなります。従業員は人事評価制度によって正しい評価を受けられるとわかると、企業に対して愛着が沸きやすくなります。また、評価に対する不満も軽減でき、従業員満足度も向上しやすくなるでしょう。その結果、離職率の低下につながり、優秀な人材を確保し続けられます。
また、中小企業の中には採用コストを多くかけられない場合も少なくありません。つまり、採用コストを削減するためにも、定着率を上げる施策が必要不可欠です。既存の従業員を正しく評価したうえで教育すると、離職率の低下が期待できるでしょう。
従業員とのコミュニケーション活性化が期待できる
人事評価制度を設けると、従業員とのコミュニケーションが活性化しやすくなります。
従業員それぞれを正しく評価するためには1人ひとりと対話したり、少人数で会議を開いたりする必要があります。すると従業員との間に信頼関係が生まれ、今まで以上に仕事のしやすい環境になるでしょう。
特に中小企業は従業員数が少ない分、不満やトラブルなどが発生すると企業全体に影響を及ぼしやすいです。従業員とのコミュニケーションを重視しながら正しい評価を行っていくと、組織力の向上も期待できるでしょう。
人事評価制度を導入するメリット
中小企業にとって、人事評価制度を導入するメリットは主に以下のとおりです。
- 人材不足の解消につながる
- 誰が評価しても同じ結果が出やすい
- 効率よく人事評価できる
- 人材育成の強化につながる
それぞれについて解説します。
人材不足の解消につながる
人事評価制度を導入すると、人材不足の解消につながります。前述のとおり、人事評価制度によって正しく公平な評価が行われると、離職率の低下が見込まれるからです。すると優秀な人材を長期にわたって雇用でき、人材不足を解消しやすくなります。
さらに、人事評価制度が整っていると企業へのイメージがアップし、入社希望者が現れやすいです。適切な評価が受けられるとわかれば、安心して応募できる企業だと判断してもらえるでしょう。
誰が評価しても同じ結果が出やすい
人事評価制度を設けると一定の評価基準ができるため、評価者によって結果に違いが生まれる可能性が低くなります。
一定の評価基準がない場合、評価者が誰かによって結果に差が生じるケースがあります。例えば、従業員をよく知る人物が評価者であれば、日頃の業務態度などを考慮したうえで人事評価を行うでしょう。一方、あまりよく知らない評価者であれば、厳しく採点する恐れもあります。このような事態が起きると従業員に不満が生まれ、企業に対して不信感を募らせる要因になります。
人事評価制度があれば評価者による結果のバラつきを抑制でき、企業全体で統一された人事評価を実施できるはずです。公平性のある評価をするためには、人事評価制度は必要といえるでしょう。
効率よく人事評価できる
人事評価制度を導入すると、効率よく従業員の人事評価ができます。一定の評価基準を明確にしていないと何を基準に評価すればいいのかわからず、判断に迷うことが増えます。例えば、評価を段階的に分ける場合、その線引きとなる基準はどこにするのかわからない方もいるでしょう。
人事評価制度を設けると基準が明確になるため、スムーズに人事評価できます。通常業務を圧迫することなく評価できると、業務全体の効率化にもつながるでしょう。従業員数が少ない中小企業だからこそ、効率よく人事評価するのがおすすめです。
人材育成の強化につながる
中小企業が人事評価制度を導入すると、人事育成の強化につながります。人事評価制度の中に昇給や昇格などの基準を設けると、従業員のやる気アップにつながるからです。また、一定基準が明らかになっているため、目指すべき道がわかりやすいのも魅力でしょう。「昇格するためには今何に取り組むべきか」「昇給を目指すために足りないものはなにか」などが明確になると必要な対策もわかり、効率よく人材育成できます。
中小企業が人事評価制度を導入する目安
中小企業に人事評価制度が必要だとわかっても、どのタイミングで導入すればいいかわからない方もいるでしょう。そのような場合は、以下のタイミングを目安に導入を検討してください。
- 従業員数の増加
- 人材の新規雇用
- 社内制度の見直し
それぞれについて解説します。
従業員数の増加
従業員数が増加傾向にある場合は、人事評価制度の導入を検討しましょう。従業員数が50名を1つの目安にすると、制度の必要性を判断しやすくなります。従業員が50名を超えると、働いているときの様子まで把握しにくくなることが多いです。1人ひとりの勤務態度がわからないと正しい人事評価ができにくくなるため、一定の評価基準を設けるのがおすすめです。
なお、全従業員数が50名を超えない場合であっても、1人の管理者が多くの従業員を抱えている場合も正しい評価をしにくいです。管理職の抱える従業員数が5名を超える場合も、人事評価制度の導入を検討すると公平性を保ちやすくなります。
人材の新規雇用
人材の新規雇用を検討している場合も、人事評価制度の導入におすすめのタイミングです。人事評価制度によって「公平性のある評価をしていると企業だ」とアピールできると、新規雇用者が見つかりやすいからです。
また、企業が評価するポイントを明らかにしておくと、どのような人材を求めているのかが明確になります。すると企業が求めている人材を効率よく見つけられ、スムーズに採用活動を進められるでしょう。
社内制度の見直し
社内制度を見直したいときは、人事評価制度の導入を検討してください。企業が変わるためには、従業員の考え方や働き方も変える必要があるからです。
例えば、人事評価制度によって「評価される人材」「企業が求める人材」を可視化すると、従業員の目標とすべき人物像もわかりやすくなります。すると従業員は評価される人材になろうと、モチベーションをアップさせながら業務に取り組むでしょう。その結果、従業員1人ひとりの考えや行動が変わり、企業全体が良い方向へと転換していけるはずです。
中小企業における人事評価制度の導入方法
中小企業における人事評価制度の導入方法は、主に以下の3つです。
- 自社内で設計する
- 専門のコンサルティング会社へ依頼する
- 専用ツールを活用する
それぞれについて解説します。
自社内で設計する
1つ目は、自社内で人事評価制度を設計して導入する方法です。自社内で完結できれば、以下のようなメリットがあります。
- 費用を最小限に抑えられる
- 自社の考えや方針を反映しやすい
- 自社の変化に応じて修正しやすい
ただし、自社内で設計するには時間や手間がかかるため、他の業務に支障をきたす恐れがあります。
専門のコンサルティング会社へ依頼する
2つ目は、専門のコンサルティング会社へ依頼する方法です。豊富な実績やノウハウを活かしながら、第三者の目線で公平性を重視した人事評価制度を導入できます。特に自社内で人事評価制度を設計できない場合に、おすすめの方法です。
ただし、コンサルティング会社へ依頼する場合は、費用が発生します。費用は依頼先によってことなるものの、年間100~200万円ほどかかるケースもあります。したがって、どの程度の予算を確保できるかを考えながら、自社に合うコンサルティング会社を見つけることが大切です。
専用ツールを活用する
3つ目が、専用ツールを活用する方法です。人事考課ソフトや人事評価システムといったツールを活用すると、簡単に人事評価を管理できます。目標設定や評価内容まで幅広く管理できるため、人事評価制度を初めて導入する場合でも取り組みやすいでしょう。人事評価に関する情報を一元管理でき、業務の効率化にもつながります。
ただし、専用ツールを用いて人事評価制度を設ける場合は、ある程度の専門知識が必要です。明確な指針を掲げたうえで人事評価を行うと、制度の導入目的を果たしやすくなるでしょう。
中小企業における人事評価制度の導入手順
中小企業で人事評価制度を導入する場合は、以下のステップを参考にしてください。
- 目的を明確にする
- 評価基準を明確にする
- 評価手法を決める
- 実際に運用をする
- 定期的に見直し・改善する
それぞれの手順について解説します。
1.目的を明確にする
まず、人事評価制度の導入によって成し遂げたい目標を明確にしましょう。
人事評価制度は、制度を導入することが目的ではありません。人事評価制度を導入して「どうなりたいか」「自社が求めている人材はどのような人物か」などを明確にします。特に中小企業は従業員数が限られていることから、無駄な業務負担は避けるべきです。達成したい目的をあらかじめ定めておき、そのために必要なことを順に決めておくといいでしょう。
2.評価基準を明確にする
次に、評価基準を明確にします。具体的には、以下の3つが考えられます。
概要 |
具体例 |
|
業績考課 |
成果に対する評価 |
・売上にどれほど貢献したか |
能力考課 |
スキルに対する評価 |
・どのようなスキルを持っているか |
情意考課 |
意欲に対する評価 |
・部署に溶け込む努力をしているか |
なお、上記3つの評価はすべて均等に行う必要はありません。企業の考えや方針に合わせて、重視したい項目をベースに調整するのも一つの方法です。例えば、今後の事業拡大のために成果を重視したい場合は、業績考課をベースにした人事評価制度にするのもいいでしょう。自社が求める人物像に合わせた人事評価制度を導入すると、企業の成長にもつながります。
3.評価手法を決める
次に、評価手法を決めましょう。代表的な評価手法は、以下のとおりです。
概要 |
メリット |
|
MEO(目標管理制度) |
最初に目標を設定し、その達成度を評価する |
・透明性がある |
360度評価 |
直属の上司だけではなく、他の関係者からも評価をもらう手法 |
・客観性を維持しやすい |
コンピテンシー評価 |
理想の従業員像にもとづいて、行動特性を評価する手法 |
・その部署に必要な人材へと育成しやすい |
なお、評価手法は自社の目的などに合わせて、複数組み合わせることも可能です。
4.実際に運用する
評価手法まで決められたら、実際に運用しましょう。人事評価制度を導入している多くの企業では、1年に1~2回の頻度で人事評価を実施しています。ただし、中小企業は従業員数があまり多くないことから、さらに頻度を下げて実施するのも一つです。それぞれの負担とならない頻度を見極めながら、制度を導入してください。
5.定期的に見直し・改善する
人事評価制度は定期的に見直し、改善することも大切です。人事評価制度は時代の変化に合わせて調整する必要があり、従業員や自社の状況に合った制度を導入すべきです。定期的に見直しを行うことで自社が求める理想像を反映しやすくなり、より役立つ人事評価制度を設けられるでしょう。
従業員の不満などがあれば、それを反映させることで従業員満足度も向上しやすくなります。事業を長く継続させるためにも、より良い制度を導入してください。
中小企業に人事評価制度を導入する際の注意点
中小企業が人事評価制度を導入する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 全従業員から理解を得る
- 高い評価を得ることを目的にしない
- 運用しやすい制度を導入する
- 誰でも理解しやすい制度内容にする
- 評価者の教育を行う
それぞれについて解説します。
全従業員から理解を得る
人事評価制度を導入する際は、全従業員からの理解を得ましょう。人事評価制度にはさまざまなメリットがあるものの、必ずしも全ての従業員が前向きに受け止めてくれるとは限りません。例えば、業務負担が大きくなり、導入に反対する方もいるでしょう。
企業に合った良い人事評価制度を構築しても、活用しなければ意味がありません。導入段階から理解を得られると積極的に行動してくれやすくなり、より良い制度を構築できます。そして導入後も積極的に活用し、企業全体の底上げに役立てられるでしょう。
高い評価を得ることを目的にしない
人事評価制度は、高い評価を得ることが目的ではありません。目的を間違えてしまうと、従業員や企業の成長に役立ちにくくなります。あくまで人事評価制度は企業が抱える悩みを解決する手段であり、その先にある生産性の向上や人材育成などに焦点を当てるべきです。目的を明らかにすることで、自社に合った人事評価制度を確立できます。
運用しやすい制度を導入する
人事評価制度は、運用しやすいものにしましょう。例えば、従業員数の少ない企業であれば、紙やExcelなどを用いた運用方法でも対応可能です。しかし、従業員数が増えてくると手作業での管理が難しくなるため、専用ツールの導入を検討するのも有効策です。自社に合った運用方法を確立していると、人事評価制度そのものの定着にもつながります。
誰でも理解しやすい制度内容にする
人事評価制度は、誰でも理解しやすい内容にしましょう。人事評価制度は評価者だけではなく、全ての従業員が内容を理解できなければ運用する意味がありません。特に評価基準をはじめ、従業員の評価や待遇などに直結する部分は公平性を保つうえでも理解しておく必要があります。そのため、人事評価制度を導入する際は誰でもわかる言葉を用いて表記し、内容も理解しやすいものにしましょう。
評価者の教育を行う
人事評価制度を導入する際は、評価者の教育を行うことも重要です。評価者自身が制度の内容を理解しなければ、正確かつ公平な評価を下せないからです。特に公平性は重視すべき事柄であり、評価者の感情が反映される事態は避けなければいけません。評価者を対象とした定期的な研修を実施し、全従業員が満足できる制度を導入しましょう。
働きやすい環境の構築には「リロクラブ」の活用を!
従業員にとって働きやすい環境を構築したい方には「リロクラブ」の活用がおすすめです。
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まとめ:中小企業こそ人事評価制度を導入しよう
中小企業は従業員数が少ないことから、人事評価制度の必要性を感じてない方もいるかもしれません。
しかし、公平性のある人事評価を行えば従業員満足度を得ながら、生産性の向上が期待できます。
誰が評価しても同じ結果が出やすくなるため、効率よく人事評価できるのも魅力です。今回紹介した人事評価制度の導入方法や手順を参考に、自社に合った制度を取り入れてみてください。