プレゼンティズムとは?企業にもたらす影響とその対策
従業員が抱える健康問題やストレスが、生産性に影響を与えることがあります。
出勤しているにもかかわらず、十分なパフォーマンスを発揮できない「プレゼンティズム」という現象は、企業にとって深刻な課題です。
しかし、メンタル面の不調は見た目にはわかりにくいため、プレゼンティズムに悩んでいる従業員に対して、会社も適切な対応ができていないケースも多いのが現状です。
この記事ではプレゼンティズムとは何かについてまとめました。
プレゼンティズムの影響や原因、改善策について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.プレゼンティズム・アブセンティズムとは?
- 1.1.プレゼンティズムとは
- 1.2.アブセンティズムとは
- 1.3.生産性の低下と企業が負う経済的負担
- 1.4.健康状態への影響
- 2.プレゼンティズムの主な原因
- 2.1.心理的ストレスと職場環境
- 2.2.身体的な健康不良
- 3.プレゼンティズムによる損失の測定方法
- 3.1.測定ツールの紹介
- 3.2.プレゼンティズムの計算方法
- 4.プレゼンティズムの改善に取り組むメリット
- 5.企業が取り組むべきプレゼンティズム対策
- 6.プレゼンティズム対策で働きやすい職場を実現しよう
プレゼンティズム・アブセンティズムとは?
職場の生産性を高めるには、従業員の健康状態や働き方を正しく理解することが欠かせません。
「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」を区別することで、それぞれ行うべき改善策のヒントが見つかります。
更に、健康経営優良法人の調査項目の中に、プレゼンティーズムの調査、改善の項目もあり、認定を目指す企業さまにとっては重要な指標ともなります。
プレゼンティズムとは
プレゼンティズムとは、従業員が出勤しているにもかかわらず、健康問題や心理的ストレスによって業務効率が低下している状態を指します。
例えば、慢性的な腰痛や片頭痛を抱える従業員が集中力を欠いた状態で働くケースや、過剰な業務負担が原因でメンタルヘルスが悪化し、形式的に出勤しているだけの状態になることが挙げられます。
こうした状況が続くと、個人の生産性が低下するだけでなく、チーム全体にも悪影響を及ぼしかねません。
また、適切な対応を怠ると健康状態が悪化し、長期的な休職や離職につながるリスクが高まります。
アブセンティズムとは
アブセンティズムは、従業員が病気や家庭の事情などで欠勤し、物理的に職場を離れている状態を指します。
例えば、インフルエンザや家族の介護が原因で欠勤する場合がこれに当たります。
アブセンティズムは外から見て把握しやすいため、損失の影響や対策が考えやすい点が特徴です。
プレゼンティズムが与える影響
プレゼンティズムは、生産性の低下や従業員の健康悪化といったさまざまな影響を引き起こします。
この問題に早めに気づいて対策を取ることで、職場全体のパフォーマンスを高めることが可能です。
生産性の低下と企業が負う経済的負担
プレゼンティズムは、従業員が健康問題を抱えながら働くことで本来の能力を発揮できなくなる状態を招きます。
プレゼンティズムを抱えて集中力を欠いた従業員は、業務でミスが増えたり作業に時間がかかったりするかもしれません。
その結果、手直し作業やプロジェクトの進行遅延といった問題が生じるでしょう。
さらに、厚生労働省のデータによれば、プレゼンティズムによるコストは従業員に対する健康関連コスト(※)全体の約77.9%を占めており、欠勤や医療費に関連するコストを上回ることが明らかになっています。
このデータからも、日々の生産性損失が企業にとって見過ごせない負担となっていることがわかります。
※健康関連コスト…従業員の健康を維持するために必要なコストのこと。
健康状態への影響
プレゼンティズムが続くと、従業員の健康状態がさらに悪化する恐れがあります。
例えば、
- 腰痛や頭痛を抱えたまま働き続けると、症状が悪化するかもしれません。
- 心理的ストレスが蓄積すると、メンタルヘルスの悪化を招き、不安や抑うつなどの問題が生じることも考えられます。
健康面での不調は、従業員個人だけでなく、職場全体のパフォーマンスやモチベーションにも影響を及ぼすため、早めの対応が求められます。
プレゼンティズムの主な原因
プレゼンティズムが起こる背景には、心理的な要因と身体的な健康問題の両方が関わっています。
これらを理解することで、従業員が安心して健康的に働ける環境をつくり、生産性を上げるヒントが見つかります。
心理的ストレスと職場環境
心理的ストレスや職場環境の問題は、プレゼンティズムにつながる1つの要因です。
例えば、従業員の長時間労働や人間関係の悪化、不公平な評価制度などが挙げられます。
こうしたストレスが蓄積していくと、従業員の中には心身の不調を感じながらも、「休むわけにはいかない」と無理をして出勤する人もいます。
身体的な健康不良
身体的な健康問題もプレゼンティズムを引き起こす要因です。
腰痛や軽度の風邪など、比較的軽い症状でも仕事に影響を及ぼす可能性があります。
特に、慢性疲労の蓄積や生活習慣病の悪化を放置すると、健康問題が長期化し、プレゼンティズムが常態化するリスクが高まります。
プレゼンティズムによる損失の測定方法
プレゼンティズムは目に見えにくいため、損失を正しく把握するには数値化が欠かせません。
データを可視化すれば、企業が具体的な対策を検討するための基盤を整えることができます。
測定ツールの紹介
測定方法はいくつかありますが、まずは国際的に広く使われている「WHO-HPQ」を紹介します。
このツールでは、従業員の仕事のパフォーマンスを評価する3つの質問を用い、プレゼンティズムを数値化します。
さらに、得られた数値を基に損失コストも算出できます。
【質問】
【問B9】次の0から10点までの数字は、仕事の出来(でき)を表したものです。0点は、あなたの仕事を他の誰かがやって最悪だった時の出来、10点は一番仕事の出来る人がやった場合の出来とします。あなたと同じような仕事をしているたいていの人たちの、普段の仕事の出来は何点くらいになるでしょうか?もっとも当てはまる数字をつけてください。(あなたではなく、他の人の仕事の出来である点に注意ください。)
【問B10】同じく0から10点で表すと、過去1~2年の、あなたの普段の仕事の出来は何点くらいになるでしょうか。もっとも当てはまる数字をつけてください。(最近1~2年間に今の職場でお仕事をはじめられた場合には、以前の職場での仕事の出来も含めて考えてください)
【問B11】同じく0から10点で表すと、最近4週間(28日間)の、あなたの全般的な仕事の出来は何点くらいになるでしょうか。もっとも当てはまる数字をつけてください。(勤務評定とは関係ありませんので、思った通りにお答えください。)
【参考】健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(短縮版)日本語版(WHO)
リロクラブが用意しているサーベイツールでは、プレゼンティズムはもちろん、離職リスクなども計測することが可能です。
プレゼンティズムの計算方法
プレゼンティズムには2つの指標があります。
- 1つは健康リスクとの関連性を評価する「絶対的プレゼンティズム」
- もう1つは健康による損失コストを計算する「相対的プレゼンティズム」
それぞれの計算方法は以下の通りです。※上記の質問と照らし合わせてご確認ください。
- 絶対的プレゼンティズム:過去4週間のパフォーマンス(問B11)×10(範囲:0~100%)
- 相対的プレゼンティズム:過去4週間のパフォーマンス(問B11)÷普段の勤務者のパフォーマンス(問B9)
※計算結果は0.25未満を0.25に、2.0を超える場合は2.0に調整します。
【出典 】 「『健康経営』の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化」(厚生労働省)
出典URLの※16/57ページに掲載されています。
プレゼンティズムの改善に取り組むメリット
プレゼンティズムを改善することで、従業員と企業の両方に大きなメリットがあります。
- まず、従業員が健康に働ける環境を整えることで、業務の効率が上がり、生産性も向上します。
- 体調不良やストレスによるパフォーマンス低下を防ぐことで、チーム全体の成果が安定し、仕事の進みもスムーズになるでしょう。
- また、働きやすい環境を提供すると、従業員のモチベーションが上がり、離職の防止にもつながります。
- さらに、従業員を大切にする企業文化は、企業イメージを高める効果があります。
- 働きやすい職場環境を整えると優秀な人材を確保しやすくなり、取引先や顧客からの信頼にもつながります。
プレゼンティズムの改善は、健康的で活力ある職場づくりを実現し、企業の成長を後押しする重要な取り組みと言えるでしょう。
▼特にメンタルヘルスの改善に取り組むメリットも次で纏めていますので、併せてご覧ください。
企業が取り組むべきプレゼンティズム対策
プレゼンティズムを防ぐためには、従業員が健康的に働ける職場環境を整備することが必要です。
ここでは、効果的な3つの取り組みを紹介します。
健康経営の実施
従業員の健康を経営課題として位置づける「健康経営」を実施することで、プレゼンティズムを抑える効果が期待できます。
具体的な施策としては、健康診断の強化や運動習慣を支援するプログラムの提供、メンタルヘルスケアの導入などが挙げられます。
こうした取り組みは、従業員の健康意識を高めるだけでなく、業務効率を上げることにもつながるでしょう。
▼健康経営の取り組み方については次の資料をご参考にしてください。
▼その他健康経営に関する資料もリロクラブではご用意しています。
職場環境の改善
快適で働きやすい職場環境を整えることは、プレゼンティズム対策の基本です。
例えば、照明や空調設備の最適化、静かな作業スペースの確保、休憩エリアの充実などが有効です。
また、フレックスタイム制やリモートワークなどの柔軟な働き方を導入すれば、従業員の負担を軽減し、ストレスを和らげられる可能性があります。
産業医との連携
産業医と連携し、従業員の精神状態や健康状態を継続的にモニタリングすることも重要です。
定期的なストレスチェックや健康相談の実施により、健康リスクを早期に発見・対処できます。
さらに、産業医による職場環境改善のアドバイスを活用すれば、専門家の視点を盛り込んだ対策を進めることが可能です。
プレゼンティズム対策で働きやすい職場を実現しよう
プレゼンティズムは、従業員の生産性の低下や健康状態の悪化を引き起こす、見逃せない課題です。
それでも適切な対策を取れば、これらのリスクを減らし、働きやすい職場環境を整えることができます。
企業が取り組むべき対策としては、健康経営の推進や職場環境の改善、産業医との連携などが挙げられます。
こうした取り組みを続けることで、職場全体のパフォーマンスが向上し、企業の競争力が強化されるでしょう。
▼プレゼンティズムの測定、改善策などについては、リロクラブにお任せください!少しでもご不明点があれば、ご相談ください。