
研修の効果測定はなぜ重要?目的別の手法と結果の活かし方
社員向けの研修は企業の成長に欠かせない取り組みの一つですが、ただ研修を実施するだけでは十分ではありません。
実施した研修が成果を上げているのかを測定して可視化し、今後の改善に役立てることが求められます。
この記事では、研修効果を測定する重要性や主な測定手法、そして測定結果の活用方法について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜ研修効果の測定が重要なのか
- 1.1.研修の投資対効果を明確にするため
- 1.2.研修を改善するヒントになるため
- 1.3.受講者が学んだ内容を定着させられるため
- 2.研修効果の測定に用いられる主な手法
- 2.1.理解度テスト
- 2.2.アンケート調査
- 2.3.ROI分析
- 2.4.カークパトリックの4段階評価モデル
- 2.5.360度フィードバック
- 3.測定した研修効果を活かすためのポイント
- 3.1.測定しただけで終わりにしない
- 3.2.目的に応じた測定手法を使い分ける
- 3.3.受講者の学びや行動変容に目を向ける
- 4.研修効果の測定で組織の成長を促進しよう
なぜ研修効果の測定が重要なのか
まずは、そもそもなぜ研修効果の測定が重要なのかを解説します。
ここでは3つの観点から詳しく見ていきましょう。
研修の投資対効果を明確にするため
研修効果を測定すると、研修によってどのような成果が得られたかを可視化できます。
したがって、組織にとって重要な投資である研修の価値を定量化することができるのです。
経営層が意思決定をする判断材料として用いるためには、研修の効果を明確にすることが必要になります。
研修が業績向上や生産性向上にどのように寄与しているかを数値化すれば、経営層に対して研修の価値を明確に示せるでしょう。
研修を改善するヒントになるため
効果測定を行うことで、より効果的な研修の設計が可能になります。
研修内容や方法の有効性を評価する過程で、改善点を見つけられるからです。
例えば、受講者にテストやアンケートを実施して、その結果を分析すれば、次回以降で改善したほうが良い部分を明らかにできます。
受講者が学んだ内容を定着させられるため
効果測定の実施は、研修で伝えたことをより定着させる作用もあります。
研修後に実施するアンケートやヒアリングは、研修で学んだことを再び思い出すきっかけになるからです。
人によっては、研修を受講して満足してしまうケースも多いですが、日を改めて行う効果測定は、自分が学んだ内容を再び整理する機会になります。
受講者が学んだことを思い出す機会を作れば記憶の定着を促進でき、研修後の行動変容につながりやすくなるでしょう。
研修効果の測定に用いられる主な手法
研修効果の測定には、様々な手法が存在します。
ここでは、主要な5つの測定手法について、それぞれの特徴を詳しく解説します。
研修の目的や内容に応じて、適切な手法を選択することが、測定をより効果的に行うカギです。
理解度テスト
理解度テストは、研修内容の習得度を直接的に評価するための手法です。
筆記試験や実技試験などの形式があり、研修前後に実施することで学習効果を定量的に測定できます。
理解度テストは、受講者の知識やスキルの向上を客観的に評価できることが大きな利点です。
したがって、業務知識の習得を目的とする研修の効果測定に適しています。
近年ではeラーニングシステムを活用した理解度テストも普及しています。
オンラインで実施できるので、時間や場所の制約なく効率的な測定が可能です。
アンケート調査
アンケート調査は、受講者の満足度や研修内容の有用性を把握するための手法です。
研修直後に実施することで、受講者の率直な意見や感想を収集できます。
アンケート調査のメリットは、受講者の主観的な評価や具体的なフィードバックを得られる点にあります。
受講者の満足度を知りたいときや、研修内容の改善点を探りたい際に有効といえるでしょう。
ROI分析
ROI(Return on Investment)分析は、研修への投資額に対して得られた利益や成果を定量的に評価する手法です。
「ROI(%)=研修によって生じた利益や成果÷研修への投資額×100」という式で計算します。
ROI分析の利点は、研修の価値を数字で示せることです。
例えば、営業研修後の売上増加額を研修費用で割ることで、投資に対する具体的な見返りを数値化できます。
したがって経営層や財務部門にとって理解しやすく、なおかつ説得力が高い形式で効果を示せます。
ただし、ROI分析は効果測定の中でも難易度が高いとされています。
研修によって生じた利益や成果の数値化が難しいため、定量的な評価が困難な研修の効果測定には不向きです。
カークパトリックの4段階評価モデル
カークパトリックの4段階評価モデルは、研修効果を「反応」「学習」「行動」「結果」の4つのレベルで総合的に評価する手法です。
4段階の評価は以下のように行います。
- 反応(Reaction):受講者の満足度や研修への印象を評価
- 学習(Learning):知識やスキルの習得度を測定
-
行動(Behavior):研修後の行動変容を評価
- 結果(Results):組織への影響や業績向上を測定
カークパトリックの4段階評価モデル の利点は、研修の効果を多面的に捉えられることです。
特に中長期的な効果を重視する研修や、組織全体への影響を測定したい場合に適しています。
360度フィードバック
360度フィードバックは、受講者の上司、同僚、部下など複数の関係者から評価を収集し、行動変容を多角的に測定する手法です。
受講者の強みや改善点を包括的に把握できます。
360度フィードバック の特徴は、多様な視点からの意見を得られることです。
特に行動変容やリーダーシップの成長を重視する研修の効果測定に適しています。
例えば、マネジメント研修やチームビルディング研修などの評価に有効です。
測定した研修効果を活かすためのポイント
研修効果の測定は、それ自体が目的ではありません。
測定結果を適切に分析し、活用することで初めて、研修プログラムの改善や組織の成長につながります。
最後に、測定した研修効果を最大限に活かすための3つのポイントについて詳しく解説します。
測定しただけで終わりにしない
効果測定は具体的な改善アクションにつなげるために行うものです。
測定結果を活用しないと、研修の課題や成功要因が不明のまま終わってしまうほか、次回以降の研修予算や計画が立てにくくなります。
組織や企業の意思決定者にとって、効果が不明確な研修を継続的に実施しようとは思いづらいはずです。
測定結果を基に研修の価値を示し、研修の必要性を伝えられるよう努めましょう。
加えて、受講者の視点からも測定結果の活用は重要です。
なぜなら、受講者も自身の成長を実感しにくくなり、研修へのモチベーションが低下する可能性があるからです。
研修効果を測定して改善につなげるまでをセットで行うと良いでしょう。
目的に応じた測定手法を使い分ける
研修効果の測定において、一つの手法で網羅的に評価するのは困難です。
したがって、研修の目的や内容に応じて適切な測定手法を選択することが重要になります。
場合によっては複数の手法を組み合わせて、総合的な分析を試みましょう。
例えば、技術研修の場合、理解度テストで知識の習得度を確認し、同時にアンケート調査で研修の満足度や実用性を評価するといった形です。
また、リーダーシップ研修では、カークパトリックの4段階評価モデルを用いて総合的に効果を測定し、さらに360度フィードバックで実際の行動変容を確認するといった測定の方法が考えられます。
受講者の学びや行動変容に目を向ける
効果測定では、単に研修内容の理解度や満足度を測るだけでなく、受講者の実際の学びや行動変容に注目することが重要です。
研修の目的は、業務パフォーマンスの向上や組織の成長です。
目的が果たされているかを測るには、学んだ内容が実務で活用されているかを確認する必要があります。
また、行動変容を評価することで、研修が業務の改善や組織の目標達成にどのように貢献しているかを具体的に把握できます。
例えば、タイムマネジメント研修後に、受講者の業務効率や期日遵守率が向上したかを調査することで、研修の実質的な効果を測定できます。
研修効果の測定で組織の成長を促進しよう
研修の効果測定は単なる評価にとどまらず、組織の成長を促進するためにも重要です。
測定結果を活用し、研修プログラムを改善し続けることで、受講者のスキルアップや組織の目標達成を促進できます。
研修効果を最大限に活かすためには、測定結果を基に具体的な行動を起こし、継続的な改善を図ることが求められます。
研修計画の一部に効果測定を取り入れ、組織全体の成長を目指していきましょう。
人材育成は長期的な取り組みです。
効果測定を通じて得られた知見を積極的に活用し、改善を重ねていけば、組織の成長を加速させることができます。
研修担当者や人事部門だけでなく、経営層も含めた組織全体で研修効果を測定する重要性を認識することが、今後の企業競争力を強化させるカギとなるでしょう。