
公務員の福利厚生とは?民間企業との違い、手当・休暇・年金の制度
自社の福利厚生をより充実させたいとき、「公務員の福利厚生が参考になるのでは?」と考えたことがある人もいるのではないでしょうか。
公務員の福利厚生は、法律に基づいて整備されており、民間企業と比較して安定性や平等性が高いとされているのが特徴です。
住宅手当や休暇制度など、多くの企業が参考にできるポイントもあります。この記事では、公務員の福利厚生の特徴や種類、具体的な制度について詳しく解説します。
►そもそもの福利厚生について知りたい場合は、次の記事をご覧ください:福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
目次[非表示]
- 1.公務員の福利厚生の特徴とは?
- 1.1.法律に基づき整備されている
- 1.2.公費を財源としている
- 2.公務員に設けられている福利厚生の種類
- 2.1.組織が提供する福利厚生
- 2.2.共済組合が提供する福利厚生
- 2.3.互助会が提供する福利厚生
- 2.4.職員厚生会が提供する福利厚生
- 3.公務員の主な福利厚生制度
- 4.公務員の福利厚生を参考に自社の制度設計を
公務員の福利厚生の特徴とは?
まずは公務員に適用される福利厚生の特徴を解説します。
公務員の福利厚生には、民間企業とは異なるいくつかの特徴があります。
これらの特徴は、公務員の仕事の性質や社会的責任を反映しています。
法律に基づき整備されている
公務員の福利厚生制度は、法律によって義務付けられているものがほとんどです。
組織による格差が少なく、全ての公務員に対して一定水準の福利厚生が保証されています。
地方公務員を例に挙げると、地方公務員法第42条第1項に「地方公共団体は、職員の保健、元気回復その他厚生に関する事項について計画を樹立し、これを実施しなければならない。」と規定されています。
この決まりに則って、福利厚生が設定されているのが特徴です。
一方で、法律に基づいて内容が決まるため、組織ごとに柔軟な設定がしづらい点は民間企業との違いと言えるでしょう。
公費を財源としている
公務員の福利厚生は、主に税金を財源としています。
したがって、財政状況の影響を受けやすいです。
近年は住宅手当の減額・廃止や退職金の見直しなどが進む傾向にあります。
公務員に設けられている福利厚生の種類
公務員の福利厚生制度は、民間企業とは異なる特徴があることを説明しました。
ここからは、公務員に設けられている福利厚生の種類を説明します。
民間企業で働く人は健康保険組合に加入しますが、公務員は健康保険組合の代わりに共済組合に加入します。
このほかにもいくつか公務員特有の組織から提供される福利厚生がありますので、一つずつ見ていきましょう。
組織が提供する福利厚生
公務員が勤務する行政や都道府県が提供する福利厚生です。
基本的には民間企業が提供するものと近い内容が含まれています。
通勤手当や住宅手当、扶養手当のほか、退職金制度などが該当します。
共済組合が提供する福利厚生
共済組合は公務員を扶助するために設立された組織で、都道府県ごとに設置されています。
共済組合の役割は社会保障の支援です。
共済組合が提供する福利厚生には、医療保険や年金制度が含まれており、職員の健康維持と老後の生活保障を目的としています。
互助会が提供する福利厚生
互助会とは、公務員の相互扶助を目的とした組織です。
主に医療・健康に関する福利厚生の管轄を行っています。
互助会が提供する福利厚生には、共済保険、短期・長期給付金、人間ドックの補助、スポーツ施設の利用補助などが含まれます。
互助会の活動は、公務員の心身の健康を支え、よりよい公務サービスの提供につながる役割を果たしています。
職員厚生会が提供する福利厚生
自治体によっては、独自の福利厚生制度を導入していることがあります。
こうした福利厚生は主に職員から会費を徴収して運営する組織「職員厚生会」から提供されています。
職員厚生会は、結婚・出産時の給付金やプライベートの旅行などへの費用補助を行っています。
これらの制度は、民間企業の法定外福利厚生と近い性質を持っていると言えるでしょう。
公務員の主な福利厚生制度
公務員の福利厚生は基本的に法律で義務付けられたものが中心となっています。
そのため、就職先や自治体によって大きな差はなく、平等性が保たれています。
ここでは、公務員の主要な福利厚生制度について、詳しく解説していきます。
手当
公務員の手当は、給料(国家公務員は俸給)に加えて支給されるもので、職員の生活実態や勤務条件に応じて設定されています。
- 扶養手当は、配偶者や子ども、父母などの扶養親族がいる職員に支給されます。
- 住居手当は、賃貸物件に住む職員に対して支給される手当で、特に都市部など住居費が高い地域で働く職員の生活を支えています。
- 地域手当は、民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給されます。
家賃や物価の相場など、生活コストが高くなりやすい地域で勤めている人ほど多めに支給されます。
これにより、地域間の生活コストの差を考慮した公平な待遇が実現されています。
休暇
公務員の年次休暇は1年間で20日与えられます。
- 結婚休暇は、婚姻届を提出した日または結婚式を挙げた日の5日前から1カ月後までの間で連続5日間取得できます。
- 産前産後休暇は、出産予定の6週間前から出産8週間後まで取得可能です。
- なお公務員はお盆休暇がない代わりに夏季休暇が設けられています。
国家公務員は連続した3日間、地方公務員は連続した5日間を取得できるよう決められている場合が多いです。
公務員の休暇は基本的には多くの民間企業でも採用されている種類がほとんどで、あまり奇抜な制度は存在しません。
ちなみに、公務員の休暇制度は、法律に基づいて整備されています。
国家公務員の場合、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」をもとに休暇の種類が決まっています。
地方公務員の休暇制度も基本的にこの法律に準拠していますが、自治体ごとに定めた条例によって一部異なる場合があります。
休暇制度は、公務員の働き方に柔軟性を持たせ、ワーク・ライフ・バランスの実現を支援しています。
また、職員の健康維持や家族との時間確保にも寄与し、間接的には公務の質の向上にもつながっていると言えるでしょう。
保険・年金
公務員が加入する共済組合は、会社員の健康保険にあたる「短期給付事業」と年金に関する「長期給付事業」を担っています。
これらの制度は、民間企業の制度と共通する部分もありますが、公務員特有の仕組みによる手厚い保障が特徴となっています。
短期給付事業は公的医療保険のことで、病気やケガ、休業、災害などに対して行う給付事業です。
医療費は、民間企業に勤めている人と比べて自己負担分が少ない傾向が見られます。
長期給付事業である年金制度に関しては、2015年に制度変更がありました。
かつての共済年金と比べると手厚さは減ったものの、民間の厚生年金と比べると一定の優遇があります。
具体的には、厚生年金に相当する「老齢厚生年金」に加え、公務員独自の「年金払い退職給付」が支給される仕組みとなっています。
公務員の福利厚生を参考に自社の制度設計を
公務員の福利厚生制度は、法律に基づく安定性と平等性が特徴です。
公務員の福利厚生は、日本の労働環境全体に対する一つのモデルケースとも言えるでしょう。
法律に基づく制度設計、生活実態に即した手当、ワーク・ライフ・バランスを考慮した休暇制度など、民間企業の福利厚生制度の参考になる要素も多くあります。
もし自社の福利厚生を見直したいと考えている場合、公務員の制度を参考にすることで、職員の満足度を高められるかもしれません。
民間企業が自社の制度を見直す際には、公務員の制度の長所を参考にしつつ、各企業の特性に合わせたカスタマイズを行う必要があります。
ぜひ自社の制度を精査しつつ、従業員が長く安心して働ける制度を設計してみてください。