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インセンティブとは簡単にいうと何?導入後の影響、導入時の注意点

ビジネスの現場では従業員にインセンティブ制度を設けている企業もあります。

インセンティブは従業員の行動や成果に対する評価を反映させることで単に報酬としてだけでなく、組織全体の生産性向上を図る制度です。

この記事では自社の組織にインセンティブ制度を設けたいと考えている人向けに、インセンティブの基本的な概念から、導入後の影響、そして導入時の注意点まで詳しく解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.インセンティブとは?──働き方の変化で注目される「動機付け施策」
    1. 1.1.インセンティブの基本概念
    2. 1.2.ビジネス実装──従業員の意欲を高める施策
    3. 1.3.インセンティブと似ている言葉との違い
  2. 2.インセンティブ制度を導入した際の影響
    1. 2.1.従業員のモチベーション向上が期待できる
    2. 2.2.従業員それぞれがやるべきことを明確にできる
    3. 2.3.従業員の間で競争意識を高められる
  3. 3.インセンティブ制度を導入する際の注意点
    1. 3.1.評価基準を明確にしておく
    2. 3.2.従業員に配慮した制度にする
    3. 3.3.職種による不公平が出ないようにする
  4. 4.インセンティブ制度を活用して組織成長を促進しよう

インセンティブとは?──働き方の変化で注目される「動機付け施策」


インセンティブとは何か。

その定義や活用法、似た概念との違いを説明する前に、なぜ今この言葉が注目されているのかを押さえておきましょう。

終身雇用年功序列が前提だった時代から、成果主義ジョブ型雇用へと働き方が移行するなかで、「従業員の自発的な行動」を促す仕組みとして、インセンティブ制度の導入が進んでいます。

本章では、次の3点を中心に整理します:

  • インセンティブの基本定義
  • ビジネスでの活用目的と期待される効果
  • 類似概念(報酬、モチベーションなど)との違い

インセンティブの基本概念

インセンティブは、人々の行動を促す刺激」や「動機」を意味する言葉です。

要因や誘因を表す英語の「incentive」が語源になっています。

ビジネスの文脈では、従業員の意欲を高め、特定の行動を促すための施策を指しています。

特に人事・労務領域では、インセンティブを「金銭的インセンティブ」と「非金銭的インセンティブ」に分けて設計するのが一般的です。

  1. 金銭的インセンティブは特定の業務目標を達成した際の昇給や成果報酬、
  2. 非金銭的インセンティブには、特別休暇の付与、福利厚生の拡充、やりがいのある部署への異動などが含まれています。

外発的インセンティブと内発的インセンティブの違い

インセンティブは大きく「外発的(extrinsic)」と「内発的(intrinsic)」の2つに分類されます。

  • 外発的インセンティブ:金銭報酬、昇進、賞与など、「外部から与えられる報酬」によって行動を促すもの。
  • 内発的インセンティブ:達成感、やりがい、自己成長など、「本人の内側から生まれる動機」に働きかけるもの。

この2つは相互に補完し合う関係にあり、バランスよく組み合わせることで、従業員のエンゲージメントや定着率の向上が期待できます。

インセンティブが従業員エンゲージメントへ波及するメカニズム

インセンティブ制度は、単なる「報酬設計」にとどまらず、

モチベーションの形成 → 行動の変化 → 組織への貢献

という好循環を生み出す起点となります。

とくに内発的インセンティブは、理念への共感裁量のある働き方挑戦機会といった要素の組み合わせによって、長期的なエンゲージメントの土台をつくります。

そのため、短期的成果を狙う外発的施策と、長期視点での内発的支援を両立させることが重要です。

ビジネス実装──従業員の意欲を高める施策

前章では、インセンティブの構造を「金銭/非金銭」×「外発/内発」という観点で整理しました。

ここでは、その考え方を実務へと落とし込み、実際にどう設計・導入し、効果を検証すべきかを体系的に解説していきます。

以下の5つの観点で施策を組み立てることで、「制度をつくるだけで終わらない」運用と改善のサイクルが描けるはずです。

課題別インセンティブ早見表

組織が抱える課題は、離職防止や売上拡大、イノベーション創出、コラボ強化など多岐にわたります。

本表では、主な組織課題ごとにKPI例とインセンティブ施策の対応関係を整理しました。

どのような課題に、どんなインセンティブが有効か」を逆引きで確認できるため、設計の起点としてご活用いただけます。


金銭的インセンティブの設計ポイント

金銭的インセンティブは、短期的な成果を後押しする強力な手段です。

インセンティブボーナス、ストックオプションなど、それぞれ適した活用シーンがあります。

重要なのは、「支給のタイミング」「計算方法の明快さ」「財務への影響」を事前に設計しておくことです。

納得感とモチベーションを維持するためには、シンプルで社内に開示可能なルール設計が欠かせません。

非金銭的インセンティブの設計ポイント

非金銭的インセンティブは、内発的動機づけや長期的なエンゲージメントに有効です。

短期の表彰や休暇から、中期のリスキリング支援、長期の職務設計まで、段階的に「やらされ感」から「自ら選ぶ」動機づけへ移行させることが鍵です。

ポイント制やジョブローテなど、選択の余地を持たせる設計が、社員の主体性と組織の活性化につながります。

導入プロセスとパイロット運用

インセンティブ制度の導入は、まず離職率eNPSなどのデータをもとに課題を特定し、「3W1H」で施策設計を行います。

パイロットは全体の10〜20%または10〜100名の大きい方を目安とすると、企業規模に左右されず、検証可能かつ実行しやすい母集団を確保できます。

KPIやパルスサーベイによる効果検証を経て、経営・人事・現場を巻き込みながら全社展開と制度改善を進めましょう。


►より詳細なインセンティブ制度の導入方法や事例については次の記事をご覧ください:インセンティブ制度とは?導入ポイントや成功事例を紹介

インセンティブと似ている言葉との違い

従業員に対する報酬制度には、「インセンティブ」と似た文脈で語られる概念が複数あります。

たとえば、歩合制・賞与(ボーナス)・手当・報奨金といった言葉は、いずれも“基本給とは別に支給される報酬”であるため混同されがちです。

しかし、それぞれの制度は支給基準・支給頻度・目的・対象範囲が異なり、適切な使い分けが求められます。

ここでは、以下の4つのキーワードを取り上げ、それぞれの特徴とインセンティブとの違いを明確に整理します。

歩合制── 成果と連動する“ベース報酬”

歩合制は、売上などの実績に応じて一定割合で報酬が支給される制度で、特に営業職に多く導入されています。

たとえば「売上の5%を支給」といった形で、個人の成果がダイレクトに給与に反映されるのが特徴です。

一方で、インセンティブは「目標達成」などの条件を満たしたときに発生する追加報酬であり、報酬の設計ロジックや発生タイミングが異なります

歩合制は報酬構造がシンプルで、短期的な成果創出や納得感のある評価に有効ですが、収入が不安定になりやすく、過度なプレッシャーや個人主義を助長する恐れもあります。

そのため、実務では「歩合+インセンティブ」を組み合わせた二段階報酬モデルが効果的です。

例:月間売上の5%を歩合で支給し、加えて目標120%達成時には5万円のボーナスを支給。

このように、ベース報酬とチャレンジ報酬を両立させることで、安定と意欲のバランスが取れた設計が可能になります。

ボーナス(賞与)── 組織業績と連動する“追加報酬”

ボーナス(賞与)は、企業の業績に基づいて半年や1年ごとに支給される追加報酬です。

金額は会社の収益状況によって変動し、組織全体の成果を反映する「分配型」の性格が強い報酬といえます。

一方、インセンティブは個人やチームの目標達成に対して支給される成果報酬で、より短期的かつ成果直結型の設計が特徴です。

たとえば、ボーナスは「年度業績に応じて基本給の〇ヶ月分」、インセンティブは「月間目標120%達成で5万円支給」といったように、支給のタイミングも条件も異なります。

混同されやすいのが「成果連動型賞与(プロフィットシェア)」です。

これは、組織全体の利益に応じて報酬を分配する仕組みで、固定賞与とは異なり、インセンティブに近い側面を持ちます。

手当── 生活支援としての“固定報酬”

手当は、基本給に追加して毎月支給される報酬の一種で、従業員の特定の状況や負担への補填を目的としています。

代表的なものに、役職手当・家族手当・通勤手当・住宅手当などがあり、原則として業績や努力にかかわらず定額で支給されます。

そのため、手当は「成果に対する対価」ではなく、「生活支援」や「役割の認定」に近い性質を持ちます。

一方で、インセンティブは、従業員の行動や成果を促す目的で設計された変動型の報酬であり、手当とは性質も使いどころも大きく異なります

なお近年では、手当を戦略的に活用する企業も増えており、たとえば住宅手当に在宅勤務日数や勤務地条件などの「行動条件」を設けることで、手当をインセンティブ的に再設計する動きも見られます。

このように、固定報酬であっても、企業戦略や働き方改革に即した柔軟な運用が可能です。

報奨金── 単発成果に対する“金銭的なご褒美”

報奨金とインセンティブは、いずれも従業員の成果や行動に対して与えられる報酬ですが、その範囲と性質に違いがあります。

「報奨金」は、特定の功績や成果に対して一時的に支給される金銭報酬を指すのが一般的です。

例としては、「営業成績1位に5万円」「改善提案が採用されたら1万円」「社内アワードの副賞として旅行券や商品券を贈呈」など、明確な成果に対する単発のご褒美が挙げられます。

一方、インセンティブはより広い概念で、金銭的報酬に限らず非金銭的な動機づけ(表彰制度、社内発表の機会、特別研修、社長とのランチなど)も含まれます。

また、報奨金が“スポット的な支給”であるのに対し、インセンティブは制度として設計・継続されるケースが多い点も重要な違いです。

そのため、報奨金は短期的な成果認知に効果的ですが、制度化せず漫然と乱発すると「ご褒美待ち」や不公平感を生む恐れもあります。

インセンティブ制度を導入した際の影響

インセンティブ制度の影響

インセンティブ制度の導入は、組織に多面的な影響をもたらし、さまざまな効果が期待できます。

ここでは、インセンティブ制度を導入した際の影響について詳しく見ていきましょう。

従業員のモチベーション向上が期待できる

インセンティブ制度を導入すると、従業員のモチベーション向上が期待できます。

給与以外に追加の報酬が得られる可能性があることで、従業員は通常よりも意欲的に仕事に取り組むようになるからです。

特に、インセンティブはボーナスと比べて短期間で評価することが多く、即時的な動機づけ効果が高いです。

四半期ベースや月ベースでの評価と報酬提供は、従業員の日々の努力と成果を直接的に結びつけ、継続的なモチベーション維持に効果的です。

従業員それぞれがやるべきことを明確にできる

インセンティブ制度を実施する際は、評価する行動や具体的な指標を明確に設定する必要があります。

なぜなら、従業員個々のタスクと目標を明確化する効果があるからです。

これにより明確な評価基準は、目標達成のために従業員が取るべき行動を具体的に理解できるよう助けています。

従業員の間で競争意識を高められる

インセンティブ制度の導入は、従業員間の健全な競争意識を醸成する効果があります。

なぜなら、従業員の行動や実績が可視化され、明確な基準に基づいて評価されるため、成果を上げて高い評価を受ける従業員と、そうでない従業員の差が明確になるからです。

これにより、現在の評価が今ひとつの従業員も、「次こそは自分が表彰される側になりたい」「実績を上げインセンティブを得たい」という前向きな競争意識を持つようになります。

その結果、従業員個々の能力向上への意欲を高め、結果として会社全体の業績向上にもつながる可能性があります。

ただし、過度な競争は職場の雰囲気を悪化させる可能性もあるため、チームワークを損なわないよう注意する必要があります。

インセンティブ制度を導入する際の注意点

注意点

インセンティブ制度の導入には慎重な検討と適切な設計が必要です。

ここでは、制度導入時の主要な注意点について詳しく解説します。

評価基準を明確にしておく

インセンティブ制度を導入する際のポイントの一つが評価基準の明確化です。

評価基準や指標を具体的かつ公平に設定する必要があります。

なぜなら、偏りや高すぎる基準などがあった場合、従業員の納得感を得られず、制度自体の効果が薄れてしまうからです。

曖昧な評価基準ではなく、数値化して客観的な指標を用いると、従業員も納得しやすくなります。

売上目標の達成率、顧客満足度スコア、プロジェクト完了率など、具体的で測定可能な指標を設定しましょう。

また基準は定期的に見直し、常に適切な評価が行われるようにすることが重要です。

従業員に配慮した制度にする

インセンティブ制度を設計する際は、従業員への配慮を忘れないようにしましょう。

なぜなら、従業員の行動や実績への評価が可視化されるため、評価される従業員と評価されない従業員二極化しやすい傾向があるからです。

特に現在は働き方が多様化していて、従業員全員が同じような環境や時間で働いているケースのほうが少ないです。

したがって、多様な従業員の状況に配慮した制度設計が必要になります。

フルタイム勤務者と短時間勤務者で異なる評価基準を設ける、個人の成果だけでなくチーム全体の成果も評価の対象に含めるなどの工夫が考えられます。

職種による不公平が出ないようにする

インセンティブ制度を導入する際、異なる職種間での公平性の確保は極めて重要です。

特定の職種のみが評価される制度設計をした場合、他の職種の従業員のモチベーション低下などのリスクが生じやすくなります。

営業職には売上目標、開発職には品質指標、サポート部門には顧客満足度など、それぞれの職種の特性に応じた評価基準を設けると効果的でしょう。

また、具体的な数値での評価が難しい職種については、貢献度や改善提案の実施状況などの評価も取り入れると、より公平な評価が可能になります。

さらに、部門横断的なプロジェクトへの参加や、社内コミュニケーションへの貢献度なども評価対象に含めるのも良いでしょう。

インセンティブ制度を活用して組織成長を促進しよう

インセンティブまとめ

インセンティブ制度は、従業員のモチベーション向上組織の目標達成を促進する強力なツールです。

適切に設計・運用されれば、従業員の意欲を高め、生産性の向上につながる可能性があります。

しかし、インセンティブ制度を導入するには評価基準の明確化、従業員への公平な配慮、職種間の不公平の解消などを注意する必要があります。

また、金銭的インセンティブだけでなく、非金銭的な報酬も含めた総合的なアプローチが効果的です。

インセンティブ制度は、単なる報酬システムではなく、組織の価値観や目標を反映する重要な要素でもあります。

従業員の成長と組織の発展を同時に促進する制度設計の心がけが長期的な企業の成功につながるでしょう。

RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムズ編集部
RELO総務人事タイムス編集部です。 本メディアは、「福利厚生倶楽部」の株式会社リロクラブが運営しています。 「福利厚生倶楽部」の契約社数は23,500社、会員数1,250万人という規模で、業界シェアNo.1を誇ります。 従業員満足を追求する人事や総務、経営者の皆様にとって少しでも有益になる情報を発信していきます。

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