
内定者フォローとは?重視される理由や具体的な施策、ポイント
「内定通知を出した後、入社までの期間をどうフォローするか」。
この期間に何をするかが、入社率や初期離職率に影響を与えることをご存知でしょうか。
近年、採用活動では「内定を出して終わり」ではなく、「入社するまで、そして入社後の定着までを見据えた関係構築」が重要視されています。
この記事では、内定者フォローの基本から、志望度を高める対応、辞退を防ぐための施策、そして今の時代に合ったフォロー手法まで、段階的に整理して解説します。
目次[非表示]
内定者フォローとは?
内定者フォローとは、企業が内定を出した後から入社までの間に行う、内定者との信頼関係の構築や入社意欲の維持を目的とした取り組みのことです。
単なる連絡対応や書類送付にとどまらず、以下のような目的を持って実施されます。
内定辞退の防止
内定者の不安・疑問の解消
入社後のギャップ軽減と早期戦力化
内定者のエンゲージメント強化
具体的な施策については、後ほど詳しく解説します。
内定者フォローが重視されている理由
「内定を出したのに、入社直前で辞退されてしまう」といったケースは、今や珍しくありません。
①売り手市場の継続で候補者に選択肢が増えたこと、そして②オファー提示以降は候補者側が意思決定の主導権を持つこと
この二点が『内定者フォロー』の重要性を一段と高めています。
直近の統計でも、有効求人倍率は1倍超で推移し(2025年6月:1.22倍)、新卒市場では複数内定の保有率が過半に達しています。
これらは「内定を出して終わり」では成果が安定しないことを示唆しています。
参考資料:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年6月分)について」
売り手市場により採用競争が激化しているため
かつては「内定をもらえればありがたい」とされていた時代もありましたが、現在の採用市場は逆の状況(求人>求職の構図)にあります。
実際、有効求人倍率は1.22倍/2025年6月となり、いわゆる「超売り手市場」と呼ばれる状況です。
さらに、2社以上の複数内定を得ている学生は39.9%居て、平均で2.49社獲得しています。
参考資料:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年6月分)について」、リクルート就職みらい研究所「就職プロセス調査(2025年卒)」
このような売り手市場の状況により、候補者は条件・カルチャー・成長機会などを横比較しながら意思決定します。
内定通知後は主導権が学生に移るため
採用プロセスの前半では、選考を通して企業が主導権を握っています。
しかし、内定通知を出した時点で、その関係性は変わります。内定後、入社するかどうかを決めるのは、学生や求職者側です。
この段階で企業が何もしなければ、内定者は他社との比較検討を深めます。
反対に継続的にフォローを受けた内定者は「この会社に入社したい」という気持ちを強め、辞退抑制と入社確度の向上に繋がります。
候補者に選択肢が多い状況下では、オファー後の体験差が、最終的な入社決定につながります。
フォロー内容による志望度への影響とその違い
内定者フォローを実施するにあたって、フォローの内容次第で内定者の志望度は大きく左右します。
どれだけフォローをしていても、その伝わり方によっては逆効果となる場合もあるのです。
ここからは内定者の志望度が上がりやすくなるフォローはどのようなものなのか、反対に下がりやすくなるフォローとは何なのか、それぞれ解説します。
内定者の志望度が上がりやすくなるフォローとは?
以下のようなフォローを行うと、志望度が上がる傾向にあります。
「選考中のやりとりを覚えてくれていて、そこに触れたコメントをもらい、嬉しかった」
「名前を覚えてくれていて、気にかけてもらえていると実感した」
「自分の就活の悩みに耳を傾けてくれて、不安が軽くなった」
このように、一人ひとりへの丁寧な対応や、温かみのあるコミュニケーションが、学生にとって「この会社に入りたい」という気持ちを高めるきっかけになりやすいようです。
内定者の志望度が下がりやすくなるフォローとは?
一方で、以下のようなフォローは、志望度を下げる要因となり得ます。
「内定承諾を何度も確認され、圧を感じた」
「イベント開始時間が早すぎて負担だったが、配慮がなかった」
「フォローを約束されていたのに、連絡が来ず不安になった」
こうした学生側の都合や気持ちを考慮しないフォローは、信頼を損なう要因となります。
誤解されがちですが、フォローはやればいいものではなく、内容と姿勢が伴ってこそ意味があるのです。
内定者フォロー実施の主な流れ
内定者フォローは、単発のイベントではなく、内定通知から入社までの期間を通じて段階的に行われるものです。
単発イベントでは一時的な盛り上がりで終わってしまい、関係構築が断続的になりがちです。
段階的に接点を持つことで、不安解消と関係性の強化を継続的に行えます。
具体的には、次のような流れです。
内々定告知
フォロー面談
懇親会
内定式
事前研修
「何を、いつ、なぜ行うか」を時系列で整理し、それぞれの目的やポイントを解説します。
内々定告知
内定通知の前段階として行われる内々定告知は、初期の志望度を一気に高める絶好の機会です。
この段階で「大切にされている」と感じた候補者は、その後の志望度や企業への印象に影響を与え、辞退リスク低下に繋がります。
例えば、口頭での内々定告知に加え、フォロー面談や手書きのメッセージを添えることで、企業としての熱意や丁寧さが伝わりやすくなります。
また、「この企業は自分を大切にしてくれている」と感じさせる配慮ある言葉や演出があると、内定者の心に残りやすくなります。
内々定告知は単なる情報伝達では無く、最初の「感情的なつながり」を築く場です。
フォロー面談
内々定後、入社までの間に行われる面談は、内定者の不安や疑問を解消し、入社意欲を高める最重要接点です。
選考時とは違い、フォロー面談では内定者の感情に寄り添ったコミュニケーションが求められます。
候補者の本音を引き出し、懸念を解消することが、志望度維持に繋がります。
内容としては、キャリアの展望、働き方、配属希望、社風への疑問などを丁寧にヒアリングしながら、安心感を持ってもらうことが目的です。
上司候補や人事が「あなたを歓迎している」というメッセージを明確に伝えることが効果的です。
担当者は「評価する立場」から「受け入れる立場」に切り替え、信頼関係の構築に注力することが重要です。
懇親会
懇親会は、候補者同士・社員との関係性を早期に築き、不安を軽減する有効な施策です。
同期や先輩とのつながりができることで「ここで働きたい」という心理的安心感が生まれ、入社意欲が強化されます。
食事会や座談会、ゲーム形式のイベントなど、カジュアルで話しやすい場を提供することで、候補者同士が自然に打ち解けます。
入社式後も継続的に開催すると効果が持続します。
懇親会は、組織への帰属意識を早期に醸成するための「人間関係の初期投資」です。
内定式
内定式は、企業として正式に内定を通知し、これから入社する仲間として迎え入れる節目のイベントです。
企業理念の共有や経営陣からのメッセージを通じて、内定者に対する期待や歓迎の気持ちを伝えることができます。
また、オフライン・オンラインを問わず、「式」としてのフォーマルさを演出することで、内定者にとっての入社意欲を高める効果もあります。
内定式は、入社意欲を決定的に固める「企業と候補者の公式な握手」です。
事前研修
入社前に行われる研修は、内定者の不安解消と早期戦力化の両面で効果を発揮します。
新卒は社会人経験がなく、中途は業務や文化の適応が必要です。
入社前に必要な知識やスキルを共有することで、初期離職や立ち上がりの遅れを防ぎます。
新卒にはビジネスマナーや基本的な業務知識、中途には業務フローや企業文化の理解を中心とした内容を提供します。
どちらの場合も「歓迎されている」と感じられる設計が重要です。
事前研修は、候補者の不安を自信に変え、入社後の成功確率を高めるステップです。
内定辞退を防止するための具体的な施策とポイント
内定辞退は、採用コストと機会損失の両面で企業に大きな影響を与える為、計画的な事態防止策が不可欠です。
採用プロセスでかけた時間・労力・費用は辞退と同時に失われ、場合によっては再採用コストや欠員による業務停滞が発生します。
さらに、辞退率が高いと採用ブランドの毀損にも繋がります。
印象に残る内定通知、従業員との交流機会、企業理解を深める情報提供など、候補者の心理的安全と納得感を高める施策が有効です。
辞退防止は単なる“もったいない”対策ではなく、採用投資の成果を最大化するための必須戦略です。
印象に残る「特別な内定通知」で学生の心をつかむ
内定通知を受ける瞬間は候補者の入社意欲を高める最大のチャンスです。
複数の企業から内定を得ている学生にとっても記憶に残る出来事であり、この時の感情はその後の志望度に直結します。
例えば、
社長や人事責任者が直接電話で合格を伝える、あるいはオンライン面談の場で一言お祝いの言葉を添える
選考中のやりとりに触れながら「あなたのここを評価しました」と具体的に伝える
このように、内容だけでなく「どう伝えるか」までを設計することが、入社意欲を引き上げるポイントになります。
など、「自分のために時間を割いてくれた」と感じられるやりとりが、信頼感や好意を生むきっかけになります。
学生は「自分のことをしっかり見てくれていた」と感じやすくなります。
内定通知は形式的な業務の一環として済ませるのではなく、企業の熱意と想いを伝えるコミュニケーションの場として捉えることが大切です。
従業員と交流できる機会を作り関係構築を図る
内定辞退は、「会社の雰囲気が見えない」「入社後の自分の姿が想像できない」といった漠然とした不安から生じる場合があります。
こうした不安を払拭するには、実際に働く従業員と交流する機会を設けることが効果的です。
例えば、若手従業員との座談会やカジュアルな面談の場を設けることで、内定者は入社後のイメージをより具体的に持てます。
また、配属予定の部署メンバーと話す機会を作ると、「このチームで働くのか」という安心感や一体感も醸成されます。
さらに、従業員が自ら登壇して仕事内容ややりがいを語るセッションを行えば、企業側からの一方的な情報提供ではなく、リアルで具体的な声として受け取ってもらえるでしょう。
これにより、企業に対する信頼や親しみが生まれやすくなります。
企業理解を促進するための情報提供を行う
「この会社はどんな事業をしているのか」「自分は何を任されるのか」「どんな人たちと働くのか」。
このような情報が不十分だと、内定者は比較検討の中で他社へ気持ちが傾いてしまうことがあります。
だからこそ、企業理解を促す情報発信は、辞退防止において非常に重要です。
例えば、社内報を共有したり、日常業務の様子を紹介する動画コンテンツを送ったりすることで、働くイメージをよりリアルに伝えられます。
また、キャリアパスや研修制度について丁寧に説明したり、実際に活躍している従業員のインタビュー記事を届けたりするのも効果があるでしょう。
あるいは、入社後の1日のスケジュールをモデルケースとして見せることで、内定者は「自分がこの職場で働くとどうなるのか」が具体的に想像できるようになります。
ただし、これらの情報は、一方的に送りつけるのではなく、タイミングや文脈を考慮しながら求職者の「今、知りたいこと」を的確に届ける工夫が必要です。
現代の採用活動に適した内定者フォローの新しいアプローチ
従来の内定者フォローでは、内定式や懇親会などの対面型の施策が中心でしたが、近年では学生の価値観や情報の受け取り方の変化に合わせて、より柔軟なフォローが求められるようになっています。
最後に、今の時代だからこそ効果を発揮する、三つの新しいアプローチを紹介します。
SNSやチャットツールを活用する
メールではなく、LINEやSlackなど、学生にとって日常的に使い慣れたツールで連絡を取る企業が増えています。
特にZ世代の学生にとって、気軽に送受信できるチャット形式のやりとりは心理的ハードルが低く、距離感の近いフォローが実現できるというメリットがあります。
また、SNSアカウントを通じて会社の雰囲気や従業員の様子を発信すると、内定者が自然と企業への理解を深めることにもつながります。
一方通行の情報提供ではなく、「見たいときに見られる」「相談したいときにすぐ連絡できる」状態をつくることで、内定者との関係性をより強固にできます。
内定までの評価をまとめた「内定アルバム」で心を動かす
近年、一部の企業では、選考を通じて得た学生のポジティブな評価や面接官のコメントを1冊のアルバムにまとめて渡すといった、心のこもったフォローが注目されています。
アルバムには、エントリーシートの抜粋や面接での印象、選考時の評価コメントなどがまとめられており、最終ページに正式な内定通知を添えることもあります。
こうした「あなたをしっかり見て、選んだ」というメッセージが伝わるプレゼントは、内定者の承認欲求を満たし、企業への好感や信頼を高めることに直結します。
派手な演出ではなくても、真摯な想いが伝わる「個別性」のあるフォローが、心に残るのです。
学生が主体的に関わるコンテンツ企画でエンゲージメントを高める
内定者にパンフレットや動画制作といった社内コンテンツの一部に参加してもらう仕掛けも、最近注目されている取り組みです。
例えば、「来年度の採用パンフレットに載せる、内定者の一日ページを一緒に作る」「入社予定者向けのQ&Aコンテンツを考える」といった企画です。
このように、一方的な「与える」フォローではなく、内定者が自ら関与するフォローは、エンゲージメントを大きく高める効果があります。
「自分がこの会社に貢献している」「すでに仲間の一員になっている」と実感できる体験が、入社への決意と帰属意識を育てるのです。
内定者フォローを強化して、入社意欲と信頼を高めよう
この記事では、内定者フォローの目的や重要性、実施の流れ、辞退防止のための具体施策、そして現代的なアプローチ方法まで幅広く解説しました。
特に、超売り手市場の中では、内定を出しただけでは安心できず、その後のフォローの質が志望度や入社意欲を左右します。
一方的な情報提供ではなく、「自分を見てくれている」「気にかけてもらっている」と内定者が感じられる関係づくりが重要です。
今後の採用成功のカギは、選ばれる企業として「関係を育てる力」にあります。
内定者一人ひとりに寄り添ったフォローを通じて、確実な入社とその後の活躍につなげていきましょう。