
【2026年4月施行】食事補助の非課税条件を完全解説──7,500円改正の実務対応
食事補助(社食・食事券・置き型社食など)は、制度設計次第で従業員側の所得税が非課税になり、会社側も福利厚生費として処理できます。
一方、要件を満たさないと企業負担分が給与課税となり、源泉所得税・社会保険料にも影響が出るため、正確な運用が必要です。
この記事では、非課税になるための2つの要件、令和8年4月1日改正済みの非課税枠(月7,500円)の内容、超過時の取扱い、経理処理・仕訳、導入実務まで体系的に整理します。
※本記事の内容は、国税庁「給与として課税されない食事や食券(No.2594)」および令和8年4月1日施行の通達改正に基づいています。個別の税務判断は税理士・社労士にご相談ください。
▼そもそもの食事補助については次の記事をご覧ください:
【2026年最新版】福利厚生で人気の食事補助。食事補助のサービスの種類と導入方法
目次[非表示]
- 1.食事補助(福利厚生)の基本と非課税の考え方
- 2.食事補助が非課税になる2つの要件
- 3.非課税上限額「月7,500円」への引き上げ(令和8年4月1日改正済み)
- 3.1.適用開始時期と対象範囲
- 3.2.引き上げの背景と経緯
- 4.非課税上限額を超えた場合の扱い(給与課税・源泉・社会保険)
- 5.食事補助が課税対象になりやすいケース
- 5.1.現金支給・手当化している
- 5.2.従業員負担が要件を満たしていない
- 5.3.提供対象・金額に偏りがある
- 6.提供方法別の取り扱いとメリット・デメリット
- 7.経理・会計処理について
- 8.時間外・深夜勤務の食事補助は課税されるか
- 9.導入手順と社内規程・運用チェックリスト
- 10.よくある質問(FAQ)
- 11.食事補助 非課税の要点まとめ
食事補助(福利厚生)の基本と非課税の考え方
食事補助は、会社が従業員の食事代を一部支援する制度です。
税務上は、支援の形が「現金」だと給与に近くなりやすい一方、食事券やアプリなど「食事の現物支給」として整理できれば、一定の条件下で福利厚生として非課税になります。
非課税の根拠は、従業員が食事の対価を相応に負担し、企業負担も少額であれば"特別な利益"とはいえないという考え方です。
この考え方を具体化したのが、次のセクションで説明する2つの数値要件です。
実際の判定はこの要件で機械的に決まります。
実務では「非課税にしたつもり」でも、徴収方法が曖昧だったり、上限の計算を税込のままにしていたりすると給与課税に取り扱われる可能性がございます。
ルール設計だけでなく、毎月の運用と証憑の残し方までセットで考えることが重要です。
食事補助が非課税になる2つの要件
食事補助を非課税で扱うには、国税庁の取扱いに基づく2つの要件を両方満たす必要があります。
どちらか一方でも欠けると、企業負担分が給与として扱われるリスクが高まります。
従業員が食事価額の50%以上を負担する
従業員が「食事の価額」の50%以上を負担していることが必要です。
「払うことになっている」では足りず、給与天引きやアプリ決済などで実際に徴収している状態が必要です。
計算例:月の食事価額が8,000円で従業員負担が4,000円なら50%ちょうどで要件を満たします。
3,500円だと50%未満となり、この時点で非課税から外れます。
利用日数が月により変動する制度は50%判定が崩れやすいため、月額固定の本人負担にするか、利用実績に連動させる設計が有効です。
会社負担額が月7,500円(税別)以下
企業負担額が月7,500円以下であることが必要です(令和8年4月1日改正済み。改正前は月3,500円)。
判定が税別で行われる点が重要です。
軽減税率8%(弁当・惣菜など)と標準税率10%(外食など)で税別換算の結果が変わり、同じ税込金額でも上限判定が逆転することがあります。
また、税別換算後に10円未満の端数がある場合は切り捨てとされています。
例:月の食事価額16,000円(税込)、従業員負担7,800円(税込)の場合、差額8,200円(税込)を軽減税率8%で税別換算すると約7,592円となり端数処理後も7,500円を超えます。
一方、標準税率10%なら約7,454円で要件内に収まります。
税率が混在する運用では、月次で「税別の企業負担」が上限内になるよう単価設計しておくのが安全です。
非課税上限額「月7,500円」への引き上げ(令和8年4月1日改正済み)
通達改正により、食事の現物支給に関する非課税限度額が月3,500円(税別)から月7,500円(税別)へ引き上げられました(令和8年4月1日施行済み)。
非課税枠が広がった一方、50%要件などの基本構造は変わらないため、上限だけ見て増額すると要件を外すことがあります。
すでに3,500円ベースで制度設計していた企業は、上限の見直しと社内規程・給与システムの上限設定の改定を早めに行うことが推奨されます。
適用開始時期と対象範囲
月7,500円(税別)の非課税枠は、令和8年4月1日以後に支給する食事から適用されています。
対象は役員・従業員への「食事の現物支給」です。
社員食堂・弁当の現物提供に加え、食事券・ICカード・食事用途限定のアプリも設計次第で現物支給として整理できます。
使途が自由な金銭支給や汎用金券は給与と見なされやすくなります。
なお、深夜勤務に伴う夜食を金銭で支給する場合の非課税上限も改正され、1食当たり650円(税別)以下が非課税となっています。
引き上げの背景と経緯
上限額が長期間据え置かれてきた結果、物価上昇と実務の乖離が大きくなったことが主因です。
昼食単価が上がると非課税運用を維持するために従業員負担を増やさざるを得ず、制度が"あるのに使いにくい"状態になっていました。
令和8年4月の改正で非課税枠が月7,500円に拡大されたことにより、要件を守りながら従業員の体感価値が出る設計に戻しやすくなりました。
すでに3,500円ベースで設計していた企業は、上限の見直しと社内規程の改定を早めに行うことが推奨されます。
※出典:国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」・
財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定)
非課税上限額を超えた場合の扱い(給与課税・源泉・社会保険)
食事補助が非課税にならない場合、企業負担分は原則として給与課税の対象になります。
「上限を超えた分だけが課税」ではなく、要件を満たさない月は企業負担分がまとめて給与として扱われやすい点に注意が必要です。
【具体例】
- 食事価額:16,000円(税込)
- 従業員負担:8,000円(50%以上 → 要件①はOK)
- 企業負担(税別換算):8,000円 → 要件②(7,500円以下)を超過
この場合、超過分の500円だけが課税されるのではなく、企業負担分の8,000円(税別)全額が従業員の給与として源泉所得税・社会保険料の対象になります。
給与課税になると従業員側は源泉所得税の対象となり、給与として扱われる金額が増えることで社会保険料の標準報酬月額にも影響が出る可能性があります。
従業員の手取りと会社負担の両面で"思ったより重い"結果になりがちです。
実務対応は、(1) 要件を満たす設計に戻す、(2) 要件未達の月は給与に加算して課税処理する、のどちらかを迅速に選べるよう、月次チェックと給与システムへの連携方法を事前に決めておくことが重要です。
食事補助が課税対象になりやすいケース
現金支給・手当化している
食事代として毎月一定額を現金で渡したり、給与に上乗せして支給したりする形は原則として給与課税になります。
例外として、深夜勤務で夜食の現物支給が難しい場合に限り、1食650円(税別)以下の金銭支給が非課税となる取扱いがあります。
安全策は、アプリやICで加盟店の飲食・食品に限定し、利用履歴が残る現物支給の仕組みにすることです。
従業員負担が要件を満たしていない
50%要件は運用で崩れやすい要件です。
給与天引きが未設定、徴収漏れがある、月途中入社・休職で本人負担の取り方がブレる、といった事情で実際の負担割合が50%未満になり得ます。
本人負担を"必ず徴収される仕組み"(食券配布と同時に天引き、アプリでの本人決済併用など)にすることで事故が減ります。
提供対象・金額に偏りがある
特定の役員だけ、特定部署だけといった偏りが強いと福利厚生性が否定されるリスクがあります。
合理的な基準(勤務形態・勤務地・シフトなど)で説明できる線引きが必要です。
対象範囲・補助額・利用ルールを社内規程に明文化し、公平性の説明ができる状態にしておくことが重要です。
提供方法別の取り扱いとメリット・デメリット
いずれも「税別で企業負担を非課税枠内に管理できるか」「本人負担を確実に徴収できるか」「利用実態をデータで説明できるか」の3点が選定の基準です。
経理・会計処理について
非課税運用では、会社負担分を福利厚生費として処理し、本人負担分の回収を給与天引きで明確に分けて管理することが基本です。
仕訳例(月額:食事価額16,000円、本人負担8,500円、企業負担7,500円の場合)
非課税判定は税別で行われるため、消費税の扱い(仕入税額控除の可否・税区分)も提供形態で変わります。
経理・人事・総務で「判定は税別」「軽減8%と標準10%が混在し得る」を共通認識にしておくことが必要です。
判断が難しい場合は、税理士・社労士への確認を早めに行うことを推奨します。
時間外・深夜勤務の食事補助は課税されるか
残業や宿日直の際に現物で支給する食事は、業務上必要な提供として無料で支給しても給与課税しなくてよい取扱いがあります。
深夜勤務(22時以降など)の夜食は、現物支給が難しい場合に限って1食650円(税別)以下の金銭支給でも非課税となります。
例外規定を広げすぎると給与課税リスクが上がります。
対象者の定義・支給方法・上限・勤務実績との証憑をセットで管理し、例外は例外として運用することが安全です。
導入手順と社内規程・運用チェックリスト

ステップ1:現状確認
- 現在の補助額・本人負担額・支給形態を棚卸し
- 税別での企業負担を試算し、非課税の2要件を月次で満たせているか確認
- 改正前(3,500円)ベースで設計していた場合、上限7,500円への見直し要否を確認
ステップ2:制度設計
- 食事価額の把握方法・本人負担の徴収方法を決定
- 軽減税率/標準税率が混在する場合の計算ルール・端数処理を明文化
- 途中入社・休職・短時間勤務の按分ルールを決定
ステップ3:規程整備・運用
- 福利厚生規程に対象者・提供方法・本人負担・上限・例外・精算ルールを明記
- 月次チェック(税別の企業負担・本人負担の徴収状況・対象者の偏り)をルーチン化
- 証憑(利用実績レポート・請求明細・控除一覧)を保管
よくある質問(FAQ)
Q. 非課税上限は現在いくらですか?
A. 令和8年4月1日以後は月7,500円(税別)です。改正前(令和8年3月31日まで)は月3,500円(税別)でした。
Q. 上限の判定は税込ですか、税別ですか?
A. 税別です。税込の差額で上限内に見えても、税別に直すと超えることがあるため、必ず税別換算で確認します。
Q. 端数はどう処理しますか?
A. 税別に直した金額の10円未満は切り捨てです。上限近くの設計では端数処理で可否が変わるため、余裕を持たせた設計が安全です。
Q. 個人事業主・フリーランスへの食事補助は非課税になりますか?
A. 非課税の対象は「従業員(役員含む)」であるため、個人事業主やフリーランスへの支給は原則対象外です。業務委託契約の相手方への支払いは別途費用科目での処理が必要です。
Q. 在宅勤務者や外回りでも対応できますか?
A. はい。食事券・IC/アプリなど、利用先が食事に限定され履歴が残る仕組みが相性が良いです。
Q. 税務調査では何を見られますか?
A. 本人負担の実際の徴収証拠、税別の企業負担が非課税限度額内である計算根拠、現物支給としての実態(利用履歴・請求明細)、対象者の公平性が主な確認対象です。
食事補助 非課税の要点まとめ
食事補助を非課税にする基本条件は、(1) 従業員が食事価額の50%以上を負担、(2) 企業負担(税別)が月の非課税限度額以内の2要件を月次で両方満たすことです。
判定は税込ではなく税別、本人負担は実際に徴収が必要です。
令和8年4月1日の改正により、非課税枠は月7,500円(税別)に拡大されています(改正前は月3,500円)。
非課税枠が広がっても50%要件と運用実態の重要性は変わりません。
失敗しやすいのは現金支給・手当化、本人負担の徴収漏れ、税率混在の計算ミスです。
制度設計・税別上限管理・社内規程の明文化・月次チェックの仕組み化がセットで必要です。
3,500円ベースで設計していた企業は、社内規程と給与システムの上限設定の見直しを早めに行いましょう。
判断に迷う場合は税理士・社労士への相談を推奨します。



















