労災に社員が巻き込まれた際には、受任者払い制度という制度があります。休業補償給付金を一旦、会社で預かってから本人に支払うという制度です。実際に本人に支払うまでに1ヶ月以上の時間がかかることもあります。今回は、この受任者払いの実務処理について、どのようなときに受任者払いを選択すべきなのかを説明いたします。災害を起こした本人に、生活不安を与えないのが大原則です。その認識を誤らない様に、手続きを進めていくことをおススメします。

労災の休業補償とは?

労災の休業補償とは?
自社の直接雇用している従業員(正社員パートアルバイト等、雇用の名称に関わらず、全ての直接雇用する労働者を指します。

なお、派遣社員や請負契約で工場内などで働く人のように直接雇用していない社員については、除外されます)が会社の業務中に起こした災害について、社員が休んでいる期間のお金を、会社として加入している労働災害保険から支給してもらうことを労災の休業補償給付と言います。

通勤中に事故にあってしまった場合には、休業補償給付ではなく休業給付という名称になります。どちらも労災であることに変わりはありません。

通勤中の災害と業務起因性のある災害では、労働基準監督署への印象が違う

なお、通勤中に起こした災害については会社の保険料負担がアップすることはありませんし、労働基準監督署からの取り調べもしつこくはありません。

業務起因性のある災害を起こした場合には、労働基準監督官(安全衛生方面担当官)にはしっかりと事故を起こした会社の責任について、電話だけでなく書類と口頭で、直接報告することをおススメいたします。

災害内容が悪質な場合には、安全衛生委員会をしっかりと運営していたかどうかなども問われますので、必ず安全衛生委員会の議事録を用意するようにしてください。

業務起因性の労災を何度も繰り返していると会社としての信用を失いますし、労働基準監督官に目を付けられます。要注意事業所との認識を労働基準監督署に受けないように、注意してください! 悪質な事業所と判断されると、操業停止の可能性もあります。操業停止中に利益が生めなくなり、会社の経営に大損害を与えます。

休業補償給付の支給条件とは?

休業補償の給付要件としては、3つの要件を全て満たす必要があります。原則として、怪我や病気で仕事が出来ないことが前提条件です。

  1. 療養していること。
    医師の指示により、自宅療養している場合を含みます。出勤できない状態であることが支給要件です。
    労災の休業期間については、医師の意見が絶対となることが多いので、必ず医師の診断書を用意してもらいましょう。
    診断書にかかる費用などは会社負担で支払います。
  2. 労務に従事することができない状態であること。
    これは当然ですが、出勤して仕事が出来るレベルの災害であれば、労災保険からの給付自体が不要です。働ける状況にないというレベルの身体ダメージでなくてはいけません。
  3. 賃金の支給を会社から受けていないこと。
    平均賃金の60%以上の賃金を受けている場合には不支給となります。
    賃金ではなく、補償金ならば問題ありません。

待機期間中の3日間は、会社から賃金補償を絶対にしましょう!

待機の完成についてですが、労災発生後3日間は待機期間となり、その間の賃金は会社が補償することになります。労災が支給されるまでの3日間は、平均賃金の60%を休業補償として会社から労働者に支給するようにしましょう。賃金として支給するのではなく、補償金として支給します。

ほとんどの会社では待機完成までの3日間について、補償金は60%ではなく100%補償しています。社員に生活不安を与えないという観点から言えば、100%補償することが望ましいです。

この際、休業の待機期間中に社員から有給の申請があった場合には、社員が損をします。有給申請で給与を支給すると給与支払いとなり、所得税で損をするからです。会社が休業補償を支払うように徹底しましょう。

特に会社の責任で起こした業務起因性災害で、本人に生活不安を与えるようなことは絶対にしてはいけません。会社は、社員からの信頼を失いますし、社員の家族からの信頼も失います。

休業特別支援金も支給されます

休業補償給付の支給と同時に、休業特別支援金の20%が支給されます。忘れずに申請するようにしましょう。

業務起因性災害の場合、休業補償給付と休業特別支援金が支給されるため、本人には平均賃金の80%が支給されることになります。

労災による休業補償給付額の計算方法

労災による休業補償給付額の計算方法
休業補償給付額の計算方法については、休業1日につき、給付基礎日額の80%が支給されます。先述した休業補償給付60%プラス休業特別支援金20%で80%支給されます。

給付基礎日額の算定方法については、平均賃金を算出する必要があります。労働基準法上の平均賃金の算出方法についてですが、以下になります

月給20万円の社員がいるとして、20万円×3ヶ月÷90日間(1月が31日、2月が28日、3月が31日として総日数90日)=6,667円(1円未満端数切り上げ処理必須)です。
日額が出たら、これを保険給付金の最低に使用します。

休業補償給付=6,667円×0.6=4,001円
休業特別支援金=6,667円×0.2=1,334円

これら2つを合計した金額である5,335円が給付基礎日額です。

但し、最高保障額と最低保障額というものがあります。

計算して最低保障日額を下回る場合には、最低保障日額を適用します。
計算して最高保障日額を上回る場合には、最高保障日額を適用します。

詳しくは、下記厚生労働省発表資料をご参照ください。

基本的に年齢によって最低保障日額と、最高保障日額は変動します。ご注意ください。

労災の休業補償で受任者払い制度を活用するメリット

労災が発生した際に、休業補償で受任者払い制度を活用するメリットは、社員の生活を保障できる点です。労災給付金相当分のお金を社員に立て替えて先払いし、大切な社員の安定して生活する権利を保障することが出来るという点につきます。

社員に対して先に労災補償金相当額のお金の立て替え払いを先払いすることを忘れないようにしてください。

通常、労災を起こした際には、会社からの給料が出ない上に有給休暇も使えず、当座のお金に困ってしまいます。深刻な労働災害の場合には、労働基準監督署も念入りな調査をしますので、調査に掛かる期間は、お金が一切出ません。

労災の休業補償が社員または会社に振り込まれるのには1か月以上の時間がかかることが普通です。1か月給料がない状態を、社員に我慢させることだけは絶対に避けるようにしましょう。社員の生活を守ると同時に、大切な社員からの信頼を得るために、先払いをすることを徹底してください!

労災の休業補償給付に必要な企業の手続き

労災の休業補償給付に必要な企業の手続き
労災の補償給付に必要な企業の手続きについて、必要書類と手続きの流れをご案内いたします。

  1. 労災が発生したら、まず最初に労働基準監督署に対して業務起因性災害の場合には「休業補償給付支給請求書 様式第8号」を、通勤災害の場合には「休業給付支給請求書 様式第16号の6」を提出します。
    様式は以下からダウンロードできます。

    なお、特別支援手当金の申請フォーマットも兼ねておりますので、同時に申請することが出来ますので、ご安心ください。

  2. 「労災被災者本人の委任状」と「受任者払いに関する届出書」を一緒に添付してください。フォーマットは労働基準監督署によってそれぞれ違います。
    必ず労働基準監督署に電話確認して、委任状に関しては必要事項を聞き出してフォーマットを作成するか、届出書については所轄の労働基準監督署に受け取りに行くようにしてください。労働基準監督署にもよりますが、郵送してくれる場合もあります。

ここで注意点があります。

「労災被災者本人から提出してもらう委任状」と「受任者払いの届出書」は必ず立て替え払いが終わってから書かせてください。手付金を被災者本人に少しでも払うということでも構いません。経理から仮払い処理をしてもらって現金を出してもらっても良いです。

平均賃金の算定などに時間がかかる、という言い訳もありますが、本人は生活に困ってしまっていますから、少しでもお金を早く本人に渡すようにしてください。

まだお金をもらっていないのに、「立て替え払いを受けました」という委任状を書かされると被災者本人から不信を買います。誠実に行うようにしてください。それくらいいいだろう、というような感覚でこれを行うと、労基署に通報されたりと事態をややこしくする可能性があります。

お金に困った労災被災社員が「お金を受け取っていないのに、無理矢理立て替え払いしたという書類を書かされた!脅迫ではないか!この会社はおかしい!」と現場で騒ぎ立てることがあります。書類に嘘が無いようにしてください。

そういう事態を招くのは、人事担当者としての能力も経営者から疑われますし、大変なストレスになります。そうなれば「虚偽申告しているのではないか?」という疑いの目を労働基準監督官から向けられます。この点にだけは絶対に注意してください。

正しい手続きを行い、社員からの信頼を得られるように努めましょう!

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