働き方改革

ホワイトカラーエグゼンプションは労働時間が増える?制度の概要と賛否両論の背景

ホワイトカラーエグゼンプションという言葉を聞いたことがあるでしょうか。現在、ホワイトカラーエグゼンプションという労働時間の変更に関わる制度を導入することが検討されています。全ての職種や業種が今の労働時間規制に合っているかといわれると、そうではありません。特にホワイトカラーの労働者は、頭脳労働といわれ、労働時間に対して生産率が比例しないことも問題にあげられています。その問題を解決できるかもしれないといわれているのが、ホワイトカラーエグゼンプションという制度です。今回はそのホワイトカラーエグゼンプションの制度の基礎知識から、対象者やメリット・デメリットまで様々なことについて説明していきます。

ホワイトカラーエグゼンプション

2018年06月22日更新

RELO編集部

ホワイトカラーエグゼンプションの基礎知識

ホワイトカラーエグゼンプション
ホワイトカラーエグゼンプションとは、ホワイトカラーと呼ばれる労働者が労働時間の規制から外れ、労働時間で賃金を定めるのではなく、働いた成果により賃金を定める制度です。対象のホワイトカラー労働者とは、白いYシャツとネクタイにビジネススーツを着て仕事をする労働者のことを指しています。

ホワイトカラー労働者は、製造業などの肉体労働とは違い頭脳労働の業務が主なため、時間経過による生産性の向上が曖昧なところがあります。ホワイトカラーエグゼンプションは、労働時間でホワイトカラー労働者の賃金を決めるのではなく、成果によって賃金を決めることで、生産性の向上と効率的な働き方の実現を目的とした制度です。

ちなみに、一般的な製造業などの肉体労働では作業服が青色系統のものが多いため、ブルーカラーと呼ばれています。

現在の日本では、基本的には時給や日給、月給など時間で賃金が決められていることが多く、成果によって賃金が決まるのは、歩合制と呼ばれる固定給に個人の売り上げや業績を加算した賃金体系です。ですので歩合制の賃金体系は、ホワイトカラーエグゼンプションに近い賃金体系といえるかもしれません。

ホワイトカラーエグゼンプションの導入を進める背景

現在の労働時間規制は、主にブルーカラーの労働者を前提として作られたといわれています。時間経過によって生産性が一定に保たれやすいブルーカラー労働者は、残業することにも生産するという明確な目的があり、時間も無駄にはなりにくいです。

ホワイトカラー労働者は、生産性が目に見えにくいこともあり、残業が無駄な時間と捉えられることもあります。そのため新しい労働基準としてホワイトカラーエグゼンプションを導入しようという動きがあるのです。

しかしホワイトカラーエグゼンプションを導入するにあたって、いくつかの懸念事項があります。労働時間の規制がなくなるので、余計に労働時間が増え、過労死や離職率の増加などにつながりかねません。

こういった背景もあり、ホワイトカラーエグゼンプションの導入にはメリットも多い分、デメリットもあるので、賛否両論の意見があります。

裁量労働制との違い

ホワイトカラーエグゼンプションと似たような労働制度に、裁量労働制またはみなし労働制と呼ばれるものがあります。裁量労働制とは、例えば労働時間を「8時間」と固定して、1日の労働時間が6時間や10時間働いたときも、「8時間」労働したこととみなすことです。

これにより早く仕事が終われば、その分プライベートな時間が増えるメリットがありますが、8時間を超えて働いた場合には、残業代が出ないといったデメリットもあります。「成果」や「時間」により残業代を補うホワイトカラーエグゼンプションと違い、裁量労働制は「時間」のみで労働に対する評価をしている、といえるかもしれません。

ホワイトカラーエグゼンプションの対象者と対象業務

ホワイトカラーエグゼンプション
それではホワイトカラーエグゼンプションの対象者とその対象義務について見ていきましょう。

ホワイトカラーエグゼンプション対象者

ホワイトカラーエグゼンプションの対象者は、厚生労働省労働政策審議会の報告書では特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)と記載されています。

具体的な対象者としては、

  • 使用者との間の「書面による合意」に基づき「職務の範囲」が明確に定められている
  • 1年間に支払われる見込まれる賃金額が「平均給与額の3倍相当程度」を上回る

労働者となります。
「平均給与額の3倍相当程度」とは具体的な数字として1,075万円以上として示されています

なお対象外の職種として、公務員があげられており、その影響からかホワイトカラーエグゼンプションに対して否定的な意見をもっている人もいます。

ホワイトカラーエグゼンプションの対象業務

ホワイトカラーエグゼンプション の対象業務としては、以下のような業務があげられます。

  • 高度の専門的知識、技術または経験を要する業務
  • 業務に従事した時間と成果との関連性が強くない業務

上記の業務を具体的に例として提示されているのが以下の業務です。

  • 金融商品の開発
  • 金融商品のディーリング
  • 企業や市場などの高度な分析が必要なアナリスト
  • 事業や業務の計画・運営に関する高度な考案や助言をするコンサルタント
  • 研究開発など

今後変更になる可能性はありますが、上記のような業務が対象として見込まれています。

特に開発業務に関しては、成果がいつ出るかわからないものもありますが、成果による賃金が認められれば、淡々とした作業をする従業員が減り、より能動的に作業に取りかかれるといった効果も見込めます。

ホワイトカラーエグゼンプションのメリット

ホワイトカラーエグゼンプション
ホワイトカラーエグゼンプションには様々なメリットがあります。

従業員1人1人の作業の効率化

まず現状の労働時間規制では、同じ作業で同じ成果をあげた人でも、時間がかかる人の方が残業代も多く入り、結果的に賃金が高くなります。しかしホワイトカラーエグゼンプション制度では、同じ成果なら賃金は同じですが、より効率的にやったほうが労働時間も短縮され、帰宅時間も早くなります。それにより、1人1人モチベーションも上がり、生産性が高まることが見込めます。

労働時間の調整がしやすく、過労防止につながる

成果により賃金が決められるので、成果の見込みがあれば早く帰宅することも可能になり、無理なく業務に取り組めます。また全体的な労働時間が短縮できると、過労防止にもつながります。

介護・育児に時間が割け、離職防止につながる

結果的にホワイトカラーエグゼンプションにより生産性が上がると、今まであった残業時間も短縮でき、その分早く帰宅することができます。

その分の時間を介護や育児に回すことができるのです。正規雇用で残業が多く、時間が取れない人は、仕方なく非正規雇用(パート、アルバイト)にならざるを得ない状況になる人もいます。そういった人が残業時間を短縮できれば、離職防止につながります。

ホワイトカラーエグゼンプションのデメリット

ホワイトカラーエグゼンプション
上記のようにホワイトカラーエグゼンプションには様々なメリットがありますが、同時にデメリットもあります。

成果が出ないと労働時間が増えることも

成果が出ると労働時間の短縮が見込める一方、成果が出ていなければ逆に長時間労働になり、しかも残業代が払われない事態が起こります。それにより、労働時間に見合わない賃金になる恐れがあるのです。

労働時間の増加で体調を崩すことも

また労働時間の規制をなくすことで、今まで定められていた時間以上に労働してしまい、過労・心労などで体調を崩してしまいかねません。成果が出ていなければ賃金も安定せず、結果として今まで以上に業務に取り掛かることになります。そういった長時間労働を続けることで、いつかは体調を崩してしまうかもしれません。

このようにホワイトカラーエグゼンプションにはメリット・デメリットもあり、なかなか導入に踏み切ることが難しいのです。また安易な導入は従業員のモチベーション低下や、心身の健康を害する懸念があるので、しっかり対策・対応を考えた上で導入を検討しましょう。

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