なぜ今、働き方改革なのか?働き方改革関連法が変える11のこと

働き方改革とは?政府の施策と企業が取り組むべき課題を基礎から解説

70年以上前の1947年に制定された労働基準法。働き方改革関連法により、この労働基準法をはじめとした労働関係の8つの法律が変わっています。法律違反によって罰則が科せられたり、従業員から訴えられないよう、働き方改革関連法を3つのポイントに分けて11の変更点を解説していきます。

なぜ今、働き方改革なのか?

働き方改革関連法によって、日本の働き方が大きく変わろうとしています。ちなみに誤解されがちですが、働き方改革関連法とは、以前からあった8つの労働関係の法律に加えられた改正の総称です。働き方改革関連法という新しい法律ができたわけではありません。

改正された8つの法律は以下です。

  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働安全衛生法
  • じん肺法
  • パートタイム労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働契約法
  • 雇用対策法
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労働関係の法律は、時代に合わせて適宜改正されてきました。しかし今回の働き方改革関連法のように、従来では考えられない速さで一気に大きな改正がおこなわれるのは珍しいことです。法律(ルール)が変わるということは、これまで踏襲されてきた仕事のやり方や労務管理などを根本的に見直すことを意味しています。

ではなぜ今、急ピッチで国と事業主(企業)はエネルギーを要する働き方改革に着手しなければならないのでしょうか。そこには、日本の危機的背景があります。

働き方改革の必要性に迫られた日本の事情

国が働き方改革関連法によって大改正をおこなう背景には、大きく3つの危機があります。以下の3つです。

  • 少子高齢化に伴う労働力不足の危機
  • 長時間労働の常態化による労働参加率低下の危機
  • 多様な働き方への対応の遅れに対する危機

少子高齢化に伴う労働力不足の危機

日本の人口は2008年をピークに減少の一途をたどっており、少子高齢化が止まりません。それに伴い、労働の現役世代である生産年齢人口(15〜64歳)の割合も、1990年代後半を境に減少しています。つまり、労働力の総数が減少し続けています。

日本の総人口の推移

データ出典:総務省 国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)

労働力が減少すると企業の生産性が低下し、GDPや税収も落ち込んでしまうため、国としては労働参加率を向上させる必要性に迫られています(女性、高齢者、障害者をはじめとする多様な人材の労働参加)

長時間労働の常態化による労働参加率低下の危機

日本では長年にわたり長時間労働が常態化していました。残業すること、休まないことが美徳とされていたため、結婚・出産や介護を機にそのような環境で働き続けることができなくなり、退職する人が続出しています。このことが労働参加率の低下を招いた一因です。

また、長時間労働は重大な健康障害を引き起こす可能性があります。過労死や長時間労働が原因の精神障害・自殺は大きな損失です。長時間労働が心筋梗塞リスクを高めるという研究結果もあります。

労働時間と心筋梗塞リスク

データ出典:Lui Y, et al. Occup Environ Med 2002

慢性的な人手不足と長時間労働が引き起こす労働力の損失は生産性の向上を妨げ、日本経済にボディブローのようなダメージを与え続けています。

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多様な働き方への対応の遅れに対する危機

時代とともに生活や働き方が変わっていきました。今では共働き世帯が1,245万世帯で、専業主婦世帯575万世帯を大きく上回っています。結婚や子育てをしながら非正規雇用労働者として働き続ける女性が増えています。

また、今の時代は決まった時間に決まった場所に出社をして帰社をする働き方が成果に直結するわけではありません。特にホワイトカラーの場合は、必ずしも労働時間=成果とは限りません。

決まりきった働き方を選ぶか働かないかという二択は、時代に合いません。多様な働き方ができない画一的な働き方の強要は、労働参加率を低下させます。多様で柔軟な働き方への対応の遅れにより、数多くの優秀な人材を活用できずに生産性を向上させることができていません。

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長時間労働の常態化による労働参加率低下の危機

働き方改革関連法で実現したいことは3つ

このような危機感から国は、労働力不足を解消し生産性を向上させるために働き方改革を断行し、労働関係の法改正(ルールチェンジ)を推し進めています。働き方改革全体としてはさまざまな取り組みがありますが、働き方改革関連法によって実現したいことは以下の3つです。

  • 長時間労働を是正し、年次有給休暇を取得しやすくする
  • 多様で柔軟な働き方を可能にする
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する

これら3つを実現することにより、主婦や高齢者などを含めた多様な人が働きやすい職場環境をつくり、労働参加率を上げ、労働生産性の向上を目指しています。

働き方改革関連法により見直された11のこと

働き方改革関連法により見直された11のこと

これら3つを実現するために、法律が変わりました。今回の法改正で見直された11点を確認します。

① 時間外労働の上限規制の導入

目的:働き過ぎを防ぐ
施行:2019年4月1日(中小企業への適用は2020年4月1日)

時間外労働の上限規制の導入により、こう変わった

時間外労働の上限規制の導入開始は、大企業が2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日となっており、中小企業にも速やかな対応が求められています。

上限規制の内容は以下のとおりです。

  • 原則として時間外労働の条件は月45時間、年360時間
  • 臨時的な特別な事情がなければ上限を超えてはならない

月45時間の残業は、1日あたり2時間程度の残業に相当します。法改正をする前は法律による残業時間の上限が設けられていませんでしたが(※)、法律による上限が定められました。
※大臣告示による上限(行政指導)はありましたが、罰則等による強制力はありませんでした

また「臨時的な特別な事情」であり労使の合意がある場合でも(※)、残業時間は以下を超過することが認められていません。
※以前は特別な事情があり「特別条項」を結べば、年6ヶ月までは上限なしの残業が可能でした

  • 年720時間以内
  • 複数月の平均残業時間が80時間以内(休日労働含む)
  • 月100時間未満(休日労働含む)

違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。

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ただし、上限規制には適用を猶予・除外する事業や業務があります。以下です。

  • 自動車運転の業務(猶予 2024年4月1日から適用)
  • 建設事業(猶予 2024年4月1日から適用)
  • 医師(猶予 2024年4月1日から適用)
  • 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業(猶予 2024年4月1日から適用)
  • 新技術、新商品等の研究開発業務(除外)

②「勤務間インターバル」制度の導入促進

目的:働き過ぎを防ぐ
施行:2019年4月1日

>「勤務間インターバル」制度の導入促進により、こう変わった

事業主は労働者に対して、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定の休息時間(インターバル)を確保しなければなりません。これは努力義務ですが、労働者に対して十分な生活時間や睡眠時間を確保することで、働き過ぎを防ぐ目的があります。

③ 年5日の年次有給休暇の取得

目的:年次有給休暇をとりやすくする
施行:2019年4月1日

事業主(企業)には「労働者に年5日の年次有給休暇を確実に取得させること」が義務づけられました。この法改正は2019年4月から施行されています。法改正以前は、年次有給休暇の消化義務はありませんでした。

今回の法改正では、法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者を対象に、労働者の希望を聴いたうえで時季を指定し、年5日の年次有給休暇を取得させるよう明記しました。

【一口メモ】使用者による時季指定とは

「使用者(事業主、経営担当、管理監督者など)による年休取得時季の指定」も法改正のポイントです。

これまで、年休の取得は労働者が「●月●日に休ませてください」と使用者(上司など)に申し出るケースが大半でした。しかし、職場環境によっては気兼ねなく休暇を取得することが難しく、年休をとらないまま働き続ける人が依然として多い状況です。

今回の法改正では、使用者(上司など)があらかじめ労働者に年休取得時季の希望についてヒアリングし、その内容を尊重したえで取得時季を指定するよう定められました。もちろん労働者が自ら年休を請求し、取得することも可能です。

また、使用者(上司など)は労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存することも義務づけられました。

④ 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

目的:働き過ぎを防ぐ
施行:2023年4月1日(中小企業が対象)

月60時間超の残業の割増賃金率引き上げで、こう変わる

現在、中小企業の月60時間超の残業割増賃金率は25%です。それが2023年4月からは大企業と同じ50%に引き上げられます。

⑤ 労働時間の客観的な把握

目的:働き過ぎを防ぐ
施行:2019年4月1日

裁量労働制の適用者や管理監督者なども含め、すべての人の労働時間の状況を客観的に把握するよう、法律で義務づけられました。

⑥「フレックスタイム制」の清算期間の延長

目的:柔軟な働き方を可能にする
施行:2019年4月1日

>「フレックスタイム制」の清算期間の延長により、このようなことが可能

「フレックスタイム制」の労働時間の調整可能期間(清算期間)が1ヶ月から3ヶ月になり、より使い勝手がよくなりました。

⑦ 高度プロフェッショナル制度の導入

目的:柔軟な働き方を可能にする
施行:2019年4月1日

高度の専門知識を要する業務で、職務の範囲が明確で、一定の年収要件を満たす労働者に関しては、労働基準法の規定に縛られない自由な働き方を認める制度です。この制度の適用は、労使委員会の決議および労働者本人の同意が前提です。

自由な働き方を認めるとはいえ、事業主側には該当労働者が健康的に働くことができるよう、管理監督義務があります。年間104日以上かつ4週4日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置が義務づけられています。

高度プロフェッショナル制度とは?労働時間に縛られない柔軟な働き方

高度プロフェッショナル制度とは?労働時間に縛られない柔軟な働き方

⑧ 産業医・産業保健機能の強化

目的:労働者の健康を守る
施行:2019年4月1日

産業医の活動環境と労働者に対する健康相談の体制整備に努めなければなりません。また、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールを推進して、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにしなければなりません。

⑨ 不合理な待遇差の禁止

目的: 雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する
施行:2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)

⑩ 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

目的: 雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する
施行:2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)

⑪ 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

目的: 雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する
施行:2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)

同一労働同一賃金が求められる背景と実現時に必要な企業の対策

同一労働同一賃金の実現。2020年から本格的に見直される不合理な待遇差

上記のような法改正に対し、事業主(企業)は何をすべきなのでしょうか。事業主(企業)として対応すべきポイントを解説します。

働き方改革関連法への対応

働き方改革関連法への事業主としての対応

働き方改革関連法の施行によって、働き方のルールが変わっています。働き方のルールが変わると、事業主(企業)として対応しなければならないことが当然でてきます。具体的には以下の対応です。

  • 労使協定(36協定)の改訂、締結し直し
  • 就業規則の変更
  • 労働契約書の見直し
労使協定の種類と届出義務|知らなかったでは済まされない基礎知識と罰則

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36協定届の作成に関しては、こちらの作成支援ツールが便利です。

就業規則の作成に関しては、こちらの作成支援ツールが便利です。
これらは法改正に対する最低限の対応です。その対応のうえで、事業主側には抜本的な制度改革が求められています

今回の労働関係の法改正は、時代に合わなくなった制度の見直しです。今回の法改正を機に、事業主(企業)はこれからの働き方をイメージし、現状の制度課題の洗い出しをおこない、働き方改革に取り組みましょう。

働き方改革に対する企業の意識調査

働き方改革

データ出典:帝国データバンク 働き方改革に対する企業の意識調査(2019年12月)

帝国データバンクが2019年12月に実施した意識調査(有効回答企業数1万292社)によると、実際に働き方改革に着手している企業は60.4%でした。

前回調査(2018年8月)からは22.9ポイント増えています。現在未着手でも「今後取り組む予定(16.3%)」の企業を合わせると、76.7%が働き方改革に積極的な姿勢をみせています

企業の具体的な着手内容としては「休日取得の推進(77.2%)」「長時間労働の是正(71.0%)」が突出して高いです。長時間労働を是正し、年次有給休暇を取得しやすくする改革が優先的に取り組まれていることがうかがえます。

働き方改革 実践企業事例

最後に、 すでに働き方改革を進めている企業の事例を紹介します。

大和ハウス工業

取り組み:働き過ぎを防ぐ、年次有給休暇をとりやすくする

建設大手の大和ハウスでは、2003年からいち早く長時間労働の是正に取り組んでいます。主な内容は以下のとおりです。

  • 21時を過ぎると事務所が閉鎖される「ロックアウト制度」
  • 時間外労働の社内基準に抵触する事業所に、是正指導やペナルティを設ける「ブラック事業所認定制度」
  • 年次有給休暇取得を促進する「ホームホリデー制度」

このような取り組みにより、2016年の平均残業時間は10%削減(2014年比)、有給取得率は2.8倍(2006年比)と改善しました。

ベネッセコーポレーション

取り組み:働き過ぎを防ぐ、年次有給休暇をとりやすくする、柔軟な働き方を可能にする

教育支援事業を手掛けるベネッセコーポレーションでは、キーメッセージに「Value for Time」を掲げ、時間の価値を高める働き方改革を進めています。

  • 事業部門ごとに月平均残業時間の目標を設定
  • 事業部門ごとに「ノー残業デー」を設定
  • 事業部門ごとに有給取得奨励日を設定
  • 在宅勤務制度の導入

同社の取り組みは「事業部門の個別性」と「従業員の主体性」を尊重しているところが特徴です。なお、在宅勤務制度は約120名が利用していますが、利用できるのは一定のグレード以上の従業員となっています。自分で仕事を調整するのが難しい新入社員などは対象外です。

その他、経団連の事例集には多彩な企業の働き方改革のノウハウが掲載されています。ぜひ参考にしてください。

まとめ

働き方改革関連法で変わったことのまとめ

働き方改革の背景には、日本が直面している問題がある。

  • 少子高齢化に伴う労働力不足の危機
  • 長時間労働の常態化による労働参加率の低下に対する危機
  • 多様な働き方への対応の遅れに対する危機

働き方改革関連法により、8つの労働関係の法律が改正された。

  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働安全衛生法
  • じん肺法
  • パートタイム労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働契約法
  • 雇用対策法

働き方改革関連法で実現したいことは3つ。

  • 長時間労働の是正長時間労働を是正し、年次有給休暇を取得しやすくする
  • 多様で柔軟な働き方を可能にする
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する

働き方改革関連法により見直される11点。

  • 時間外労働の上限規制の導入
  • 「勤務間インターバル」制度の導入促進
  • 年5日の年次有給休暇の取得
  • 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
  • 労働時間の客観的な把握
  • 「フレックスタイム制」の清算期間の延長
  • 高度プロフェッショナル制度の導入
  • 産業医・産業保健機能の強化
  • 不合理な待遇差の禁止
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

事業主側としての対応(最低限)

  • 労使協定(36協定)の改訂、締結し直し
  • 就業規則の変更
  • 労働契約書の見直し

働き方改革は生産性向上の好機ととらえ、抜本的な制度改革に取り組みましょう。

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