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継続雇用制度とは?制度の概要や法改正の要点、助成金を徹底解説

継続雇用制度導入を盛り込んだ高年齢者雇用安定法が改正されました。さらなる高年齢者の就業促進を目指した改正高年齢者雇用安定法が、2021年4月に施行されました。今回は、継続雇用制度について、法改正の要点や導入ポイント、注意点、助成金を解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.継続雇用制度とは?
    1. 1.1.再雇用制度
    2. 1.2.勤務延長制度
  2. 2.高年齢者雇用安定法の要点
    1. 2.1.2013年の高年齢者雇用安定法改正
    2. 2.2.2021年に改正高年齢者雇用安定法が施行決定
  3. 3.高年齢者の雇用状況
    1. 3.1.希望者全員が66歳以上働ける企業割合は11.7%
  4. 4.継続雇用制度導入にあたってのポイント
    1. 4.1.ポイント1.高年齢者に支給する賃金の見直し
    2. 4.2.ポイント2.高年齢者に合わせた勤務形態の導入
    3. 4.3.ポイント3.モチベーション高く取り組める労働環境・制度の整備
    4. 4.4.ポイント4.就業規則の変更・届出
  5. 5.再雇用制度を適用した場合の賃金
    1. 5.1.賃金の基準・決定方法
  6. 6.継続雇用制度を導入する上での注意点
    1. 6.1.注意点1.パートや派遣社員には適用されない可能性が高い
    2. 6.2.注意点2.継続雇用を拒否された時の取り扱い
    3. 6.3.注意点3.従業員が比較的若く、しばらく定年に達しない場合の対応
  7. 7.継続雇用制度導入で受け取ることができる助成金
    1. 7.1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
    2. 7.2.特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
    3. 7.3.65歳超雇用推進助成金
  8. 8.まとめ

継続雇用制度とは?

継続雇用制度とは? 継続雇用制度とは、定年後も高年齢者の希望に応じて雇用を延長する(雇用機会を確保する)制度です。継続雇用制度は、再雇用制度と勤務延長制度に分かれます。 それぞれがどのようなものか、高年齢者の労働参加にどのような影響を与えるのかを確認していきます。

再雇用制度

まず再雇用制度とは、定年年齢で一度退職扱いにした後、再度雇用をすることで雇用を延長する制度です。

それまでの役職は失い、契約社員や嘱託社員など新たな雇用形態で契約を交わすことができます。勤務時間や勤務日数などの労働条件を変えることもできます。 これまでの定年制度に再雇用をプラスした形になり、比較的導入を進めやすい制度です。

勤務延長制度

再雇用制度では一度退職の手続きをとりますが、勤務延長制度は退職せずに雇用形態を維持したまま雇用を延長する制度です。役職や賃金、仕事内容は大きく変わらず勤務期間を延長します。 退職金の支払いは、延長期間終了の退職時に支払われます。

高年齢者雇用安定法の要点

高年齢者雇用安定法の要点 高年齢者雇用安定法は2013年の改正で大きく変わり、継続雇用が明文化されました。 2021年4月に施行される改正高年齢者雇用安定法では、さらなる高年齢者の就業機会の確保を目指しています。法改正の要点をおさえて、継続雇用制度の概要を捉えていきましょう。

2013年の高年齢者雇用安定法改正

2013年に施行された高年齢者雇用安定法の改定ポイントは以下の3つです。

  • 継続雇用制度の対象者を原則として希望者全員にすること
  • 継続雇用制度の適用範囲をグループ内企業にまで拡大
  • 高年齢者雇用確保措置義務違反の企業名を公表する規定の導入

継続雇用制度の対象者の限定がなくなり、適用範囲がグループ企業にまで広がりました。さらに、高年齢者雇用確保措置義務に違反している企業名を公表することにしました。

高年齢者雇用確保措置とは?

では、義務に違反すると企業名が公表されてしまう高年齢者雇用確保措置とは、どのような措置でしょうか。現行では、以下の3つの措置が該当します。

  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

企業は3つのうちいずれかを実施する義務があります。いずれも実施せずに義務違反をすると、指導→勧告→企業名公表になります。

2021年に改正高年齢者雇用安定法が施行決定

現行法を改正した高年齢者雇用安定法が成立しました。2021年4月に施行されました。今回の改正で最も重要なポイントは、定年年齢を65歳から70歳まで引き上げる努力義務が追加されたことです。 今回の改正により、高年齢者雇用確保措置が以下のように変わります。

【現行】65歳まで、義務

  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

【新設】70歳まで、努力義務

  • 70歳までの定年の引き上げ
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

雇用以外の措置(労働者の過半数を代表する者等の同意を得て導入)

  • 高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的に事業主が実施する社会貢献事業や事業主が委託、出資する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

今回の改正で66歳以上の労働参加率を上げ、さらに多様な人材の労働参加を進めようという狙いがあります。

参考:改正高年齢者雇用安定法概要|厚生労働省(PDF資料)

 また高年齢者の就業機会の確保は、年金の受給開始年齢とも関わってきます。現行の継続雇用制度は、年金の受給開始年齢が65歳からになったことで従来の定年年齢60歳から無収入の5年間が生まれることから導入されました。

言わば、収入のない空白期間を埋めるための制度です。 年金受給開始年齢は、段階的に引き上げられています。そのように考えると、推測ではありますが、定年年齢の引き上げ努力は今後の年金受給開始年齢の引き上げを意味しているのかもしれません。

高年齢者の雇用状況

高年齢者の雇用状況 厚生労働省の調査によりますと、高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.8%でした。調査対象企業161,378社のほとんどの企業が65歳までの安定した雇用を確保するために何らかの措置を講じています。 それでは、66歳以上でも働ける制度がある企業となるとどうでしょうか。

希望者全員が66歳以上働ける企業割合は11.7%

希望者全員が66歳以上働ける企業の状況

出典:厚生労働省 「高年齢者の雇用状況」集計結果

希望者全員が66歳以上でも働ける企業は18,921社でした。調査対象企業161,378社に占める割合は11.7%です。全体の1割程度ですので、まだまだ多くはありません。中でも一番採用されている措置は、66歳以上の継続雇用制度の導入(6.8%)です。

従業員規模別でみると、31~300人規模の企業のほうが301人以上規模の企業よりも積極的に66歳以上でも働ける制度を実施しています。

31~300人規模の企業は18,223社が希望者全員66歳以上でも働くことができます。

今後は65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務となるため、徐々にこの数字も増えてくるでしょう。

参照:令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果|厚生労働省


継続雇用制度導入にあたってのポイント

継続雇用制度導入にあたってのポイント 継続雇用制度導入にあたっては、明日から定年制度をなくします、再雇用をしますといった簡単なものではありません。導入においてポイントを4つ紹介します。

ポイント1.高年齢者に支給する賃金の見直し

再雇用制度においては、雇用形態を変えて雇用を延長することができます。一般的には再雇用時に、契約社員や嘱託社員など非正規雇用に変わります。この雇用形態の変更により、必然的に賃金は下がります。

ただし、再雇用時の極端な賃下げは労働契約法に抵触する可能性があります。再雇用前に、対象者に対して仕事内容や責任範囲、それに伴う減額のパーセンテージなどを説明した上で、同意を得ることが重要です。 賃金の見直しにおいては、対象者のスキルや生活の安定を考慮しましょう。

ポイント2.高年齢者に合わせた勤務形態の導入

高年齢者には、雇用を延長するにあたって勤務日数や勤務時間など様々な希望があります。体力も無視できない要素ですので、高年齢者に合わせた柔軟な勤務形態の導入が必要です。

例えば、勤務日数・勤務時間を改善するならば、フルタイム勤務ではなく短時間勤務や隔日勤務、フレックスタイムの採用などが考えられます。

■参考記事;【総務人事担当者必読】短時間勤務(時短勤務)とは?制度をわかりやすく解説


ポイント3.モチベーション高く取り組める労働環境・制度の整備

継続雇用制度の導入は、ただ勤務年数を伸ばすだけでなく、高年齢者が意欲的に働けるようにするという目的があります。そのため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できる労働環境・制度の整備が必要です。

職場環境の整備については、高年齢者の身体的機能の低下に対応した作業施設の改善や意欲とスキルに応じた配置などが求められます。加えて、培ってきたスキルやノウハウを活かせるような専門職制度を導入するといった取り組みも有効です。

ポイント4.就業規則の変更・届出

継続雇用制度の導入などの措置を実施した後、就業規則を変更し、労働基準監督署に届出する必要があります。届出には、就業規則変更届、意見書、就業規則変更部分といった3つの書類が必要です。

就業規則の変更については、定年年齢の引き上げを行う場合と継続雇用制度を導入する場合とで記述が異なります。企業の状況に応じて協議を行い、適切な内容に変更して届出をしましょう。

再雇用制度を適用した場合の賃金

再雇用制度を適用した場合の賃金 再雇用制度を適用した場合には賃金を引き下げることが一般的です。再雇用制度の場合、対象者は一度退職することになり、新しい雇用形態で労働契約を結ぶことが可能になるためです。

ただし、同一労働同一賃金の関係上、全く同じ業務で同じ労働時間の仕事をしてもらう場合には、再雇用で新しく労働契約をしても賃金の引き下げが客観的にみて合理的ではないという判断で賃下げができない可能性が高いです。

■参考記事; 同一労働同一賃金の実現。2020年から本格的に見直される不合理な待遇差

賃金を引き下げる場合には、所定労働時間を減らすか、仕事内容を賃金に見合った仕事内容に変える必要があります。

賃金の基準・決定方法

再雇用制度を適用する場合には、定年退職時の賃金の50%から70%程度に設定している企業が一般的です。賃金の決定方法については企業側が評価基準をもっていれば、それに照らし合わせて減額することが一般的です。

評価によって賃金を変えることも可能です。優秀な人材であれば減額するパーセンテージを変えるなどの配慮も可能です。具体例でいえば、a評価の再雇用者の場合には定年退職時の賃金の70%、b評価の者には60%、c評価の者には50%にするなどの配慮をすることでバランスをとることが可能です。

継続雇用制度を導入する上での注意点

継続雇用制度を導入する上で、いくつかの注意点があります。 しばらくの期間、定年に達する従業員がいない企業にとっても、そう遠くない未来に対する制度導入は必要です。継続雇用制度の導入にあたって気を付けたい注意点を3つピックアップします。

注意点1.パートや派遣社員には適用されない可能性が高い

継続雇用制度の対象者は、無期雇用の正規従業員が基本となります。そのため、自社の正規雇用ではない派遣社員やパートタイム労働者は、対象外となる可能性が高いです。 ただし、非正規従業員であっても無期契約の場合は、適用される可能性があります。制度の適用範囲の定義に注意が必要です。

注意点2.継続雇用を拒否された時の取り扱い

再雇用や勤務延長にあたって、対象者と条件が合わない、対象者が継続雇用を希望しないなどの理由から拒否される可能性があります。

もし継続雇用を拒否されても、企業は高年齢者雇用安定法に違反することはありません*。あくまで制度の導入を求める法律ですので、雇用を義務づけるものではないからです。 * ただし、雇用形態や労働条件を不当に悪化させる対応は別です

注意点3.従業員が比較的若く、しばらく定年に達しない場合の対応

従業員が比較的若い企業の場合は、数年または数十年先まで定年を迎える従業員がいないということもあるでしょう。

継続雇用制度の導入は従業員の年齢が上がってから、または高年齢者を採用してからとなりがちです。しかし、高年齢者雇用安定法ではどの企業にも措置の実施を求めています。すぐに運用をする必要性がなくても、あらかじめ制度の導入を進めなければなりません。

継続雇用制度導入で受け取ることができる助成金

継続雇用制度導入で受け取ることができる助成金 継続雇用制度の導入を支援するために、国では3つの助成金を用意しています。以下の3つです。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
  • 65歳超雇用推進助成金

それぞれの条件などを確認し、活用を検討してみましょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

高年齢者などの就職困難者をハローワークなどから採用・継続雇用した際に、事業者に支給される助成金です。 一時的な雇用ではなく、雇用保険を適用し継続雇用することが条件になっています。支給額は高年齢者の区分によって異なるので、下記の表で確認しましょう。

* 短期労働者:1週間あたりの労働時間が20時間以上30時間未満

参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

生涯現役コースでは、ハローワークなどから65歳以上の求職者を採用し、1年以上継続雇用することで受け取れます。 対象者を雇用保険の高年齢被保険者として雇うことが条件です。70歳までの高年齢者採用を検討している企業はぜひ活用してみましょう。

* 短期労働者:1週間あたりの労働時間が20時間以上30時間未満

参考:特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)[/box]

65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金は、定年年齢引き上げや高年齢者に合った雇用管理制度導入などに取り組む企業を支援する助成金です。以下の3つのコースに分けて実施されています。

参考:65歳超雇用推進助成金

65歳以上の高年齢者が働ける環境整備はもちろん、高年齢者無期雇用転換コースにおいて、50歳以上の有期契約労働者を無期雇用に転換する取り組みにも助成が行われるのが特徴です。


まとめ

継続雇用制度とは?制度の概要や法改正の要点、助成金を徹底解説のまとめ 生産年齢人口(15~64歳)減少の日本にとって、多様な人材の労働参加は不可欠。継続雇用制度は、高年齢者の就業を促進する制度。 継続雇用制度は2種類に分けられる。

  • 再雇用制度
  • 勤務延長制度

現行法の高年齢者雇用安定法では、事業主にいずれかの高年齢者雇用確保措置が義務づけられている。

  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が設けられた。

  • 70歳までの定年の引き上げ
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

雇用以外の措置も新設。

  • 高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的に事業主が実施する社会貢献事業や事業主が委託、出資する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

継続雇用制度導入にあたってのポイントは4つ。

  • 高年齢者に支給する賃金の見直
  • 高年齢者に合わせた勤務形態の導入
  • モチベーション高く取り組める労働環境・制度の整備
  • 就業規則の変更・届出

継続雇用制度を導入する上での注意点は主に3つ。

  • パートや派遣社員には適用されない可能性が高い
  • 継続雇用を拒否されたときの取り扱い
  • 従業員が比較的若く、しばらく定年に達しない場合の対応

継続雇用制度導入で受け取ることができる助成金は3つ。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
  • 65歳超雇用推進助成金

2021年に施行が決定した改正高年齢者雇用安定法では70歳までの就業機会の確保を努力義務とし、年齢問わず労働参加できるエイジレス社会を目指しています。 企業は少子高齢化によって生産年齢人口が減少する中でも労働力を確保し、生産性を高めていくためにも、高齢者が活躍できる環境づくりを進めていきましょう。


RELO総務人事タイムズ編集部
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