人事・研修担当者のためのコロナ禍における新入社員研修のヒント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響で、学生の生活も大きく変わりました。このような環境の中で企業のインターンシップに参加し、就職活動をして新入社員として社会に出た学生たちはどのような価値観をもっていて、どのように育成したらよいのでしょうか。今回は、アンケート結果をもとに新入社員研修について解説します。
目次[非表示]
- 1.変わる就職活動
- 1.1.不自由な就職活動
- 1.2.ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)が書けない
- 2.コロナ禍の新入社員の傾向
- 2.1.性格特徴・レジリエンス分析
- 2.2.価値観分析
- 3.オンライン研修(セミナー)の有効性
- 3.1.オンライン研修の良し悪し
- 3.2.手法ではなく内容を重視する
- 4.オンライン研修(セミナー)の事例
- 4.1.製造業/ビジネスマナー研修
- 4.2.流通小売業/志望動機向上セミナー
- 4.3.人材派遣業/マネジメント研修
- 4.4.フィットネス業/コーチング研修
- 4.5.イベント業/ビジネスマナー研修
変わる就職活動
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世の中の人々の生活が大きく様変わりしてしまったことは言うまでもありません。学生たちも当然大きな影響を受けています。 「学校に行くことができず、授業がすべてオンラインになった」 「部活動やサークル活動に制限がかかり、大会が中止になってしまった」 「アルバイトのシフトを減らされてしまい、思い通りに働くことができず、収入が少なくなってしまった」 などの学業やプライベートなど多方面で影響があったという声を聞くことが多いように感じます。
不自由な就職活動
学生たちが受けた大きな影響のひとつとして、主に高校3年生または大学3年生から4年生の間に多くの学生が経験する就職活動の不自由が挙げられます。 ここ数年は学生の数に対して求人数が多い状態(売り手市場)が続いています。コロナ禍においても数字だけをみればこの状態は大きくは変わりありませんが、企業の採用活動には大きな変化がありました。 エールライフが企画をした内定者フォロー研修や新入社員研修の中のアンケート結果からは
- インターンシップに思うように参加できなかったため、実際の現場で働くイメージがもてなかった
- 入社後に一緒に働く人がどのような人かわからないままで不安だった
- 説明会や面接もオンラインで行われたため、緊張感をもつことができず、学生から社会人になるという自覚が芽生えるのに時間がかかった
などの意見が挙がりました。 求人についても、これまで継続して新卒を採用していた企業が採用ストップや採用数の削減に踏み切るなど、学生側からアプローチをしにくい状況でもあったように見受けられます。
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)が書けない
さらに学生からは「学生生活が思い通りでなかったため、学生時代に力を入れられなかった活動が沢山あった」という意見もよく聞かれました。そのため、面接やエントリーシートの質問項目としてよく使われる「学生時代に力を入れたことは何ですか」という問いに対して、抵抗感を感じてしまうこともあったようです。 さらに、コロナ禍で人々の生活や行動が制限されることにより就職活動(企業側からすれば採用活動)に対して使う手段や思考も変化をしていることがわかります。 そのため、新卒採用の彼ら彼女らが入社後に活躍をしていくためには、世代の傾向を捉え、適切にフォローを行う必要があるといえます。
コロナ禍の新入社員の傾向
コロナ禍で就職活動を終え、2021年4月に新社会人となった人たちがどのような思考や価値観をもっているかを紹介します。今回紹介するデータ* は、エールライフで開発を行った「適性アセスメント」に回答してもらった内容を集計したものです。 * 調査期間:2021年4月1日から4月21日、回答社数及び人数:13社63名
性格特徴・レジリエンス分析
性格特長・レジリエンス分析の結果をみると、2021年の新入社員は人の気持ちに敏感で周囲との調和を大事にするという傾向がみられます(協調性が5.4/7が非常にあてはまる)。さらには粘り強さや我慢強さには自信がある人が多いです(持続的対処・根気が5.4/7が非常にあてはまる)。 一方で、周囲を気にしすぎてしまうが故に、心配事が増えてしまい困りごとや悩みがあっても周囲に迷惑をかけまいと自分自身だけで抱え込んでしまう可能性があるということも考えられます(情緒安定性が3.7で全尺度中最低)。
価値観分析
価値観分析の結果では、仕事を行う上で大切にしている価値観を読み解くことができます。上位には「忠誠心(5.7)」「向上心(5.6)」「感謝心(5.5)」、下位には「リーダーシップ(3.6)」「独創性(4.5)」「勇気(4.5)」「ユーモア(4.5)」といった項目があがってきています。 これらの傾向から判断すると、周囲との関係性を大切にし、まじめにコツコツと努力できる人は多い一方で、自ら考え主体的に周囲の先頭に立って新たなことにチャレンジしていくようなことを苦手としている人が多いのかもしれません。 コロナ禍という時代背景のもと、上記のような性格・特徴・価値観をもった新入社員を育成するためには、これまで通りにはいきません。柔軟な発想で育成計画を検討する必要があります。
オンライン研修(セミナー)の有効性
これまでに紹介をした新入社員の傾向や特徴を汲み取り、新入社員育成に活用できるのが研修(セミナー)です。ただし、研修(セミナー)もコロナ禍で実施の方法は多様化し、効果測定が非常に難しい状況になっているように見受けられます。
オンライン研修の良し悪し
オンライン研修の活用が進んでいる一方で、オンライン研修の各受講生からは「実際に会って意見交換ができるとよかった」といった意見が挙がっています。一方で、「わざわざ会場まで行かなくても済んだのは助かる」といったような肯定的な意見があるのも事実です。 では、企業はいったいどのようにしてコロナ禍における新入社員育成を行うべきなのでしょうか。重要なポイントは手法ではなく、個人に寄り添い、個人に対して有益であるという認識をもってもらうことができるかという点です。 「オンライン研修=相手の様子が分かりにくい」ということから、個人に寄り添うことは難しいのではないかと考えがちです。しかし、オンライン化は商談の場などでも一般的になりつつある手法でもあるため、オンラインであることが問題というわけではありません。 むしろオンラインの方が手軽で隙間時間を活用して研修の受講などができるため、育成のきっかけやチャンスは多くあるとも捉えることはできます。
手法ではなく内容を重視する
ここで重要になるのは、内容です。新入社員個人の考えや意見をより多く引き出し、それに寄り添うフィードバックをこまめに行うことができるカリキュラムを構成することは内容をよりよくしていく上で欠かせません。 オンライン研修は手軽であるが故に様々なエッセンスを詰め込んでしまいがちです。その分、研修の中で個々の意見を引き出す機会そのものが失われてしまうため、研修受講者の満足度は下がってしまいます。 このような事象が起こらないために、個人からの全体発表など受講者からのアウトプットが聞ける内容にするだけでも、効果的で満足度の高い研修にすることができます。 また、オンライン形式でグループワークを行う際にも単に主なテーマだけについて話しをさせるのではなく、雑談を踏まえて話せる場を提供します。そうすることでオンライン形式であっても、受講後には受講生から「さまざまな情報交換ができてよかった」など、対面形式の研修から得られる感想を聞くことも可能です。 こうしたオンライン研修を実施するためにはやはり、講師のスキルも高めなくてはなりません。講師は先生というよりも、受講生各自に会話を促し、研修の受講環境を最適化するためのファシリテーターとしての意識を忘れてはなりません。
オンライン研修(セミナー)の事例
最後に、エールライフで実施をしているオンライン研修の実施事例を紹介します。
製造業/ビジネスマナー研修
- 対象:新入社員
- 人数:50名程度
- 時間:5時間
全国各地にいる新入社員に対してのオンライン研修を実施。ビジネスマナーをテーマに動画を活用した解説や、ロールプレイを実施し、スキルの定着を図る。
流通小売業/志望動機向上セミナー
- 対象:内定者
- 人数:30名程度
- 時間:4時間
入社前の学生に対してフォローアップセミナーを実施。入社後に抱くギャップをなくすために、先輩社員を交えながら職場の「リアル」を伝達しながら、志望度を高める。
人材派遣業/マネジメント研修
- 対象:新任管理職
- 人数:15名程度
- 時間:5時間
新任管理職者に対して求められる役割を理解する目的で実施。当該企業様オリジナル教材やテストを作成し、定着化を図る。
フィットネス業/コーチング研修
- 対象:若手社員
- 人数:30名程度
- 時間:4時間
年次研修としてお客様や後輩の指導に活用できるスキルを習得する目的で実施。研修時間の8割程度をロールプレイの時間に当て、実践力を養う。
イベント業/ビジネスマナー研修
- 対象:全従業員
- 人数:25名程度
- 時間:8時間
全従業員のマナーに対しての意識統一を図る目的で実施。グループワークを多く設定し、意見交換や認識統一を行う意識付けを行う。 以上は、エールライフが実施したオンライン研修(セミナー)の実績の一部です。研修(セミナー)の手法や内容は、企業のご要望に合わせて柔軟に対応していますので、コロナ禍における新入社員・従業員研修(セミナー)についてお悩みの人事担当者は、是非ご相談ください。