退職金制度を考える。退職金制度の種類と金額の相場

退職金制度を考える。退職金制度の種類と金額の相場

退職金制度とは一般的に定年退職を迎えた従業員に退職金を支給する制度ですが、必ずしも法律で支給しなければならないとされているものではありません。退職金制度は企業独自の制度であるため、金額なども各企業が自由に設定しています。また、日本企業でも導入している企業としていない企業とに分かれます。

今回は退職金制度の種類とその説明、金額の相場について説明します。

退職金制度とは?

退職金制度とは、大きく2種類の制度に分けられます。

退職一時金制度

ひとつ目が退職一時金制度で、退職時に一括で退職金を支給する制度です。支給が一回のみで以降は基本的に支給されません。

退職年金制度

もうひとつが年金制度などを活用して一定期間、あるいは生涯にわたって給付を行う退職年金制度です。

退職一時金制度か退職年金制度のどちらか一方という企業もありますが、大企業などでは両方を支給しているという企業も存在します。

ただし、退職金制度自体は昨今では見直す企業や制度を廃止する企業が出てきていることもあり、時代にそぐわない制度とも批判されています。

退職金制度がある、なしで違う企業側のメリット

退職金制度がある、なしで企業側のメリットが変わります。

退職金制度があると従業員がその企業で定年まで勤め上げるモチベーションにつながっていくため、勤続年数をアップさせるというメリットがあります。採用活動の場面でも「退職金制度はありますか?」という質問をしてくる転職希望者も存在しているため、求人活動を行う際に求人票に「退職金制度あり」と記載しておけば求人活動が有利に働く場合があります。

退職金制度がない場合のメリットとしては、経営的には従業員が一斉退職する時期に現金を工面する必要がないというメリットがあります。実際問題として経営が厳しい中小企業の場合には、従業員が一斉退職する時期に一気に現金がなくなるということは、資金繰りの面で大きなリスクを抱えることになります。

退職金制度がない場合は賞与を多めに設定するなどの工夫をすることで、世間に企業のことをアピールする必要性も出てくる可能性があります。

4種の退職金制度

退職金制度は、細かく分けると4種類の制度が存在しています。

1.退職一時金制度

1つ目の退職一時金制度は、退職時に一括で退職金を支給する制度です。退職金を企業が独自に内部留保で貯めていかなければならないというデメリットがあります。また、現金での積み立てを行うため、積立金が課税されてしまうという企業側のデメリットもあります。

2.確定給付企業年金制度

2つ目の確定給付年金制度は、確定した退職金が給付される退職年金制度です。確定給付年金制度を活用する場合は生命保険会社などの外部に掛金を拠出し、年金資金を管理・運用していきます。

税制上は掛金を損金扱いにすることができるという大きなメリットがあります。ただし、もし運用の失敗等により必要な資金が準備でいない場合は、企業がその不足を補填するというデメリットがあります。

3.中小企業退職金共済

3つ目が、共済型の中小企業退職金共済(通称は中退共)です。この制度を活用している中小企業は多いです。理由としては、中小企業退職金共済は加入条件として、自社単独では退職金制度を設けることが難しい中小企業であることが定められているためです。

中小企業にとってはメリットが大きく、従業員ごとに掛金を設定することが可能です。掛金は損金として全額非課税になります。退職金の金額の支給は、掛金と年数によって定められているため、中小企業であっても従業員に対して一定の金額の退職金を保証することが可能です。

デメリットは、掛金を従業員の同意なしに変更することが難しい点です。経営状態が苦しくなっても、最初に設定した掛金の額より下げることはかなりハードルが高いです。

4.企業型確定拠出年金制度(企業型DC)

4つ目の企業型確定拠出年金制度(以下、企業型DC)は、企業が毎月掛金を積み立てて、従業員が自ら年金資金を運用する制度です。企業型DCは、企業が運用するのではなく、掛金や運用方法は従業員個人に任せるという考え方の制度です。企業が全ての支払い責任を負わなくてもよいというメリットがあります。

これまで紹介してきた退職金制度の場合は、いずれも最終的な退職金の支払いの際には、企業側に責任が存在していました。しかし、企業型DCであれば、最終的には積み立てた資産(退職金の支給額)が減少してしまっても企業には補填する義務がありません。このため、企業にとっては非常に導入しやすい制度となっています。

ただし従業員の自己責任になることから、反発を受ける可能性のある退職金制度でもあります。導入には慎重に、労働組合などの意見を聴取することが望ましいといえます。ある意味では経営側が本来負うべきリスクを従業員側に投げている、というようにもとらえられてしまう可能性が高いためです。

退職金の支給額

退職金の支給額については、学歴と勤続年数によってある程度の金額を設定している企業が多いです。学歴が退職金に影響する理由については、退職時の基本給をベースに退職金を決定している企業も多いため、初任給や昇給率の高い大卒の正規従業員のほうが高卒の正規従業員よりも高くなることが一般的です。

そもそも退職金は誰を対象にしているのか

退職金の対象となるのは、一般的には正規従業員として企業に採用されている労働者となります。また、正規従業員でなくても有期雇用契約の従業員などにも退職金を設定している場合もありますが、退職金と銘打っておらず、満期慰労金といった別の名称になっていることが多いです。

有期雇用契約のような雇用の期間に定めのあるもの(無期の正規従業員ではないもの)に対して、退職時に支給するお金が賞与扱いになるか退職金扱いになるかは各企業での就業規則の設定により異なります。

退職金の計算方法

退職金の計算方法としては、勤続年数と退職時の賃金を単純に掛け算するという企業もあります。また、独自に退職金規定を組み、計算式を用意している企業もあります。中退共のような共済型の場合は計算式が掛金などによって決まっていますので、管理している団体に確認するようにしてください。

企業年金を活用している場合は運用状況などによって金額は変動しますので、計算が難しいです。また、退職までの勤続年数だけではなく「辞め方」によって退職金が変動するのが一般的です。定年退職、早期退職などの場合を除いては、退職金が減額されることが一般的です。

例えば、退職金の係数を設定しておき、定年退職をする場合は1.0倍とします。仮に退職金が勤続年数20年以上の場合は2,000万円とされている場合は、定年退職をした従業員には2,000万円を支給します。自己都合退職の場合は、1.0倍よりも低い0.8倍にするなどして計算を行います。例えば自己都合退職の係数が0.8倍の場合は、1,600万円となります。勤続年数に応じて計算をするのが、一般的な退職金計算方法になります。

退職金の相場

厚生労働省の退職給付(一時金・年金)の支給実態によると、退職の理由別や勤続年数別によって平均額は異なっています。

大学・大学院卒 退職理由別(勤続20年以上45歳以上)

大学・大学院卒の退職者について、退職理由ごとの平均です。
定年退職…1,983万円
会社都合…2,156万円
自己都合…1,519万円
早期優遇…2,326万円

高校卒 退職理由別(勤続20年以上45歳以上)

高校卒の退職者については、職種によっても平均値に違いが見られます。
【管理・事務・技術職】
定年退職…1,618万円
会社都合…1,969万円
自己都合…1,079万円
早期優遇…2,094万円

上記以外【生産、販売、運輸・通信、保守、サービス職など】
定年退職…1,159万円
会社都合…1,118万円
自己都合… 686万円
早期優遇…1,459万円

定年退職時・勤続年数別(勤続20年以上45歳以上)

大学・大学院卒の定年退職者について、勤続年数ごとの平均です。
勤続20-24年…1,267万円
勤続25-29年…1,395万円
勤続30-34年…1,794万円
勤続35年以上…2,173万円

企業規模別

大企業と中小企業では退職金の平均額に大きな開きが見られます。大卒、定年退職者の比較を見てみましょう。

大企業  …2,694.7万円(大企業を対象としている中央労働委員会調べ)
中小企業 …1,203.4万円(中堅、中小企業が主体の東京都産業労働局調べ)

中途退職した従業員への支給は?

中途退職した従業員への退職金の支給については、就業規則で支給条件を定めておく必要があります。

中途退職した従業員への支給は、退職金を企業独自で積み立てる退職一時金を設定している場合は、ある程度は企業が自由に支給金額を設定することができます。勤続年数3年以下の場合は支給しない、といった就業規則を採用している企業も多いです。

また中退共のような共済型の場合は、そもそも勤続年数が2年を下回る場合は、掛金よりも支払額が低くなるようになっているため、支給されるとしても中途退職した従業員への退職金の支給金額は低くなる傾向にあります。

定年まで頑張って勤務してくれた従業員への慰労金という意味合いも含んでいるのが退職金制度ですので、中途退職した従業員に満額支払う必要はないと考える経営者も多いです。

退職金制度を作ることで補助金がでる可能性がある

職場定着支援助成金という助成金があり、退職金制度を作ることで助成金が出る場合があります。簡単に説明すると、従業員の処遇を改善して離職率を下げるための制度を作った企業が助成金を受け取ることができるというものです。

具体的には、事業主が新たに雇用管理制度(評価・処遇制度など)の導入・実施を行った場合に制度導入助成として1制度につき10万円を、雇用管理制度の適切な運用を経て従業員の離職率の低下が図られた場合に目標達成助成として57万円を支給するものです(雇用管理制度助成コース)。

退職金制度を作る方法

退職金制度を作る方法として、まずは退職金規定を作成する必要があります。

  • 退職金の原資をどこからもってくるのか
  • 積立する方法はどんな方法をとるのか
  • 退職金の金額はいくらか
  • 途中で死亡した際にはいくら退職金を支給するのか
  • 計算式はどうするのか

これらを就業規則に定める必要があります。

退職金制度は一度スタートすると従業員との合意なしに廃止することは難しいため、慎重に行うべき制度です。

新しく退職金制度を作る場合

新しく退職金制度を作る場合には、既存の退職金制度を変更する場合に比べて自由があります。既存の退職金制度を変更する場合には、労働者代表の合意が絶対に必要なのに対して、制度を新設する場合には同意がなくても導入しやすいためです。

ただし、現在の待遇よりも待遇を下げるような新制度を導入することは難しいです。そのため、段階的に適用するような方法をとることが一般的です。具体的には、新しく入社してきた新卒や中途入社の従業員には新しい退職金制度を導入・適用して、既存の従業員については定年退職まで現在の待遇を維持するといったやり方が最も合理的な可能性が高いです。

条件をアップさせる場合には特に反発が出る可能性は低いですが、現在の待遇から下げるような形で新しい退職金制度を採用する場合には、新しく制度を作って今在籍している従業員に適用することは難しいといえます。

既存の退職金制度を変更する場合

既存の退職金制度を変更する場合には、労働組合または労働者を代表する従業員からの合意を得て、退職金制度の変更に踏み切る必要性があります。

基本的に既存の退職金制度を運用している場合には、労働者との約束事として退職金規定を運用しています。これまで合意の基で運用してきた退職金制度を変更する場合には、必ず従業員の同意が必要となってきます。経営状況が悪化しているからといって勝手に廃止できる類のものではないため、細心の注意を払う必要があります。

基本的に、労働条件は上げることはできても下げることは滅多なことでは行えません。行うとすればそれ相応の理由が必要となります。退職金を支払えば倒産してしまうような危機的な状況ではない限り、退職金の金額を低くしたり廃止したりということは難しいです。

そのため、導入する段階から退職金制度は慎重に慎重を重ねて導入する必要があります(できれば今後の経営状況を加味して)。特に昨今では退職金制度の存在そのものに疑問の目も向けられており、廃止の流れも起きています。

終身雇用制度が崩壊しかけている昨今、今から退職金制度を導入するということは慎重に検討するべきです。

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