労働基準法改正について今後の改正予定と企業が対応すべきこと

労働基準法改正について今後の改正予定と企業が対応すべきこと

労働基準法は、1947年の制定以来、細かな改正が続けられている法律です。労働基準法の概要や直近の改正内容、今後の改正予定をご紹介します。同時に、改正の経緯とその背景をご紹介いたします。労働基準法と労働安全衛生法の関係性についても解説しています。

労働基準法を構成する要素

労働基準法を構成する要素

労働基準法は、労働条件に関する最低条件を定めた法律です。労働者の保護を目的として、1947年に初めて制定されました。労働基準法には、「賃金支払いの5原則」、「労働時間の原則」、「時間外労働/休日労働」、「割増賃金」、「解雇予告」、「有期労働契約」などの基準が盛り込まれています。

賃金支払いの5原則
  • 直接払いの原則
  • 通貨払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月払いの原則
  • 一定期日払いの原則
労働時間の原則
  • 1日8時間/1週間40時間
時間外労働/休日労働
  • 時間外・休日労働に関する協定届の提出・締結
割増賃金
  • 時間外労働・深夜労働は25%以上/休日労働は35%以上の割増率を適用
解雇予告
  • 労働者を解雇する場合は、30日以上前の解雇予告が必要
  • 解雇予告のタイミングが30日に満たない場合、解雇予告手当の支払いが必要
有期労働契約
  • 原則3年
  • 専門的労働者は5年
その他
  • 就業規則に関すること
  • 年次有給休暇に関すること

2023年以降の改正点で変わること

2023年以降の改正点で変わること

労働基準法は、2023年~2024年以降にも改正を予定しています。主な改正点となるのは、「建設業における時間外労働の上限規制」と、「月60時間超割増率引き上げ」の2点。それぞれの改正点の詳細を、以下で解説いたします。

建設業における時間外労働の上限規制

2024年4月1日から、建設業における時間外労働の上限規制が適用されます。もともと、時間外労働の上限規制は2019年4月~2020年4月にかけて大企業・中小企業に施行されていました。法律上は、時間外労働の上限は月45時間・年間360時間と定められ、特別な事情がない限りこの上限を超えられないというものです。

しかし、例外として建設業には5年間の猶予が与えられていたという事情があります。建設業では人材不足による長時間労働が常態化しており、働き方を抜本的に変えるためには猶予が必要だと判断されたためです。この猶予期間が2024年3月に終了し、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。

月60時間超割増率引き上げ

2023年4月には、中小企業を対象とした月60時間超割増率引き上げが行われます。数字にして、割増率25%から50%へ引き上げられる予定です。同規定はもともと大企業を対象に施行されていたもので、中小企業は支払い能力や経営体力などを考慮して当面の間猶予されていたという事情がありました。2023年3月に猶予措置が終了し、同年4月から中小企業も大企業と同じ基準の割増率に従わなくてはなりません。なお、60時間以上の時間外労働を行った従業員に対し、割増賃金の代わりに代替休暇を付与することも可能です。

パートタイム・有期雇用労働法の改正について

パートタイム・有期雇用労働法の改正について

「パートタイム・有期雇用労働法」とは、正規社員と非正規社員の間にある不当な待遇差をなくし、非正規社員を保護することを目的とした法律のこと。2020年4月より施行されました。正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。それまでは「パートタイム労働法」と呼ばれていましたが、働き方改革関連法の成立にともない現在の名称へ改められました。

同一労働同一賃金の徹底・強化

パートタイム・有期雇用労働法では、「同一労働同一賃金」の遵守が定められています。同一労働同一賃金とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指す扱う取り組みのことです。2020年4月に大企業に向け、2021年4月には中小企業に向けて施行されました。同一労働同一賃金により、正社員と非正規社員との間に不当な待遇差を設けることは禁止されています。待遇差があった場合、事業主は非正規社員に対する説明責任を果たさなくてはなりません。

裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

パートタイム・有期雇用労働法では「裁判外紛争解決手続(行政ADR)」の整備も進められました。これは雇用主・労働者間のトラブルの解決を援助する手続きのこと。都道府県労働局によって実施されます。弁護士や社労士などの専門家で編成された紛争調停委員が、雇用主・労働者双方の意見を聞いたうえで解決策(調停案)を提示する仕組みです。裁判とは異なり費用が無料、かつ手続きも迅速でわかりやすいという利点があり、労使間トラブルの早期解消が期待できます。

労働基準法の改正の歴史

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労働基準法は、制定から現在に至るまで改正されてきました。1987年に始まる労働基準法の改正内容を、年表にして解説いたします。

年表 改正内容
1987年の改正
  • 週の法定労働時間を、48時間制から40時間制へ短縮
  • フレックスタイム制/1ヶ月単位/3ヶ月単位の変形労働時間制を導入
  • 事業場外及び、裁量労働における労働時間算定の規定を設置
1993年の改正
  • 法定労働時間の週40時間制を施行
  • 最長で1年単位の変形労働時間制を導入
  • 時間外労働/休日労働の割増賃金率を制定
  • 対象業務を規定したうえで、裁量労働制の規定を整備
1998年の改正
  • 労働大臣(現在の厚生労働大臣)によって、時間外労働に関する限度基準が告示される
  • 労使協定を定めるにあたり、告示された限度基準に適合するものでないと制定された
  • 企画業務型裁量労働(事業運営の企画立案や調査、分析を行う業務)の導入
2003年の改正
  • 専門業務型裁量労働制において、健康・福祉確保の措置及び苦情処理措置を規定することが義務付けられる
  • 1998年に導入された「企画業務型裁量労働制」の拡大
2008年の改正
  • 1ヶ月の時間外労働が60時間以上の場合、割増賃金率を50%とする(中小企業は猶予)
  • 割増賃金の支払いに代えて、代替休暇を付与できる
2018年の改正 ※働き方改革関連法にともない、以下の改正が実施された

  • 時間外労働の上限規制
  • 1ヶ月の時間外労働が60時間以上の場合、割増賃金率を50%とする措置を中小企業にも適用
  • 対象労働者に対し、年に5日の次有給休暇取得を義務付ける
  • 高度プロフェッショナル制度の設置

労働基準法違反となるケースとその罰則

労働基準法違反となるケースとその罰則

労働基準法に違反した場合、懲役刑や罰金刑などの罰則が科されます。悪質なケースだと認められれば社名や経営者の名前が報道され、組織の信用失墜にもつながるでしょう。労働基準法の違反行為の例や罰則の具体例を、以下でまとめました。

予告なく解雇をした場合

従業員を解雇する際は、30日以上前に解雇予告を行うことが義務付けられています。解雇予告をするタイミングが30日に満たない場合は、解雇予告手当を支払わなくてはなりません。これを守らず予告なしに解雇すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます。ただし、事業の存続が難しい場合・従業員側の問題を理由として懲戒解雇する場合は、例外として予告なしの解雇が認められるケースもあります。

法定労働時間以上の労働を課した場合

従業員に対して1日8時間/週40時間以上の労働を課す場合は、「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」を労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。これにより、事業主は月45時間/年360時間を限度として従業員に時間外労働を依頼できます。36協定で定められた労働時間を超過した場合、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。

休日をとらせず労働を課した場合

事業主は、従業員に対して最低でも週1日の休日を与えなくてはなりません。なお、1週間に1日という方法ではなく、4週間で4日以上の休日を与えるといった対応をとることも可能です。休日をとらせず労働を課した場合、罰則は6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金となります。

休業手当を支払わなかった場合

事業主側の責任によって従業員を休ませる場合、事業主には休業手当を支払う義務があります。例えば、企業の過失または故意による休業や、経営不振による休業、機械設備の不備による休業などのケースでは、休業手当を支払わなくてはなりません。支払わなかった場合、30万円以下の罰金が科せられます。

産休・育児時間をとらせなかった場合

従業員から産休や育児時間をとりたいと申請された場合、事業主はこれを必ず認めなくてはなりません。ここでいう育児時間とは1歳未満の乳児を対象にしたもので、1日2回・それぞれ最低でも30分以上取得できるものです。産休・育児時間をとらせなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます。

労働安全衛生法も改正が続けられている

労働安全衛生法も改正が続けられている

労働基準法と混同されがちなのが「労働安全衛生法」です。労働安全衛生法とは、労働者の健康・安全を守り快適な職場環境を整備することを目的に1972年に制定された法律のこと。労働安全衛生法の項目は、大きく3つに分けられます。

項目名 内容
事業場における安全衛生管理体制の確立のために必要な措置策
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医などの選任
  • 安全委員会/衛生委員会などの設置
事業場における労働災害を防止するための具体的な措置策
  • 危険防止基準
  • 安全衛生教育
  • 就業制限
  • 作業環境の測定
  • 健康診断の実施
国による労働災害防止計画の策定
  • 5年単位の中長期計画の策定

労働安全衛生法と労働基準法の違い

もともと、労働安全衛生の関連項目は労働基準法に包括されていました。しかし、1960年代以降の高度経済成長期に入ってから労働災害が多発。そのような背景から、労働安全衛生のより細かな規定が必要とされ、労働安全衛生法は労働基準法から分離して、独立したひとつの法律になったのです。もとは1つの法律から派生したことで、混同されがちともいえます。

2019年の改正ポイント

労働安全衛生法は、労働基準法と同じくたびたび改正がなされています。2019年には、働き方改革関連法の改正に伴って大幅な変更がなされました。具体的には、以下のポイントが大きく変わっています。

項目名 内容
労働者の労働時間の把握、記録、保管義務
  • タイムカードやICカードなどの媒体により、労働者の労働時間を正しく記録することが義務化された
  • 記録は3年間保存する必要があり、場合によっては産業医への提供も必要となる
産業医及び産業保健機能の独立性/中立性の強化
  • 産業医が辞任または解任に至った場合は、独立性・中立性強化のため安全衛生委員会や衛生委員会への報告が義務付けられている
産業医面接指導基準の引き下げ
  • 産業医による面接指導基準が引き下げられた
  • それまでは月100時間以上の時間外労働を行った従業員に対し産業医が面接指導を実施する規定だったが、この基準を月80時間の時間外労働へ引き下げた

労働基準法や労働安全衛生法に則り、事業主は従業員を保護しなくてはなりません。長時間労働やハラスメントが横行していないかをチェックし、従業員の心身のコンディションをケアできる体制をつくることが重要です。

リロクラブが提供する「Reloエンゲージメンタルサーベイ」は、従業員のストレスチェック・コンディションチェックを行う健康支援サービスです。
従業員の健康支援、及び組織改善のために、ぜひリロクラブのReloエンゲージメンタルサーベイの利用をご検討ください。

よりよい組織づくりのために必要なもの

リロクラブ 「福利厚生倶楽部」

労働基準法や労働安全法を守ることは、事業主にとって当然の義務です。また、労働基準法の改正の動向にも目を配り、常に最新の法や規定をインプットしておくことも重要です。
よりよい組織づくりのためには、法の遵守はもちろんとして、従業員が心身ともに健康に働けるような仕組みを導入することも大切だといえます。その一環として、福利厚生の充実を図ってみてはいかがでしょうか。

リロクラブが提供する「福利厚生倶楽部」は、福利厚生のアウトソーシングサービスです。育児や介護に関わる従業員を援助する福利厚生をはじめ、自己啓発やスキルアップ支援、余暇の充実支援など多彩なジャンルの福利厚生を揃えています。より働きやすい職場環境づくりの一環として、ぜひ福利厚生倶楽部をご利用ください。