新卒社員が早期離職するのはなぜ?離職率の平均や辞める理由は?
新卒入社した社員にはぜひ定着してもらいたいと考えている一方で、新卒社員が早期離職を選ぶケースは決して珍しくありません。
新卒社員が退職を選ぶ理由は多岐に渡るため、どのような対策を講じたら自社のエンゲージメントが向上するのか悩んでいる人事担当者もいるのではないでしょうか。 この記事では、新卒社員が離職する割合と離職の原因に触れたうえで、離職防止の対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.新卒社員が離職する割合は?
- 1.1.【事業所規模別】離職率の違い
- 1.2.【産業別】離職率の違い
- 2.なぜ新卒社員は早期離職してしまうのか?
- 2.1.「仕事内容」が離職理由のケース
- 2.2.「待遇」が離職理由のケース
- 2.3.「人間関係」が離職理由のケース
- 3.離職防止のために企業ができることは?
- 4.新しい価値観に合わせた福利厚生を充実させよう
新卒社員が離職する割合は?
厚生労働省は毎年、新卒社員の3年以内離職率のデータを公表しています。令和4年版(平成31年卒業者が対象)のデータによれば、離職率は学歴・事業規模・産業に影響を受けていることがうかがえます。高卒以上の学歴を持つ新卒社員の離職率は以下のとおりです。
学歴 |
1年以内の離職率 |
3年以内の離職率 |
---|---|---|
高卒 |
16.30% |
35.90% |
短大卒等 |
17.80% |
41.90% |
大卒 |
11.80% |
31.50% |
全体の3割以上の新卒社員は、3年以内で離職していることがわかります。加えて、離職者のうち1~2割は1年以内で離職しているという点にも注目です。
【事業所規模別】離職率の違い
事業規模が大きくなるほど離職率が下がるという傾向もあります。例えば、大卒社員の場合、5人未満の事業所規模では離職率55.9%であるのに対して、1,000人以上の事業所規模では離職率25.3%に留まっています。
事業所規模 |
高卒 |
大卒 |
---|---|---|
5人未満 |
60.50% |
55.90% |
5~29人 |
51.70% |
48.80% |
30~99人 |
43.40% |
39.40% |
100~499人 |
35.10% |
31.80% |
500~999人 |
30.10% |
29.60% |
1,000人以上 |
24.90% |
25.30% |
【産業別】離職率の違い
学歴・事業所規模だけではなく、産業も離職率に大きく影響する要素です。厚生労働省のデータによれば、離職率の高い上位5産業は、以下のとおりです。
高卒 |
離職率 |
大卒 |
離職率 |
---|---|---|---|
宿泊業・飲食サービス業 |
60.60% |
宿泊業・飲食サービス業 |
49.70% |
生活関連サービス業・娯楽業 |
57.20% |
生活関連サービス業・娯楽業 |
47.40% |
教育・学習支援業 |
53.50% |
教育・学習支援業 |
45.50% |
小売業 |
47.60% |
医療、福祉 |
38.60% |
医療、福祉 |
45.20% |
不動産業、物品賃貸業 |
36.10% |
離職率の高い上位5産業には、「サービスの対象が法人ではなく個人消費者である」という共通点があります。個人消費者を対象とするサービスは、休日・祝日対応や残業を求められやすく、長期労働につながりやすい業界です。例えば、宿泊業・飲食サービス業や娯楽業など、個人消費者に対するサービス業では、カレンダー上の休日・祝日や長期連休のタイミングが書き入れ時です。
また、サービス提供のために事前準備や後片付けを要するため、業務時間が伸びることも想定されます。 しかし、産業別の離職率はあくまでも傾向にすぎません。サービス業関連だから過酷な労働環境というわけではなく、離職率が著しく高い産業でも離職率の改善に成功している企業は存在します。
着目するべきは、産業や事業規模を問わず、離職率を上げている原因を突き止めて、適切な対策を講じることです。
なぜ新卒社員は早期離職してしまうのか?
では、新卒社員がすぐに離職してしまう具体的な要因について探ってみましょう。 厚生労働省が公表した離職率のデータによれば、離職率は業種や事業所規模に影響されていることがわかります。このことから、離職率を左右する要因として、「仕事内容」、「待遇」、「人間関係」の3点が大きな要因であると考えられます。
「仕事内容」が離職理由のケース
離職率を左右する要素に産業の種類が含まれていたことから、仕事内容に何かしらの不満や危機感を持って離職をする可能性が考えられます。
また、新卒社員は社会人経験が浅いため、期待と現実のギャップを強く感じるリアリティ・ショックを受けやすく、入社1~2年目で「辞めたい」という考えに陥ってしまうことも早期離職につながる要因の1つと言えます。
期待と実情のギャップが大きすぎる
仕事を続けるうえで、新卒社員に仕事に対するやりがいを感じてもらうことは重要な要素です。特に、新卒社員がやりがいを失う理由の1つとして考えられるのは、入社前と入社後のギャップにリアリティ・ショックを受ける点でしょう。
例えば、入社説明会や面接でよいところしか伝えられていなければ、入社してからは「話が違う」、「厳しすぎる」と感じるケースが増えることは想像に難くありません。
一方、バリバリと働いてキャリアアップができると思ったのに、簡単な雑務しか任されずに肩透かしを食らうというギャップも。キャリア形成の見通しが立たず、「ここで働いても将来性がない」と感じて辞表を提出する可能性もあります。
仕事内容がきつい・過酷すぎる
どれだけやる気があっても、体がついていかなければ仕事は続けられません。「人手不足で休めない」、「厳しいノルマを課せられている」といった過酷な労働環境では、残業や休日出勤しなければ仕事が回らないという状況に陥りやすく、そういった働き方を続けていると、いずれ心身の健康を損なう可能性も否定できません。
厚生労働省のデータで最も離職率の高い産業とされている「宿泊業・飲食サービス業」は、週所定労働時間が39時間52分と全産業の中で最も長く、年次有給休暇の取得率も44.3%と最も低いことがわかっています。宿泊業・飲食サービス業に限った話ではありませんが、過酷な仕事は肉体的・精神的に長く続けることが難しいため、離職率も高くなることがわかります。
「待遇」が離職理由のケース
入社して3年以内の年若い新卒社員にとっては、「待遇に納得できない」という理由も転職を考える動機になります。年齢が若いほど転職に成功しやすいうえ、転職先でうまくいかなくても、次の転職先を探すだけの余裕があるからです。
特に、新卒社員が待遇面で重視するのは、「人事評価」、「教育体制」の2点です。
公平な人事評価制度がない
離職率が高い企業は、人事評価制度に不公平感があるという問題を抱えていることがあります。どれだけ業績を上げても社歴の長い先輩や上司に気に入られている同僚よりも評価されていないとわかれば、新卒社員は働くモチベーションを失うでしょう。
もっと自分の頑張りを認めてくれる企業に転職しようと考えるかもしれません。
教育・フォロー体制がない
人手不足や繁忙期を理由に新卒社員に対する教育・フォローをおろそかにすると、離職率が高くなります。 社会人経験も浅い新卒社員にとって、誰にも相談できないという状況で慣れない業務をこなすにはかなりの時間を要します。
質問しても「自分で考えて」と放置したり、自分で考えて行動したら怒られたりするような環境では、スキルアップの速度は鈍化するでしょう。さらに、上司・先輩のアドバイスや指示に相違があれば、いったいどちらを信じてよいのかわからなくなり、混乱を招きます。
仕事を覚えられないという不安、上司・先輩の発言に対する疑心が強いストレスになり、退職に踏み切ることにつながりかねません。
「人間関係」が離職理由のケース
人間関係に関する悩みは絶えることがありません。厚生労働省の「令和3年 雇用動向調査」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」が上位に挙がっており、割合は男性8.1%、女性9.6%という結果になっています。
多くはないものの一割に近い数値であることから、決して軽視はできない項目です。 人間関係がきっかけとなり離職率が高まる要因としては、以下の2点が考えられます。
上司・先輩・同僚とそりが合わない
上司・先輩・同僚との関係がうまくいかないと感じる職場環境では、新卒・中途を問わず強いストレスを感じるため、企業全体の離職率に影響を与えます。厚生労働省が公表している「令和3年 労働安全衛生調査」によれば、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)に強いストレスを感じている割合は25.7%と、全体の3割に及びます。
特に、入社したばかりでやる気のある新卒社員にとって、周囲とのコミュニケーションは仕事を覚えるうえでも重要です。業務上の悩みや不安を相談できなければ、仕事を完遂させることも難しくなり、モチベーションが下がってしまうので、早期離職につながることがあります。
社風が合わない
離職率を低くするためには、新卒社員が「ここで長く働きたい」という愛着心(エンゲージメント)を感じてくれることが重要です。しかし、エンゲージメントは様々な要因で失われていきます。中には、社風が合わない、企業の考え方に同意できないという理由で離職する新卒社員もいます。
社風とひとくちにいっても様々な要因がありますが、「自分の性格と配属先の価値観が合わない」、「仕事の進め方に納得いかない」、「自分の価値観が受け入れられない」といったコミュニケーションの齟齬であるケースがほとんどです。
上司・先輩・同僚に対して好意的であっても、社内コミュニケーションが不足しているとすれ違いがおきやすく、新卒社員のエンゲージメントは下がりやすくなります。
離職防止のために企業ができることは?
ここからは、新卒社員の離職防止に向け、企業ができる対策について、「仕事内容」、「待遇」、「人間関係」の3つの観点から挙げていきます。仕事内容で離職を検討する場合、主に「ミスマッチ」と「リタイア」を発生させないための対策を講じることが大切です。
【仕事内容】ミスマッチを防ぐ・労働環境の改善
「仕事内容」に関しては、採用時点でミスマッチを防ぐこと、悪い労働環境を是正することが離職率を下げるカギです。
新卒社員は社会人経験が浅いことから、入社前の理想と入社後の現実のギャップに衝撃を受け、「こんなはずじゃなかった」と失望して早期離職に踏み切るケースがあります。
不幸なミスマッチを防ぐには、企業説明会・面接時に企業のリアルな状況をしっかりと伝えて、新卒社員がリアリティ・ショックを受けないように手を打つことが大切です。 実情の情報開示によってミスマッチを防ぐ試みは「RJP(Realistic Job Preview/現実的な仕事情報の事前開示)」と呼ばれており、採用後の定着率に影響する重要な採用手法として注目されています。
また、労働環境についても、残業や休日出勤の有無についてあらかじめ情報提示することが大切です。問題は、社員を違法に働かせることと、新卒社員にいきなり残業や休日出勤を要求すること、過度な時間外労働であって、時間外労働そのものが悪いわけではありません。法外な働き方や社員のパフォーマンスや健康に悪影響を及ぼす労働環境は是正しましょう。
労働基準法を守って働いてもらうことは当然ですが、時間外労働をしてでもスキルを高めたいという新卒社員のやる気を潰さないことも大切です。新卒社員が働きやすさとやりがいの両方を感じてもらえるような企業を目指しましょう。
【待遇】評価制度の見直し・福利厚生の充実
「待遇」に関しては、評価制度の見直しや福利厚生の充実によって、離職率を下げられるケースがあります。 例えば、公正な評価制度は、優秀な人材の流出を防ぎます。近年は、成果主義の考えを取り入れて、入社1年目でも優秀であれば昇給・昇進させるという企業が増えています。 また、休日・休暇制度や福利厚生の充実は、社員の定着率を左右する重要な要素です。
厚生労働省の「平成30年 若年者雇用実態調査」によれば、転職したいと考えている若年正社員のうち 46.1%が、転職を希望する理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」と回答しています。
多くの新卒社員にとって、かなり関心の高い項目であることがわかります。 福利厚生が効果的であるとはいえ、企業によってはリソースやノウハウがなく、福利厚生制度の導入が難しい企業もあるでしょう。そういう場合は、福利厚生の管理・運用をアウトソーシングするのがおすすめです。ご参考までに、弊社の「福利厚生倶楽部」詳細はこちら。
【人間関係】社内コミュニケーションの活性化
「人間関係」に関しては、社員同士の情報交換や情報共有を活性化させることで、コミュニケーションロスによるすれ違いや損失を防げるでしょう。
社内で発生するコミュニケーションは、業務のやり取りだけではなく、業務外で発生する日々のコミュニケーションや上司と部下の信頼関係も含まれます。社内コミュニケーションの活性化に成功すれば、業務も円滑に進めやすくなります。
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日頃の気遣いや努力を従業員同士で称賛し合う企業文化は、離職率の低下にも大いに貢献するでしょう。ご参考までに、弊社の「ポイント型サンクスカード」詳細はこちら。
▼新卒に限らず、日本の企業の離職率に関する詳細は次の記事をご参照ください。
新しい価値観に合わせた福利厚生を充実させよう
時代の移り変わりに応じて、働き方や仕事についての価値観も大きく変わっています。 例えば、1990年代後半~2000年代初頭に誕生した「Z世代」以降はデジタルネイティブといわれています。
複数のSNSを使いこなすのは当たり前で、新卒社員はインターネットを通してワークライフバランスを重視する生き方があること、場所や時間にとらわれない働き方があることを知っています。
Z世代に限らず、これから新卒として入社する社員は自己実現できる企業を選ぶ手段としてインターネットを使い、企業の比較検討することにも慣れています。価値観が目まぐるしく変わっている昨今の状況からも、旧態依然とした社風や社内制度は見直す必要があるでしょう。
新しい世代から受け入れられない体制のままでは、入社希望者が減少したり離職率が上がったりして人手不足が加速し、企業活動の継続が難しくなります。企業の評判にも悪影響を及ぼしかねません。そうなれば、人材採用や定着の難易度は上がり、コストもどんどんかさんでしまいます。新しい価値観を受け入れて対策することは、最終的には採用コストを下げることにもつながるのです。 従業員の満足度やエンゲージメントを高める施策は、企業にとって急務といえます。
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