福利厚生規定は法人保険以外にも必要!作成方法やテンプレート項目を紹介
「福利厚生に規定は必要なのだろうか」 「福利厚生に規定がなかったらどうなる?」 上記のようなお悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。
結論から言えば、福利厚生を導入する際には、福利厚生規定を作る必要があります。なぜなら、規定を作成しなければトラブルに遭う可能性があるからです。
特に役員・従業員の保障を行う法人保険では、遺族・企業間で金銭的なトラブルに遭うことも考えられます。そこで本記事では、福利厚生規定や法人保険に関する情報をはじめ、福利厚生規定の作成方法・テンプレートをご紹介します。
福利厚生の規定を検討する際にぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.福利厚生とは
- 2.福利厚生規定は主に法人保険を活用する際に必要
- 3.法人保険活用時に福利厚生規定が必要な理由3つ
- 4.法人保険を福利厚生にするメリット4つ
- 4.1.1.病気・ケガに備えられる
- 4.2.2.労働災害補償が可能である
- 4.3.3.退職金を事前に準備できる
- 4.4.4.節税効果がある
- 5.福利厚生規定を作成するために必要な11項目の例
- 6.福利厚生規定作成のスケジュール
- 6.1.1.法人保険を契約する
- 6.2.2.福利厚生規定を作成する
- 6.3.3.福利厚生規定を従業員に伝える
- 7.福利厚生規定作成後の注意点
- 7.1.1.従業員に通知する
- 7.2.2.賃金控除の協定を結ぶ
- 7.3.3.マニュアルを作成する
- 7.4.4.制度を定期的に見直す
- 7.5.5.退職金規定も作成しておく
- 8.福利厚生に規定を設けて正しく運用しよう
福利厚生とは
福利厚生規定を解説する前に、福利厚生の目的や種類を確認しましょう。
福利厚生の目的
福利厚生の目的は、企業が従業員とその家族の健康・生活を豊かにするために取り組みを行うことです。福利厚生は雇用保険や住宅手当、施設の割引制度などが代表的ですが、企業によって施策・取り組みが異なります。企業ごとによって福利厚生を取り入れる目的が違うため、さまざまなサービスが提供されているのです。 福利厚生に関する詳しい情報は以下をご覧ください。
福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
福利厚生の種類
福利厚生には「法定福利厚生」「法外福利厚生」の2種類があります。1つずつ詳しく解説します。
法定福利厚生
法定福利厚生とは法律で定められた福利厚生のことです。企業が必ず導入しなければいけない最低限度のものであり、法定福利厚生が取り入れられていない場合は法律違反になります。特定の企業に就職した従業員は必ず6つの保険に加入します。
具体的には、病気やケガの際に手当金を給付する「健康保険」、介護サービスを受けるために給付金が支給される「介護保険」、公的年金制度にかかる「厚生年金保険」、失業手当や支援が受けられる「雇用保険(失業保険)」があり、そして勤務中や通勤中にケガをした場合に給付金が支給される「労災保険」、児童を養育する従業員に支給される「子ども・子育て拠出金」があります。
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは法律で定められておらず、企業が自由に導入できる福利厚生のことです。 代表的な法定外福利厚生は以下の通りです。
- 通勤手当や住宅手当、社宅、扶養手当など
-
人間ドックの費用補助や医務室の設置
- 育児・介護休暇の推進
- 短時間勤務制度
-
結婚・出産祝い金
- 傷病見舞金
- 自己啓発補助費用
-
施設の割引サービス
- 社員旅行
- 財産形成促進制度
上記え挙げた例も把握しながら福利厚生の導入を検討しましょう。「最低限の福利厚生だけ導入しておけばいい」という思考になるのではなく、従業員のエンゲージメント向上のためには法定外福利厚生の方も重要であると言えます。
福利厚生規定は主に法人保険を活用する際に必要
法人が契約者となり、保険料を支払う法人保険を活用する際に必要な福利厚生規定。本章では、そもそも福利厚生規定とは何か、また法人保険の意味も解説します。
福利厚生規定とは
福利厚生規定とは、福利厚生導入時に設定する規定のことです。法人保険契約に加え、通勤手当や慶弔費用、施設の割引サービスなど導入する際に規定を定めます。法的義務はありませんが、規定を作成する企業が多いです。
法人保険とは
法人保険とは、契約者や保険料を負担する方が法人である場合の生命保険です。以下では「経営者・役員向け法人保険」と「従業員向け法人保険」の2種類を解説します。
経営者・役員向け法人保険
経営者・役員向けの法人保険は、資金の準備や退職後の生活保障、事業承継等を目的としています。 企業が存続するためにはトラブルがつきものです。例えば経営者に万が一のことが起きた際に借入金の返済が必要だったり、売上の減少や取引先の倒産、役員の死亡時には弔慰金が必要だったりといった事態が考えられます。これらのようなリスクに備えるために加入が必要なのです。 代表的な法人保険商品は以下の通りです。
事業の保障対策 |
定期保険 |
収入保障保険 | |
役員の退職金対策 |
長期平準定期保険 |
逓増(ていぞう)定期保険 |
従業員向け法人保険
従業員向け法人保険は、従業員のモチベーションアップや退職後の生活に安心感を与えるために加入します。従業員が勤務中・通勤中にケガをした場合や、病気で休業した場合、死亡した場合など、さまざまなリスクに備えるために大切な法人保険です。 従業員向け法人保険を充実させれば、働きやすい環境を整備できることに加え、能力のある人材を確保したり定着させたりする効果もあると言われています。 代表的な法人保険商品は以下の通りです。
従業員の退職金対策 |
養老保険 |
確定拠出年金 | |
従業員の病気やケガで発生する見舞金支給 |
医療保険・がん保険 |
業務災害総合保険 | |
従業員死亡の際の遺族へ対策 |
総合福祉団体定期保険 |
遺族保障対策 |
法人保険に関する詳しい情報は以下をご覧ください。
福利厚生の法人保険加入のメリット。保険の種類と福利厚生規定の作成方法
法人保険活用時に福利厚生規定が必要な理由3つ
福利厚生規定は、金融商品である法人保険に必要なものです。福利厚生規定が必要な理由は以下の通りです。
- 遺族・企業間のトラブルを避けるため
-
調査時に損金計上のための根拠にするため
- 福利厚生規定を従業員に伝えるため
それぞれ解説します。
1.遺族・企業間のトラブルを避けるため
役員や従業員が死亡した際、遺族・企業間でトラブルが起きる可能性があります。福利厚生で死亡保険に加入する場合、保険金受取を行うのは遺族だからです。企業が保険金を「死亡退職金」と考えていても、遺族は「死亡保険金」と考える可能性があります。
会社は保険金を直接受け取らないため、退職金か保険金かを判断できません。「保険金が退職金となる」と規定に明示しておかないと、企業は死亡退職金を二重で支払わなければならない可能性があります。そのため、規定を事前に定めておく必要があるのです。
2.税務調査時に損金計上の根拠にするため
福利厚生を目的として法人保険を契約する場合は、企業が負担する保険金を損金として計上できます。 しかし、福利厚生規定がなければ損金として全額は認められず、企業が負担しなければなりません。
福利厚生の場合は従業員全員の加入が必要なため、損金の額も大きくなります。福利厚生で加入していることを証明できる規定を作成しておく必要があるのです。
3.福利厚生の効果を最大限発揮するため
福利厚生が充実していると、従業員のモチベーションアップに加えた結果として生産性が上がり、企業の成長が期待できます。 しかし、福利厚生規定がなければ「福利厚生の内容は何か」「どうしてお金を支払って法人保険に入っているか」などの情報が得られません。
そのため、大きなお金を使って福利厚生を導入しても、従業員が福利厚生を十分に活用できず、効果が下がってしまいます。 従業員やその家族の生活のために安くはない費用で充実させているため、従業員が誰でも理解できる・情報を得られるように規定を作成することが大切です。
法人保険を福利厚生にするメリット4つ
「福利厚生規定を作成しなければならないのなら、法人保険加入はやめておこうか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、法人保険を福利厚生にすることには従業員側に大きなメリットが4つあります。
- 病気・ケガに備えられる
-
労働災害補償が可能である
- 退職金を事前に準備できる
- 節税効果がある
それぞれ説明します。
1.病気・ケガに備えられる
企業が契約者となる法人保険の中には、病気・ケガに備えられるものがあります。「医療保険」や「がん保険」は、万が一従業員が病気・事故にあった際に手術・入院・通院費用・休業補償の見舞金が支給されます。 従業員を経済的にサポートするために、医療保険やがん保険は欠かせません。また、保険会社によっては解約返戻金の7割程度の資金を融資してもらえることもあります。資金繰りの悪化にも備えられます。
2.労働災害補償が可能である
企業は社会保険に加入しなければなりません。社会保険でも労働災害の補償はされますが、給付内容はどの企業も同等のものとなるため、弔慰金や賠償金のリスクに十分に準備できないことがあります。 社会保険の補償に法人保険をプラスすれば、手厚い補償を備えられます。特に工事現場や工場など重大な事故が起きる可能性がある業種では、損害賠償が発生する可能性もあるでしょう。そのため、法人保険を福利厚生にすることはメリットだと言えます。
3.退職金を事前に準備できる
退職金には大きなお金が必要なため、事前に準備しておくことが大切です。保険の種類によっては、退職金の準備に活用できます。解約返戻金が高い(貯蓄性がある)保険を選べば、計画的に準備できるでしょう。 例えば、保険金額500万円の保険に加入すれば、満期保険金をもとに500万円の退職金を支給できるのです。また、退職前に亡くなった場合には、保険金を死亡退職金にすることもできます。
4.節税効果がある
法人保険は節税効果があります。保険料の支払いにより、法人税対象の利益を減少することで、将来解約返戻金を受け取るという仕組みです。 また、法人保険を利用すれば、法人が収入を得る際にかかった保険料を損金として計上することができます。例えば、養老保険は支払保険料の半分を損金計上できるため、大きな節税効果があると言えます。他にも、年金保険や長期定期保険、逓増定期保険、医療保険、がん保険を福利厚生として加入していれば、節税効果が発揮されます。 しかし、2019年6月に法人保険の定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いについて見直しが行われたため、ルールが複雑化しています。節税効果を出すために、加入前にしっかりリサーチすることが必要です。
福利厚生規定を作成するために必要な11項目の例
福利厚生規定を作成するためには、基本的に11項目で作成する必要があります。ただし、保険や契約内容によって必要な内容は異なります。保険に合わせて項目を見直しましょう。
目的
生命保険などに加入する場合、弔慰金の支給についてなどの目的を記入します。また、福利厚生を目的として加入していることも記載しておきましょう。
運営
どんな保険会社のどのような保険に加入するのかを明示します。また、保険金の受取人や保険料の支払人を記載しておきましょう。
被保険者
役員と社員を被保険者とする場合には、契約社員やパート、アルバイトが含まれないことを記載します。もし年齢や勤続年数など条件を設ける場合も明示しておきます。
金額
保険金がおりる条件と支給額を記載します。表を作成する場合は別ページに記載する方がいいでしょう。
弔慰金
被保険者が死亡した場合にいくらの保険金額を支給するのかを明示します。誰に支給するかも記載しましょう。
見舞金
被保険者がどのような状態になった時に見舞金を支給するか記載します。配当金に関することも明記しておきます。
諸費用
保険金請求時・診断書作成時など費用がかかる場合は、誰が負担をするのか記載しましょう。
規定外の場合
規定している事由以外にも、何か起こる場合があります。そのため、規定に定められていない事由の場合どのように対応するかを記載しておきます。
退職時
役員や社員が何らかの理由で退職する場合は、契約を速やかに解除すること、解約返戻金の取り扱い方法を説明します。2に関しては、保険の約款によっても異なることがありますので、約款をチェックしてください。
改廃
制度を改廃する際にはどのように対処するかを記載します。従業員が改廃を把握できるよう、十分な時間をとってから改廃することも伝えてください。
施行日
どの日程に規定が施行されるかを記載します。
福利厚生規定作成のスケジュール
福利厚生規定作成の基本的なスケジュールは以下の通りです。
- 法人保険を契約する
- 福利厚生規定を作成する
- 福利厚生規定を従業員に伝える
では、3つの過程を順に説明していきます。
1.法人保険を契約する
はじめに行うのは、福利厚生の目的を決めて法人保険の契約をすることです。福利厚生の目的を決める時は、「事業承継のため」「退職金準備のため」「見舞金支給の準備のため」など具体的な内容を提示します。 具体的な内容が決まれば、必要な保障額と期間を設定します。保障額は事業規模によって異なりますので、以下の計算式を目安に考えてみてください。 必要な保障額=(短期借入金+買掛金+支払手形)× 1.5+(人件費や家賃などの固定費)× 必要月数 ※保障額は保険によって必要のない場合があります また、期間については「解約返戻率」のピークがいつ来るかを考えて設定しましょう。 目的と必要な保障額、期間が設定できれば、いよいよ契約です。保険会社を比較して選択した後、保険金額と特約を選んでいきましょう。保険金に関しては、金額が過大である場合福利厚生目的と認められない可能性のあるので、注意してください。
2.福利厚生規定を作成する
福利厚生目的の法人契約を締結した後は、福利厚生規定を作成します。締結前であっても保険契約予定・保険の内容が明確であれば、事前に作成しても問題ありません。先ほど紹介した規定例をもとに、必要な項目を入れて作成してみましょう。
3.福利厚生規定を従業員に伝える
福利厚生規定の作成が完了したら、メールなどを使用して全従業員に伝えましょう。福利厚生規定は、従業員が福利厚生の内容や目的を知るためのものであるため、利用頻度の向上などの効果を出す役割を持ちます。従業員の理解を得られるよう、周知を徹底しましょう。
福利厚生規定作成後の注意点
福利厚生規定を作成した後は、以下5つに注意して実施していく必要があります。
- 従業員に通知する
- 賃金控除の協定を結ぶ
- マニュアルを作成する
- 制度を定期的に見直す
- 退職金規定も作成しておく
順に詳しく解説していきます。
1.従業員に通知する
従業員やその家族の生活のために導入するのが福利厚生です。その福利厚生を利用するための情報を得るには、従業員はまず福利厚生規定を閲覧する必要があります。誰でも見られるように、まずは全従業員に通知しましょう。 どのような規定が施行されたのか、またどのようにして閲覧するのかを記載するようにします。メールだと社外からのメールに埋もれてしまう可能性もあるため、掲示板や社内報を使うことも一つの手です。 福利厚生は利用してもらってこそ効果が生まれるものです。経費を無駄にしないためにも、作成後は必ず通知するようにしましょう。
2.賃金控除の協定を結ぶ
健康保険料や住民税など法律で定められた項目以外には、福利厚生規定だけをもって賃金を控除することができません。そのため、法人保険に契約する場合は賃金から控除する旨を伝え、労働基準法によって定められた「賃金控除の労使協定」を結ぶようにしてください。 もし協定を結んでいない場合は、監査の際に是正勧告を受けることがあります。賃金控除の労使協定書には「賃金控除の名目」「賃金控除の理由」などを記載しておきましょう。賃金控除の理由を明確にした協定書を作成することにより、トラブルを避けることができます。
3.マニュアルを作成する
福利厚生規定の作成後は、必ずマニュアルも用意しておきましょう。具体的には、福利厚生規定を記入するフォーマットを作成した後、どのように申請するか、どの部署で処理されるのかを記載するとよいでしょう。 マニュアルは、規定作成時と管理者が変わった時や、社内・チームで共有が必要だった時など、さまざまな場面で活躍します。もし、福利厚生規定に変更があった場合はマニュアルの見直しも行うようにしてください。
4.制度を定期的に見直す
福利厚生は導入して終わりではありません。社内状況や社会情勢などによって必要な法人保険が変化することもあるはずです。 社内外の情報を取り入れながら、現在どのような法人保険が必要なのか、将来どのような法人保険が必要なのかを見直していくことが必要です。もし制度を見直すのであれば、必ず従業員に周知するのがおすすめです。
5.退職金規定も作成しておく
養老保険に加入すると、満期を迎えると満期保険金が受け取れます。しかし、退職金規定を作成していない場合、被保険者とトラブルに遭う可能性があります。 例えば、500万円の保険金額で契約した従業員が死亡した場合、「○○株式会社が満期保険金を退職金とする」という規定がないと、遺族は満期保険金をそのまま受け取ってしまう可能性があります。企業は退職金を別で支払わなければならないため、大きなお金が必要となってしまいます。保険金を退職金として扱うことを伝えておけば、出費やトラブルをおさえられるでしょう。
福利厚生に規定を設けて正しく運用しよう
福利厚生規定は、福利厚生を正しく運用するために非常に重要な要素です。その中でも、特に法人保険は役員・従業員の健康や生活を守るために非常に大切な事項だと言えるでしょう。
もし、福利厚生規定や退職金規定を設定していないと、トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。トラブルは企業の成長や売り上げなどにも影響を与えてしまうこともあります。
そんなトラブルを防止するため、福利厚生導入時には福利厚生規定を作成するようにしましょう。作成時には、ぜひスケジュールや具体例の項目を参考にしてくださいね。
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