
働き方の変化を読み解く:個人の成長と企業の成功への提案
経済の発展や社会の変化に伴い、私たちの働き方も変化し続けています。
テクノロジーの進化もその一因ですが、近年では新型コロナウイルス感染症をきっかけにしたパンデミックによって働き方が大きく変化したことも、記憶に新しいのではないでしょうか。
この記事では、過去から現在に至るまでの働き方の変化を振り返りつつ、今後はどのように変わっていくのかについて考察します。
目次[非表示]
- 1.日本人の働き方はどう変化した?
- 1.1.サラリーマンの原形が誕生した大正時代
- 1.2.サラリーマンの基礎が築かれた昭和時代
- 1.3.バブル崩壊を機に働き方が変化した平成時代
- 2.コロナ禍がもたらした働き方の大転換
- 3.これからの働き方はどう変化していく?
- 3.1.働く時間と場所を柔軟に決められるようになる
- 3.2.副業と雇用形態の多様化
- 3.3.デジタル化とAIによる変化
- 4.企業が直面する新時代の働き方への対応
- 4.1.時間と場所を超える柔軟な働き方の実現
- 4.2.新たなスキルを習得する場の提供
- 4.3.新しい評価基準
- 4.4.ジョブ型雇用の採用
- 5.これからの働き方の課題と対策
- 5.1.希薄化するコミュニケーションのリスク
- 5.2.複雑化するマネジメント
- 5.3.従業員のワークライフバランスとストレス管理
- 5.4.帰属意識の低下
- 6.結論とこれからのアクションプラン
日本人の働き方はどう変化した?
日本人の働き方は、時代とともに大きく変化してきました。
「サラリーマン」という言葉が誕生したのは、今から約100年以上前の大正時代とされています。
まず大正から平成にかけて、日本人の働き方がどのように変わってきたのかを見ていきましょう。
サラリーマンの原形が誕生した大正時代
大正時代は、産業革命の影響で多くの仕事が誕生し、企業で働く「サラリーマン」という新しい働き方が広がり始めました。
農業中心の生活から都市部での給与労働が増加していったのです。
雇用契約に基づく定時制や役職に基づく上下関係が形成されたのも、この時代と言われています。
サラリーマンの基礎が築かれた昭和時代
昭和時代は戦後の高度経済成長期に働き方が大きく変化します。
この時代に、終身雇用や年功序列型の賃金制度が一般化しました。
「サラリーマン」という言葉が文化的に定着し、会社を家族のように捉える価値観が根付いたのです。
企業への忠誠心をベースとした集団主義的な働き方は多くの会社で主流となり、サラリーマンは経済の中心を担う存在としての役割が確立されました。
長時間労働や残業が美徳とされる風潮が生まれたのもこの頃です。
昭和時代の働き方は、長らく日本の労働文化の象徴となり、戦後の日本の経済発展を支えたとされています。
バブル崩壊を機に働き方が変化した平成時代
平成時代に入ると日本の働き方は大きな転換期を迎えました。
バブル経済の崩壊をきっかけに、長年続いてきた終身雇用や年功序列といった日本的な雇用慣行が揺らぎ始めたのです。
平成に入って非正規雇用の拡大や成果主義の導入など、雇用形態と評価基準の多様化が進みました。
会社員としてその人生の多くを仕事に費やす考え方が見直され、働き方改革の流れが始まります。
その結果、長時間労働の是正やワークライフバランスの重要性が認識されるようになりました。
コロナ禍がもたらした働き方の大転換
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、働き方に劇的な変化をもたらしました。
代表的なのは場所に縛られずに働くリモートワークの普及です。
密閉・密集・密接の「3密」を避けられる働き方として、リモートワークが多くの会社に取り入れられました。
リモートワークの導入により、通勤時間の削減や柔軟な働き方が実現され、生産性や仕事満足度が向上した従業員もいました。
そしてパンデミックが終焉を迎えた今も、リモートワークを継続している企業は数多くあります。
これはコロナ禍の間に広まった働き方のメリットが認識された結果と言えるでしょう。
従業員の成果重視の評価や多様な働き方の選択肢が広がりつつあり、個人のライフスタイルに合わせた働き方が可能になってきています。
これからの働き方はどう変化していく?
今後の働き方は、テクノロジーの進化と社会の価値観の変化に大きく影響を受けると言って良いでしょう。
個人が選択できる働き方の自由度が高まり、多様なキャリアパスが選択できるようになる一方で、新たな課題も浮上しています。
これからの働き方の可能性と課題を見ていきましょう。
働く時間と場所を柔軟に決められるようになる
フレックスタイム制(※)やリモートワークの普及により、働く時間や場所の自由度が増しています。
この傾向は今後さらに加速し、従業員が自身のライフスタイルに合わせて働く時間と場所を選択できるようになるでしょう。
その結果、個人のライフスタイルに合わせた働き方が実現されつつあります。
一方で、このような柔軟な働き方を実現するためには、企業側のマネジメント手法の変革や、従業員のデジタルリテラシーの向上が不可欠です。
※フレックス制:従業員が自身のライフスタイルに合わせて勤務時間を調整できる制度のこと。
副業と雇用形態の多様化
2020年に厚生労働省は副業や兼業に関するガイドラインを公表しました。
公的機関が副業を推奨したことによって、企業でも副業解禁の動きが進みつつあります。
ギグワーク(※)やプロジェクト単位で仕事をする働き方など、多様な雇用形態が浸透しつつあります。
複数のスキルを活用して収入源を多角化する「マルチキャリア」の考え方も注目されるようになりました。
マルチキャリアとは、複数のスキルや職業を持ち、それらを組み合わせてキャリアを構築する考え方です。
平日はIT企業で働きながら、週末にはヨガインストラクターとして活動するなど、複数のキャリアを目指す働き方も認知されてきています。
※ギグワーク:雇用関係を結ばない単発かつ短時間の働き方のこと。
デジタル化とAIによる変化
業務プロセスの自動化・効率化を目的としたAIツールや多様なデジタル技術の導入が加速しているのも、現代の働き方を取り巻く変化の特徴と言えます。
特に、単純作業や定型業務がAIによって実行されることで、人間の役割は創造性や戦略的思考が求められる仕事にシフトしていくと予想されます。
例えば、データ入力やスケジュール管理といった定型業務はAIが担い、人間は出力された分析結果に経験則を加えて戦略を立てるなど、より高度な判断や創造性を要する業務に集中できるようになるでしょう。
企業が直面する新時代の働き方への対応
従来の労働環境や管理手法の見直しが求められる中、企業はどのように対応していくべきでしょうか。
ここからは、企業が取り組むべき主要な課題とその対策について詳しく見ていきます。
時間と場所を超える柔軟な働き方の実現
柔軟な働き方を求める従業員が多くなれば、当然企業には柔軟な働き方に適応できる体制が求められるようになります。
柔軟な働き方の実現にはITインフラの整備とセキュリティ対策が重要な課題となります。
またオフィスの役割も見直されつつあり、チームビルディングや創造的な対話を促進する場とする考え方が広がっています。
新たなスキルを習得する場の提供
AIを使いこなす能力に代表されるような、従業員のスキルアップを支援する体制もこれからの企業に求められます。
急速に発展する技術に対応するためには、企業が一体となってスキル習得に取り組む必要があるからです。
具体的には、社内研修やオンライン学習プラットフォームを活用して教育機会を増やすことなどが求められています。
このような取り組みは、単に従業員のスキル向上だけでなく、企業の競争力強化や、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。
新しい評価基準
働き方の多様化に伴い、従来の評価基準では対応しきれない状況が生まれています。
そのため、企業は成果重視の評価基準へのシフトを進める必要があります。
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方に適した、新しい評価システムの構築が求められています。
具体的には、労働時間ではなく、達成された目標や成果物の質に基づく評価が重要になります。
また、管理職には柔軟な働き方に合わせた新しいマネジメントスタイルが求められています。
上司が細かく指示を出す従来型の管理ではなく、従業員自身が目標を設定し、その達成に向けて自律的に行動することを促す仕組みづくりが重要になります。
ジョブ型雇用の採用
日本の企業で広く使われていたのは、企業への貢献意欲や潜在能力を重視する「メンバーシップ型雇用」でした。
しかし、働き方の変化に伴い、「ジョブ型雇用」への転換が進んでいます。
ジョブ型雇用の特徴は、求職者が持つスキルに基づいて採用を行う点です。
したがって、従業員は専門性を高め、キャリアの明確なビジョンを持つことが求められています。
ジョブ型雇用の導入は、労働市場の流動性を高め、専門性の高い人材の獲得や、多様な働き方の実現にもつながります。
一方で、これまでの長期雇用の利点を失わないよう、メンバーシップ型とジョブ型の良い点を取り入れたハイブリッドな雇用方法も検討されています。
企業は、ジョブ型雇用への移行に際して、従業員のキャリア開発支援や、スキルマップの導入、社内公募制の拡充など、従業員が自律的にキャリアを構築できる環境づくりにも注力する必要があると言えるでしょう。
これからの働き方の課題と対策
働き方の変化に伴い、企業は新たな課題に直面しています。
ここからは、企業が取り組むべき主要な課題ついて解説します。
希薄化するコミュニケーションのリスク
リモートワークの普及により、対面でのコミュニケーションが減少し、チームの結束力が低下する可能性があります。
オフィスでのちょっとした雑談や非言語コミュニケーションの機会が失われ、お互いの理解を深めていく時間が少なくなったためです。
特に、オフィスから離れた場所で働く人との信頼構築の難しさは、多くの企業が直面している課題です。
この課題に対応するため、多くの企業ではITツールを活用した効果的なコミュニケーション方法を模索しています。
例えば、ビデオ会議システムを利用した定期的なチームミーティングや、社内SNSを活用した日常的な情報交換の促進などです。
また、対面でのコミュニケーションの機会を意図的に創出することも重要になってきます。
定期的なオフサイトミーティングや社内イベントの開催など、リアルな交流の場を設けてチームの結束を図ろうとしています。
複雑化するマネジメント
上司と部下が同じ場所・同じ時間で働く機会が減ると、その分従業員の成果やモチベーションを管理するのは難しくなります。
従来の対面式のマネジメントスタイルが通用しない中、新たなアプローチが求められています。
特に、従業員の業務進捗や成果の可視化が課題となっています。
オフィスで直接確認できない分、明確な目標設定と進捗の共有が必要です。
プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールの活用、定期的な進捗報告ミーティングの実施などが効果的な対策となるでしょう。
加えて、マネージャーには心理的安全性を確保する組織づくりが求められています。
リモートワークでは、従業員の不安や孤立感が高まりやすいため、オープンなコミュニケーションを促進し、失敗を恐れずに意見を言える環境づくりが重要です。
定期的な1on1ミーティングや、チーム内での心理的安全性を高めるワークショップの実施などが有効な施策となるでしょう。
従業員のワークライフバランスとストレス管理
働き方が柔軟になる一方で、仕事とプライベートの境界が曖昧になるリスクが高まっています。
特にリモートワークでは、仕事時間とプライベート時間の区別が難しくなり、かえって長時間労働やワークライフバランスの崩壊につながるおそれがあります。
こうした課題に対応するため、企業はストレスチェックやメンタルヘルス支援など、従業員の健康管理を重要な課題として認識し、対策に取り組む必要があります。
定期的なストレス調査の実施や、カウンセリングサービスの提供、メンタルヘルス研修の実施などが効果的な対策となるでしょう。
帰属意識の低下
新しい働き方が広まっていくことの影響で、企業への帰属意識やエンゲージメントが低下する懸念が高まっています。
物理的なオフィスでの交流が少ない場合や、短期的な契約が増えるジョブ型雇用では、組織の一体感が希薄化するリスクが高まります。
こうした課題を解消するには、従業員が共感できるビジョンやミッションの明確化が必要とされています。
単なる利益追求だけでなく、社会的意義や従業員の成長機会を含む魅力的なビジョンを提示して、従業員の帰属意識を高めましょう。
キャリア開発支援も帰属意識を向上させる重要な要素です。
個々の従業員のキャリアプランに沿った成長機会の提供や、社内公募制度の充実、メンター制度の導入など、企業内でのキャリア発展を支援する取り組みが求められます。
結論とこれからのアクションプラン
今回は、日本での働き方の変遷を踏まえ、現代の働き方が抱える課題と対応するための具体的な方策を取り上げました。
急速な技術発展に伴い、働き方は大きく変化しています。
こうした変化に対応するのは簡単ではありませんが、新しい働き方に適応している企業は、従業員から見ても魅力的に映ります。
自分のキャリアを実現させるために長く働きたいと考える従業員も多くなるかもしれません。
また、こうした企業で働きたいと考える求職者が集まり、優秀な人材を確保することにもつながります。
最後に、新しい働き方への適応は企業と従業員が協力して試行錯誤を重ねながら模索することが大切です。
変化を恐れず、従業員と企業の両方にとってメリットがある働き方を見つけていきましょう。