
人手不足で倒産する会社はどのくらい?倒産する原因や人手不足対策
人手不足倒産とは、企業が事業運営に必要な人材を確保できずに倒産してしまう事態を指します。
従業員の離職や採用難が続いてしまうことが要因で起きる倒産は、特に中小企業において深刻な問題です。
この記事では、人手不足倒産の現状や原因、そして対策について詳しく解説します。
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人手不足倒産する会社は実際にどのくらいある?
人手不足による倒産件数は年々増加傾向にあります。
業種別の傾向を踏まえ、人手不足倒産の実態を詳しく見ていきましょう。
【2024年度版】人手不足倒産の動向
人手不足倒産の件数は、過去最多のペースで拡大しています。
帝国データバンクの最新調査によると、2024年度には、人手不足が原因で倒産した企業が350件に達し、2年連続で過去最多数を更新しました。
具体的には、前年から+11%増加して、10年前(68件)の約5倍に達しました。
賃上げの余力がない小規模な事業者を中心に、今後も人手不足による倒産が増えていくと予想されています。
参考情報:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年度)」
中小企業では人手不足が深刻化
中小企業における人手不足の深刻化は、特に顕著です。
従業員数が限られている中小企業では、一人の従業員が担う役割が大きく、人材の損失が事業に与える影響も大きくなるのです。
そのため、人数が少ない小規模事業者ほど、人手不足の影響を受けやすい傾向にあります。
人材の離職で業務効率の低下や売上の減少、さらには事業の継続自体が困難になるケースも増えているのです。
中小企業庁の調査によると、中小企業の約7割が人手不足を感じているという結果が出ており、この問題の深刻さが浮き彫りになっています。
参考情報:中小企業庁「中小企業白書」
人手不足倒産が多い業種
数ある業種のうち、建築業と物流業は2024年問題の影響が顕著に表れている業種で、人手不足による倒産が特に多く発生しています。
2024年問題とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が設けられたことで生じる問題です。
ドライバーが稼働できる時間が短くなり、その結果、物流が滞ったり現場への資材搬入が遅れたりする事態が予想されています。
この2024年問題で特に影響を受けやすいのが建築業と物流業で、実際に2024年上半期に倒産した企業の約半分が建築業と物流業でした。
※2024年問題の詳細はこちらから「【運送・物流業界必見】2024年問題とは?働き方改革での変化や対策を解説」
人材関係で会社が倒産してしまう原因
人手不足による倒産の背景には、いくつかの要因が絡み合っています。
人材不足の原因を詳しく分析することで、効果的な対策を講じられるでしょう。
後継者不足
少子高齢化は労働者人口の減少にも影響を及ぼしています。
特に高齢になった経営者や幹部が定年を迎えたり、病気で退職をせざるを得なかったりした際に、適切な後継者がいないというケースが多くなっています。
実際、帝国データバンクによると、2024年度の「後継者難倒産」は、507件、社長の平均年齢は60.7歳で、2年連続500件超の高水準です。
人口減少で親族内承継が難しくなる一方、M&Aや外部経営者招聘も進まず、「社長の急病=事業停止」という脆弱構造が残っています。
参考情報:帝国データバンク「後継者難倒産の動向調査(2024年度)」
連鎖退職
一人のキーマンが退職したことをきっかけに、別の従業員の退職が相次いでしまう事態を「連鎖退職」と言います。
連鎖退職が起きると、残された従業員の業務負荷が高まります。
これが新たな退職を誘発し、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥る可能性があります。
この連鎖的な退職は、直接的な人員減少だけでなく、モチベーションの低下や組織の雰囲気悪化にもつながるでしょう。
結果として、売上やサービスの質の低下を招きかねません。
これらの連鎖を止めることができないと、最悪の場合倒産に繋がってしまいます。
採用難リスク
多くの企業が直面している問題の一つが、求人を出しても思うように応募が集まらないことです。
大手企業や人気のある業種に応募が集中する傾向があり、中小企業への応募が少なくなっているのが現状です。
実際、帝国データバンクの『採用予定がある』と回答した割合の平均は58.8%であったが、規模別では以下の通りで、規模が小さくなるほど、低くなり採用が難しい状況である。
大企業:83.6%
中小企業:54.4%
小規模企業:35.9%。
求人市場の競争激化により、魅力的な条件や独自の価値提案がなければ、求職者の目に留まりにくくなっています。
物価高騰の中でも、価格転嫁が進まなければ、さらなる人手不足が長期化し、事業継続が難しくなるケースも増えてくる。
参考情報:帝国データバンク「2025年度の雇用動向に関する企業の意識調査」
人手不足による倒産を防ぐために人事部門ができること
人手不足倒産を避けるためには、企業が積極的に対策を講じる必要があります。
ここでは、人事部門が取り組むべき具体的な対策について詳しく解説します。
求人チャネルを再設計する
25年卒採用の充足率は70.0%と3年連続で低下し、過去最低を更新していることが示している通り、売り手市場が続き、採用市場の競争環境は激化を続けています。
その為、従来の求人方法で応募者が集まらない場合、採用手法を見直す必要があります。
例えば、自社のWebサイトに求職者の興味を引くような採用ページを開設するのもおすすめです。
会社の文化や価値観、働く環境などを具体的に紹介することで、求職者の興味を引きつけられます。
また、SNSを活用した求人も注目を集めやすい手段です。動画を使った会社紹介や従業員インタビューなど、視覚的に訴えかけるコンテンツが効果的です。
これらは、長期的な施策となり、採用ブランディングに分類されます。
一方で、ポテンシャル採用の幅を広げて、経験不問で採用枠を拡げ、社内育成に重視し、徐々に成果を生んでもらう戦略では、母集団形成においては即効性が期待できます。
※参考情報:サポネットpowered by マイナビ
入社した社員のフォローを手厚くする
新入社員の定着率向上は、人手不足対策の重要な要素です。
例えば、以下の施策は、連鎖退職のストッパーとなる得ります。
90日オンボーディングプラン:業務取得ロードマップやメンター制度の作成など
月1のキャリア面談:入社後のギャップを早期でキャッチアップ
仕事量の見えるか:タスク管理ボード、勤怠管理を活用して、閾値を超えたらアラート出す
しかし、現状、忙しい現場では、新しく入った従業員の教育が後回しにされがちです。
これにより、仕事を覚えるまでに時間がかかり、新入社員がやる気を失くしたり戸惑ったりして早期退職してしまうリスクが高まります。
忙しい中ですが、入社時は、フォローの優先順位を高めて踏ん張ることが、長期的な企業の成長の重要な要素となります。
業務効率化・自動化を行う
人手不足を避けるために、従業員が働きやすい環境を整える必要があります。
具体的には、業務の見直しやシステムの導入による業務効率化を行うことです。
ただ、実情として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入している企業は、13%にとどまり、中小企業に置いては、8%のみとなっています。
積極的に活用することで、定型業務や問合せ対応などを自動化することで、新たな人材を採用しなくても、人手不足を解消できる可能性があります。
※参考情報:スターティアレイズ「RPAツールの導入・活用に関するアンケート調査結果」
人材サービスの利用を検討してみる
人手不足を短期間で補うためには、人材サービスを利用する方法もあります。
人材サービスの利用にはコストがかかりますが、自社独自で採用を行うよりも、迅速かつ効率的に人材を確保できる可能性が高くなります。
近年は、プロ人材やフリーランスといった、簡単には採用できないような人材でも、対応領域や時間の調整でコストを合わせることが可能になります。
人事やマーケティングなどで実績を上げた人材を活用することで、現状の課題解決に繋げることも視野に入ってきます。
待遇の改善を行う
待遇が悪いままでは、従業員が離れやすくなり、新たな人材の確保も困難になります。
給与や福利厚生などを充実させると、求職者にとって魅力的な職場環境の実現につながります。同時に、今いる従業員の退職も防止できるのです。
具体的な待遇改善策としては、基本給の引き上げやボーナスの増額などが考えられます。
ただし、中小企業さまの中には、賃上げが難しい企業さまもいらっしゃることでしょう。
その場合は、ベースアップは控えめにしつつも、成果連動や技能手当での補完を行うことも検討してみてください。
また、有給休暇の取得促進、育児・介護支援制度の充実なども、従業員の満足度向上に効果的です。
さらに、キャリアアップの機会を提供も重要です。社内研修の充実や資格取得支援など従業員の成長を支援する制度を整えることで、長期的な人材確保と育成につながります。
待遇改善はコストというよりも、将来的な投資と考えると良いでしょう。
人材確保・定着による生産性向上や企業イメージの向上など、長期的な企業価値の向上につながる投資として捉えることが重要です。
人手不足倒産を防ぐために積極的な対策を進めよう
人手不足による倒産は、近年の日本企業が直面する深刻な問題です。2024年度には過去最多の350件を記録しました。
人手不足倒産に対処するためには、求人方法の改善、新入社員のフォロー強化、業務効率化、人材サービスの活用、待遇改善など、多角的なアプローチが必要です。
これらの対策を積極的に行い、人手不足のリスクを軽減し、企業の持続的な存続や成長につながります。
人材は企業の重要な資産であり、その確保と育成への投資は、長期的な企業価値の向上につながります。