テレワークの採用で生産性の向上を。テレワークの導入効果

テレワークの採用で生産性の向上を。テレワークの導入効果

テレワークは、新しい働き方として注目が高まっています。年々テレワークを導入する企業は増えていますが、導入はこれからという企業も多いでしょう。今回は、テレワークが推進されている背景や導入効果・問題点のほか、導入状況や導入事例を紹介します。

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テレワークは働き方改革に不可欠

働き方改革実現のための検討テーマのひとつに「柔軟な働き方がしやすい環境整備」があります。具体的には、テレワークの導入推進です。

仕事をするにあたって、無駄なもののひとつが【移動】です。通勤のための移動、社内での移動、オフィスと顧客先・現場間の往復移動など。これらの移動に要している時間とコストは、年間相当なものになります。必要な移動はあるものの、相当数を占める非生産的な移動が、業務効率・生産性を下げています

情報通信技術(ICT)を利用してオフィス以外の場所でも仕事ができるテレワークは、働き方改革の実現に不可欠な働き方です。今後も、テレワークの導入拡大が進むことは間違いありません。

「もしも」の時に事業を継続できるか?

近年、日本では地震や大型台風など大規模な自然災害が発生しており、企業には非常時の事業継続・早期復旧のための対策が求められています。テレワークは、災害発生時の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の観点でも有効です。

また、2019年11月に中国で発生が確認され、2020年1月以降、日本でも感染が拡大している「新型コロナウイルス感染症」の拡大防止のため、テレワークを実施する企業も増加中です。

GMOインターネットグループは、いち早く在宅勤務に切り替えました。武田薬品工業、ソフトバンク、資生堂、NECもテレワークを推奨・実施しています。電通のように従業員の中に感染者が出たため、急遽在宅勤務に切り替える企業も出ています。

各社に共通していることは、すでに本格的にテレワークを導入しており「もしも」の時でも事業継続ができているという点です。

キャリアを継続できるか?

日本の女性は、結婚や出産・育児を機に離職をする傾向があります。家庭を重視して、キャリアの継続(仕事を続けること)を諦めてしまいます。また最近は親の介護を優先して、キャリアの継続を諦める人もいます。

決まった時間に決まった場所に出社をするという働き方と家庭の両立は困難です。テレワークは働く時間と場所を選ばないので、家庭と仕事の両立を可能にします。

テレワークによって優秀な人材がキャリアを継続できれば、労働参加率を上げることができます。

テレワーク3つの形態と適した職種

テレワーク3つの形態と適した職種

テレワークは「離れた場所(tele)」で「働く(work)」という意味で、リモートワークとも呼ばれています。情報通信技術(ICT)を利用しておこなうテレワークには、主に3タイプの働き方があります。以下の3タイプです。

  • 在宅勤務:オフィスに出社せず、自宅で仕事をする
  • モバイル勤務:訪問先の近くや移動中にパソコンや携帯電話で仕事をする
  • サテライトオフィス勤務:事業所以外のオフィススペース(シェアオフィスやコワーキングスペースなど)で仕事をする

在宅勤務は通勤の必要がないため、時間を有効に使うことができます。モバイル勤務はいつでもどこでも働くことができるため、移動時間や外出先での待ち時間を利用して業務を効率的にこなすことができます。

サテライトオフィス勤務は自宅近くや通勤途中の場所などに設けられたサテライトオフィスを利用します。移動時間を短縮でき、かつ在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境の整った場所で働くことができます。

テレワークにおけるサテライトオフィス勤務とは?その種類とメリット

テレワークは、妊娠・育児・介護などで通勤が困難な人でも働くことができるほか、以下のような職種にも適しています。

  • 移動・外出の多い営業職
  • 特に顧客対応をすることなく、黙々と業務効率を上げていく総務・人事などバックオフィス系の職種
  • ICTを活用すれば、たいていの業務ができてしまうシステムエンジニア、プログラマー
  • 社外環境からのインプットが重要、かつ集中することが必要なデザイナー、ライターなどのクリエイティブ職

パソコンやインターネット環境があれば、一人で作業を進められる職種の人が自律的に仕事を進めることができれば、テレワークの導入効果が出やすいです。

テレワークの導入効果と問題点

テレワークには以下のような導入効果があります。大きく分けて5つの導入効果です。

テレワークの導入効果

業務効率・生産性の向上

テレワークを導入すると通勤時間を削減でき、本来移動にかかっていた時間を業務にあてることで、業務効率が上がります。通勤ラッシュによる心身の負担も軽減できる点も大きなメリットです。

また、テレワークには資料の電子化が必要不可欠です。紙の資料への依存から脱却することで、迅速な顧客対応が可能になり、業務効率が上がります。

さらにテレワークは自分の作業に集中しやすくなるため、業務を計画的・効率的に進められ、生産性が向上します。

  • 企業側の導入効果
  • 業務プロセスの改善
    労働生産性の向上
    企業内外の連携強化

  • 労働者側の導入効果
  • 業務効率の向上
    自律的・計画的な働き方
    通勤ストレスの解消

ワーク・ライフ・バランスの向上

テレワークはワーク・ライフ・バランスの向上にも有効です。通勤に要していた時間が減る、あるいはなくなることで、育児や介護、自己啓発、家族とともに過ごす時間が増えます。

  • 労働者側の導入効果
  • 家族と過ごす時間が増える
    家事や育児、介護のための時間が増える
    自らの健康管理や自己啓発に費やせる時間が増える
    仕事の満足度向上と労働意欲の向上

人材確保・離職防止

テレワークでワーク・ライフ・バランスに配慮をした働き方ができる企業には、優秀な人材が集まってきます。特に若い世代や女性は、働き先を選ぶ際にワーク・ライフ・バランスを重視します。また、テレワークは障害者雇用にも有効です。

多様な人材が働きやすい環境が整えば、妊娠や育児、介護をきっかけとした離職を防止できます。これまで職場の固定化が原因で離職せざるを得なかった人も、テレワークであればキャリアを維持でき、働き続けることができます。

  • 企業側の導入効果
  • 優秀な人材の確保
    離職抑制・キャリア継続支援
    企業イメージの向上

コスト削減

テレワークを導入すると、オフィス賃料や電力、紙出力などのオフィス関連コストを削減できます。さらに移動が減ることにより、交通費が削減できます。

移動時間を減らすことは、残業代を削減することにもつながります。オフィスを起点とした働き方では、顧客先や現場に直行・直帰ができないため、無駄な移動時間を要します。その無駄な移動時間は残業時間に直結するので、これをなくすことができれば残業を減らすことが可能です。

  • 企業側の導入効果
  • 事業運営コストの削減
    交通費の削減
    残業代の削減        

事業継続性の確保

テレワークは、大規模自然災害時などにリスクを分散できる事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)という点でも有効です。事業所が1ヶ所に固定化していると、自然災害や感染症のパンデミックが発生した際に事業継続が困難になる可能性があります。

テレワークの体制を整えておけば在宅でも業務遂行ができるので、非常事態でも事業継続が可能です。

  • 企業側の導入効果
  • 非常時の事業継続性の確保

テレワークの問題点

テレワークの問題点

テレワーク導入は効果がある一方、問題点もあります。以下のような4つの問題点です。

労務管理・業績評価がしにくい

テレワークで働く労働者の労務管理や業績評価がしづらくなるという問題点があります。上司の目が届きづらい場所で働くため、長時間労働を招くおそれがあります。

また労働者の勤務状況がみえづらいので、公平に評価がされない可能性もあります。どんな状況であれオフィスに出勤している人が偉い、といった主観的な評価が根強くある企業は大問題です。

オフィスに出勤する労働者とテレワーク労働者を公平に取り扱い、公正に評価をする方法を事前に検討しておく必要があります

コミュニケーション不足になりやすい

テレワークは、コミュニケーション不足になりやすいという問題点もあります。一人で作業に集中しやすい反面、同僚や上司との意思疎通がうまくとれない環境では生産性を落としかねません。

しかし、たいていの場合はテレワークに問題があるのではなく、組織のあり方に問題があります。日頃からコミュニケーションがとれている組織であれば、テレワークの導入はさらなる連携強化を生みます。

一方、日ごと・週ごと・月ごとの強制的な会議でコミュニケーションを図っている管理主義的な組織は、テレワークの導入によってコミュニケーション不足が露呈します。

管理でしかコミュニケーションがとれない組織のあり方を見直す必要があります

仕事のオン・オフの切り替えが難しい

テレワークの中でも特にプライベート空間で仕事をする在宅勤務は、オン・オフの切り替えが難しいかもしれません。どこまでが労働時間で、どこからが休憩時間や年次有給休暇に該当するのかがわかりづらくなり、結果として長時間労働につながるという問題点があります。

また、テレワークは自己管理が求められる働き方でもあるので、人によっては業務効率が落ちてしまう可能性があります。管理に慣れきった指示待ちの仕事しかできない人にとって、テレワークは逆効果です。指示がない=オフだと考えてしまって動かない意識を変えないかぎり、テレワークが生産性を向上させることはありません。

情報漏洩のリスクがある

労働者がオフィス以外の場所で仕事をする機会が増えると、情報漏洩のリスクが高まります。在宅勤務やモバイル勤務でも機密情報が漏洩しないよう、適切な対策が求められます

テレワークのための環境づくり

テレワークのための環境づくり

テレワークを導入するにあたり、企業が対策しておくべきポイントは以下のとおりです。

テレワーク環境の整備:業務を円滑に遂行するためのシステム準備

  • ウェブ会議システムの導入
  • クラウドストレージの導入
  • ビジネスチャットの導入
  • グループウェアの導入
  • 資料の電子化(ペーパーレス化)など

人事・労務管理制度の整備:労働時間の適正な把握と公正な評価

  • 勤怠管理システムの導入
  • 労働管理制度の見直し
  • 業績評価制度の見直し
  • 社内制度、テレワークルールの整備など

情報セキュリティ管理体制の整備: 社外における情報セキュリティの確保

  • 必要なIT端末の支給、貸与
  • リモートデスクトップ方式の導入
  • 仮想デスクトップ方式の導入
  • セキュアブラウザの導入
  • ハードディスク暗号化
  • ウイルス対策など

最近はテレワークに役立つシステムやITツールの選択肢が増えているので、自社に合うものを選ぶことができます。

テレワークの導入プロセス

テレワークの導入プロセス

テレワークはやみくもに導入するのではなく、以下のような手順で導入を進めましょう。

1.導入の検討(導入目的を明確にする)
2.推進体制の構築(プロジェクトチームを結成する)
3.現状の業務分析
4.導入に向けた具体的推進
 ・対象者の決定
 ・テレワークの形態
 ・労務管理制度の見直し
 ・社内制度・ルールの整備
 ・システムの準備
 ・文書の電子化
 ・執務環境の整備
 ・教育・研修
5.試行導入
6.効果測定
7.本格導入

テレワークに「これをやれば必ず成功する」という正解はありません。テレワークは試験的に導入し、評価・見直しをおこないながら対象範囲を拡大するのがおすすめです。

導入・運用方法について詳しく知りたい場合は、厚生労働省の下記ページを参考にしてください。

テレワーク導入の検討と経営判断

テレワークの導入にあたって、「なぜテレワークを導入するのか(目的)」を明確にして検討することが重要です。テレワークの導入目的は、得られる導入効果から考えるとわかりやすいです。テレワークの導入効果は、導入目的と密接にリンクします。

テレワークの導入効果テレワークの導入目的
生産性の向上効果生産性を向上させるため
ワーク・ライフ・バランスの向上効果ワーク・ライフ・バランスを実現させるため(働き方改革の一環として)
人材確保・離職防止効果優秀な人材の獲得と離職防止、キャリア継続支援のため
コスト削減効果コスト削減のため
事業継続性の確保非常時の事業継続性の確保のため

また、テレワークの導入目的が企業の経営方針と密接にリンクしていなければ、意味はありません。テレワークの導入そのものが目的化していたり、そもそもテレワークの導入を検討していないというのは、経営を怠っているのと同じです。

経営には未来の顧客や市場をイメージして、次世代の働き方に変えることが求められています。テレワーク導入成功のカギは、トップの強い意志に他なりません。トップの強い意志がなければ、テレワーク導入は成功しません。

テレワークの導入状況と導入事例

企業におけるテレワーク導入状況の推移

出典:総務省 通信利用動向調査(2012年-2019年)

総務省の調査(通信利用動向調査)によると、テレワーク導入済み企業および今後導入予定の企業は増加傾向にあり、2018年から2019年にかけては大幅にアップしています。

また、帝国データバンクが2019年12月に実施した意識調査で「今後、働き方改革で取り組む予定の項目」を尋ねたところ「サテライトオフィスやテレワークの導入」が23.6%と最も高いスコアでした。テレワークに対する企業の関心や意識の高さがうかがえます。

出典:帝国データバンク 働き方改革に対する企業の意識調査(2019年12月)

テレワーク導入企業の事例

最後に、実際にテレワークを導入している企業の事例を紹介します。

ダンクソフト

情報サービス業のダンクソフトは従業員数25人(2016年時点)の中小企業でありながら、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスを積極的に活用しています。

在宅勤務規定を整備したうえで自宅や自宅に準じる場所での勤務を認め、全国各地に展開しているサテライトオフィスでの勤務も可能にしています。

全社常時オンライン会議システムやチャットツール、クラウドストレージの導入、在宅勤務用のモニターの貸与などを実施し、従業員が働く場所を選べる仕組みを構築しています。

カルビー

製造業はテレワークの導入が難しいといわれていますが、カルビーでは終日在宅勤務およびモバイル勤務を導入しています。

まず、2011年に営業職の直行直帰スタイルが定着したことでモバイル勤務がはじまりました。2013年夏頃からは在宅勤務のテスト導入がはじまり、2014年4月には全社に正式導入されました。

トップから従業員に対して、長時間労働とオフィスに在席することを”良し”とせず、場所を選ばず、効率よく働き、余った時間を自分への投資に使うようにメッセージを出しています。

導入に際し、従業員への啓発や情報共有のIT化、人事・労務管理のルール整備などを進めることでテレワークを実施しやすい企業風土を醸成しています。

明治安田生命

保険業界もテレワークの活用が難しいといわれていますが、明治安田生命は2015年からテレワークをトライアル実施し、2016年から本格的に導入しています。

管理監督者の約90%がテレワークを実施したことで、管理監督者のテレワークへの理解が進み、利用が広がっています。

生活者の保険契約情報というセンシティブ情報を扱うので、セキュリティ確保に重点を置いています。仮想化技術の利用と暗号化通信で情報漏洩や改ざん等を防止しています。

キャスター

宮崎県で人材派遣サービスを展開するキャスターが掲げるミッションは「リモートワークを当たり前にする」です。全国41都道府県に点在する300名以上の従業員のうち、97%が常時リモートワークを実施しています。

在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務を推進するため、IT機器の貸与や働く場所、文書管理などに関する就業規則を整備しています。

また、不安解消のために「キャスタースクエア」というオフィスを各所に開設し、対面でもコミュニケーションがとれるようになっています。

まとめ

働き方改革「柔軟な働き方がしやすい環境整備」において、テレワークの導入は必要不可欠。

テレワークの働き方は、主に3つ。

  • 在宅勤務
  • モバイル勤務
  • サテライトオフィス勤務

テレワークの導入効果は、大きく分けて5つ。

  • 業務効率・生産性の向上
  • ワーク・ライフ・バランスの向上
  • 人材確保・離職防止
  • コスト削減
  • 事業継続性の確保

テレワークの問題点は、代表的なものが4つ。

  • 労務管理・業績評価がしにくい
  • コミュニケーション不足になりやすい
  • 仕事のオン・オフの切り替えが難しい
  • 情報漏洩のリスクがある

テレワークの導入プロセスは、大きく分けて7段階。

  1. 導入の検討
  2. 推進体制の構築
  3. 現状の業務分析
  4. 導入に向けた具体的推進
  5. 試行導入
  6. 効果測定
  7. 本格導入

テレワークの導入に正解はありません。導入目的を明確にしたうえで、まずはやってみることをおすすめします。

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