福利厚生充実のメリットとデメリット。デメリットを解消する導入方法

福利厚生充実のメリットとデメリット。デメリットを解消する導入方法

採用や人材定着にも影響を与える福利厚生の充実。企業は福利厚生を通じて従業員へメッセージを発信し、それを受けとった従業員は企業への愛着をもち、企業へ貢献することが期待できます。しかし、福利厚生の充実は企業にとってメリットだけではありません。デメリットも存在します。

今回は、福利厚生の充実によって得られる効果・メリットとデメリットを把握したうえで、福利厚生を充実させる方法をまとめています。

そもそも福利厚生とは?

福利厚生とは
福利厚生とは、企業(雇用主)が従業員(労働者)に提供する、給与以外の報酬やサービスのことです。大きくは「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分類されます。福利厚生を導入・整備する目的は、従業員とその家族の生活(経済的+健康)の安定とさらなる向上です。加えて、働きやすい環境にすることで、従業員の能力発揮とその成長を支援するためです。

企業側の観点からすると、福利厚生を導入・整備することは企業の社会的信頼を高め、人材確保に役立ちます。また、有意義な福利厚生の存在は、労使関係の安定を図る上でも有効です。従業員のモチベーションやパフォーマンスを向上させることが期待できるため、工夫を凝らした福利厚生の整備を進める企業も増えています。

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福利厚生には法定福利厚生と法定外福利厚生がある

福利厚生大分類。法定福利厚生と法定外福利厚生
福利厚生は大きく分類すると「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分けられます。「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」についてそれぞれ簡単に説明します。

法定福利厚生

法定福利厚生とは、法律で企業に義務づけている福利厚生のことです。どの企業にも存在する福利厚生が、この法定福利厚生です。

法定福利厚生には、6つの種類があります。企業が必ず制定、実施しなければならない福利厚生であり、簡単にいうと社会保険料の負担です。種類によって企業負担の割合が法律で定められています。該当する法規と企業負担の割合は以下の通りです。

該当する法規と企業負担の割合
健康保険料労使折半【健康保険法】
介護保険料労使折半【健康保険法】
厚生年金保険料労使折半【厚生年金保険法】
雇用保険企業2/3
従業員1/3
【労働保険の保険料の徴収等に関する法律】
労災保険企業全額負担【労働保険の保険料の徴収等に関する法律】
子ども・子育て拠出金企業全額負担【子ども・子育て支援法】

法定外福利厚生

法定外福利厚生とは、企業が自由に選定、導入できる福利厚生のことです。法的な義務はないので、法定外福利厚生が存在しない企業もあります。企業が自由に選定できるため、その種類は多種多様です。代表的な項目を紹介します。

  • 住宅
    社宅、寮、家賃補助、住宅ローン補助など
  • 健康・医療
    人間ドック・スポーツ施設利用費補助など
  • 慶弔・災害
    弔慰金、災害見舞金、結婚祝い金など
  • 育児・介護
    法律規定の日数や条件以上の待遇を提供など
  • 自己啓発
    通信教育の提供・補助、資格取得援助金など
  • 業務・職場環境
    社内食堂・カフェの設置、在宅勤務制度など
  • 休暇
    アニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇など
  • 財産形成
    財形貯蓄、持ち株制度、各種年金保険制度など
  • 文化・体育・レクリエーション
    懇親会援助、サークル補助など

「福利厚生の充実」とは、この法定外福利厚生を企業が独自にどれだけ導入・整備をしているかを指します。
※以下、法定外福利厚生の導入・整備のことを「福利厚生の充実」という

福利厚生の充実 メリットとデメリット

福利厚生の充実 メリットとデメリット
福利厚生を充実させることは、企業側に多くの効果・メリットをもたらします。しかし、デメリットもあります。企業にとって福利厚生を充実させることの効果・メリットとデメリットをみていきましょう。

効果・メリット

福利厚生を充実させることで、大きく5つの効果・メリットが期待できます。

メリット1.人材採用効果:採用時に人材が集まりやすい

就職や転職において、求職者のほとんどが福利厚生項目を確認します。職務内容、労働条件(年休日数や年収など)とともに福利厚生の充実は、求職者の企業選びを左右します。

企業を特徴づけるようなユニークな福利厚生制度や、欲しい人材が魅力を感じそうな制度を導入すれば、採用活動におけるアドバンテージのひとつにもなり得ます。福利厚生が充実していれば、法定外福利厚生がない企業と比べて優秀な人材が集まりやすくなり、共感度の高い人材との接点の創出にも役立つでしょう。

メリット2.人材定着効果:従業員満足度、エンゲージメントの向上

福利厚生の充実によってワーク・ライフ・バランスが実現できると、従業員の満足度は高まります。仕事と生活の調和がとれるということは、業務の効率化を推し進めプライベートの時間を充実したものにします。有限な時間を有意義に使えることで、働く意欲が向上します。

さらに、福利厚生の充実は労働環境を改善します。働きやすく仕事のしやすい労働環境で働ける従業員は、自らの能力を発揮し、高い集中力をもって仕事に取り組むことができます。

そのような働きができる従業員は、自分の働きが企業や組織の繁栄に貢献しているという実感も得やすくなるはずです。その自己効力感は、組織への愛着(エンゲージメント)を生み出し、定着につながります。

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メリット3.生産性向上効果:従業員の健康維持・増進

福利厚生の充実によって、十分な休養をとり、規則正しい生活を送れるようサポートできれば、従業員の健康維持が可能です。ストレス社会といわれる環境の中で、リラクゼーションサービス、メンタルヘルスのカウンセリング、運動施設などの福利厚生を充実させることで心身の健康増進を支援できます。このような従業員の健康維持・増進は、生産性向上に寄与します。

逆に従業員の身体や心の不調は、本人だけでなく組織全体にも悪影響を与え、生産性を落とします。心身の不調が原因となる突然の離職は、組織にさらなる生産性低下をもたらします。福利厚生の充実は、心身ともに健康で個々の能力を十分に発揮できる生産性の高い組織づくりにも有効です。

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メリット4.イメージアップ効果:企業の信頼性の向上

福利厚生への注目度は社会的に高まっています。福利厚生が充実しているということは、安定した経営基盤の証明にもなるでしょう。

それだけでなく、経営スタンスとしての健康経営の実践、従業員重視の経営、人材育成力などは社会へのアピール要素にもなります。間接的かもしれませんが、従業員を大事にする福利厚生の充実は、企業の信頼性の向上にもつながります。

メリット5.節税効果:法人税の節約

福利厚生の充実にかかる費用は、条件付きではありますが非課税対象です。福利厚生費として計上することができれば、法人税の節税効果があります。

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デメリット

福利厚生の充実にあたって、企業にとってデメリットが3点あります。これらデメリットの解消が、これからの福利厚生の充実におけるポイントになります。

デメリット1.費用負担が大きい

福利厚生の充実には、当然ながら費用がかかります。どのような法定外福利厚生を導入するかにもよりますが、新しく制度を導入するごとに、費用はかさんでいきます。特に資金に余裕がない企業は、この費用負担がネックになり福利厚生を充実させることができていません。

また少子高齢化社会ということもあり、法定福利厚生の社会保険料は増加傾向にあります。そのことも影響して、法定外福利厚生にかける費用が減少しています。

日本経済団体連合会の調査によると、従業員1人1ヶ月あたりの法定福利厚生費は増加し続けており、2018年度は88,188円で過去最高の費用負担です。一方、法定外福利厚生費は2007年度から8年連続で減少。2015年度と2018年度こそ増加に転じたものの、2018年度は25.369円でピーク時の1996年度(29,756円)から4,387円減らしています。

法定福利厚生費も法定外福利厚生費も、企業にとってはどちらも福利厚生にかかる費用です。法定福利厚生は高いからやめるというわけにはいきません。そうなると福利厚生の充実にまで費用を回すことができず、あきらめてしまうケースがあります。

デメリット2.管理負担が大きい

福利厚生を充実させると、管理が煩雑になります。それぞれの福利厚生制度で処理方法が異なります。申請書類の作成や受付、利用機関とのやりとり、利用後の処理など作業は膨大です。

福利厚生は導入をしたら終わりではありません。従業員に利用されてはじめて「充実している」といえます。利用率が低い福利厚生は、無駄コストです。ただし、利用されればされるほど、担当者の負担は大きくなります。

また、時代に合わせて内容を見直す必要も出てきます。その見直し作業も負担になり、結果として福利厚生の導入・充実そのものを見送ってしまうケースがあります。

デメリット3.すべての従業員ニーズに応えることが難しい

福利厚生は、充実できても万能ではありません。従業員のライフステージ、ライフスタイル、嗜好は多様です。すべての従業員のニーズを満たす福利厚生の提供は、とても難しいものです。

従業員数が多くなるほど、利用する人と、利用しない(できない)人の偏りが出やすくなります。欲しい制度がない、利用できる制度がないと従業員が不満を抱くことは、デメリットです。

本来は従業員満足度を高めるはずの福利厚生が、その制度の不公平感から企業に対する不満のタネになる可能性はあります。これはどのような福利厚生に対してもいえることなので、福利厚生の導入・充実を踏みとどまるケースがあります。

福利厚生は企業選びの基準のひとつになっている

福利厚生は会社選びの基準のひとつになっている
福利厚生の充実は、求職者の企業選びの大きな検討材料のひとつになっています。

就職・転職サイトを運営するマイナビの2019年卒の学生を対象とした調査があります。「企業選択の際に何を重視するか」という質問に対し、もっとも多かった回答が「福利厚生が充実している」という回答でした(14.3%)。

前年2018年卒対象の調査では、「福利厚生が充実している」は上位でありながらも4位でした(11.5%)。2019年卒対象の調査では、例年上位に上がっている「企業経営が安定している(13.1%)」「社員の人間関係が良い(13.8%)」を抜く結果となりました。

福利厚生の充実は、確実に選ばれる企業の条件になっています。

デメリットを解消する福利厚生の充実方法

デメリットを解消する福利厚生の充実方法
福利厚生の充実には、大きく3つのデメリットがあります。福利厚生の充実を図りたくても、費用負担や業務負担がネックになる企業は多いでしょう。また、従業員満足度を高めるはずが、かえって従業員不満を生む可能性もあります。

これらのデメリットを少しでも解消しながら福利厚生を充実させる方法があります。福利厚生代行サービス企業が提供する、パッケージプランの活用です。

パッケージプランの活用

できるだけ費用負担を抑えて管理負担を小さく福利厚生を充実させるのであれば、福利厚生代行サービス企業が提供するパッケージプランがおすすめです。福利厚生代行サービス企業が母体(登録企業全体)となることで、利用可能サービスの多種多様化、低価格化、業務委託を実現しています。

パッケージプランであってもすべての従業員のニーズに応えることは難しいですが、幅広い福利厚生サービスを揃えているので「まったく利用できない」というケースは、ほぼありません。

外部委託(アウトソーシング)は費用がかさむと思われがちですが、福利厚生サービスの月間定額料金は従業員1人あたり数百円で導入可能です。申請や利用による煩雑な業務も必要ありません。自社ですべてを行う場合と比較すると、内容、人件費、業務ともに費用対効果が高くなります。

すでにパッケージされているプランですので自由はききませんが、そのぶん導入は容易です。それでは、パッケージプランを提供している福利厚生代行サービス企業4社を紹介します。

福利厚生代行サービスおすすめの4社

福利厚生代行サービスの主な参入事業者は、4社あります。リロクラブ、イーウェル、ベネフィット・ワン、リソルライフサポートの4社です。

この4社で市場シェア約9割(売上高ベース)を占めています(※)。
※株式会社矢野経済研究所,人事・総務関連業務のアウトソーシングビジネス調査レポート2018,2018年3月刊

福利厚生代行サービスを検討する際は、この4社の中で気になるアウトソーサー(受託企業)に相談をしてみると間違いないでしょう。

一覧で比較をしたい方は以下の比較表のダウンロードをお願いします。
■福利厚生代行サービスの比較表をダウンロード

 

リロクラブ 「福利厚生倶楽部」

福利厚生ならリロクラブ
福利厚生パッケージサービス「福利厚生倶楽部」を提供しているリロクラブ。地方の福利厚生に対するニーズが高まっていることを受け、地方事業所の新設をはじめ、地方で使える福利厚生倶楽部のメニューの拡充、地域別に会報誌を発行するなど、地方会員へのフォローに力を入れています。

全国どこでも使える福利厚生で、エリアの網羅性は業界トップクラスです。

基本情報
契約団体数 14,800団体(2021年)
契約会員数 638万人(2021年)
月会費従業員1名あたり800円~
(※別途入会金3万円~発生します。)

イーウェル 「WELBOX」

イーウェル
福利厚生パッケージサービス「WELBOX」を提供しているイーウェル。近年の健康経営推進ニーズにあわせて、健康経営の支援に注力しています。

基本情報
契約団体数1,284団体(2021年)
契約会員数407万人超(2021年)
月会費不明(お問い合わせください)

ベネフィット・ワン 「ベネフィット・ステーション」

ベネフィット・ワン
福利厚生パッケージサービス「ベネフィット・ステーション」を提供しているベネフィット・ワン。福利厚生代行サービスを提供する企業の中で、唯一単体上場を果たしています。

基本情報
契約団体数13,005団体(2021年)
契約会員数1,011万人(2021年)
月会費従業員1名あたり1,000円~
(※別途入会金2万円~発生します。)

リソルライフサポート「ライフサポート倶楽部」

リソルライフサポート
福利厚生パッケージサービス「ライフサポート倶楽部」を提供しているリソルライフサポート。直営の健康増進施設「リソル生命の森」や同グループが運営するゴルフ場を利用することができます。

基本情報
契約団体数約2,000団体(2021年)
契約会員数約200万人(2021年)
月会費従業員1名あたり350円~

福利厚生の充実につきもののデメリットを考慮して、福利厚生導入のプロフェッショナルであるアウトソーサーに相談してみるといいでしょう。

独自の福利厚生を展開する企業

独自の福利厚生を展開する企業例
最後に、ユニークな福利厚生を展開する企業を2社紹介します。先行企業のアイデアを参考にして導入を検討することもひとつの方法です。従業員や業務の特徴を最大限に考慮した「自社ならでは」の福利厚生を導入する企業もあります。

サイボウズ

サイボウズは、2018年からライフステージの変化に合わせて働き方を選択できる「働き方宣言制度」を導入しました。働く場所と時間を自ら決めて宣言する制度です。また「育自分休暇(※)」を制定したことが話題になりました。最長6年間はサイボウズへの復帰が可能な制度です。
(※)育自分休暇とは:35歳以下で、転職や留学等、環境を変えて自分を成長させるために退職する人が対象。最長6年間は復帰が可能

2012年からは副(複)業を許可しています。すべて人事戦略に紐づいた斬新な制度です。どれもルールと管理は必要ですが、特別費用負担はありません。工夫次第で、費用負担なく独自の福利厚生を導入することはできます。

サイバーエージェント

サイバーエージェントは、出産・育児をする女性社員のための福利厚生パッケージ「macalon」、技術者支援パッケージ「ENERGY」などを独自に創り出しています。

「macalon」は、女性が出産・育児を経てもキャリアを継続できる休暇制度や補助が充実しています。「ENERGY」は、技術者が能力を向上し、発揮できる労働環境を整備する制度のパッケージです。どちらもサイバーエージェントらしい独自の制度です。

ユニークで独特な福利厚生を取り入れている企業10選

福利厚生は充実させることが目的ではありません。自社の課題に対して福利厚生の充実がソリューションになりえるのであれば、検討してみてください。きっと効果・メリットを実感できるはずです。