ワーク・ライフ・バランスとウェルビーイング。どのように働き方が変わる?

ワーク・ライフ・バランスとウェルビーイング。どのように働き方が変わる?

時代とともに働き方が変わり、「ワーク・ライフ・バランス(Work Life Balance)」が再注目されています。ワーク・ライフ・バランスは、仕事と生活のバランスがとれている豊かな生活を送ることであり、社会全体の幸福度を向上させる重要な考え方です。今回はワーク・ライフ・バランスのメリット、具体的な取り組みをいくつか紹介します。

ワーク・ライフ・バランスとは

ワーク・ライフ・バランス(Work Life Balance)とは

ワーク・ライフ・バランス(Work Life Balance)とは、仕事と生活の調和を意味します。調和とは個人的にバランスがとれている状態であって、100:0といった偏った状態や50:50といった半々の状態が正しいというわけではありません。

世代やライフイベント、個人の状況によってバランスのとり方は変わります。

このワーク・ライフ・バランスの実現には、働く人がやりがいをもって働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭生活においても育児や介護などの時間や、自己啓発のためなど自分の時間をもつことが可能な労働環境が不可欠です。

これまでの日本企業の働き方のように、家庭生活を犠牲にして仕事に人生(時間)の大半を割くような働き方ではなく、自分と家族を大切にして、地域社会などとも交流をもてるような豊かな生活ができることをワーク・ライフ・バランスがとれているといいます。

ワーク・ライフ・バランスが注目される背景

ワーク・ライフ・バランスが注目される背景

ワーク・ライフ・バランスを実現する労働環境の整備は、経営全体の課題です。

社会の変化は、労働環境の変革を迫っています。人口動態、世帯のあり方、価値創造のやり方、そして働き方の変化など、社会の変化がワークとライフのバランスにも大きな影響を与えています。特に以下の変化とワーク・ライフ・バランスは、密接な関係があります。

長時間労働の見直し

諸外国における年平均労働時間の推移(2015-2019)

出典:OECD.Stat Average annual hours actually worked per worker

年平均労働時間を国際比較すると、日本は欧州諸国より労働時間が長く、2019年の調査結果では1,644時間/年でした。

イギリス・フランス・ドイツ・アメリカ・韓国と比べると、韓国(1,967時間)アメリカ(1,779時間)に次ぐ長時間労働です。日本では徐々に長時間労働は是正されていますが、労働時間が成果に比例するといった誤った働き方がまだまだ根強く残っています

事実、(2018年の数字ではありますが)日本の長時間労働は、成果に直結していません。1時間あたりの労働生産性はOECD加盟国36ヶ国中21位の46.8ドルで、OECD平均の56.1ドルを下回っています。

先の5ヶ国で比べると、時間あたりの労働生産性が最も高い国はアメリカ(74.7ドル)次いでドイツ(72.9ドル)フランス(72.2ドル)イギリス(60.6ドル)、その次が日本です。

時間あたり労働生産性の国際比較

出典:日本生産性本部 労働生産性の国際比較2019

日本はドイツ・フランス・イギリスよりも長く働いているにもかかわらず、就業1時間あたりの労働生産性は低く、アメリカには時間あたりの労働生産性で27.9ドルの差をつけられています(アメリカ:日本=1:0.63)。

これは、非効率な働き方をしているということです。働き方改革によってこのような非効率な働き方が見直され、ワーク・ライフ・バランスにも大きな影響を与えています。

男女共同参画社会

国別男女別 労働時間内訳

出典:OECD.Stat Time spent in paid and unpaid work, by sex

日本は昔から「結婚した女性は専業主婦になる」という価値観が広がっており、家事や育児は女性の役割という性別役割分担意識が存在しています。

このような固定的な意識もあり、女性は働きに出たとしても結婚を機に仕事を辞めるか、パートタイムなど時間の限定された職に就くことが多くなっていました。

いまだに日本にはこの性別役割分担意識が根強いのか、国別の男女別の労働時間内訳をみると、日本人男性が家事や育児(unpaid work)に費やしている時間は1日41分です。一方、日本人女性の家事や育児の時間は1日224分で、他国と同水準です。

日本より年平均労働時間の長い韓国やアメリカの男性をみると、韓国人男性の家事や育児の時間は1日49分、アメリカ人男性は1日146分といずれも日本人男性よりも家事や育児に時間を費やしています。

つまり、家事や育児にどれだけ時間を費やすかは給与労働(paid work)時間の長さに関係なく、意識(価値観)の違いです。

その一方で、男女平等参画社会基本法の制定(1999年施行)などを契機に女性の正規雇用の割合が増え、共働き世帯は年々増加しています。2019年には共働き世帯が1,245万世帯になり、専業主婦世帯575万世帯を大きく上回っています。

専業主婦世帯と共働き世帯数の推移(2015-2019)

出典:労働政策研究・研修機構 専業主婦世帯と共働き世帯

このような背景もあり、家のことは女性がやるという偏った考え方は薄くなりつつあり、男女問わず、給与労働以外の家事・育児・介護などにも時間を費やすことが一般的になりつつあります(男女共同参画を促進する社会環境)。

以前に比べて男女問わず家庭生活に多く時間を割きたいと考える従業員の割合が増えてきたことは、ワーク・ライフ・バランスに大きな影響を与えています。

核家族化

従来の日本社会では、家族の形態は大家族であることが大半でした。高齢となった祖父母が孫の面倒をみることもあり、また兄や姉が、弟や妹の面倒をみることもありました。

しかし現在の日本は少子高齢化が急速に進み、同時に核家族化も進んでいます。2016年の調査結果では、核家族世帯が全体の60.5%を占め、三世代世帯(5.9%)その他の世帯(6.7%)を大きく上回っています。

世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移

出典:厚生労働省 グラフでみる世帯の状況(2018年,PDF資料)

子どもの面倒をみることができるのは親世代のみとなっただけでなく、高齢になった両親の介護も親世代が負担する必要が生じています。

結果として、親世代は仕事にのみ集中するのではなく、育児や介護に時間を必要とするようになり、正規雇用従業員としてフルタイム(そして長時間労働)で働くことが難しくなってきました。

このような家庭事情による離職や非正規雇用の増加を重くみた国と企業が、法改正と制度の柔軟な変更をもって多様な働き方ができる労働環境を整える動きが出ています。

仕事と家庭を対立項として考えるのではなく両立できる労働環境の出現が、ワーク・ライフ・バランスに大きな影響を与えています。

付加価値の共創

家庭を取り巻く環境変化だけではなく、求められる労働の変化もワーク・ライフ・バランスに大きな影響を与えています。

従来の日本企業の多くでは、同じ時間・場所に出社し、上司からの指示を受け、一つの企業で成果を出すことが当たり前でした。しかし近年では、働く時間と場所は問わず、多様な人材とともに、複数の企業とともに付加価値を共創する企業が増えてきました。

変化する社会の中では、企業は一社単独で価値創造をして事業を成長させることに限界があります。他業種とのコラボレーションやビジネスエコシステムの中で複数社と共存共栄するなど、複数の領域をつないで付加価値を創る働き方が推奨されはじめています。

複数の領域をつないで新しいことを考えるためには、定型的な業務ばかりを「自前主義」で行っていてはいけません。

同じような考えをもった人が集まるオフィスや定型的な業務から離れる時間を作り、それぞれが必要だと考える資格の取得や新しい学び、他業種との交流機会などをもつようにすることで、新しい価値を創造できる時代です。

ワーク・ライフ・バランスのメリット

ワーク・ライフ・バランスのメリット

ワーク・ライフ・バランスに不可欠である健全な労働環境づくりは、企業にとってコストではなく投資です。ワーク・ライフ・バランスを実現させると、企業に大きなメリットがあります。

ワーク・ライフ・バランスのメリットを3つ紹介します。

メリット1.離職防止

家庭を犠牲にしない働き方は、転勤やフルタイム勤務が困難となり退職せざるを得ない従業員の離職を、ある程度防止することができます。従業員が多様な働き方を選択できれば、労働条件が合わないことが原因の離職は減ります。

多様な働き方への対応により、優秀な人材の確保と定着、労働力の安定的な確保が可能となります。

メリット2.業務効率の改善

仕事と生活のバランスをとるためには、仕事に対する時間の使い方を意識する必要があります。仕事をする時間は限られていますが、処理しなくてはならない業務量は変わりません。

そのため、業務をより短時間で終わらせられるように、効率化した仕組みを考えなければなりません。無駄な業務プロセス・会議・訪問などの削減、メール処理や長電話の時間短縮、なくなっても大きな影響が出ない業務の廃止やアウトソーシングなど。

従来通りのやり方に縛られることなく業務を棚卸しして、業務を効率的にすることによって、結果的に企業としての生産性が向上します。

メリット3.従業員のウェルビーイング向上

業務に拘束される時間が減少し、自分のため、あるいは家族のために使うことができる時間が増えるため、従業員が幸せを感じやすくなります。

仕事と生活のバランスがとれる健全な労働環境は、従業員のウェルビーイング(well-being:幸福、身体的・精神的・社会的に良好な状態)を向上させます。

私生活が充実することで仕事のパフォーマンスが上がる。仕事のパフォーマンスが上がることで私生活でも心のゆとりがもてる。心のゆとりがもてると、新たなことにチャレンジできる…

このような好循環が従業員のウェルビーイングを向上させ、生産性を高めます。十分な休暇があることによって、仕事と私生活のオンオフがはっきりし、より業務に熱意をもって向き合いやすくなることも、大きなメリットです。

ワーク・ライフ・バランスを実現する具体的な取り組み

ワーク・ライフ・バランスを実現する具体的な取り組み

具体的にワーク・ライフ・バランスを実現する取り組みをいくつか紹介します。以下にあげることがすべてではありませんが、キーワードは「時間」「場所」「制度」です。

時間を意識する残業理由書・残業事前申請制の導入

残業理由を報告させることで残業時間を月30時間以上削減できたという事例があります。残業理由書・残業事前申請制の導入により、上司に説明できない仕事内容(緊急度・重要度が低い業務)で残業をしている従業員が非常に多かったことが判明しました。

加えて、残業対策委員会において、管理監督者よりも早くオフィスを出ることをためらう雰囲気があった(付き合い残業の常態化)という報告もありました。

このような問題を解決するために、管理監督者自身が率先してワーク・ライフ・バランスを推進していく行動を示すことが重要です。

また、残業理由書はその書類の提出が重要というわけではありません。業務の何に多くの時間をとられているのかを知ることが目的です。

残業理由の報告は、時間を意識するということです。生産的でなくなった過去のものは捨てていかなければ、業務時間(残業時間)は増え続けます。時間を意識して業務の棚卸し・仕分けが進めば、ワーク・ライフ・バランスの実現に近づきます。

長時間労働の原因は何なのか?日本人の労働実態と問題点

働く時間を固定しない短時間勤務の導入

短時間勤務の具体的な導入方法としては、1日に働く労働時間が6時間の正規従業員を新たに採用するか、現在在籍している従業員全員から希望者を募り、労働時間の選択をしてもらいます。

そのためには、勤務時間限定正社員という人事上の定義を作ります。定義は「所定労働時間がフルタイム(8時間)ではない従業員」または「残業を免除する従業員」とします。

このフルタイム以外の従業員(勤務時間限定正社員)を導入することで、柔軟な人事制度を構築することができます。重要なことは、勤務時間限定正社員の評価を下げない人事評価制度をセットで用意することです。

仕事を働いた時間で評価するのでは、短時間勤務の導入意味がありません。時給的な考え方ではなく、成果(アウトプット)で評価をする人事評価制度とセットで短時間勤務を導入する必要があります。

また、勤務時間限定正社員からフルタイムの正規従業員にいつでも戻れるようにしておく制度の構築も必須です。

従業員の誰もがいつでも短時間勤務の制度を活用でき、公平な評価を受けられるという状態を構築しておけば、ワーク・ライフ・バランスの実現に近づきます。

【総務人事担当者必読】短時間勤務(時短勤務)とは?制度をわかりやすく解説

働く場所を固定しないテレワークの推進

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、日本企業でも急速に普及したテレワーク。どうしてもテレワークができない業務に従事する人も一部存在しますが、多くの業界・業種でテレワークが実施されています。

働く場所を固定しないテレワークは、ワーク・ライフ・バランスの実現と深い関係があります。テレワークによって、勤務時間限定正社員からフルタイム勤務へ戻ったという事例もあります。

テレワークの導入効果について、詳しくはこちらをあわせてご覧ください。

テレワークの採用で生産性の向上を。テレワークの導入効果

男性の育児休業取得の推進

育児休業は、原則として子供が1歳に達する日の前日まで休業することが可能な制度です。女性従業員が取得するものという認識が強いですが、男性従業員の育児休業取得も当然法律的には可能です。

先のデータで示したように、日本人男性の家事や育児時間は世界的にみて低水準です(41分/日)。もっと男性が家事や育児に参画しなければ、女性にばかり負担がかかります。女性にばかり負担がかかる結果、女性はフルタイムの仕事から遠ざかっていきます。

まずは、男性の管理監督者が率先して育児休業を取得したり、男性従業員の育児休業をとりやすくする環境づくりが必要です。

育児休業の取得が男女とも当たり前になれば、出産・育児をきっかけに離職を選択する人材が減ります。制度を有効に使えば、ワーク・ライフ・バランスの実現に近づくことができます。

育児・介護休業法とは?休業取得がしづらい背景と改善のための法改正

福利厚生制度の充実

福利厚生制度の充実は、健全な労働環境をつくります。企業が独自に導入をする法定外の福利厚生制度は、そのすべてが従業員の身体的・精神的・社会的に良好な状態に寄与するもの、すなわちウェルビーイングの向上につながるものです。

福利厚生制度の充実は、ワーク・ライフ・バランスの実現に深く関係します。福利厚生について、詳しくはこちらをあわせてご覧ください。

福利厚生で人気の種類一覧。福利厚生とは?の疑問にすべて答えます

まとめ

ワーク・ライフ・バランス(Work Life Balance)のまとめ

時代とともに働き方が変わり、さらに新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大で大きく変わった働き方。そのような中で、ワーク・ライフ・バランスが再注目。

ワーク・ライフ・バランスと密接な関係がある変化は、大きく4つ。

  • 長時間労働の見直し
  • 男女共同参画社会
  • 核家族化
  • 付加価値の共創

ワーク・ライフ・バランスのメリットは、3つ

  • 離職防止
  • 業務効率の改善、生産性の向上
  • 従業員のウェルビーイング向上

ワーク・ライフ・バランスを実現する具体的な取り組み。例えば、

  • 時間を意識する残業理由書・残業事前申請制の導入
  • 働く時間を固定しない短時間勤務の導入
  • 働く場所を固定しないテレワークの推進
  • 男性の育児休業取得の推進
  • 福利厚生制度の充実

新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの企業の働き方や人事制度を変えました。先進的な日本の企業は働く時間や場所を制限することなく、生産的な働き方に本格的に舵を切っています。

はじめのうちは慣れない働き方で生産性が落ちるという意見があったとしても、慣れてしまえば生産性は回復するか向上し、今までどれだけ非生産的な働き方をしていたかに気付きます。

このような気付きがきっかけになり、仕事のために家庭や自分の時間を犠牲にする働き方は見直されつつあります。

仕事と生活の調和が、これから先の生き方の重要なキーワードになることは間違いありません。ワーク・ライフ・バランスが実現できる健全な労働環境づくりは、企業の活力や競争力の源泉である人材への投資です。

福利厚生制度の充実など、できるところから積極的に検討をしてみてください。

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