ワーク・ライフ・バランスの正しい取り組み方とメリット・問題点

ワーク・ライフ・バランスの正しい取り組み方とメリット・問題点

近年、声高に叫ばれる働き方改革の一環として挙げられるワーク・ライフ・バランスの重要性ですが、人事の現場では、具体的にどのような人事制度改革を行うかが問題となっています。そこでワーク・ライフ・バランスを実現するためにできる、具体的な人事制度の導入・活用事例を紹介します。

ワーク・ライフ・バランスの定義

ワーク・ライフ・バランスの定義
ワーク・ライフ・バランスの定義とは、仕事と生活の調和がとれているかどうかということです。

具体的には、働く個々人が、やりがいをもって働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭生活においても介護や育児などの時間や、自己啓発のための勉強の時間をもつことのように、豊かな社会生活を送ることが可能な労働環境のことを指します。

これまでの高度経済成長期のように、家庭生活を犠牲にしてまで働くのではなく、家族を大切にして、地域社会などとも交流をもてるようなゆとりのある生活ができることをワーク・ライフ・バランスがとれているといいます。

ワーク・ライフ・バランスが求められる背景

長時間労働による過労死、パワーハラスメントと過重労働による女性新入社員の自殺事件、うつ病をはじめとした長時間労働がきっかけとなって発症する精神疾患、ワーカホリックとなることによって引き起こされる家庭不和が原因での離婚問題、これらの仕事が原因による家庭生活の崩壊や若者の自殺などが問題となり、ワーク・ライフ・バランスの重要性が認識されるようになりました。

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さらにいまの日本を取り巻く環境として出生率の低下とミドル人材の介護離職の問題があります。男性が家事・育児にこれまで以上に参加することで女性の家事負担を減らし、女性が働くチャンスを増やすとともに、介護が必要となった従業員が介護休暇を取得することが可能な労働環境を整備する必要性があります。

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働き方改革

働き方改革のテーマは4つあります。

1つ目が、柔軟な働き方の実現です。テレワークのように自宅で仕事ができるシステムを普及させ、柔軟な働き方の導入を目指しています。

2つ目が、長時間労働の是正です。長時間労働によって労働者が健康を脅かされてはならず、家庭生活を脅かされてはならないという考え方です。

3つ目が、女性や高齢者の活用です。一億総活躍社会の実現のために、女性と高齢者の活用を積極的に推進し、誰もが働き甲斐のある社会づくりを目指します。

4つ目が、子育て・介護や病気の治療と仕事の両立で、多様な働き方の促進と積極的支援を推進します。

働き方改革の中でも大きなウェイトを占めるのが、ワーク・ライフ・バランスです。

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ワーク・ライフ・バランスを構成する2つの概念

ワーク・ライフ・バランスについては、重要な二つの概念が存在します。ファミリー・フレンドリーと、男女均等推進です。どちらも重要な概念で、どちらがかけてもワーク・ライフ・バランスは実現しません。

ファミリー・フレンドリー

ファミリー・フレンドリー企業の表彰
ファミリー・フレンドリーとは、厚生労働省では「仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度をもち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できる企業」としています。
一般的な人事用語でいえば、仕事と家庭生活の両立支援と解釈されます。

人事労務の担当者にとっては、労働者が急に休業することになったとしても、上手くカバーできる制度をしっかりと運用できる状態になっているか?という意味です。

特に厚生労働省は、ファミリー・フレンドリー企業の表彰をおこなっており、基準に達している企業に対しては表彰をおこなっています。その選考基準に関しては、法定で定められている基準よりも休暇日数などを優遇し、また、制度を活用する従業員が実際にいるということが表彰の基準となっています。

ただ人事制度を作成して形だけ就業規則を作るだけでは、表彰の対象とはなりません。

男女均等推進

男女均等推進は「男女の性別関係なく能力を発揮するための均等な機会が与えられること」と「男女の性別関係なく評価および待遇について差別されないこと」を指します。

男女雇用機会均等法が1985年に施行されましたが、それ以降は法改正を重ね、女性の募集および採用・配置・昇進・教育訓練の機会・定年・解雇については女性も男性と同様の機会を確保することが努力義務から法的義務となりました。

女性と男性はほとんど同じ処遇にしなければならないということです。

ワーク・ライフ・バランスの具体例

ワーク・ライフ・バランスの具体的な導入事例として、過重労働の解消の具体的な手段を今回は紹介します。

まず過重労働の解消のために、現場に残業時間と残業をする必要性を添えて書類を提出させます。提出する書類の名称は残業理由書でも、残業申請書でも構いません。必ず残業をした日付、残業時間と残業に至った理由を記入できる書式にします。

上記の残業理由書の提出を全従業員に義務付けます。同時に管理監督者(課長職以上)に労働基準法についての研修会を開催し、過重労働を撲滅する必要性の理解を深めてもらいます。

重要なことは、残業理由書を管理監督者が中身を確認して、どんな仕事をしていたか内容を正確に把握することです。その把握した内容を管理監督者から人事部に全て報告させます。

事務系職種の場合は特に、無駄なダラダラ残業が内容の多くを占める結果となります。もちろん、初期の段階では残業代を支給しなければなりません。仮に無駄な残業時間が発生していたとしても適切に残業代の支払いをおこなってください。

ワーク・ライフ・バランスの具体例

肝心なのはここからで、残業の理由を人事部で正確に把握します。各現場の残業をしなければならなかった理由を精査して、データで見える化をおこない、経営者に報告の場を設けます

データができ上がり次第、残業対策委員会の設置を行います。出席者は経営者、人事、現場の管理監督者、労働組合の委員長と書記長です。議事録を毎回、必ず記録します。議事録を作成する目的は、もし労働基準監督署に監査を受けた際、残業を減らそうと努力していたという実績を証明するためです。

一般の従業員は絶対に参加させてはいけません。無駄な残業を行う従業員を、直接、質問攻めにするなどの行為をしてはいけません。

ワーク・ライフ・バランスの具体例

一般の従業員を会議に参加させると、残業に関する責任は全て管理監督者の責任であると明確化することができません。労働基準監督署から監査を受けた際、非常識な企業であるという認識を受けてしまいます。

残業対策委員会に、企業として許容できる残業時間を超えて残業を行う従業員がいる部署の管理監督者に出席の指示を人事からおこない、報告をさせます。残業とは管理監督者が、その指揮命令権を行使して、部下に残業をさせる命令による行為です。過重労働に関する全ての責任は、管理監督者にあります。

従業員の責任を誤って追求することは絶対に避けましょう。残業時間の長い従業員の気持ちは「私は頑張って残業をしている」という気持ちです。その気持ちを無視して叱責すれば、現場の士気を下げてしまいます。残業対策自体が頓挫してしまう可能性があるので、絶対に避けましょう。

効果は絶大!残業理由書を導入した結果、月30時間以上の残業時間を削減できた

ある企業では、残業理由を細かく報告させることで残業時間は毎月30時間以上削減できました。説明できない仕事内容で残業をしている従業員が非常に多いことがわかったためです。

また、実際に残業対策委員会の報告内容で最も多かったのは、管理監督者よりも早くオフィスを出ることをためらう雰囲気があったという理由でした。いわゆる付き合い残業の常態化が営業職では非常に多かったのです。

この付き合い残業の常態化を避けるためには、管理監督者自身が定時には退勤するようにすることです。ノー残業デーの実施などを積極的に進めることで、事業所全体で一斉に退勤するという雰囲気を作るようにしましょう。

「ノー残業デー」導入のメリットと形骸化させないためのポイント

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より残業時間を削減するために必要なルールとは

残業の事前申請を徹底させましょう。具体的には所定労働時間の終了の2時間前に残業の申請を従業員から申請させ、それ以降に残業の申請をしてきた場合には受け付けないようにします。

このルールを破って、もしもどうしても残業をしなければならない理由が生じたときは、管理監督者が責任をもって部下の代わりに残業をするような体制にします。

管理監督者は課長職以上のものなので、残業時間の管理の対象にはなりませんので、労働基準監督署と労働組合に厳しく非難されることもありません。また残業が発生してしまうことそのものが管理監督者の責任であるという理解促進の観点からも有効な手段です。

管理監督者の責任感を養成すると同時に、部下も課長職に残業をさせないようにするために、仕事の効率化を率先して図るようになります。

時間を定めてパソコンの電源を強制的にシャットダウンするような措置も非常に有効です。そこまでいかなくとも、定時後にインターネットへの接続を強制的に断ち切るだけで従業員が自主的に帰るようになった事例もあります。

不必要な残業を減らすためには、単純なことでも徹底することが大切です。

育児休業

育児休業は、原則として子供が1歳に達する日の前日まで休業することが可能な制度です。例外として、保育園に子供が入れなかった場合や育児をする予定であったものが死亡・怪我・離婚等の特殊な事情が発生した場合、子が2歳に達する日の前日まで延長することが可能です。

女性が取得するものという認識が強いですが、男性の育児休業も当然法律的には取得可能です。また実子でなく養子を迎え入れる場合にも適用する必要があります。

企業側は育児休業の申し出が従業員からあった場合には原則として拒否することができません。しかし、労使協定を結ぶことで条件を付けて取得を拒否することは可能です。労使協定を結んでいないにも関わらず、拒否することはできないので注意が必要です。

拒否できるものは、1年を超えて継続雇用することが見込まれない従業員と、勤続年数が1年に満たない従業員、週に2日を超えて雇用されることが見込まれない従業員(具体的には日雇いや請負)の育休取得を拒否することができます。

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短時間勤務

短時間勤務の企業側にとってのメリットは、「優秀な人材の確保」「従業員の定着率の向上」「仕事と育児や介護の両立(ワーク・ライフ・バランス)支援」が可能な点です。具体的な導入方法としては、1日に働く労働時間が6時間の正規従業員を新たに採用するか、現在在籍している従業員全員から希望者を募り、労働時間の選択をしてもらいます。

名称は勤務時間限定正社員という人事上の定義を作ります。定義は「所定労働時間がフルタイム(8時間)ではない従業員」または「残業を免除する従業員」とします。労働時間の長短によって多様な正社員を企業に在籍させることで、社内の人材の多様化を図ることもできます。

このフルタイム以外の従業員を導入することで、柔軟な人事制度を構築することができます。重要なことは、勤務時間限定正社員の人事考課を下げず、独自の人事考課を用意することです。

フルタイムの従業員に比べて勤務時間限定正社員は、労働時間が短くなります。勤務時間限定正社員とフルタイムの正規従業員を、同じ人事考課で評価すると必ず勤務時間限定正社員の考課が下がります。

これでは短時間勤務の意味がありません。かといってフルタイムで働く従業員からすれば不満が出ます。給与ではなく賞与の支給金額で大幅に差をつけるなどの処置を行いましょう。給与は労働基準法上、差を付けたり、昇給に大きな差をつけることは難しいですが、賞与の支給金額については調整が可能です。

また、勤務時間限定正社員からフルタイムの正規従業員にいつでも戻れるようにしておく制度の構築も必須です。

管理監督者(課長職以上)を除く従業員の誰もがいつでも短時間勤務の制度を活用できるという状態を構築しておくことで、人事考課に差を付けなくてもよいという理解を従業員から得ることができれば、人事考課などによる処遇の差に人事担当者が悩むこともなくなります。

誰かが1人でも理不尽な思いをする可能性がある場合には、この制度はうまくいきません。従業員全員にとってメリットがある、という体制を整えるように努めましょう。

ワーク・ライフ・バランスのメリット

ワーク・ライフ・バランスのメリット
ワーク・ライフ・バランスのメリットは、企業にとっては家庭の事情等により転勤やフルタイム勤務が困難なため、退職せざるを得ない従業員の離職を防止することによって「優秀な人材の確保と定着を行うことができる」点と、労働力の安定的な確保によって「多様な人材の活用ができる」点です。

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また、労働者側から見たメリットとしては、勤務地や残業時間を決めることができるため、安定した雇用環境の中で力を発揮できる「キャリアに対する安心感をもてる」点と、育児・介護等の事情により転勤やフルタイム勤務が困難な労働者が仕事を継続できることによる「キャリアアップの実現と継続」が可能な点にあります。

労使双方に大きなメリットが、ワーク・ライフ・バランスの実現にあります。

ワーク・ライフ・バランスの課題

ワーク・ライフ・バランスの課題は、フルタイムで全国転勤ありで働く正規従業員と、それ以外の短時間労働で働く非正規従業員の評価のバランスが上手く調整できないという点にあります。いかに不公平感のない人事制度を構築して運用するかが最大の課題です。

これまでの日本企業では、フルタイムで働く責任の重い正規従業員として働く人材と、それ以外の役割を担う非正規従業員で企業を成り立たせてきましたが、少子高齢化によってその体制を維持することが困難となっています。

ワーク・ライフ・バランスを人事制度として成り立たせ、人材を多様化させることで、少子高齢化社会を乗り越え、より強い企業となることができます。

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