長時間労働の原因は何なのか?日本人の労働実態と問題点
心身の疾患や過労死のリスクを高める長時間労働。日本では、働き方改革や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を機に普及しているテレワークや在宅勤務により、長時間労働は是正されつつあります。
しかし、日本の長時間労働の原因や労働環境の問題がなくなったわけではありません。
日本企業の中には長時間労働が当たり前になっている企業も少なくなく、そのような労働環境に疑問をもたない人もいるでしょう。
そもそも長時間労働とは何か、実際日本人は働きすぎているのかなど、長時間労働の実態を調査しました。
今回は、長時間労働の実態や原因、長時間労働是正の対策方法を紹介します。
目次[非表示]
- 1.長時間労働とは?定義や基準
- 1.1.法定労働時間とは?
- 1.2.目安となる「36協定」
- 2.過労死の認定基準について
- 2.1.過労死基準(過労死ライン)とは?
- 2.2.労働者災害補償保険法とは?
- 3.日本の長時間労働の現状
- 4.長時間労働がもたらすリスク
- 4.1.労災や自殺者を生むリスク
- 4.2.生産性の低下や残業増加によるコスト増大のリスク
- 4.3.離職率増加のリスク
- 4.4.労働基準法違反による罰則リスク
- 4.5.企業イメージ低下のリスク
- 5.長時間労働に陥る5つの原因
- 5.1.原因1.【組織の問題】業務量が多い・人員不足
- 5.2.原因2.【人の問題】マネジメント不足
- 5.3.原因3.【環境の問題】仕事の繁閑の差が大きい
- 5.4.原因4.【企業文化の問題】長時間労働をよしとする企業文化
- 5.5.原因5.【企業文化の問題】無駄な朝礼・夕礼や会議・打ち合わせが多い
- 6.長時間労働是正に向けた法改正
- 6.1.時間外労働の上限規制の厳格化
- 6.2.違法な長時間労働企業の指導・公表
- 7.長時間労働を是正する5つの対策
- 7.1.対策1.労働時間を「見える化」する
- 7.2.対策2.有給休暇の取得を推進する
- 7.3.対策3.産業医や衛生管理者を選任する
- 7.4.対策4.マネジメント職研修の実施
- 7.5.対策5.ストレスチェックの実施
- 8.まとめ
長時間労働とは?定義や基準
長時間労働について考えるとき「そもそも、何時間働けば長時間労働になるのか」の定義が必要です。
長時間労働について法的な定義はないものの、個々の判断に委ねられているわけではありません。
労働基準法における労働時間の基準や厚生労働省の見解などが、長時間労働かどうかを判断する目安となっています。
法定労働時間とは?
法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間です。
時間と休憩、休日について以下のように決められています。
- 労働時間:原則として1日の勤務は8時間、1週間で40時間以内
- 休憩:勤務時間が6時間以上で45分、8時間を超える際は1時間以上
- 休日:週に1日の休日または4週間で4日以上の休日
労働基準法で定められている休日は、法定休日とも呼ばれます。
また、有給休暇は6ヶ月以上勤務かつ8割以上出勤した従業員には10日を与え、さらに勤続年数1年ごとに1日ずつ、3年6ヶ月以降は2日ずつを与える必要があります(最高20日)。
目安となる「36協定」
労働基準法では、1日の労働時間(休憩時間を除く)の上限を8時間、1週間で40時間と定めています。
しかし、業種や職種、時期によっては上限の厳守が難しいため、労使で合意があれば法定労働時間の超過や休日労働が認められる「36(サブロク)協定」が存在します。
36協定は、労使による協定および所轄労働基準監督署への届け出が必要です。
業種や法定労働時間をどのくらい超えるのか(日ごと・月ごとなど)を明確にして提出します。
ポイントは、具体性です。
留意事項として、労働時間は必要最低限に収めること・従業員への安全配慮義務などがあります。
参照:厚生労働省36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針 参考:時間外労働の上限規制|厚生労働省
▼36協定に関しての詳細情報は次の記事をご参考にしてください。
特別条項付き36協定とは?
事業内容によっては、繁忙期の偏りなどにより、36協定で定めた範囲の労働時間を超える場合があります。
そのときに用いられるのが特別条項です。36協定と同様に労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出ることで、適用できます。
36協定で定められた時間外労働の上限時間は、原則月45時間・年360時間まで。以前は臨時的で特別な事情があれば、年6ヶ月までは上限なしで時間外労働ができました。
しかし、現在は労使合意がある場合(特別条項)でも、以下のことを守らなければなりません。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の2~6ヶ月平均が、すべて80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6ヶ月まで
2019年4月に施行された法改正により、特別条項であってもこれらの上限を超えることはできなくなりました(中小企業への適用は2020年4月から)。
違反した場合は罰則があるので注意しましょう。
また、2021年4月1日より、36協定届が刷新され、使用者の押印やサインが不要となりました。
届け出をする際は、新しい届出方法を確認しておきましょう。
過労死の認定基準について
長時間労働のリスクの1つが、過労死です。
過労死はそのまま英語の辞書に登録されていることもあり、日本人の勤勉さの負の部分として知られることとなりました。
実際に、過労死と労働時間の関係はどうなっているのでしょうか。
ここでは、過労死の基準や労災についての情報をお伝えします。
過労死基準(過労死ライン)とは?
厚生労働省は、健康障害へのリスクが高まる目安として、時間外労働や休日労働が月100時間超、もしくは2〜6ヶ月間の平均が80時間超という指標を出しています。
この時間を超えると、脳や心臓疾患のリスクが上昇すると考えられており、過労死につながるおそれがあるとしています。
月100時間もしくは2〜6ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働をすると、労働と過労死の相関関係が強まるため、過労死ラインと呼ばれているのです。
過労死ラインは、適正労働時間を測る目安にもなるでしょう。
労働者災害補償保険法とは?
労働時に起こった傷病を補償し、社会復帰を促すための法律が、労働者災害補償保険法です。
労災保険が適用される事案は何か、どのように職場復帰や支援を行うかなどを定めています。 労災の保険料は会社負担で、事業主が加入者となります。
事業規模や業種を問わず、従業員を1人でも雇っていると加入しなくてはいけない義務があります。
「人を雇ったら加入すべきもの」として覚えておきましょう。
日本の長時間労働の現状
世界的にみると、日本は長時間労働の従業員の割合が多い傾向にあります。
厚生労働省の令和4年版 過労死等防止対策白書(第1章1)によると、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は15.1%(男性21.7%、女性6.9%)でした。
週労働時間が40時間以上の労働者が15.1%という数字はアメリカやイギリス、フランス、ドイツなどといった先進国の中で韓国の次に多く、特に日本人男性は5人に1人が働きすぎています(49時間以上の労働/週)。
出典:労働時間やメンタルヘルス対策等の状況|厚生労働省(PDF資料)
OECD加盟国における労働者1人あたりの年間平均労働時間(2021年)をみると、ドイツの1349時間に対し、日本は1607時間と258時間の差があります。
年間258時間多く働いているということは、1日の労働時間を8時間と仮定すると、年間32日(営業日)も多く働いていることになります。
長時間労働がもたらすリスク
長時間労働には、様々なリスクがあります。
企業や従業員が抱えているリスクについて解説します。
労災や自殺者を生むリスク
1つめが、労災や自殺者を生むリスクです。
過労死ラインが月平均80時間となっていることから、1日4時間以上の残業が常態化した組織では、従業員の心身は疲弊していき、やがて疾病や心の病などを発症してしまうでしょう。
実際に、労災が認定されるケースもあります。
不慮の事故や想定外の事案ではなく、長時間労働というパワーハラスメントが原因で労災認定されたとなると、企業イメージの低下は避けられません。
また、そうして疲弊した従業員が自死を選んだ場合は、さらなる企業イメージの悪化につながります。
結果、従業員の流出や取引中止、不買運動などが起こり、企業活動に影響を与えるでしょう。
企業側のリスクとしては他にも、過労死や自殺、疾病などで大切な人材を失うことがあげられます。
従業員の家族からの損害賠償や新たな人材の獲得・教育に伴うコストといった金銭面でも悪影響です。
▼パワーハラスメントについて、認識せずに行ってしまっている場合もあります。基本知識も併せてご確認ください。
勤務問題による自殺者の割合は増加傾向
日本の自殺者は1998年から2011年まで毎年3万人を超えていましたが、以降は減少傾向を見せ、令和元年(2019年)は20,169人でした。
とはいえ、勤務問題に起因する自殺者の割合は増加傾向にあり、令和3年(2021年)は1,935人で自殺者総数の9.2%を占めます。
推定される動機としては「仕事疲れ」が28.3%、「職場の人間関係」が24.6%、「仕事での失敗」が17.0%、「職場環境の変化」が14.0%です。 長時間労働が是正されない・職場環境が改善しないといった理由で疲弊している人が少なくありません。
新型コロナウイルスの蔓延による働き方改革が進む中、自殺者は令和2年に一度減少したものの、令和3年から再び増えています。
参照:令和2年版過労死等防止対策白書(3 自殺の状況)|厚生労働省(PDF資料)
精神障害などによる労災認定件数も増加傾向
出典:厚生労働省 令和3年度精神障害の労災補償状況(PDF資料)
業務によるストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される事案も近年は増加しています。
業務によるストレスの主な原因は、対人関係や長時間労働と密接にかかわる「仕事の量と質」です。
2021年の精神障害の労災補償の支給決定件数は、629件でした。629件中、仕事の量・質を原因とする件数は、276件となっています。
総決定件数が約2,000件となっているため、約1割を占めている計算です。
ちなみに令和3年(2021年)の請求件数全体は2,346件に上り、過去最多件数でした。 長時間労働が業務ストレスのすべての原因ではないものの、度重なる時間外労働や休日労働、2週間以上にわたる連続勤務などで心の健康を損なう労働者が増えていることは確かです。
生産性の低下や残業増加によるコスト増大のリスク
長時間労働が続くことによるリスクの2つめが、生産性低下やコストの増大です。
かつての日本企業は、長時間労働によって生産性を上げてきた過去があります。働けばそれだけ成果が出た時代です。
しかし現代では、生産性は長時間労働で担保されるものではなくなっています。
長時間労働が続くことで、従業員が疲弊するとパフォーマンスは低下します。
そんな状態で仕事を続けても成果は上がらず、能率は下がっていく一方です。
また、残業が増えればそれだけ人件費や光熱費がかかります。生産性が下がり売上や業績が落ちている状態でのコスト増大は、企業にとってダメージでしかありません。
さらに、長時間労働が是正されなければ、有給休暇の取得や自己啓発・スキルアップも後回しになり、福利厚生が使われる機会を奪うことになります。
人材の定着率や労働環境の改善には福利厚生の充実が有効ですが、そもそも長時間労働の根本的な原因が取り除かれない限り、せっかく費用をかけて用意した福利厚生も利用されません。
離職率増加のリスク
「職場環境がよくない」と従業員が感じれば、よりよい条件を求めて辞めていきます。
優秀な人材も流出してしまうかもしれません。人が減ると、今いる従業員への負担が大きくなります。仕事をこなすために長時間労働が求められるようになると、さらに人材の流出が進み、離職率も悪化してしまうでしょう。
離職率が高い職場は、求職者にとって魅力的には映らないため、新しい人を雇う機会をも損失します。採用に余分なコストがかかってしまうのもデメリットです。
労働基準法違反による罰則リスク
労働基準法で定められている労働時間や時間外労働、休憩・休日を遵守できていないと、罰則を受けるリスクがあります。
罰則の内容は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
労働基準法にかかる事例として、36協定を届け出ているが時間が超過している・タイムカード打刻後に残業をさせている・割増賃金を支払っていない、などがあります。
労基違反となれば、企業イメージの悪化は避けられません。
時期的な長時間労働が発生する場合は、36協定・特別条項付き36協定を必ず届け出ましょう。
また、長時間労働が常態化している組織では、まずは現状の把握から始めていくことが大切です。労働基準法に則って、定められた時間で仕事が終わるように調整しましょう。
参照:令和3年度精神障害の労災補償状況(PDF資料)|厚生労働省
企業イメージ低下のリスク
労災や自殺の発生、生産性の低下や人材の流出など、長時間労働には様々なリスクがありますが、すべて企業イメージに悪影響を与えます。
何かしらの問題が起こったとき、かつては大企業ばかりに注目が集まり、中小企業に目を向けられることはほとんどありませんでした。
ですがSNSが発達した昨今では、企業規模を問わず企業イメージ低下のリスクがあります。
特に、体力がない中小企業のイメージ悪化が拡散されてしまうと、事業の存続が困難になることも珍しくありません。
また、一度そうしたイメージがついてしまえば、採用活動や人材の確保も難しくなります。
企業存続の面からみても、長時間労働は是正されるべき問題だと言えるでしょう。
もし労働環境や企業イメージの改善をはかりたい場合は、「ホワイト企業認定」を1つの軸にしてみるのも手です。
ホワイト企業認定は、一般財団法人 日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)が設けている認定制度です。
7つの区分から10問ずつ出される設問に回答し、その後書類審査を経て認定されます。
その中に、ワークライフバランスや法令遵守、健康経営に関する設問もあるので、長時間労働を見直す際の指標になるでしょう。
リロクラブでは、自らホワイト企業認定を受けた経験を活かし、ホワイト企業認定サポートを行っています。
第三者から見たアドバイスが欲しい・福利厚生の面から改革していきたいといったご要望にお応えするサービスです。
7つのカテゴリごとのソリューションを用意していますので、バランスのよい企業改革が行えます。
長時間労働に陥る5つの原因
長時間労働の常態化が問題視されているにも関わらず、長時間労働がなくならないのはなぜでしょうか。
主な原因を5つ解説します。
原因1.【組織の問題】業務量が多い・人員不足
労働時間を増やす直接的な原因として多いのは、業務過多で勤務時間内に処理しきれないというものです。
何らかの理由で人員が足りず、1人あたりの業務量が恒常的に増えてしまっている職場も多いかもしれません。
常態化することで感覚が麻痺し、残って仕事をするのが当たり前、となっていないか確認してみましょう。
業務過多の状態が長期化すると、その労働環境下で働く従業員の心身の疲弊はもちろん、休職や離職につながってしまう可能性があります。
原因2.【人の問題】マネジメント不足
管理職が部下の業務量や進捗状況を把握できていないといった、マネジメント不足も主な原因のひとつです。
残業や休日出勤が増えている特定のチーム・部下に気づくことができなければ、事態が深刻になり、部下が声をあげるまで長時間労働が続きます。
また、管理職が長時間労働の実態に気づいていながら、適切な対策を講じないこともマネジメント不足のひとつです。
仕事ができる人に業務を任せたいという考えから、長時間労働に対して適切な対策を講じないままだと、優秀な人材が休職や離職してしまうリスクが高まります。
業務の属人化はデメリットが大きくなる行為だと認識しておきましょう。
原因3.【環境の問題】仕事の繁閑の差が大きい
繁忙期と閑散期の差が大きい業種も過剰労働につながります。
閑散期を基準にした人員配置になっている場合、繁忙期は少ない人員で大量の業務をこなすことになるためです。
企業としては余剰人員を抱えることは非効率ですので、やむを得ない側面はあるかもしれません。
しかし、繁閑の差が大きく、繁忙期の期間が長い環境は注意が必要です。
原因4.【企業文化の問題】長時間労働をよしとする企業文化
今までの日本企業は企業横断的な「ヨコの移動」(転職によるキャリア形成)が難しく、ひとつの社内で年功序列によって昇進していく「タテの移動」(社内昇進によるキャリア形成)が一般的でした。
企業横断的な労働市場が形成されなかった日本では、「社内のがんばり」が評価されることで昇進・昇給が可能になります。
この「社内のがんばり」による評価が出世競争を生み、従業員を過剰労働に追い込んでしまうのです。
評価制度は企業文化と深く結びつきます。他人よりも長く働くことが評価され、行動規範として定着すると、企業文化となって残業が当たり前の職場になってしまうのです。
参考:日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学|小熊英二
原因5.【企業文化の問題】無駄な朝礼・夕礼や会議・打ち合わせが多い
朝礼や夕礼、定期的に集まる会議などの非生産業務が労働時間を長くしているケースも少なくありません。
これも企業文化の問題が根底にあります。朝礼や会議の内容ではなく、企業に忠誠を尽くす人間であると示すためだけの会議を評価する企業文化が、無駄な時間を増やしているのです。
会議や打ち合わせが多いと、そのために作成する資料も増えるため、本来の業務にかける時間が足りなくなってしまいます。
その結果、規定の労働時間内で仕事を終えられず、長時間労働が常態化するのです。
長時間労働是正に向けた法改正
長時間労働がなくならない状況を受け、国は長時間労働是正に向けて取り組みを強化しています。
国による主な取り組みを紹介します。
時間外労働の上限規制の厳格化
働き方改革関連法の成立に伴う労働基準法の改正により、時間外労働の上限規制が厳しくなりました。
時間外労働の上限は、以下のように変わっています。
- 原則:月45時間・年360時間まで
- 臨時的な特別な事情があり労使が合意する場合:年720時間以内・休日労働を含めた場合も月100時間未満(2〜6ヶ月平均80時間以内)
また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までです。
改正前は労使合意があれば上限のない時間外労働も可能でしたが、今回の改正により無制限の時間外労働や休日労働は認められなくなりました。
時間外労働の上限規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金といった罰則が科されるおそれがあるため、企業は労務管理を一層強化する必要性が出てきています。
参照:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省(PDF資料)
違法な長時間労働企業の指導・公表
2014年9月には厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置し、企業や都道府県と連携して長時間労働の撲滅や休暇取得などを推進しています。
その取り組みの一環として2016年12月に「過労死等ゼロ」緊急対策を本部決定し、違法な長時間労働を許さない取り組みを発表しました。
具体的には、違法な長時間労働がある企業への指導や企業名の公表制度の強化、相談窓口「労働条件相談ほっとライン」の充実化などを実施しています。
長時間労働を是正する5つの対策
国は長時間労働是正の取り組みを強化していますが、企業が本格的に労働環境や意識を変えなければ状況は変わっていきません。
では、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。
最後に、長時間労働を是正する5つの対策を紹介します。
対策1.労働時間を「見える化」する
まず、取り組むべき対策は従業員の労働時間の可視化です。
労働時間の可視化は当たり前のことですが、正しく従業員の労働時間を把握している企業は意外と少ないのではないでしょうか。
労働時間を従業員本人による自己申告で把握している企業はいまだに多いですが、そのままでは実態をつかむことはできません。
自主的に労働時間を短く申告したり、上司や先輩からの圧力で申請時間を調整したりしてしまう環境もあります。
誰が、どの程度の時間外労働や休日労働をしているかを正確に把握できていない場合は、自己申告に頼らない始業・終業時刻を記録する勤怠管理システムを導入することから検討します。
対策2.有給休暇の取得を推進する
労働時間だけではなく、年次有給休暇の取得状況も確認し、計画的な取得を推進しましょう。
労働基準法の改正によって、法定の年次有給休暇が10日以上付与されるすべての労働者に対して、毎年5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならなくなりました。
管理監督者を含む、すべての労働者が対象です。
日本の企業には、休暇をとりにくい企業文化があります。
休まず働くことが評価される企業文化が、年次有給休暇消化率にも悪い影響を与えているためです。
年々、年次有給休暇の取得率は上がってきているものの、100%完全消化というわけではありません。2021年の実績は従業員数1,000人以上の企業で平均年次有給休暇取得率60.8%、1,000人未満の企業は5割(半分の消化)でした。
1,000人以上規模の企業では、2020年に最も高い63.1%という数値になっていますが、減少に転じてしまっています。
年次有給休暇は労働者に認められた権利ですので、休暇をとりやすい労働環境づくりや計画的に休暇を取得できる仕組みづくりに努めなければなりません。
▼促進に際して、有給休暇に関する情報を学んでおきたいという方は次の記事をご参考にしてください
対策3.産業医や衛生管理者を選任する
従業員の健康管理を担う産業医や衛生管理者を選任することも、効果的な対策です。
産業医は、医学的な見地から従業員が健康で快適な環境で働けるよう指導・助言をします。 一方、衛生管理者には労災を防ぐために労働環境を点検するのが役割です。
常時50人以上の従業員を雇っている事業所では、産業医や衛生管理者を選任することが法律で義務づけられています。
常時雇用する従業員が50人未満の場合は、地域産業保健センターの産業保健サービスを活用することも方法のひとつです。
参照:地域窓口(地域産業保健センター)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
対策4.マネジメント職研修の実施
出典:経済産業省 働き方改革に関する企業の実態調査(PDF資料)
日本経済新聞社が実施した働き方改革に関する企業の実態調査(2017年3月)によると、自社の長時間労働の原因を「管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足」とする割合が44.2%で最多でした。
この調査の対象は、企業の経営企画・事業企画・経営管理の部長職以上ですので、自身もしくはその下の中間管理職のマネジメント不足を認めていることになります。
すべての管理職が高い意識をもち、マネジメントスキルに長けているとは限りません。個人差が大きいため、マネジメントスキルの向上や意識改革を行う研修も有効でしょう。
参照:働き方改革に関する企業の実態調査|株式会社日本経済新聞社(PDF資料)
対策5.ストレスチェックの実施
長時間労働そのものを解消する対策とともに重視されているのが、従業員の心の健康対策です。仕事をしているとどうしても残業をしなければならない局面は、現実としてあるでしょう。
そして、業務過多や長時間労働・休みなしの連勤とメンタルヘルス不調は、密接にかかわっています。
従業員が気づかないうちにストレスを抱え込み、メンタルヘルス不調に陥ると、労災や最悪の場合は過労死や自殺につながるリスクがあるので注意が必要です。
国は、過労死対策のひとつとしてメンタルヘルスの重要性を周知・啓発する各種取り組みを実施しており、象徴的なのがストレスチェック制度です。
ストレスチェックは、従業員のストレスレベルを把握し、その結果に応じて医師による指導や職場環境の改善につなげるアンケート形式の検査。 メンタルヘルス不調を防ぐ有効な対策として推奨されており、2015年12月からは従業員数50人以上の企業に実施が義務づけられています。
ストレスチェックの実施は年に1回、50人以上規模の企業に義務づけられていますが、従業員の人数に関わらず自社内で定期的なチェックは行っておきたいものです。
Reloエンゲージメンタルサーベイでは組織改革と従業員のメンタルケアサービスを提供しています。企業と従業員のエンゲージメント向上を目的としているので、離職者や休職者が多い・生産性がなかなか上がらないといったお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。
まとめ
長時間労働の定義や現状、企業が抱えるリスク、起こる原因などについて解説しました。
残業や休日出勤といった時間外労働が悪なのではなく、問題は従業員のパフォーマンスや健康面への悪影響です。結果、イメージの低下を招いてしまうと、企業活動に支障をきたします。
そうならないために、労働基準法を守った労働時間内で働いてもらうことはもちろん、社員が働きやすさややりがいを感じてもらえる会社にすることが大切です。リロクラブの福利厚生倶楽部は、社員の満足度向上をサポート。
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