長時間労働の原因は何なのか?日本人の労働実態と問題点

長時間労働の原因は何なのか?日本人の労働実態と残業が減らない理由

心身の疾患や過労死のリスクを高める長時間労働。日本では働き方改革や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を機に普及しているテレワークや在宅勤務により、長時間労働は是正されつつあります。

しかし日本の長時間労働の原因や労働環境の問題がなくなったわけではありません。今回は、長時間労働の実態や原因、長時間労働是正の対策方法を紹介します。

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長時間労働の実態。日本人は働きすぎ?

長時間労働の実態。日本人は働きすぎ?

日本企業の中には長時間労働が当たり前になっている企業も少なくなく、そのような労働環境に疑問をもたない人もいるかもしれません。そもそも長時間労働とは何か、実際日本人は働きすぎているのかなど、長時間労働の実態を確認していきます。

そもそも長時間労働とは

長時間労働について考えるとき「そもそも、何時間働けば長時間労働になるのか?」の定義から考える必要があります。長時間労働について法的な定義はないものの、個々の判断に委ねられているわけではありません。

労働基準法における労働時間の基準や厚生労働省の見解などが、長時間労働かどうかを判断する目安となっています。

目安となる「36協定」

労働基準法では、1日の労働時間(休憩時間を除く)の上限を8時間、1週間で40時間と定めています。

ですが、業種や職種、時期によっては上限の厳守が難しいため、労使で合意があれば法定労働時間の超過や休日労働が認められる「36(サブロク)協定」が存在します。

36協定で定められた時間外労働の上限時間は、原則月45時間・年360時間までです。以前は臨時的で特別な事情があれば、年6ヶ月までは上限なしで時間外労働をすることができました。しかし現在は、労使合意がある場合(特別条項)でも、以下のことを守らなければなりません。

【36協定の特別条項】

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の2~6ヶ月平均が、すべて80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

2019年4月に施行された法改正により、特別条項であってもこれらの上限を超えることはできなくなりました(中小企業への適用は2020年4月から)。

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過労死ラインは残業月80時間以上

厚生労働省は、健康障害のリスクという観点から適正な労働時間についての見解を示しています。

それによると、時間外労働や休日労働が月45時間を超えると健康障害のリスクが少しずつ上昇すると指摘しています。

時間外労働や休日労働が月100時間超、もしくは2〜6ヶ月間の平均が80時間超になると、脳や心臓疾患のリスクがかなり上昇すると報告しており、適正な労働時間を考える目安となっています。

日本は長時間労働者の割合が多い

諸外国における「週労働時間が40時間以上の労働者」の割合

出典:厚生労働省 令和2年版過労死等防止対策白書

世界的にみると、日本は長時間労働者の割合が多いです。

厚生労働省の令和2年版 過労死等防止対策白書(第1章1)によると、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は18.3%(男性26.3%、女性8.3%)でした。

週労働時間が40時間以上の労働者が18.3%という数字はアメリカやイギリス、フランス、ドイツといった先進国の中では最も多く、特に日本人男性は4人に1人が働きすぎて(49時間以上の労働/週)います。

諸外国における年平均労働時間の推移

出典:OECD Data Employment-Hours worked

また、OECD加盟国における労働者1人あたりの年間平均労働時間(2019年)をみると、ドイツの1,386時間に対し、日本は1,644時間と258時間の差があります。

年間258時間多く働いているということは、1日の労働時間を8時間と仮定すると、年間32日(営業日)ぶん多く働いていることになります。

長時間労働がもたらすリスク

長時間労働がもたらすリスク

長時間労働が常態化すると、さまざまなリスクが発生します。過労死ラインが月平均80時間の残業であるように、長時間労働が続くことによって労働者の心身は疲弊し、疾病のリスクが高まります。

労働者の心が疲弊してしまうとモチベーションが下がることはもちろんのこと、最悪の場合自殺という選択肢をとる可能性もあります。

企業側のリスクとしては、過労死や自殺、疾病などで大切な人材を失うだけではありません。労働者の家族からの損害賠償や新たな人材の獲得・教育に伴うコストといった金銭面のリスクがあります。

さらに長時間労働の実態が明るみに出ることによって、企業のイメージが損なわれ、他社との取引や人材確保にまで影響が及びます。

勤務問題による自殺者の割合は増加傾向

自殺者総数のうち、勤務問題を原因・同期の1つとするものの割合

出典:厚生労働省 令和2年版過労死等防止対策白書

日本の自殺者は1998年から2011年まで毎年3万人を超えていましたが、以降は減少傾向で2019年は20,169人でした。

とはいえ、勤務問題に起因する自殺者の割合は増加傾向にあり、2019年は1,949人で自殺者総数の9.7%を占めます。また、推定される動機としては「仕事疲れ」が約3割(29.2%)を占めています。

働き方改革によって長時間労働の是正が推進されているものの、依然として残業や休日労働がなくならず、働きすぎにより疲弊している人も多いことがわかります。

精神障害等による労災認定件数も増加傾向

精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移

出典:厚生労働省 精神障害の労災補償状況(PDF資料)

業務によるストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される事案も近年増加しています。

業務によるストレスの主な原因は、対人関係と長時間労働と密接にかかわる仕事の量と質です。

2019年の精神障害の労災補償の支給決定件数は、509件でした。509件中、仕事の量・質が原因で精神障害を発症した割合は28.1%(143件)です。

ちなみに2019年の請求件数全体は2,060件に上り、過去最高件数でした。

長時間労働が業務ストレスのすべての原因ではないものの、度重なる時間外労働や休日労働、2週間以上にわたる連続勤務などで心の健康を損なう労働者が増えていることは確かです。

長時間労働は福利厚生にも悪影響を及ぼす

長時間労働が是正されなければ、有給休暇の取得や自己啓発・スキルアップも後回しになってしまいます。また、福利厚生が使われる機会を奪うことになります。

人材の定着率や労働環境の改善には福利厚生の充実が有効ですが、そもそも長時間労働の根本的な原因が取り除かれない限り、せっかく費用をかけた福利厚生は利用されません。

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長時間労働に陥る5つの原因

長時間労働に陥る5つの原因

長時間労働の常態化が問題視されているにも関わらず、長時間労働がなくならないのはなぜでしょうか。主な原因を5つ解説します。

原因1.【組織の問題】業務量が多い・人員不足

労働時間を増やす直接的な原因として多いのは、業務過多で勤務時間内に処理しきれないというものです。何らかの理由で人員が足りず、一人あたりの業務量が恒常的に増えてしまっている職場も多いでしょう。

業務過多の状態が長期化すると、その労働環境下で働く労働者の心身の疲弊はもちろん、休職や離職につながってしまう可能性があります。

原因2.【人の問題】マネジメント不足

管理職が部下の業務量や進捗状況を把握できていないなど、マネジメント不足も主な原因のひとつです。

残業や休日出勤が増えている特定のチーム・部下に気づくことができなければ、事態が深刻になり、部下が声をあげるまで長時間労働が続きます。

また、管理職が長時間労働の実態に気づいていながら、適切な対策を講じないこともマネジメント不足のひとつです。

業務量は仕事ができる人のところに集中しがちです。仕事ができる人に業務を任せたいという管理職の考えから、長時間労働の実態に気付きながらも、適切な対策を講じない管理職がいるため、そのようなことが起きます。

原因3.【環境の問題】仕事の繁閑の差が大きい

繁忙期と閑散期の差が大きい業種も過剰労働につながります。閑散期を基準にした人員配置になっている場合、繁忙期は少ない人員で大量の業務をこなすことになります。

企業としては余剰人員を抱えることは非効率ですので、やむを得ない側面はあるかもしれません。しかし繁閑の差が大きく、繁忙期の期間が長い環境は注意が必要です。

原因4.【企業文化の問題】長時間労働をよしとする企業文化

今までの日本企業は企業横断的な「ヨコの移動」(転職によるキャリア形成)が難しく、一つの社内で年功昇進していく「タテの移動」(社内昇進によるキャリア形成)が一般的でした。

企業横断的な労働市場が形成されなかった日本では、「社内のがんばり」が評価されることで昇進・昇給が可能になります。この「社内のがんばり」による評価が出世競争を生み、労働者を過剰労働に追い込んだといっても過言ではありません。

評価制度は企業文化と深く結びつきます。他人よりも長く働くことが「社内のがんばり」のようになり、評価対象のようになり、行動規範として定着すると、それが企業文化になり残業が当たり前の職場になってしまいます。

原因5.【企業文化の問題】無駄な朝礼・夕礼や会議・打合せが多い

形骸化した朝礼や報告のためだけの夕礼、何も決まらないが定期的に集まる会議などの無駄が労働時間を長くしているケースも少なくありません。

これも企業文化の問題が根底にあります。朝礼や会議の内容ではなく、企業に忠誠を尽くす人間、会議をやっているという「社内のがんばり」を評価する企業文化が、無駄な時間を増やします。

無駄な会議や打合せが多いと、そのために作成する資料も増えるため、本来の業務にかける時間が搾取されます。会議のための会議という、まったく生産性のない時間もあります。その結果、規定の労働時間内で仕事を終えることができず、長時間労働が常態化してしまいます。

長時間労働是正に向けた法改正

長時間労働是正に向けた法改正

長時間労働がなくならない状況を受け、国は長時間労働是正に向けて取り組みを強化しています。国による主な取り組みを紹介します。

時間外労働の上限規制の厳格化

働き方改革関連法の成立に伴う労働基準法の改正により、時間外労働の上限規制が厳しくなりました。

時間外労働の上限は、以下のように変わりました。

  • 原則:月45時間・年360時間まで
  • 臨時的な特別な事情があり労使が合意する場合:年720時間以内・休日労働を含めた場合も月100時間未満(2〜6ヶ月平均80時間以内)

また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までです。

改正前は労使合意があれば上限のない時間外労働も可能でしたが、今回の改正により無制限の時間外労働や休日労働は認められなくなりました。

時間外労働の上限規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金といった罰則が科されるおそれがあるため、企業は労務管理を一層強化する必要性が出てきています。

違法な長時間労働企業の指導・公表

国による長時間労働対策は法整備以外にもあります。2014年9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置し、企業や都道府県と連携して長時間労働の撲滅や休暇取得などを推進しています。

その取り組みの一環として2016年12月に「過労死等ゼロ」緊急対策を本部決定し、違法な長時間労働を許さない取り組みを発表しました。

具体的には違法な長時間労働がある企業への指導や企業名の公表制度の強化、相談窓口「労働条件相談ほっとライン」の充実化などを実施しています。

長時間労働を是正する5つの対策

長時間労働を是正する5つの対策

国は長時間労働是正の取り組みを強化していますが、企業が本格的に労働環境や意識を変えなければ状況は変わっていきません。では、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。最後に、長時間労働を是正する5つの対策を紹介します。

対策1.労働時間を「見える化」する

まず取り組むべき対策は、従業員の労働時間を可視化することです。労働時間の可視化は当たり前のことですが、正しく従業員の労働時間を把握している企業は意外と少ないのではないでしょうか。

労働時間を従業員本人による自己申告で把握している企業はいまだに多いですが、そのままでは実態をつかむことはできません。自主的に労働時間を短く申告したり、上司からの圧力で申請時間を調整する環境もあります。

誰が、どの程度の時間外労働や休日労働をしているかを正確に把握できていない場合は、自己申告に頼らない始業・終業時刻を記録する勤怠管理システムを導入することから検討します。

対策2.有給休暇の取得を推進する

労働者1人あたりの平均年次有給休暇取得率の推移(企業規模別)

出典:厚生労働省 就労条件総合調査:結果の概要

労働時間だけではなく、年次有給休暇の取得状況も確認し、計画的な取得を推進します。

労働基準法の改正によって、法定の年次有給休暇が10日以上付与されるすべての労働者に対して、毎年5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならなくなりました。管理監督者を含む、すべての労働者が対象です。

日本の企業には、休暇をとりにくい企業文化があります。休まず働く「社内でのがんばり」が評価される企業文化が、年次有給休暇消化率にも悪い影響を与えています。

年々、年次有給休暇の取得率は上がってきているものの、100%完全消化というわけではありません。2019年の実績は従業員数1,000人以上の企業で平均年次有給休暇取得率63.1%、1,000人未満の企業は5割(半分の消化)でした。

年次有給休暇は労働者に認められた権利ですので、休暇をとりやすい労働環境づくりや、計画的に休暇を取得できる仕組みづくりに努めなければなりません。

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対策3.産業医や衛生管理者を選任する

従業員の健康管理を担う産業医や衛生管理者を選任することも効果的な対策です。

産業医は、医学的な見地から従業員が健康で快適な環境で働けるよう指導・助言をします。一方、衛生管理者には労災を防ぐために労働環境を点検する役割があります。

常時50人以上の従業員を雇っている事業所では、産業医や衛生管理者を選任することが法律で義務づけられています。

常時雇用する従業員が50人未満の場合は地域産業保健センターの産業保健サービスを活用することも方法のひとつです。

対策4.マネジメント職研修の実施

自社の長時間労働の原因についての回答

出典:経済産業省 働き方改革に関する企業の実態調査(PDF資料)

日本経済新聞社が実施した働き方改革に関する企業の実態調査(2017年3月)によると、自社の長時間労働の原因を「管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足」とする割合が44.2%で最多でした。

この調査の対象は、企業の経営企画・事業企画・経営管理の部長職以上ですので、自身もしくはその下の中間管理職のマネジメント不足を認めていることになります。

すべての管理職が高い意識をもち、マネジメントスキルに長けているとは限りません。個人差が大きいため、マネジメントスキルの向上や意識改革を行う研修も有効でしょう。

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対策5.ストレスチェックの実施

長時間労働そのものを解消する対策とともに重視されているのが、従業員の心の健康対策です。長時間労働が常態化している企業は論外ですが、仕事をしているとどうしても残業をしなければならない局面は、現実としてあります。

業務過多や長時間労働・休みなしの連勤とメンタルヘルス不調は、密接にかかわっています。従業員が気づかないうちにストレスを抱え込み、メンタルヘルス不調に陥ると、最悪の場合は過労死や自殺につながります。

国は、過労死対策のひとつとしてメンタルヘルスの重要性を周知・啓発する各種取り組みを実施しており、象徴的なのがストレスチェック制度です。

ストレスチェックは、従業員のストレスレベルを把握し、その結果に応じて医師による指導や職場環境の改善につなげるアンケート形式の検査です。

メンタルヘルス不調を防ぐ有効な対策として推奨されており、2015年12月からは従業員数50人以上の企業に実施が義務づけられています。

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まとめ

長時間労働の原因は何なのか?日本人の労働実態と問題点まとめ

法改正や世の中の変化によって、長時間労働は是正されつつある。しかし、まだまだ長時間労働はなくならない。

長時間労働のリスクは、5つ。

  • 過労死
  • 自殺
  • 精神障害による休職や離職
  • 訴訟
  • 人材損失による採用活動の時間と費用

長時間労働の主な原因は、5つ。

  • 【組織の問題】業務量が多い・人員不足
  • 【人の問題】マネジメント不足
  • 【環境の問題】仕事の繁閑の差が大きい
  • 【企業文化の問題】長時間労働をよしとする企業文化
  • 【企業文化の問題】無駄な朝礼・夕礼や会議・打合せが多い

長時間労働を是正する対策は、5つ。

  • 労働時間を「見える化」する
  • 有給休暇の取得を推進する
  • 産業医や衛生管理者を選任する
  • マネジメント職研修の実施
  • ストレスチェックの実施

労働基準法改正による、時間外労働の上限規制

  • 原則は、月45時間・年360時間まで
  • 臨時的な特別な事情があり労使が合意する場合は、年720時間以内・休日労働を含めた場合も月100時間未満(2〜6ヶ月平均80時間以内)
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

情報化・グローバル化が急速に進む世の中で、日本企業は柔軟性に欠く終身雇用や年功昇進、固定化した長時間労働など多くの問題を解決していかなければなりません。

長時間労働は、すぐにはなくなりません。長時間労働が評価されてきた企業文化の変革や管理職のマネジメント力強化・意識改革、取引慣行の改善など、取り組むべき対策は山積みです。

一度にすべてを解決しようとしても、いろいろなことが依存しあい複雑に絡み合っているため、根本的な解決はできません。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、あらゆる前提を見直す良い機会になっています。

できることから早くはじめて、無駄な長時間労働がなく、生産性の高い生き生きと働ける職場づくりを実現していきましょう。

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