借り上げ社宅のメリットとデメリット│家賃設定時のポイント
借り上げ社宅の制度は、企業側にも社員にもメリットの多い制度です。企業の福利厚生のひとつとして、求人募集でもアピールをすることも可能になります。デメリットもないとは言えないので、よく理解した上で運用していくことが大切です。
借り上げ社宅と住宅手当の違いや借り上げ社宅の家賃相場のことにも触れています。導入検討の際に、参考にしてみてください。
■こちらも参考に;福利厚生とは?人気の種類・導入方法やおすすめの代行サービスを解説!
目次[非表示]
- 1.借り上げ社宅とは
- 2.借り上げ社宅と住宅手当の違い
- 3.借り上げ社宅のメリット・デメリット
- 3.1.従業員側のメリット・デメリット
- 3.2.企業側のメリット・デメリット
- 4.借り上げ社宅の家賃相場
- 4.1.法律上の賃貸料相当額
借り上げ社宅とは
借り上げ社宅とは、企業が不動産事業主や業者から賃貸住居を借り、社員に貸し出す住居のことです。社員満足度の高い福利厚生制度としての認識も高まっているようです。とくに、地方や海外など遠方に住んでいる人材にも、自社の採用枠を広げたい企業や、自社の転勤の発生頻度が高いという企業にとっては、有効な施策のひとつとなるでしょう。 社員の住居が持ち家でない場合、社員が個人的に住宅を手配するとしている企業もあります。そういう場合も含め、福利厚生の中に住宅手当制度を制定している企業も多いです。 借り上げ社宅制度を導入することで、企業にも社員にも住宅手当とは異なるメリットが得られるようです。ここから詳しくみていきましょう。
借り上げ社宅と住宅手当の違い
社員の住宅に関する福利厚生制度として、住宅手当を社員に支給する企業も多いです。ここで、借り上げ社宅と住宅手当の違いを説明しておきます。
借り上げ社宅制度は、企業が借りている賃貸住居を社員に貸し出す制度です。
そのため、家賃に関する大家さんや仲介業者とのお金のやり取りや、社員からの家賃の徴収などは、企業が行っていくことになります。
一方、住宅手当の場合、契約金や家賃などのお金のやり取りは賃貸契約者である社員自身が行います。
企業は、給与に上乗せする形で住宅手当を補助するのです。
▼住宅手当に関する詳細を知りたい方は次に記事もご参考ください。
これらの違いが、単なる違いに留まらず、税金や保険の金額に影響していきます。メリットになるのか、デメリットになるのか、下記の項目で確認していきましょう。
借り上げ社宅のメリット・デメリット
借り上げ社宅制度の導入することについて、従業員側と企業側の双方の立場でのメリットとデメリットを見ていきましょう。どちらにとってもメリットが多いのが特徴です。
デメリットを許容できたり、対策が整えられたりするのであれば、借り上げ社宅制度を導入する価値は高いと考えます。
従業員側のメリット・デメリット
従業員側のメリット
借り上げ社宅を利用する従業員のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 入社や転勤時に住宅を探す必要がなく、引っ越しが必要な際の負担が軽減される
- 賃貸契約手続きや家賃支払い処理も不要になる
- 個人で契約するよりも家賃が安くなるのが一般的である
- 賃貸契約の更新料なども発生しない
- 給与から家賃が引かれれば、所得額が減るため節税につながる
従業員側のデメリット
借り上げ社宅を利用する従業員のデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 所定物件のため、好みの物件や場所を自由に選ぶことはできない
- 所得額が減ることで社会保障額が減る可能性がある
企業側のメリット・デメリット
企業側のメリット
借り上げ社宅を活用する企業側のメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 住宅手当がなくなることで企業の節税につながる (給与としての支給額が減らせるため)
- 社員からの家賃徴収によって企業収入が得られる (住宅手当の場合、給与への上乗せ+法人課税発生+社員も課税対象)
- 福利厚生を充実させるための一策となり、求人の際にもアピール材料となる
- 社員の税負担を軽減できることで社員満足度が向上する
- 転勤者の負担が軽減されるため、転勤希望や快諾が増える
- 自社所有でなく借り上げ社宅なら管理負担も少なくて済む
企業側のデメリット
借り上げ社宅を活用する企業のデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 住宅賃貸の契約手続き、支払い手続きの手間が発生する
- 借りている部屋が空きになっても家賃が発生する
- 解約時に違約金が発生するリスクがある
借り上げ社宅の家賃相場
続いて、借り上げ社宅の家賃相場についてです。家賃の相場額については、企業によって異なるとしかお伝えできません。
そもそもの物件ごとの家賃設定の幅が広く、企業ごとの予算も異なるからです。 ただ、企業負担と社員負担の割合を何対何にするのかについては、明確にしておくことが大切です。この割合の設定については、法律的な規定はありません。
のちに社員とのトラブルを発生させないためにも、双方で合意しておくことが重要です。 さらに、双方のメリットの項目にも挙げていますが、所得税や住民税、社会保険などに関わる「課税負担の軽減」を意図しているのであれば、その家賃額を非課税とするための条件を満たさなければなりません。
課税対象とならないよう「給与」とみなされない範囲での金額設定が必要となるのです。
法律上の賃貸料相当額
ここで、国税庁が公表している給与とみなされない範囲の「賃貸料相当額」の算出方法を抜粋します。
参考文献:使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁
使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1ヶ月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」)以上を受け取っていれば給与として課税されません。 賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいいます。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
賃貸の場合でも、この算出方法が適用されます。そのため、固定資産税の課税標準額などについては貸主への確認が必要です。