住宅手当は、企業が従業員に対して住宅にかかる費用の一部をサポートする制度です。条件を満たしている従業員に、一定の金額や家賃などに応じて妥当な金額を支給します。住宅手当は、従業員のモチベーションアップや就活時の判断材料となるため、企業にとってもメリットはあります。しかし最近では、住宅手当の見直しや廃止をする企業が増えてきています。法定外福利費の約半分を占める「住宅関連」の福利厚生は見直しの対象になりやすく、2000年以降減少傾向にあります。そこで今回は、住宅手当を廃止する企業の理由や、支給額の相場などについて説明していきます。

福利厚生について詳しくは、こちらの「福利厚生で人気の種類はコレ!福利厚生検討前に知っておきたいアレコレ」もあわせてご覧ください。これを読めば、福利厚生の基本的なことはすべて理解できます。

住宅手当の定義

住宅 模型住宅手当の定義

住宅手当とは、従業員の家賃や持ち家のローンなどの出費を企業が補助する制度です。補助する金額は、企業によってさまざまです。住宅手当がまったくない企業も存在します。

また、企業が所有している社宅や企業が借りている賃貸物件(借上社宅)に従業員が住んでいる場合の住宅手当は、同じ補助にあたりますが、細かい内容で違いがあります。

社宅の場合は、家賃が給料から天引きされるため税金の対象になりません。そして、物件の契約窓口は企業(法人)になります。

対して従業員の家賃を補助する住宅手当は、企業から支給されるものなので給料と同じ扱いです。そのため、企業が補助した住宅手当の金額は税金の対象になり、物件の契約自体も従業員(個人)が行います。企業によっては賃貸物件の家賃を補助対象にする場合は「家賃補助」という名称にしているところもありますが、住宅手当と同じものと考えてください。法律上では両者に区別はありません。以降、本文中では住宅手当という言葉を使って話を進めていきます。

住宅手当のメリット

住宅手当は、企業側にも従業員側にもいくつかメリットがあります。住宅手当の導入を考えている企業、あるいは逆に廃止を検討している企業は、まずお互いのメリットをよく理解した上で検討しましょう。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては、

  • 企業のイメージアップ
  • 人材の定着
  • 従業員のモチベーションアップ

などです。

住宅手当は法定外福利厚生のひとつです。求人などで新しい人材を確保する際に、福利厚生が充実しているという見え方は、大きなメリットになります。福利厚生の中でも住宅手当は一般的に認知度が高く、求職者にとっては企業を選ぶ決め手になることもあるでしょう。

また、住宅手当の対象となる従業員は、条件さえ満たしていれば、個人のスキルや業績に関係なく手当が支給されます。よって、入社したばかりの従業員やローンを組んで持ち家を購入した従業員には、喜ばれるでしょう。

住宅手当は、従業員のモチベーションアップや帰属意識の向上、人材の流出を防ぐことにつながります

従業員側のメリット

スキルや実績に関係なく手当がつくことは、従業員としてもありがたいことです。企業が定める支給条件にもよりますが、社宅と違い、住む場所を従業員が自由に選べるというのも大きなメリットです。

特に、若い従業員が実家から出て通勤しやすいエリアで一人暮らしを始める際には、住宅手当があることで新しい生活への金銭面での不安が多少軽減されます。

住宅手当は企業にとって負担が大きく、簡単には導入できないところもあるでしょう。しかしこれらのさまざまなメリットもありますので、しっかりと導入における費用対効果を検討する必要があります。

住宅手当のメリットについて詳しくは、こちらの「福利厚生の住宅手当で従業員の負担を減らす!手当の種類は?」もあわせてご覧ください。

住宅手当の対象となる条件

住宅手当の対象となる条件は、企業によって違います。法定外福利厚生のため、企業が対象条件を独自に定めることができるからです。

だからといって、一部の従業員にだけ有利な条件にして良い訳ではありません。できるだけ公平に手当を支給できるよう努めなければ、従業員の不満につながります。

ここでは、一般的な住宅手当の支給条件について紹介します。

住宅手当の対象となる条件

住宅手当の支給条件

具体的な支給条件の例については、以下の通りです。

正規の従業員かどうか

一般的には、正規の従業員であることが支給の前提条件となる場合が多いです。

正規従業員の方が、業務に対する責任が重く労働時間も長くなる傾向にあります。その対価として、住宅手当などの福利厚生で、正規雇用と非正規雇用のバランスを保っているからです。

扶養家族がいるか

扶養家族がいるという条件で、住宅手当を支給する場合があります。なぜなら、一緒に住んでいる家族が多いほど広い間取りの住宅が必要になり、家賃も高くなるからです。

全ての従業員に一律で住宅手当を支給していては、企業の負担も多くなってしまいます。そのため従業員の状況を鑑みて、より負担が大きいであろう従業員に住宅手当を支給するように条件を定めているというわけです。

独身・一人暮らしか、賃貸か持ち家なのか

独身や一人暮らしの従業員の場合、賃貸か持ち家かで金額が変わることが多いです。

賃貸に住んでいるなら、毎月家賃がかかります。持ち家で親と同居している場合には、親に毎月一定額を払っていることはあっても、自身が払う家賃はありません。また、独身・一人暮らしであっても賃貸に住んでいるとも限りません。自分名義の持ち家で一人暮らしをしているのであれば、毎月ローンを支払っている場合もあります。

このように、独身や一人暮らしであっても住宅に関する費用はケースバイケースです。従業員に適切に住宅手当を支給するには、細かく条件を定めることが必要になります。

とはいえ、あまり複雑にしてしまうと従業員が混乱する可能性もあるので、住宅の名義や家賃の金額などで決めると良いでしょう。

こんな場合はどうする?

住宅手当の支給条件を定めるためには、上記以外にもさまざまなケースがあります。お金に関わる大事なことなので、以下のような場合も想定して条件を決めましょう。

夫婦とも同じ企業で働いている場合

夫婦とも同じ企業で働いている場合、夫婦どちらにも住宅手当を支給すると、従業員間の不公平感や不満が生まれるため、どちらか一方に支給する場合が一般的です。

その場合の条件として、

  • 世帯主に支給
  • 賃貸の契約者に支給

などの方法があります。

世帯主に支給する条件の場合、世帯分離などで夫婦どちらも世帯主になれるため、あまりおすすめできません。

どちらか一方しか資料を提出できない、「賃貸の契約者に支給する」という条件のほうが良いでしょう。

もしくは、夫婦間で収入の高い方に支給するなどの分かりやすい方法もあります。しかし、この方法ですと、別居している場合の対応も必要になるので、やはり「賃貸の契約者に支給」するほうが無難です。

ルームシェアや同棲など、第三者と居住している場合

第三者と居住している場合であっても、従業員が世帯主や賃貸の契約者であれば、支給する場合もあります。しかし、実際にどれくらいの家賃を支払っているかは、住居人同士の取り決めによって決まります。

公平性を保つ意味でも、どれくらいの金額を支払っているかの証拠を提出した場合に、住宅手当を支給する方法が良いでしょう。

実家暮らしなど持ち家の場合

実家暮らしの場合は、親などが家賃や住宅ローンを支払っていることが想定されるので、住宅手当を支給することはあまりないです。しかし従業員名義で家を持っている場合は、支給の対象とすることもあります。その場合は、当人がいくら支払っているかの証拠を提出してもらうようにしましょう。

父子家庭や母子家庭の場合

こちらの場合、地方自治体によっては「ひとり親家庭の住宅手当」を支給する制度があります。まずは、そちらの制度を従業員に説明し利用することを進めましょう。

例えば、

  • 千葉県浦安市:月額上限15,000円を支給するひとり親家庭住宅手当
  • 埼玉県蕨市:家賃が30,000円以上の場合月額10,000円を支給するひとり親世帯民間賃貸住宅家賃助成制度

などです。

この制度は実施していない自治体も多いため、事前に確認しておきましょう。制度がない場合には、企業が住宅手当を支給するなどの柔軟な対応が必要です。

住宅手当の相場

住宅手当の相場

住宅手当の金額を決めるにあたって、まずは相場を知る必要があります。

厚生労働省の「平成27年就労概況賃金制度」を見てみると、住宅手当の労働者1人当たりの平均支給額は17,000円です。

また、企業規模などによって平均額が違います。1,000人以上の企業では19,333円に対し、30〜99人規模では14,359円です。人数が多くなるほど、支給額も上昇する傾向になっています。

さらに業種別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」が最も低く10,466円。最も高い支給額は、「情報通信業」で25,312円というデータが出ています。

これらの支給額を基準に考えてみるとよいでしょう。

住宅手当の支給による企業側の負担

上記のデータから分かるとおり、住宅手当の金額(一人当たり平均17,000円支給)は企業にとってもかなりの負担になります。特に、住宅手当は毎月決まった金額を人数分支給するので、1年でかかる金額も大きくなります。

例えば、住宅手当が15,000円で対象人数が20人いる場合、

  • 毎月かかる金額は、15,000×20=300,000円
  • 1年に換算すると、300,000×12=3,600,000円

になります。このようにコストが掛かりますし、住宅手当によって得られる効果も実感し難いでしょう。また住宅手当などの福利厚生は、導入したらそれで終わりではありません。利用する従業員の把握や、手続きなどの管理にもコストが掛かります。

そして住宅手当はすべての従業員に支給されるわけではないので、制度の利用率に差が出てしまいます。

支給対象条件の従業員にとっては、やる気やモチベーションアップにつながりますが、制度を利用できない従業員にとっては不公平に感じてしまい、逆効果になる場合もあるのです。

住宅手当の支給パターン

住宅手当の金額は、大まかにいくつかの支給パターンに分かれています。

家賃の金額や個人の事情に関係なく一律支給

一番シンプルな支給パターンが、支給対象であれば一律の金額を支給する方法です。この場合、地域の家賃相場や家族構成の違いで、不平等を感じる従業員が出てくる恐れがあります。

しかし、一人暮らしや独身の従業員が多い企業であれば、比較的差が生まれません。

家賃の相場や扶養家族の人数に応じて支給額を変更

地域によって家賃の相場は違いますし、扶養家族がいるのであればその分家賃が高い住宅に住んでいる可能性があります。

そういった個人の事情を考慮した上で金額を決める支給パターンは、きちんと条件や金額を設定できれば、公平に支給することが可能です。

しかし、家族が多くても安い賃貸に住んでいる、相場が高い地域でも家賃が安い住宅に住んでいるなどの例外も存在します。従業員の人数が多くなればなるほど、管理が難しくなるので注意が必要です。

住居手当を廃止する企業

住居手当を廃止する企業

上記のことから、住宅手当は企業に勤めるすべての従業員に公平に支給することは困難なのが現状です。また、実態を正確に把握することが難しいため、個人の事情を考慮して支給パターンを変えることは、どこかで破綻します。

すべての従業員に公平に支給できない以上、不満を抱える従業員はいます。企業にとっても、住宅手当は金額的に大きな負担となり、思った以上の効果が得られない場合は廃止することもあります。

また、成果主義の方針を唱える企業が増えてきていることも、住宅手当を廃止する理由のひとつになります。なぜなら、成果による報酬原資を住宅手当などから回すことにより、企業の負担を減らすことができるからです。

しかし、ただ住宅手当を廃止するだけでは、より大きな不満を生むことになります。労働組合からの同意も得られないと、なかなか廃止自体が難しいこともあるでしょう。そのため住宅手当を廃止する際には、従業員が不利益を被らないように代案を提示する必要があります。

例えば、

  • 他の福利厚生制度を制定
  • 支給対象者の基本給に還元

などです。

住宅手当の支給対象者の基本給に還元する場合は、支給総額としては現状維持です。ですので、最も受け入れられやすい方法です。しかし、企業側からすると基本給がベースになる残業手当や賞与などの高騰につながることは留意しておかなければなりません。

他の福利厚生制度を制定する場合は、従業員間での不公平が少ない福利厚生導入の原資にします。具体的には、利用できる福利厚生のサービスを充実しているパッケージプランや、従業員にポイントを分配してポイントを使って福利厚生のサービスを利用してもらうカフェテリアプランの導入です。

いずれの場合にしても、従業員に根拠のある説明をして誠意を伝えることが、最も納得できる材料であると考えられます。

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