福利厚生のために使える助成金の種類と条件|中小企業に支給される助成金等

福利厚生のために使える助成金の種類と条件|中小企業に支給される助成金等

企業の福利厚生のために使える助成金をご存知ですか?育児・介護支援だけではなく従業員のキャリアアップを行った場合に受けられる助成金など、様々な種類の助成金が存在します。今回は、福利厚生のために使える助成金の種類と助成金を受けられる条件について説明いたします。

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福利厚生に助成金が支給される

福利厚生に助成金が支給される

企業が従業員のために行う福利厚生に対して、特定の条件に当てはまった場合には助成金が支給されることがあります。特に福利厚生に関する助成金は、厚生労働省の指針に沿った人事政策を行うことで支給対象となってくることが多いです。

助成金とは?

助成金とは、ある目標に対して、それを達成するために努力したことに対するお祝い金的な要素のあるお金です。特に厚生労働省が支給する助成金を受けるためには、経営者や人事関係者に対して大きな負担を伴う条件クリアが求められることが多いです。雇用関係の助成金にはキャリアアップ助成金などがありますが、申請にはかなり根気のいるものが多いです。

補助金との違い

助成金と補助金は、どちらも返済不要なお金です。

大きな違いとしては、助成金は一定の条件に合致している場合には原則として支給されますが、補助金は条件を満たしていても審査に合格しなければ受け取れない可能性があるということです。助成金は条件を満たせば受け取ることができるのに対して、補助金は条件を満たしていても審査というハードルがあります。

また、所管する役所による言い方の違いもあります。助成金という言葉は主に厚生労働省で使われ、補助金という言葉は主に経済産業省で使われています。

助成金を受けられるメリット

助成金を受けられるメリット

助成金を受けられるメリットについては、3つのメリットがあります。

返済不要

1つ目のメリットは、融資ではなく返済不要なお金ということです。

雇用助成金をはじめとして厚生労働省管轄の助成金は、その運用の元金が基本的には雇用保険料からまかなわれています。労働者のキャリアアップや失業防止などの特定の目標に対して、水準を満たした企業に支給されるものですので、返済の必要がありません。

労働環境の改善

2つ目のメリットは、労働環境の改善です。

厚生労働省の管轄する雇用関係の助成金は、基本的には厳しい条件をクリアして労働環境を向上させないと支給されません。厳しい条件をクリアしているため、助成金が受けられる状態になっている場合には労働環境がよくなっています。

社会的な信用を得る

3つ目のメリットは、社会的な信用を得られることです。

昨今では少しでも労働環境に問題があると指摘されれば「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまいます。国から助成金を受けているというような触れ込みがあれば、厳しい条件をクリアした企業として一定の社会的信用を得ることができます。雇用関係の助成金を受けることは、経営そのものにも非常によい効果があります。

支給される助成金の種類

支給される助成金の種類として、従業員のキャリアアップを支援する助成金、中小企業に支給される助成金、育児や介護をしている従業員がいる企業に対して何らかの優遇措置をとった場合に支給されるものを紹介します。

従業員のキャリアアップを支援する助成金

従業員のキャリアアップを支援する助成金

従業員のキャリアアップを支援する助成金としては、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」が代表的です。支給申請条件は、1年度につき、1事業所で20名まで拡充しています。

具体例を挙げます。

自動車産業で期間工(期間社員)と呼ばれる契約社員が正規従業員登用試験に合格して、有期契約雇用から正規雇用(期間の定めのない雇用)に移行した場合は、助成金の支給対象となってきます。

文字通り契約社員から正社員化したというパターンですが、このように雇用契約をよい方向へ見直した場合には1事業所につき20名まで助成金の支給申請ができます。ただし、最近の追加条件として、契約社員から正社員への雇用契約転換時に転換前と転換後の6ヶ月の総賃金を比べて、契約社員時代よりも5%以上の賃金上昇が必要となっています。

正社員よりも契約社員のほうが賃金が高い企業の場合は、少し厳しい条件となっています。

また、契約社員との契約期間が3年未満のものに限る、とされています。契約社員を3年以上同じ事業所で引き続き雇用した場合には雇止めができなくなるため、仕方がなく正規登用したという見られ方をされてしまうため、3年以内に正規登用を行い、助成金を受ける形が望ましいです。

中小企業に支給される助成金

中小企業は大企業に比べてネームバリューの弱さなどから、採用活動を行っていても苦戦を強いられることがあります。そこで、その採用力の弱さを補ってくれるような助成金が多く存在します。

中小企業が活用できる雇用関係の助成金としては、「トライアル雇用助成金」があげられます。職業経験が不足していることから就職することが困難な就職希望者を、3ヶ月間の試行雇用をすることでその期間に就職希望者の適性などを見極め、雇用への移行のきっかけをつくることが目的の制度です。

また、トライアル雇用だけではなく中小企業向けに適しているのが特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)です。

中小企業の場合は新卒採用を行っても、新卒は大企業に就職する傾向にあるため、新卒を採用することは非常に根気が必要です。そこで、新卒ではなく大学卒業後3年以内の就職していない既卒者(または中退者)を採用することで、若手を採用できる可能性が高まります。

大学卒業から3年以内の既卒者や中退者向けの求人募集を行い、採用後に一定期間の定着が確認された場合に支給されます。

この他にも雇用関係の助成金があります。詳しくは、厚生労働省のホームページでご確認ください。

育児や介護をしている従業員がいる企業におすすめの助成金

育児や介護をしている従業員がいる企業におすすめの助成金

育児や介護をしている従業員がいる企業におすすめの助成金としては、「両立支援等助成金」があげられます。

コースが5つに分かれており、

  • 男性が育児休暇を取得した場合に受けられる出生時両立支援コース
  • 仕事と介護の両立を支援する介護離職防止支援コース
  • 育児・介護等により離職した従業員を再度雇用する再雇用者評価処遇コース
  • 仕事と育児の両立を支援する育児休業等支援コース
  • 女性の活躍を促進する女性活躍加速化コース

があります。

出生時両立支援コース

出生時両立支援コースでは、男性が育児に参加できるような環境を整備していることがおもな要件となっています。

具体的には、

  • 男性が育児休業を取得しやすい環境を作るために管理職向けの研修を実施するなどの活動をしていること
  • 男性が子の出生後8週間以内に開始する連続14日間以上(中小企業の場合には5日間以上)の有給休暇を取得すること
  • 子どもの出生の前後に、男性が育児参加や妻の出産を手伝えるような休暇制度を企業として整備していること

が要件としてあげられています。

育児・介護休業法とは?休業取得がしづらい背景と改善のための法改正

介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースへの申し込み要件としては、厚生労働省の発表している「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」をベースとして、職場環境改善の取り組みを行います。

  1. 介護休業の休暇取得について「介護支援プラン」を作成します。
  2. 従業員に支援プランを適用し、就業規則を作成し、周知します。
  3. 介護を行う予定の従業員と面談を行い、介護の状況や今後の働き方についての要望等を確認のうえ、従業員ごとに個別に「介護支援プラン」を作成、導入します。

作成した「介護支援プラン」に沿って業務の引き継ぎを実施し、介護休業を必要としている従業員に連続2週間以上(分割利用時は合計14日以上)の介護休業を取得させること、元の職場に復帰して1ヶ月以内に、今後の働き方等についてのフォロー面談を実施することです。

制度として厚生労働省の作ったベースである両立支援モデルを参考にして、介護休業を必要としている従業員のフォロー面談などを定期的に実施する必要があります。

介護休業の休暇を取得した従業員が戻ってきたら、再度「介護支援プラン」に沿って業務体制の検討を行い、対象者に勤務制限制度を活用してもらいます。

所定外労働の制限制度、時差出勤制度、深夜業の制限制度、短時間勤務制度の中から選択をしてもらい、連続で6週間以上(分割で利用する場合42日以上)利用してもらいます。連続6週間(または42日)の制度活用後、フォロー面談を行います。

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再雇用者評価処遇コース

再雇用者評価処遇コースは、妊娠や出産、育児、介護を理由として離職をした従業員を再度雇用した場合に助成金の支給が受けられるものです。ただし、ただ単に再度雇用するだけではなく離職時の勤務評価などを勘案して再入社時の処遇を決定するなど、人事制度として再雇用について定めていない場合には対象となりませんので注意が必要です。

育児休業等支援コース

育児休業等支援コースについては、「育休復帰支援プラン」を制定し、プランに沿って従業員に育児休業を取得させ、復帰させた中小企業の事業主に支給されます。
要件については育児休業取得時と職場復帰時で異なります。

育児休業取得時は、育休取得予定者の休業日を迎えるまでの働き方、仕事の引き継ぎのスケジュール、育児休業からの復帰後の働き方について、直属の上司(育児休業予定者の人事権をもっている上司)または人事担当者と面談を実施したうえで、面談結果を書面にて記録することが求められます。

また、「育休復帰支援プラン」に基づき、対象者の育児休業については開始日までに業務の引き継ぎを実施し、3ヶ月以上の育児休業を取得させることが要件となっています。

職場復帰時には、対象者の休業中に「育休復帰支援プラン」に基づき、復帰する予定の職場の情報・資料の提供を実施し、対象者の職場復帰前と職場復帰後に上司(人事権をもつ直属の上司)または人事担当者がフォロー面談を実施し、面談結果を記録することが必要となってきます。

加えて、対象者を原則として休業前と同じ職場に復帰させ、さらに6ヶ月以上継続雇用することも要件となっています。

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女性活躍加速化コース

最後に、女性活躍加速化コースについては、女性活躍促進法に基づき、企業で活躍する女性の「数値目標」、その設定した目標に対する達成のための「取り組み目標」を入れた「行動計画」を策定して目標を達成した事業主に対して助成金が支給されます。

例えば、女性管理職のパーセンテージを5%と定め、その目標を達成するために女性で管理職になりたい従業員に向けたセミナーを行うなどの取り組みを行い、その目標を達成できた場合に助成金が支給されるという仕組みです。

各種助成金への申し込み方法

各種助成金への申し込み方法

キャリアアップ助成金制度

キャリアアップ助成金制度を申し込む場合には、先にキャリアアップに係る取り組み実施日までに都道府県労働局に「キャリアアップ計画書」を提出し、認定を受ける必要があります。

「キャリアアップ計画書」の用紙は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。また、キャリアアップ助成金支給の申請書も厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

トライアル雇用制度

トライアル雇用制度を利用する場合には、ハローワークにトライアル雇用の適用を受けた求人票の提出を行います。ハローワークからトライアル雇用を受けたいと志望している転職希望者の方が紹介され雇用にいたれば、「トライアル雇用実施計画書」を2週間以内にハローワークに提出します。

その後に「トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書」と「支給要件確認申立書」をハローワークに提出します。

両立支援等助成金

両立支援等助成金については、コースごとに提出書類が異なります。

出生時両立支援コースについては、提出先は申請事業主の本社機能をもった事業所の住所を管轄する各都道府県の労働局です。

必要書類

  • 両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の申請書
  • 就業規則および労働協約のコピー
  • 男性労働者の育児休業しやすい環境作りの取り組み内容
  • 対象育児休業者の育児休業申請書
  • 育児休業取得者の育児休業中の勤務実績のわかる書類
  • 対象者の労働契約書
  • 休業者の母子手帳などの、子がいることが証明できる書類
  • 一般事業主行動計画の公表や制度を労働者に通知していることがわかるもののうつし
  • 支給要件確認申立書

特に出生時両立支援コースについては、コースごとに提出書類が異なりますので、各労働局に問い合わせの上、確認を行うようにしてください。

各コース申し込み方法