
離職を防止するには?離職の原因や放置するリスク、企業にできる施策
「どうすれば社員に長く働いてもらえるのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
社員が安心して働き続けられる職場をつくるためには、まず離職が起きる理由を知り、課題を解消できる施策を行うことが大切です。
この記事では、離職の原因や防ぐためのヒントをわかりやすくご紹介します。
目次[非表示]
- 1.離職防止とは?離職対策が重視されている理由
- 1.1.離職防止とは何か
- 1.2.なぜ離職防止がこれほど大事なのか
- 2.退職の本当の理由は伝えられない
- 3.社員が離職する本当の理由
- 3.1.給与や待遇への不満
- 3.2.人間関係のストレス
- 3.3.会社の将来性や経営方針への不安
- 3.4.仕事内容への不満やミスマッチ
- 4.離職防止の施策を行わない際に発生するリスク
- 4.1.人材採用・育成コストの増加
- 4.2.企業イメージやブランド力の低下
- 4.3.職場の士気やチームワークの悪化
- 5.離職防止の対策【職場環境・体制】
- 5.1.職場環境の改善1.労働時間の適正管理や休暇取得の励行
- 5.2.職場環境の改善2.オープンで話しやすい風土づくり
- 5.3.職場環境の改善3.社内コミュニケーションの活性化
- 5.4.職場環境の改善4.福利厚生の充実
- 5.5.職場環境の改善4. 新入社員や中途社員へのサポート体制を強化する
- 6.離職防止の対策【労働条件】
- 7.離職防止の対策【人間関係】
- 8.離職防止の施策を着実に進めよう
離職防止とは?離職対策が重視されている理由
社員の離職は、企業にとって大きな損失です。損失を出さないためにも、社員が長く安心して働ける環境づくりが不可欠になってきます。
ここでは、そもそも離職防止とは何か、そしてなぜ今その対策が重視されているのかを詳しく解説します。
離職防止とは何か
離職防止とは、社員が会社を辞めずに働き続けられるようにするための工夫や取り組みのことです。「リテンション」や「リテンションマネジメント」と呼ばれることもあります。
社員が退職を決意する理由は一つではなく、さまざまな不満や悩みが重なって生まれるものです。
そのため、離職を防ぐためには、一つの対策だけではなく、複数の視点からの対応が必要になります。
なぜ離職防止がこれほど大事なのか
日本全体で働く人が減っており、良い人材を見つけるのがますます難しくなっていることが大きな理由の一つです。
そして、離職が一般的になり、社員が会社を離れることへのハードルが下がり、人材が流出しやすくなっていることも、離職防止の施策が求められている背景として考えられます。
そして、新しく採用した社員がすぐに辞めてしまうケースも少なくありません。
こうした状況が続けば、必要な人手が足りず、組織の活動自体が立ち行かなくなるリスクも出てきます。
だからこそ、社員に長く安心して働いてもらうための離職防止策は、安定した企業経営の実現と深く結びついていると言えるでしょう。
退職の本当の理由は伝えられない
退職の理由を踏まえて離職防止策を考えるのが普通なのですが、実際のところ企業側に本当の退職理由が伝えられないことが多いです。
本当の退職理由が職場の人間関係や給与体系、福利厚生への不満などである場合、より円満な退職を希望する人は「個人的な都合で」とぼやかしたまま退職してしまいます。
「ミドルの転職」を利用する転職コンサルタントを対象にした調査(2019年)によると、転職者の2人に1人は異なる退職理由(つまり本当の理由ではない)を企業側に伝えています。
出典:エン 人事のミカタ
企業側に伝える退職理由としては「家庭の都合」や「ほかにやりたいことがある」「資格取得のため」などがよくあり、「一身上の都合」という "建前" に集約されています。
企業側も個人的な事情では引き止めにくく、そのまま退職を受け入れているケースがほとんどです。
社員が離職する本当の理由
多くの企業で問題となっている本当の離職原因について詳しく見ていきましょう。
労働者が職を辞める主な原因は、以下4つが挙げられます。
給与や待遇への不満
人間関係のストレ
会社の将来性や経営方針への不安
仕事内容への不満やミスマッチ
給与や待遇への不満
離職理由として特にわかりやすいのが、給与や待遇への不満です。
自分の働きに対して報酬が見合っていないと感じると、社員は「もっと評価してくれる会社があるのでは」と考えるようになります。
また、業界の相場と比べて自社の給与水準が低かったり、昇給やボーナスの基準が不透明だったりすることも、不満を感じる原因になります。
実際のエン・ジャパンの調査結果で、報酬をあげたい、評価に納得できない理由が以下の通りトップの理由となっています。
"本音" 報酬をあげたい(57%)、評価に納得できない(48%)
出典:エン 人事のミカタ
人間関係のストレス
職場の人間関係が原因で辞める人は少なくありません。
上司とうまく意思疎通ができない、同僚とそりが合わない、チームの雰囲気が悪いといった問題は、日々の仕事に大きな影響を与えます。
特に最近では、パワハラやモラハラといった言葉が広く知られるようになり、自分の置かれている状況がハラスメントにあたると認識しやすくなりました。
その結果、職場の人間関係に悩む社員が「この環境では働き続けられない」と判断し、離職を考えるケースが増えているのです。
実際の調査データでは、上司と合わない("本音" 48%)、職場の人間関係が合わない("本音"48%)の結果が二番目に高い回答結果となっています。
会社の将来性や経営方針への不安
会社の経営状況や将来性に不安を感じている社員も、離職を考える可能性があります。
例えば、業績が悪化している、リストラの噂がある、経営陣が頻繁に交代する、といった状況は社員も強い不安を感じやすくなります。
また、会社の理念や方針が自分の価値観と合わない場合も、「この会社に居続ける意味があるのか」と疑問に感じるきっかけになります。
特に将来を見据えてキャリアを積みたいと考える社員ほど、会社の安定性やビジョンを重視する傾向があります。
調査データでは、会社の将来に不安を感じる("本音"37%)という回答結果となっています。
仕事内容への不満やミスマッチ
実際に働き始めてから「思っていた仕事と違う」と感じることも、離職の原因として挙げられます。
採用時の説明と実際の仕事内容にズレがあると、やりがいを見いだせなくなってしまうおそれがあります。
また、スキルやキャリアアップを望んでいるのに単調な作業ばかりを任されたり、逆に難しすぎる仕事を任されたりすることも、モチベーションの低下につながるでしょう。
こうしたギャップが続くと、「自分に合った職場に移ったほうがいいのでは」と離職を考えるようになるのです。
実際、退職代行を運用する株式会社アルバトロスの利用事例の中にも「聞いていた話と違う」という案件が多数報告されています。
離職防止の施策を行わない際に発生するリスク
離職防止の対策を取らずにいると、目の前の問題だけでなく、将来的に企業全体へ深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ただ社員が辞めるだけにとどまらず、さまざまなリスクが広がっていくのです。
ここでは、離職防止の施策を行わなかった場合に起こりうる代表的なリスクについて解説します。
人材採用・育成コストの増加
社員が頻繁に辞めると、新しい人を採用したり、教育したりするためのコストが増えてしまいます。
採用活動や研修にかける時間やお金は、企業にとって負担となり、業務に使えるリソースが減ることになります。採用活動の負担が続くと、経営にも大きな影響を与えかねません。
企業イメージやブランド力の低下
社員が頻繁に辞める企業は、外部から見て「働きづらい職場」という印象を与える可能性があります。
特に、退職した社員がインターネットの口コミサイトやSNSにネガティブな評判を書き込むことで、その噂が広まり、企業のイメージが悪化するケースも少なくありません。
一度マイナスの評判が広がると、優秀な人材が応募を避ける原因にもなり、採用活動が厳しくなる場合もあるでしょう。
結果的に企業のブランド力が低下し、長期的には信頼や競争力の低下といった不利益を招くおそれがあります。
職場の士気やチームワークの悪化
社員の離職が続くと、残った社員の士気が下がり、チームワークにも悪影響を与えます。
特に、辞めた社員の仕事を他の社員が引き受けることになると、負担が増え、仕事に対するモチベーションが下がるおそれがあります。
社員の離職が続けば、職場の雰囲気も悪くなり、結果として業務の効率が落ちる可能性も考えられるでしょう。
離職防止の対策【職場環境・体制】
職場環境を改善することで離職を防止する策を5つ挙げます。
職場環境の改善1.労働時間の適正管理や休暇取得の励行
過度な時間外労働や休日出勤が常態化すると、心身の疲弊から離職リスクが急速に高まります。
まずは 「長時間労働は例外」 という組織文化を根付かせることが出発点です。
労働基準法は使用者に対し、労働時間を正確に把握・管理する義務を課しています。さらに 2019年4月の改正により、年次有給休暇を年間5日以上取得させること が企業の法的責務となりました。
適正管理を形骸化させないためには、自己申告制だけに頼らず ICカードやクラウド型勤怠管理システム を導入し、「誰が・いつ・どこで働いたか」をリアルタイムに可視化することが不可欠です。
36協定超過残業や有休未取得者をアラート表示できる仕組みを整えれば、管理職が早期に是正措置を講じられます。
職場環境の改善2.オープンで話しやすい風土づくり
日頃からコミュニケーションが活発で、オープンなコミュニケーションができている職場なら、仕事や人間関係に対する不満がまだ小さいうちに解決につなげられるかもしれません。
気を遣い過ぎることなく何でもオープンに話すことができる職場の風土は、離職防止につながります。
たとえば、上司と社員が直接コミュニケーションを図れる1on1は、社員の悩みや不安の早期発見や、適切なサポートにつながります。
また1on1は、社員が自身の成長やキャリアに関する不安を気軽に相談できる場でもあります。定期的に行うことで信頼関係が築かれ、離職防止に役立つでしょう。
意図的に職場の交流機会を設けて仕事や人間関係に関する困りごとや不満点を共有すれば、離職が起こりにくい、よりよい職場環境に変えていくきっかけになります。
職場環境の改善3.社内コミュニケーションの活性化
組織内でのコミュニケーション不全が起こっていることが離職の原因になっている場合は、組織内のコミュニケーションを活性化させることが、離職防止につながります。
個々のコミュニケーション能力に委ねるのではなく、組織ぐるみでコミュニケーションの機会と頻度を維持する仕組みづくりが必要です。
ただ会話をする機会を増やすのではなく、タテ(上司と部下)・ヨコ(同僚)・ナナメ(他部署)のコミュニケーションの機会を増やすことです。
たとえば、中外製薬様では、「キャリア相談室」を設けて、キャリアの悩みを相談できる仕組みを作ったことで、年間約200件ほどの相談を受けています。
こうすることで視野が広がり、離職を考える以外の可能性を広げています。
職場環境の改善4.福利厚生の充実
福利厚生は社員の働きやすさを左右する大切な要素です。
健康保険や育児・介護休暇など、社員が安心して働ける環境を整えることは、離職防止に効果的です。
実際に、福利厚生の権威山梨大学の西久保教授の研究結果で、1,700名へのアンケート結果で、「福利厚生に満足」している従業員群は、60%以上が勤め続けたいと回答しています。
離職防止の為、社員が気軽に利用できるリラクゼーション施設や、自己啓発支援のプログラムなども検討してみましょう。
職場環境の改善4. 新入社員や中途社員へのサポート体制を強化する
新入社員や中途社員は、入社して間もないため不安を感じているケースが多いです。
そのため、入社後にしっかりとサポートする体制を整えることが重要になります。
指導役を決めて、仕事の進め方や社内の文化をしっかり伝えることが、早期離職の防止につながるでしょう。
実際に、新卒の3年以内早期離職率は30%程度であり、一般的な離職率平均15%程度と比較して高い傾向にあります。
そのため、新卒をケアすることが離職防止に効果的となります。
関連記事:
新卒社員が早期離職するのはなぜ?離職率の平均や辞める理由は?
日本企業の離職率の平均は?離職率を高める労働環境の特徴と離職理由
離職防止の対策【労働条件】
次に、労働条件を改善することで離職を防止する策を2つ挙げます。
労働条件の改善1.柔軟な働き方ができる労働条件の整備
仕事のスタイルは多様化しているため、柔軟な勤務形態を導入することで社員のワークライフバランスを支援できます。
テレワークやフレックスタイム制度など、社員のライフスタイルに合った働き方を提供することが、社員のエンゲージメント向上にもつながり、離職防止になります。
また、働き方を固定しないという観点から、視野とつながり を広げる副業の解禁も柔軟な働き方の提供につながります。
今の職場に残るか別の職場に移るかの二者択一ではなく、両方で働くという新しい選択肢の提示も離職防止につながります。
労働条件の改善2.人事評価制度を見直して透明化を図る
社員が自己成長を実感し、モチベーションを維持するためには、公正かつ透明な評価制度が欠かせません。
不透明な評価や主観的な判断が続けば、評価への不信感や不満が蓄積し、離職リスクが高まります。
まずは、評価基準やプロセスを明確化し、「どのような成果がどのように評価されるのか」を社員が理解できる状態を整えることが重要です。
そのうえで、組織の変化(人員構成・必要スキル・事業内容)に照らして、現行制度が時代遅れになっていないかを点検します。
年功序列型や属人的な評価制度が残っている場合は、成果や行動に基づく客観的な評価に見直すことが求められます。
併せて、上司からのフィードバックを定期的に実施し、評価理由や改善点をしっかりと伝えることで、納得感が生まれます。
こうした制度運用の見直しと説明責任の徹底が、社員の評価への信頼感を高め、給与や処遇に対する不満の解消=離職防止につながっていきます。
離職防止の対策【人間関係】
最後に、人間関係(特に上司との人間関係)を改善することで離職を防止する策を1つ挙げます。
人間関係の改善1.企業のビジョンや価値観を社員に浸透させる
企業のビジョンや価値観が浸透すると、社員が仕事に対してやりがいを感じられるようになります。
社員一人ひとりが企業の目標や使命感を理解し、自分の仕事がその達成にどうつながるかを実感できれば、長く働き続けたいと思う社員も多くなるでしょう。
人間関係の改善2.管理職の教育・意識改革
職場の人間関係が離職の原因になっている場合は、まずは管理職のマネジメントスキル向上と意識改革が効果的です。
組織で仕事をする以上、人間関係(特に上司との関係)が離職の原因になるのは完全に企業側に落ち度があります。
管理職としてメンバーを育てて組織を強くしなければならない立場の人間が部下やチームをつぶして退職させることは、組織の弱体化につながり、企業にとって損失でしかありません。
そのような人間を管理職として任命し、教育してこなかったのは企業側の問題でもあります。
このような問題を起こさないためにも、管理職の教育・意識改革に取り組むのも一案です。
上司が多様な人材が集まる組織で成果を出す意識を高くもち、チームメンバーの働き方への理解を深めることができれば、上司との人間関係の問題を少しでも解消することにつながり、離職防止につながります。
離職防止の施策を着実に進めよう
今回は、離職防止に効果のある施策を解説しました。
社員の退職理由は一つではありませんが、だからこそ小さな工夫や対策が効果を発揮します。
無理なくできることから始めれば、社員も会社も安心して前に進めるはずです。まずはできることから着実に始めていきましょう。