従業員のウェルビーイング向上は企業成長の要|方法や注意点3つも解説

心身と社会的な健康を意味するウェルビーイングは、企業成長に欠かせない概念の1つです。

しかし、従業員のウェルビーイングを向上させるための方法やコツが分からないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、従業員のウェルビーイングを向上させるための方法やポイント、企業メリットなどを解説します。

自社のウェルビーイングを向上させて、企業成長や利益の最大化を図りましょう。

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ウェルビーイングの向上とは

ウェルビーイングの言葉本来の意味は「良い状態であること」や「幸福な状態」という意味で、社会福祉や医療、心理分野などで使われている用語の1つです。

しかし、昨今ではビジネス上でも使われることが増えてきました。企業がウェルビーイングを進めることで「従業員一人ひとりの幸福や、心身ともに健康的な状態であることが組織にとって良い方向に働く」ことを目指す考え方です。

ウェルビーイング向上とは「従業員の健康アップや企業のイメージ・業績アップ」の意味合いとして使われています。

ウェルビーイング向上で獲得できる5つの企業メリット

本章ではウェルビーイング向上で企業が得られる5つのメリットを紹介します。

主なメリットは下記のとおりです。

  • 人間関係の改善
  • エンゲージメント向上
  • 生産性や創造性が高まる
  • 離職率の低下や求職者の増加
  • 企業ブランディングの確立

それぞれ解説します。

人間関係の改善

まずは人間関係の改善が期待できる点です。従業員同士の人間関係は、実生活に大きく関係します。また、職場におけるストレスの多くは人間関係からくると関連付けている研究結果もあるほどです。

ウェルビーイングを向上させることで、心身ともに健康になればメンタルヘルスが安定し、むやみに人を傷つけるような行動を起こさなくなるでしょう。人間関係の改善につなげることが可能です。

ウェルビーイングの概念や制度を取り入れることで、企業主体で職場の人間関係改善に取り組むことができるでしょう。

看護師のウェルビーイングとコミットメント・職場の 人間関係との関連性|愛媛県立医療技術大学

エンゲージメント向上

2つめはエンゲージメントの向上につながる点です。有給休暇の取得や時短勤務、フレキシブル出勤などさまざまな施策を通して、ウェルビーイングの向上を実践している企業では、組織全体で従業員の健康状態を実現するよう働きかけています。

このようなさまざまな施策は、結果的に従業員のエンゲージメント(企業への信頼や企業に対する貢献意欲)を向上させることが可能です。

生産性や創造性が高まる

3つめは、生産性の向上やアイデアが出やすい活発な環境へ導くことが可能な点です。

様々な研究によって、ウェルビーイングと生産性や創造性との関連性が指摘されています。

下記は、最新テクノロジーやデータを活用する企業が集まり、先進的な取り組みを共有するカンファレンス「ウイングアークフォーラム2017(東京開催)」での講演内容です。

幸せな社員は不幸せな社員よりも、創造性が3倍高く、生産性も1.3倍高い

参照:幸せな社員は創造性3倍、労働生産性1.3倍 働き方改革における幸福度の重要性を説く|ウイングアークフォーラム2017

また、アメリカの心理学研究では

従業員が幸福であれば創造性が3倍になり生産性は31%高い

というものがあります。ほかにも、小売業では売り上げが37%上がったという報告も存在します。

さらに幸福度が高い従業員は、そうでない従業員よりも欠勤率が41%、離職率は59%も低く、業務上の事故が70%少ないという研究結果もあります。

参照:The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success? |American Psychological Association(米国心理学会)

データで裏付けされているように、ウェルビーイングが向上すれば生産性や創造性が高まり、企業にとって利益の増大が見込まれるのです。

離職率の低下や求職者の増加

4つめのメリットは離職率の低下と、求職者の増加につながる点です。従業員のウェルビーイングを推し進めた結果、離職率が大幅に低下した事例で最も有名なのはソフトウェア開発会社の「サイボウズ」事例ではないでしょうか。

参照:サイボウズチームワーク総研

サイボウズでは当初離職率が28%とかなり高かったですが、従業員1人ひとりに合った働き方改革やウェルビーイング施策を進め、4%まで離職率を下げることに成功しました。

また、従業員のために行ったウェルビーイング施策は、結果的に社外へも良い反響を集め多くの求職者が集まる人気企業へと成長しました。2021年は117名、2022年は170名もの採用人数を誇ります。 

このように従業員のウェルビーイングを向上させることで、離職率の低下や求職者の増加につながるのです。

企業ブランドの確立

最後は企業ブランドの確立が可能な点です。企業ブランドとは企業自体のイメージや価値観、信頼性を表すもので、企業の1つの資産でもあります。

企業がウェルビーイングを推進することで、見通しや風通しの明るい企業であると社内外に認知してもらうことが可能です。

このほかにも、企業と関わるステークホルダーからの融資を受けやすいメリットや、従業員の満足感ややりがい形成につながる点もあります。

従業員のウェルビーイングを向上させる方法

本章では、従業員のウェルビーイングを向上させる具体的な方法を3つ紹介します。

3つの取り組みは以下のとおりです。

  • コミュニケーションの活性化
  • 労働環境の整備
  • 従業員の健康増進施策

それぞれ解説します。

コミュニケーションの活性化

まずはコミュニケーションの活性化を図りましょう。従業員の幸福感は、良好なチームワークや風通しのよい環境があってこそ実現します。

従業員同士で気軽に使えるチャットツールや、褒め合えるような取り組み、挨拶運動などさまざまな施策を通してコミュニケーションを深めましょう。ツールの導入以外にも、カフェスペースの整備や休憩室の設備充実、懇親会の費用負担などすぐに改善できる点や導入できるポイントがたくさんあります。

円滑なコミュニケーションがウェルビーイングの鍵となるため、力を入れて進めるとよいでしょう。

労働環境の整備

2つめの取り組みは、従業員のウェルビーイングを考慮した労働環境の整備です。

インセンティブ制度

適切なインセンティブ制度を設けることで、従業員のモチベーションを向上させると同時に、業績に対する報酬を適切に反映させることができます。これにより、働く価値を感じやすくなり、精神的な満足感が得られるでしょう。

男性従業員の育児休暇啓発

男性従業員が子育てに関与することをサポートすることで、家庭とのバランスがとりやすくなります。また、ジェンダー平等な環境を推進することは、全体の職場の風土を向上させる要因ともなります。

託児所の設置や社員食堂の拡充

託児所の設置は、親としての役割と仕事のバランスを取りやすくします。社員食堂の拡充は、栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員の健康維持をサポートします。

労働時間や残業時間の見直し

過度な残業が減少することで、心身のストレスが低減し、プライベートの充実や休息が確保されることが期待できます。

 

現在、働き方改革が進んでいる中で、従業員のニーズやライフスタイルに合わせた労働環境の整備は必要不可欠です。テレワークの導入や時短勤務、副業を可能にするなど、企業の経営方針や状況に合わせて、効果的な取り組みを進めることがウェルビーイング向上のキーとなります。

従業員の健康増進施策

最後は、従業員の健康をサポートする施策の導入です。

  • 健康診断や人間ドックなど法定健診以外の補助
  • ウェルビーイングのセミナーや講習会の実施
  • 産業医との個別面談や相談会の開催

従業員が心身ともに健康であることがウェルビーイングには欠かせません。そのため、心も身体も健康につながる施策を導入しましょう。

ここでのポイントは産業医への相談窓口や相談会の開催です。社内部の産業医への相談は恥ずかしいと感じたり、バレるのが嫌だと感じる従業員が一定数います。そのような従業員への配慮として、外部の産業医や保健師、心理カウンセラーなどを紹介するような窓口を設けておくと安心して相談できるようになるでしょう。

実際に従業員が活用しやすい施策を取り入れることがポイントです。

ウェルビーイング向上を目指す際のポイント

本章では、ウェルビーイングの向上で気を付けたいポイントを紹介します。

ポイントは下記の3つです。

  • 福利厚生を導入する際は平等に行う
  • 理念の普及・啓蒙活動を継続する
  • 成果を可視化して改善に務める

それぞれ解説します。

福利厚生を導入する際は平等に行う

従業員のウェルビーイング向上を目指して、福利厚生を拡充する企業は多いでしょう。

しかし、福利厚生は「平等」でなくてはなりません。一部の従業員だけが使える施策であったり、不平等な施策であってはならないのです。そのため、全従業員が使える福利厚生を導入しましょう。

また、仮に一部の従業員だけが有利な場合は、不利な従業員へは他のインセンティブを導入して公平性を保つなどバランスをとることが重要です。

アンバランスな福利厚生は従業員の溝をさらに深める結果となってしまいます。

理念の普及・啓蒙活動を継続する

2つめは、ウェルビーイングの理念普及や啓蒙活動を実施し継続することです。

ウェルビーイングを経営に取り込み会社理念として普及することで、従業員は企業の考えを理解することができます。企業理念が理解できれば、よりウェルビーイングの取り組みへの理解や認知につながるでしょう。

ウェルビーイングの概念をさらに深めるために継続的な普及活動を行うこともポイントです。

健康促進セミナーや講義を通して、従業員へ「ウェルビーイング」を広めましょう。

成果を可視化して改善に務める

最後はウェルビーイングの成果を「見える化」し、結果をもとに改善をし続けることです。

ウェルビーイングの見える化とは、利益率、離職率や休職率、残業時間や有給取得率など、ウェルビーイング施策を導入した結果、どのように数値が変動しているのかを調べます。

そのほかにも、従業員のメンタルヘルスチェックを定期的に行い、ストレスやエンゲージメント度合いをデータ化し、一定期間ごとに振り返ることもよいでしょう。

従業員のウェルビーイングは施策導入だけで終わらせては意味がありません。

どの施策が効果的だったのか、どのように数値として変動しているのかを調べることが重要です。

そして、データから改善策や有効性を紐解き、PDCAサイクルを回し続けてブラッシュアップしていくことで、よりウェルビーイングの効果を実感できるでしょう。

ウェルビーイングの向上は今後も注目され続ける

ウェルビーイングの概念は今後も注目され続ける考え方です。その理由を下記3つで紹介します。

幸福度の向上が求められている

従業員の幸福度を向上させるためには、国民1人あたりのGDPや社会福祉などの関連度が高いことから、企業におけるウェルビーイングの取り組みが注目されています。

毎年国連から発表される「世界幸福度ランキング」は、国民1人あたりのGDP、社会福祉、健康寿命、自由度、人間関係、汚職や腐敗の認知という6つの指標から算出されるランキングです。

2023年のランキングでは日本は47位で、昨年の54位からランクアップしましたが、主要7カ国(日、米、英、仏、独、伊、加)の中では最下位でした。

参照:World Happiness Report 2023

仕事は人生を構成する大きな要素であるため、幸福度の向上は今後も最重要ポイントといえるでしょう。

働き方改革の推進

2019年から国が徐々に推進している「働き方改革」を実現するためにも、ウェルビーイング向上はかかせません。

「働き方改革」は、生産性を維持しつつ向上させるため長時間労働や長時間残業を減らし、1人ひとりに合わせた柔軟で多様な働き方を実現する取り組みです。

従業員のウェルビーイングを成功させるために、働き方改革の概念を取り込むことは必須項目。多様なライフスタイルやライフプランを後押しできることが大切です。

ウェルビーイングの実現には、結果として働き方改革の推進が役立つことから注目度が高まっています。

SDGsの目標に掲げられている

2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では2030年までに達成すべき具体的な目標が17つ掲げられています。

その中でも、3つ目の目標として「すべての人に健康と福祉を(あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する)」があり、この目標達成にはウェルビーイングの概念が欠かせません。

働く従業員の健康と福祉を守るためにも、ウェルビーイング施策が有効といえるでしょう。

参照:SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール その3|日本SDGs協会

まとめ

従業員のウェルビーイングを向上させることは、従業員の企業に対するエンゲージメント向上や、生産性や利益率の向上、企業ブランドの確立などさまざまなメリットがあります。

そして、企業成長を続けていくためにも従業員のウェルビーイング向上が欠かせません。

ウェルネスに配慮した経営方針は、今後も大きな注目を集めていくでしょう。

企業価値を最大化させるためにも、本記事で紹介したウェルビーイング施策の導入を始めてください。

ウェルビーイング向上には、リロクラブの活用がおすすめです。

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