ウェルビーイングの実現に重要なメンタルヘルスケア|対策や具体例を紹介

健康経営やウェルビーイング経営を推進するには、従業員のメンタルヘルスケアは欠かせません。

しかし、メンタルヘルスケアはデリケートな問題のため、どのような施策を行えば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、メンタルヘルスケアが必要な理由やメリット、対策ステップや具体例をそれぞれ詳しく紹介します。

自社のウェルビーイング実現に必要な対策を知って、経営に活かしてください。

■合わせてよく読まれている資料
健康経営最高峰銘柄企業が実践している健康施策」も合わせてダウンロードいただけます。

メンタルヘルスに重要なウェルビーイングとは

「ウェルビーイング(well-being)」とは、身体的・精神的・社会的の3つの点が良好な状態のことを指す言葉です。

ウェルビーイングを成立させるためには精神「メンタルヘルス」がかかせません。理由は、精神的な健康があるからこそ、身体的な健康につながるためです。そのため、身体の健康を司る精神を健康的に導くことで、ウェルビーイングに欠かせない2つの項目をクリアすることができます。

ウェルビーイングの考えを取り入れた経営方針をウェルビーイング経営といい、昨今は従業員が健康で生き生きと働ける職場環境が企業価値として評価されています。

ウェルビーイングにメンタルヘルスが必要な理由

本章ではメンタルヘルスケアの必要性を解説します。

主な理由は下記の3つです。

  • 従業員は多くのストレスを抱えている
  • 幸福度にはゆとりが重要
  • メンタルヘルスの要素が必達である

それぞれ解説します。

従業員は多くのストレスを抱えている

引用元:厚生労働省独立行政法人労働者健康安全機構『職場における心の健康づくり』

従業員が多くのストレスを抱えている現状にあることが、現代のウェルビーイングにメンタルヘルスケア対策が必要な理由のひとつです。上記の図は、厚生労働省の独立法人から発表された職業生活でのストレス等の状況を表した図です。

ストレスを感じる労働者の割合は常に過半数以上を占めており、ストレスを感じていない人はごくわずかです。

特に日本人は、外国人に比べて自己肯定感が低い傾向があり、ストレス値が高いほど自己肯定感も低くなると実証されています。

内閣府が実施した自己肯定感の調査は下記のとおりです。

  • 自分自身に満足している…45.8%
  • 自分には長所があると思っている…68.9%

参照:平成26年版 子ども・若者白書の調査

この結果は、諸外国と比べると数値が低く、自己肯定感が低い結果となりました。

自己肯定感が低いと自分の強みや長所に目が向きにくくなり、失敗を引きずりやすいため、ストレスを溜め込みやすく悪循環になってしまうことも考えられます。

また、メンタルヘルス不調に陥り、労災認定された件数は増加の一途にあります。

参照:産業保健の現状と課題に関する参考資料|厚生労働省

現状の労働問題を解決し、すべての従業員が健康的に働けるように早急な取り組みが必要です。そのため、ウェルビーイングを実現するためにも従業員のメンタルヘルスケアは欠かせないでしょう。

幸福度にはゆとりが重要

参考:株式会社第一生命経済研究所 第11回ライフデザインに関する調査

従業員のメンタルを重視して心にゆとりを持って働ける環境を提供できれば幸福感が高まり、ウェルビーイングにつながります。

上記の図は、第一生命が調査したゆとり感と幸福度の関係を表したものです。経済的・精神的・時間的なゆとりが高まれば、幸福度も比例して高くなっているのがポイントです。

幸福度を底上げするためにも「ゆとり」が重要だといえるでしょう。

メンタルヘルスの要素が必達である

ウェルビーイング経営の進め方に関するフレームワークの中には、必ずメンタルヘルスの項目が存在します。

例えば、世論調査やコンサルティングなどを行っているギャラップ社のウェルビーイングに関する指標の1つに「Physical well-being(心身に関する幸福度)」の項目があります。これは、ポジティブ心理学のPERMAモデル「Positive emotion(ポジティブな感情・心身の健康)」を元に構成されたフレームワークです。

2つのフレームワークにはメンタル面に関する要素が共通して取り上げられるのが特徴です。ウェルビーイングを効率的に実現するためには、メンタルヘルス要素が必須だといえるでしょう。

ウェルビーイングにメンタルヘルスケアを取り入れるメリット

本章では、ウェルビーイングにメンタルヘルスケアを取り入れるメリットを紹介します。

メンタルヘルスケアを取り入れるメリットは下記の3つです。

  • 生産性の低下防止につながる
  • 企業イメージが高まる
  • 従業員が安全・安心に働ける

それぞれ解説します。

生産性の低下防止につながる

1つめは生産性の低下防止につながる点です。メンタルヘルスの不調は、モチベーションや集中力、判断力の低下など業務に影響するさまざまな問題と密接に関係しています。

そのため、ウェルビーイング施策を通してメンタルヘルスケアを導入していれば、従業員はメンタルヘルス不調に陥ることなく、モチベーションや集中力、生産性が低下することはありません。

メンタルヘルスケアを取り入れ、本来のパフォーマンスを最大限に発揮できるような施策が重要です。

企業イメージが高まる

メンタルヘルスが良好であれば、心にゆとりが生まれ幸福感も高まります。このような好影響な従業員が多いことが世間に知られれば、企業にとっては良い状態でしょう。

活発なコミュニケーションや、新しいアイデアのひらめき、最大化されたパフォーマンス力など、業績向上はもちろん、勢いやフレッシュさが企業イメージの向上にもつながります。

ほかにも、社内の雰囲気が良ければ離職防止にもつながるでしょう。

企業イメージが話題になれば今後の人材確保も容易になる傾向にあります。

従業員が安全・安心に働ける

メンタルヘルスケア対策を行うことは、安全・安心な職場づくりにつながる施策の1つです。

例えば、メンタルヘルスが良好であればミスや事故が少なくなり、重機や工具、フォークリフトなどを扱う現場で重大事故を未然に防げます。ほかにも、公共交通機関などの乗り物を運転する企業では、メンタルヘルスが良好である従業員が多いことが知られていれば多くの人々の安心にもつながるでしょう。

メンタルヘルスケアを行うことは、リスクマネジメントの観点でも大きなメリットです。

また、特殊な仕事以外でもオフィス内の雰囲気が良ければ、全社員が安心してのびのびと働くことが可能です。従業員が安全・安心して働ける環境づくりの中には、メンタルヘルスの理解や認知度も影響します。

下記の表は令和4年に厚生労働省から発表された「産業保健の現状と課題に関する参考資料」の抜粋です。メンタルヘルス不調を抱えた従業員は、治療を受けながらでも働きたい意欲はあるものの、職場の理解が不十分だと感じています。

参照:産業保健の現状と課題に関する参考資料|厚生労働省

疾病を抱えた従業員は職場に対して、通院治療や通院のための柔軟な働き方や仕事内容の柔軟さを求めていることがわかります。従業員が安心・安全に働ける環境を提供できるように、メンタルヘルスの重要性や理解を深めましょう。

メンタルヘルス対策の注意点

メンタルヘルス対策をする上で気をつけたい注意点は「一時的に業績が下がる可能性がある」点です。

例えば、残業時間の短縮や有給取得率の向上など、労働環境を改善する取り組みは従業員のメンタルヘルス改善のため多くの企業で取り入れる施策の1つでしょう。しかし、プランや戦略を立てずに労働時間だけを削減してしまうと、従業員が十分に仕事をこなせずにサービスや商品の品質に悪影響が出る可能性が少なくありません。

そのため、一時的に業績が下がる可能性が潜んでいるのです。ただし、ウェルビーイング経営におけるメンタルヘルス対策は、経営面よりも従業員の健康や幸福、精神面を重要視する考え方です。

メンタルヘルス対策が浸透してくれば徐々に品質も元に戻り業績も上がります。長期的には業績向上やほかのさまざまなメリットにつながるため、短期で判断するのではなく長期的な観点を持つことが重要です。

ウェルビーイング経営におけるメンタルヘルス対策ステップ

本章では、メンタルヘルス対策をステップごとに紹介します。

3つのステップは下記のとおりです。

  • ステップ1:未然に予防する
  • ステップ2:早期に発見する
  • ステップ3:職場復帰などを支援する

それぞれ解説します。

ステップ1:未然に予防する

まずはステップ1で未然に予防を行いましょう。

メンタルヘルスの不調を未然に防ぐことを「1次予防」といい、1次予防の段階ではストレスチェックテストの活用や職場環境などの改善施策が有効です。1次予防をしっかりと行うことで、ステップ2の2次予防、ステップ3の3次予防の負担軽減につながります。

また2次や3次予防と比べると、企業にも個人にとっても身近ですぐに取り組める方法が多いことも特徴の1つです。そのため、まずは1次予防をしっかりと行い、メンタル不調にならない仕組みを目指しましょう。

ステップ2:早期に発見する

ステップ2は、早期発見をすることです。2次予防のステップ2では、メンタルヘルスの不調者を早期発見し、適切な措置を行う段階です。

不調者の変化にいち早く気づけるように、メンタルヘルス関連のセミナーや研修の実施、不調を感じた際に気軽に相談できる窓口の設置などが有効です。早期発見することで、従業員のメンタルヘルス不調を長期化させたり、慢性化、重症化させることなく治癒できることがメリットといえます。

従業員のメンタルヘルス不調をそのまま放置してしまうと、生産性の低下や勤務状況の悪化、最悪の場合には長期の休職や離職につながってしまいます。その従業員が仮に管理職や、リーダーのような役職に就いていた場合には、大きな混乱を招く結果となってしまうでしょう。

仮に役職の担当をしていなかったとしても、従業員の損失は企業にとって大きな痛手です。

そのため、1次予防で防ぎきれなかった場合には、必ず2次予防で防ぎきる対策をはじめましょう。

ステップ3:職場復帰などを支援する

最後のステップは、職場復帰などの支援です。ステップ2までで防げなかった場合の対策です。

メンタルヘルス不調によって休職した従業員などへ職場復帰ができるようにサポートを行う段階です。休業開始や休業中のケアはもちろん、職場復帰に向けた予定やプランの提案など、さまざまなサポートを実施しましょう。

厚生労働省が発表した休業期間の平均は下記のとおりです。

  • 1回目の病休日数の平均は107日(約3.5ヵ月)
  • 復職後に再休職した際は職場復帰までに平均157日(約5ヵ月)

主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|厚生労働省

メンタルヘルス不調で休職を繰り返すごとに、治療期間が伸びる傾向にあります。そのため、1回目の復職でつまずかずにスムーズに職場復帰できるよう、サポートが大切です。

ウェルビーイングにかかせないメンタルヘルスのケア方法

本章では、メンタルヘルスケアの方法を紹介します。

主なケア方法は下記の4つです。

  • セルフケア
  • ラインケア
  • スタッフケア
  • 外部ケア

それぞれ解説します。

セルフケア

セルフケアはその名の通り、個人で行うケアのことです。従業員がプライベートでも個人的にケアできるように、企業側からメンタルヘルスに関する正しい情報やケア方法を広める施策が適しています。

例えば、社内報や掲示板にメンタルヘルスに関する情報を掲載することや、セミナーや講義の開催、ストレスチェックテストの実施などが当てはまります。

まずはメンタルヘルスについて「知ってもらう」ことを重点的に行うことがポイントです。

ラインケア

ラインケアは管理監督者によるケアのことを指します。ラインケアでは、職場環境の把握や改善、部下からの相談対応を行います。

また、部下が休職した際の職場復職サポートもラインケアに含まれます。

そのため、難しい職場復帰をスムーズに、また1度で完全に成功させるために尽力しなければなりません。

スタッフケア

スタッフケアとは、産業保健スタッフなどによるケア方法のことです。主に産業医、衛生管理者、保健師、社内カウンセラーといった専門家が中心になって、従業員のメンタルヘルスケアをサポートします。

メンタルヘルスケアに関する具体的な企画や立案、相談者への支援、職場外とのネットワーク形成や窓口役、復帰支援などさまざまなケアが特徴です。 

外部ケア

最後は、外部の機関やサービスを活用して行うケア方法です。メンタルヘルスが不調気味の従業員の中には、社内のスタッフケアを受けたくないと考えている人も少なくはありません。

理由は、恥ずかしいからやバレたくないなどさまざまです。そのため、外部の窓口や専門機関のサポートが有効です。

企業ができるメンタルヘルスケアの具体例

本章では、企業側でできるメンタルヘルスケアの具体例を3つ紹介します。

すぐに対応できるものや、少々スケジューリングが必要な施策もありますが、ぜひとも取り入れたい施策です。

  • ストレスチェックの実施
  • 相談窓口の開設
  • 研修やセミナーなどの啓蒙活動

それぞれ解説します。

ストレスチェックの実施

1つめはストレスチェックの実施施策です。ストレスチェックの目的は、1次予防として従業員自身が自らのストレス状態に気づけることが目的。

また、平成18年の労働安全衛生法改正に伴い、労働者が50人以上の事業場については義務化されています。一方、50人未満の事業場については努力義務にとどまるものの、どのような事業場でも有効な施策の1つです。

ストレスチェックは、Web上に無料で使えるさまざまなテストがあるので、使いやすいものや好みで選んでもらってもかまいません。ほかにも、厚生労働省から発表されているオンラインアンケートもあります。

https://kokoro.mhlw.go.jp/check/

相談窓口の開設

内部・外部問わず、産業医や産業保健の専門スタッフによるサポート窓口を開設しておきましょう。

ただし、産業医などの専門スタッフは非常勤の場合が多いので、突然のメンタルヘルス不調でもすぐにオンラインやメールなどで相談できるような仕組み作りがかかせません。

また、開設しただけにとどまらず、社内に周知しておくことが必須です。

研修やセミナーなどの啓蒙活動

最後は研修やセミナーを活用し、啓蒙活動に尽力することです。自身でおこなうセルフケアの促進や、メンタルヘルスに対する理解や認知向上のためにも、研修やセミナーを活用しましょう。

メンタルヘルスに関する基礎知識や重要性、健康問題に対する正しい知識をつけることが大切です。また、監督の立場になる従業員は、相談された際の対応の仕方や職場改善の具体的な方法や施策なども研修やセミナーを通して学んでおくと安心できるでしょう。

そして、社内報などで具体的にメンタルヘルスに対する考え方や理念を広めておくことで、実際にメンタルヘルス不調が発生した場合でも、早急に対処することも可能です。

研修やセミナーは活用しやすい施策の1つなので、すぐにでも取り入れて社内ウェルビーイングを向上させましょう。

ウェルビーイング成功にはメンタルヘルスケアはかかせない

ウェルビーイングの向上にメンタルヘルスケアは欠かせません。離職率の低下や生産性の向上はもちろん、企業のイメージアップや業績アップにもつながる重要な施策の1つです。

また、実際にメンタルヘルスに関する問題が起きたときも、早期発見や早い職場復帰ができるように、普段からメンタルヘルスに関する認知や啓蒙活動を実施しておくことがポイントです。

当メディアを運営するリロクラブでは、メンタルヘルスケアを充実させるリソースやノウハウをなどさまざまな角度からサポートいたします。

ウェルビーイングを成功させたい・検討している企業は、ぜひリロクラブにご相談ください。